1,029 / 1,361
千二十七話 いたずら心?
しおりを挟む
(……今のところ、視線も何も感じないな)
道中の街で一泊することになったアラッドたち。
普段通りの生活を送るものの、アラッドは現在の自身の状況をある程度理解しているため、常の緊張の糸を張っていた。
「アラッド、な~~~にぶすっとしてんの」
「……そんなにぶすっとしてたか?」
「超しかめっ面だったよ」
「そうか……それは良くないな」
現在酒場で夕食を食べており、辛気臭い顔をしてるのは、確かに良くなかった。
「そういえば、ホットル王国に入ったんだから、スティームの知り合いと会うかもな」
「ないとは言えないね」
「会ったらどうするの? やっぱり色々と自慢しちゃう?」
「う~~~~~ん……そうだね…………」
スティームは、冒険者として活動を始めてから友人と言える友人ができなかった訳ではない。
ただ、アラッドと同じく頼れる相棒が最初からいたこともあり、中々多くの友人ができなかった。
(あぁいう人たちにあったら、まだ面倒な絡まれ方をするだろうね…………ふふ、でも……そうだね)
不敵な笑みを浮かべ、スティームは良い顔でどうするかを語った。
「たっぷり、自慢するかな。良い仲間に巡り合えて、楽しい冒険が出来たって」
「……そうか。そう言ってくれると、俺たちとしても嬉しいよ」
強い冒険者と組んだから、今も上手くやれてるんだと……そう言われても、スティームはその通りだと答えると決めた。
アラッドは否定するが、スティームはアラッドという歳下でありながら、敬意すら持つ青年と出会えたからこそ、赤雷という特別な力を得られたと思っている。
ガルーレという元気溌剌で、少し突っ走るところがある女性がパーティーに加わって、更に楽しい旅が出来ていると思っている。
今の自分は、二人と出会えたからこそ強くなることが出来、楽しい冒険者生活を送れていると断言出来る。
「ここが、スティームの故郷か」
スティームが生まれ育った街、ロッテルアン。
フールが統治している街と比べればやや小さいものの、十分都会と呼べる大きさと質を有している。
「ねぇねぇ、スティームの故郷なんだし、向こうの方の列に並んですすーーーって中に入れるんじゃないの?」
「それは……そうだと思うけど………………そうだね。変に注目されるより、堂々とそっちから行こうかな」
スティームたちは最初から貴族や豪商たちが並ぶ列に向かい、順番を待つ。
何故冒険者がこの列に、といった感じで怒りを露にする者はいない。
既にスティームがあのスティームだと気付いているから……という訳ではなく、ただ単純に巨狼と大鷹、白大猿という見るからに並以上の強さを持つ従魔を従えている姿から、感情に任せて絡もうとする者は現れなかった。
「っ!! これはこれは、スティーム様。おかえりなさいませ」
「どうも、お久しぶりです」
「そちらの方々は、スティーム様のご友人ですか?」
「はい、そうです。僕の、大切な友達です」
「なるほど……かしこまりました」
門兵も、ある程度の話は耳にしていた。
だが、実際にスティームの口からどういった存在なのかを危機、三人を中に通した後、同僚たちにアラッドやガルーレたちにも失礼のないようにと伝え回った。
「ところで、もしかしなくてもそのまま屋敷に向かうの?」
「その方が良いだろ。お前が帰って来たとなれば、直ぐに当主の耳にも入るだろう。わざわざ人を遣わせるのも申し訳ないしな」
宿は後で取れば良い。
それはアラッドだけではなく、ガルーレも同じ考えだった。
「……まぁ、それもそうかな」
「ねぇねぇ、もしかしてスティームって両親と会うの、ちょっと気まずい感じ?」
「う、う~~~ん……どうかな。別に親子仲は悪くないと思う、よ。ただ、一応父さんと母さんも僕が騎士になることを期待してたみたいだからさ」
「あぁ~~、なるほどね~~~。ちょっとぐらいは嫌味を言われそうな感じってことね」
「かもしれないかな」
アラッドは社交界に殆ど参加していなかったからこそ、あまり詳しいことは解らない。
ただ、騎士になる事を期待していた息子が冒険者の道を進んだ……この事実に対し、ちょっとぐらいの嫌味で済むのであれば、貴族の中ではまともな親子関係と言えることだけは解る。
「あれが、うちの屋敷だよ。って…………もしかして、もう伝わってるの?」
十数分歩き、スティームが暮らしていた屋敷に到着すると……門から屋敷に入り口に続くまで、ずらりと非番の兵士や騎士たちが並んでいた。
「お帰りなさいませ、スティーム様」
「う、うん。ただいま」
「ささ、アラッド様とガルーレ様もどうぞ中へ」
「お邪魔します」
「お邪魔しま~す」
門をくぐると、両脇に並んでいた兵士や騎士たちが一斉に声を上げる。
「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、スティーム様!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「う、うん…………た、ただいま」
恥ずかしい。
物凄く……物凄く恥ずかしいと感じるスティーム。
アラッドとガルーレは全くもって目の前の光景に不快感や嘲笑などの感情は持っていない。
ただ……ただただ、スティームが恥ずかしいだけ。
「おかえり、スティーム」
「た、ただいま、父さん」
久しぶりに父と出会い、スティームは全てを察した。
大袈裟に出迎え、自分に恥ずかしいと思わせることが、父から自分に対するいたずら心を含んだ嫌味だと。
