スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,042 / 1,361

千四十話 知っているから

しおりを挟む
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

「は、はは…………前に見せてくれた時の、半分も顔を出してくれてなかった、ってところか?」

バカ者たちがまだその場から動けないでいる中、先日アラッドと手合わせを行った騎士の一人が、ようやく言葉を零した。

「そう考えるのが、妥当か」

「前回は噂の狂化を使ってなかったから。にしても、狂化を有無であれだけ迫力が変わるとはな~~……なんとかして体得するべきか?」

「……あぁいったスキルは、その気になって体得できるスキルではないのではないか? それに、本来は全体的に身体強化を行う代わりに、狂暴性が増すというデメリットがあるだろう」

「そういえばそうだったな。けど、アラッド君はこう……狂暴性がバチバチだったけど、理性も宿してるって感じだっただろ」

アラッドから怒りを買っていないという自覚があったからか、恐怖を感じながらもベテランや若手の中でも実力者である騎士たちは冷静に見る余裕があった。

以前見たアラッドとはまた違う。
そして、間違いなく怒っていた……だが、それでも怒りの影に理性が見え隠れしていた。

「言いたい事は解る。だが、それはアラッド君のキャリアがあってこその……耐性、なのではないか」

「キャリアって……いや、そりゃそうか。ん~~~~……そう、だな。あんまりあっさり認めたくはねぇけど、詰んできた戦いの密度? 的なものなら、俺たちよりも上か」

「気持ちは私も解る。しかし、それこそ認めなければならないだろう……でなければ、私たちもそこで失禁している者たちと同じだ」

アラッドにあれこれ言いたい、本気で実力を確かめたいと思っていた者はそれなりにいたが、実力も経験も足りてない者が何名からおり、そういった者はもれなく失禁していた。

そして実力者ではあるが、正確に難がある者たちは……しりもちを付くか、未だに足が震えているかのどちらか。

「な、あ、ぁ……っ!!」

「おいおい、とりあえず落ち着けっての。あの鬼さん、っと。アラッド君はもうここには居ないし、お前たちは一応……許された……んだよな?」

「あの恐ろしい剣で斬られなかった、叩き潰されなかったということは、許されたのだろうな。それにしてもあの刃のない剣……あれも恐ろしかったな」

鬼の咆哮が響き渡る際、アラッドは勢い良く迅罰を振り下ろしていた。

王城の中でも最大の訓練場ということもあって、頑丈さは半端ではなく、時間が必要ではあるが自動修繕機能も付与されている。

だが、そんな頑丈さが売りの一部である床が……衝撃によって斬り刻まれていた。

「っ、はぁーーーー、はぁーーーーー……お、お前たちは、何も……思わなのいのか」

ようやく呼吸が整ったバカ者騎士の一人が、アラッドと手合わせの機会があった騎士に問うた。

お前たちはあれを観ても、何も思わないのかと。

正直なところ……以前アラッドと手合わせを行った騎士たちは、アラッドに絡もうとしたバカ者騎士たちの気持ちが解らなくもない。

ただ、大前提として……彼等はバカ者騎士たちが知らない事を知っていた。

「やっぱり俺たちと手合わせした時は本気じゃなかったんだな~~ってぐらいだな」

「あぁ、そうだな。あの時の手合せが、ただの手合せであって良かったと思うぐらいだ……私たちは、お前たちと違って彼の優しさを知っているからな」

自分たちの上司に当たる人物、シュルドからの質問に対し……これからの騎士たちに対して、真剣に考えた意見を口にしていた。

確かに、先程のアラッドには紛れもない恐ろしさを感じた。
それでも彼らは先日自分たちが出会った、あのアラッドを知っている。
決して、先程怒りを露にしたあの姿が本性などとは思わない。

何故なら……全面的に怒るアラッドが正しいから。

「それにしても、あれが……Aランクモンスターに挑むときのアラッド君って感じか?」

「ふむ……通常の強化系スキルだけではなく、狂化まで発動し……高ランクの武器を装備しているとなれば、確かに似た様な形かもしれないな」

Aランクモンスターに挑む。

その言葉を聞き、多くのバカ者たちがハッとさせられた。

噂には、話しには聞いていた。
まだ十五歳でありながら、Aランクモンスターを倒した傑物であると。

バカバカしいと彼らは一蹴していた。
尾ひれ背びれが付くにしても、あまりにも付き過ぎであると、本当である可能性も欠片も感じていなかった。

しかし、バカ者たちの中には纏めてかかって来いと言われたからこそ、自分と同じ感情等を持つ者たちと共に挑むイメージを浮かべた。
それでも……脳裏に焼き付くイメージは、決して変わらない。
ただ、地面に散らばる死体の数が増えるだけであった。

バカ者たちの中には、我こそがフローレンス・カルロストの隣が相応しいと口にする程度の実力者が……Bランクのモンスターであればソロ討伐経験のある者もいた。
だが、そんな彼らも一人でAランクモンスターに挑もうと、無意味に命を投げ捨てる者はいない。

(あれが…………それを、可能とする……者……そして…………………………っ!!!!!!!!!!)

自分には、あそこで挑む資格すらない。
そう判断してしまった自分自身に不甲斐なさを感じ、拳を握りしめるバカ者。

(……はぁ~~~~~~。こりゃあ、こいつらの上司が苦労しそうだな~~~)

常識のある騎士たちは年配騎士たちの苦労を知らんぷりし、自分たちのペースで自主練を始めるのだった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...