道中の街で一泊することになったアラッドたち。
普段通りの生活を送るものの、アラッドは現在の自身の状況をある程度理解しているため、常の緊張の糸を張っていた。
「アラッド、な~~~にぶすっとしてんの」
「……そんなにぶすっとしてたか?」
「超しかめっ面だったよ」
「そうか……それは良くないな」
現在酒場で夕食を食べており、辛気臭い顔をしてるのは、確かに良くなかった。
「そういえば、ホットル王国に入ったんだから、スティームの知り合いと会うかもな」
「ないとは言えないね」
「会ったらどうするの? やっぱり色々と自慢しちゃう?」
「う~~~~~ん……そうだね…………」
スティームは、冒険者として活動を始めてから友人と言える友人ができなかった訳ではない。
ただ、アラッドと同じく頼れる相棒が最初からいたこともあり、中々多くの友人ができなかった。
(あぁいう人たちにあったら、まだ面倒な絡まれ方をするだろうね…………ふふ、でも……そうだね)
不敵な笑みを浮かべ、スティームは良い顔でどうするかを語った。
「たっぷり、自慢するかな。良い仲間に巡り合えて、楽しい冒険が出来たって」
「……そうか。そう言ってくれると、俺たちとしても嬉しいよ」
強い冒険者と組んだから、今も上手くやれてるんだと……そう言われても、スティームはその通りだと答えると決めた。
アラッドは否定するが、スティームはアラッドという歳下でありながら、敬意すら持つ青年と出会えたからこそ、赤雷という特別な力を得られたと思っている。
ガルーレという元気溌剌で、少し突っ走るところがある女性がパーティーに加わって、更に楽しい旅が出来ていると思っている。
今の自分は、二人と出会えたからこそ強くなることが出来、楽しい冒険者生活を送れていると断言出来る。
「ここが、スティームの故郷か」
スティームが生まれ育った街、ロッテルアン。
フールが統治している街と比べればやや小さいものの、十分都会と呼べる大きさと質を有している。
「ねぇねぇ、スティームの故郷なんだし、向こうの方の列に並んですすーーーって中に入れるんじゃないの?」
「それは……そうだと思うけど………………そうだね。変に注目されるより、堂々とそっちから行こうかな」
スティームたちは最初から貴族や豪商たちが並ぶ列に向かい、順番を待つ。
何故冒険者がこの列に、といった感じで怒りを露にする者はいない。
既にスティームがあのスティームだと気付いているから……という訳ではなく、ただ単純に巨狼と大鷹、白大猿という見るからに並以上の強さを持つ従魔を従えている姿から、感情に任せて絡もうとする者は現れなかった。
「っ!! これはこれは、スティーム様。おかえりなさいませ」
「どうも、お久しぶりです」
「そちらの方々は、スティーム様のご友人ですか?」
「はい、そうです。僕の、大切な友達です」
「なるほど……かしこまりました」
門兵も、ある程度の話は耳にしていた。
だが、実際にスティームの口からどういった存在なのかを危機、三人を中に通した後、同僚たちにアラッドやガルーレたちにも失礼のないようにと伝え回った。
「ところで、もしかしなくてもそのまま屋敷に向かうの?」
「その方が良いだろ。お前が帰って来たとなれば、直ぐに当主の耳にも入るだろう。わざわざ人を遣わせるのも申し訳ないしな」
宿は後で取れば良い。
それはアラッドだけではなく、ガルーレも同じ考えだった。
「……まぁ、それもそうかな」
「ねぇねぇ、もしかしてスティームって両親と会うの、ちょっと気まずい感じ?」
「う、う~~~ん……どうかな。別に親子仲は悪くないと思う、よ。ただ、一応父さんと母さんも僕が騎士になることを期待してたみたいだからさ」
「あぁ~~、なるほどね~~~。ちょっとぐらいは嫌味を言われそうな感じってことね」
「かもしれないかな」
アラッドは社交界に殆ど参加していなかったからこそ、あまり詳しいことは解らない。
ただ、騎士になる事を期待していた息子が冒険者の道を進んだ……この事実に対し、ちょっとぐらいの嫌味で済むのであれば、貴族の中ではまともな親子関係と言えることだけは解る。
「あれが、うちの屋敷だよ。って…………もしかして、もう伝わってるの?」
十数分歩き、スティームが暮らしていた屋敷に到着すると……門から屋敷に入り口に続くまで、ずらりと非番の兵士や騎士たちが並んでいた。
「お帰りなさいませ、スティーム様」
「う、うん。ただいま」
「ささ、アラッド様とガルーレ様もどうぞ中へ」
「お邪魔します」
「お邪魔しま~す」
門をくぐると、両脇に並んでいた兵士や騎士たちが一斉に声を上げる。
「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、スティーム様!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「う、うん…………た、ただいま」
恥ずかしい。
物凄く……物凄く恥ずかしいと感じるスティーム。
アラッドとガルーレは全くもって目の前の光景に不快感や嘲笑などの感情は持っていない。
ただ……ただただ、スティームが恥ずかしいだけ。
「おかえり、スティーム」
「た、ただいま、父さん」
久しぶりに父と出会い、スティームは全てを察した。
大袈裟に出迎え、自分に恥ずかしいと思わせることが、父から自分に対するいたずら心を含んだ嫌味だと。
517
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる