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千五十八話 そういった話がなかったから
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「急に訪ねて来て済まなかった」
「構いませんよ。しかし、よくこの時期に俺が実家に居ると分かりましたね」
「そろそろ始まるだろう。であれば、一度故郷に戻ると思ってな」
ディーナの予想通り、アラッドはそういった理由で実家に戻っていた。
「はは、そうでしたか…………そういえば、ブローズはそこそこ大きくなりましたね」
「ヴァゥ!」
そうだろ!! と言わんばかりに、得意げな顔を浮かべる虎竜、ブローズ。
まだ母親ほどの体格には至っていないものの、以前出会った時の子猫……ほど小さくはなかったが、既にDランクやCランクのウルフ系モンスターほどの大きさまで成長していた。
「基本的に、討伐したモンスターの肉を殆ど与えていたら、ここまであっという間に成長したんだ」
「な、なるほど」
「ところで、薙刀の方は順調に進んでいるのか?」
「俺が実家に帰ってくる少し前に、俺が信頼している鍛冶師、リンが帰って来たんで、ここ最近はリハビリの武器を造ってました」
まだ、本題に入っているかは解らない。
それでも問題は無いと伝える為、アラッドは亜空間から一本のロングソードを取り出した。
「これが、リンがリハビリとして造ったロングソードです」
「…………………………なるほど。確かに、良い腕を持っているようだな」
鞘から引き抜き、刃を眺め……薄っすらと笑みを浮かべるディーナ。
「ここ最近は、属性を持たせた薙刀を幾つか造っていましたね」
「……薙刀への理解を深めるため、か」
そこまでしてくれている事に、ディーナはまだ出会ったことがないリンという鍛冶師に対し、敬意の念を持った。
そして二人があれこれ話している間に、アラッドの実家へ到着。
アラッドは警備の兵士に対して客人だと伝える。
「かしこまりました」
「……さて。どうしますか」
「そうだな………………折角だ。もう少し体を動かしたい」
考える事は同じであり、ディーナも大戦が始まるまで体が鈍らないよう、勘が鈍らないように体を動かしておきたい。
「それじゃあ、訓練場に行きましょうか」
屋敷の中には入らず、そのまま訓練場へ直行。
「ただいま」
「失礼する」
「「「「「「「「「「っ!!!!!」」」」」」」」」」
訓練場に戻ってきたアラッドに対して、一瞬だけ視線が、意識が集まる。
しかし、その視線や意識は次の瞬間、アラッドの隣にいる人物へ即座に移った。
(っ……だ、誰だ?)
(スティーム殿たち以外の冒険者の客人が来る予定はあっただろうか)
(今……間違いなく、アラッド様と一緒に入って来たよな。ってことは、アラッド様と同じく冒険者だよな。けど、女性……女性………………そういう関係、なのか?)
アラッドと、鬼人族の女性冒険者は、そういう関係なのか。
そう思う騎士や魔術師が複数いる中、疑いの視線を向けてくる者たちの感情を察し、アラッドは軽く手を横に振った。
(ったく。どうして皆そういう風に勘違いするんだか)
若干呆れるアラッド。
確かにフローレンスにしろディーナにしろ、そういった関係なのかもと結びつけようとする者が多い。
ただ、それに関してはこれまでアラッドに浮ついた話が全くないからこそ、親し気な女性が傍にいれば、もしやそういった関係なのかと疑ってしまうのは、致し方ない面もあった。
「ふむ………………」
ディーナも、ただいきなり訓練場に現れた知らない人物に対して視線を向けているだけではなく、自分とアラッドへ交互に視線を向けている者がいることを把握し……どう反応すれば良いのか解らなくなる。
「模擬戦相手は、アラッドがしてくれるのか? それとも、スティームかガルーレか?」
ディーナとしては、アラッドだけではなくスティームとガルーレも知った顔であるため、二人と模擬戦をするのもありだと思っていた。
「良ければ、私といたしませんか」
「……あなたは、いったい」
「申し遅れました。私はフローレンス・カルロスト。現在、騎士として活動している者ですわ」
「フローレンス・カルロスト…………あぁ、あのフローレンス・カルロストか」
常に前に出て、討伐任務などを受けているフローレンスは、その途中で冒険者と関わることもある。
冒険者の中には騎士を、貴族を毛嫌いする者も多いため、フローレンスに対して悪辣な態度を取る者もいるが、彼女は基本的にそういった者たちの言動に対し……よっぽど度が過ぎて入れなければ、どうこうすることはない。
標的の捜索中に冒険者を助けても、何も見返りを求めず、女神の様な笑みで大丈夫かと安否を確認する。
そういった事もあって、冒険者たちの中で他の騎士はどうか知らないが、フローレンス・カルロストはまともな騎士だと、冒険者にも優しく理解のある騎士だという話が徐々に広まりつつある。
そして……当然、その強さも広まっている。
「折角の機会だ。それでは、一つ手合わせを願おう」
正直なところ、何故今彼女がアラッドの実家に? という疑問はあれど、そんな疑問は直ぐに吹き飛んだ。
元々そういったところがあり、ディーナの冒険者としての心が、フローレンスという強者と手合わせ出来るのを、心の底から喜んでいた。
「構いませんよ。しかし、よくこの時期に俺が実家に居ると分かりましたね」
「そろそろ始まるだろう。であれば、一度故郷に戻ると思ってな」
ディーナの予想通り、アラッドはそういった理由で実家に戻っていた。
「はは、そうでしたか…………そういえば、ブローズはそこそこ大きくなりましたね」
「ヴァゥ!」
そうだろ!! と言わんばかりに、得意げな顔を浮かべる虎竜、ブローズ。
まだ母親ほどの体格には至っていないものの、以前出会った時の子猫……ほど小さくはなかったが、既にDランクやCランクのウルフ系モンスターほどの大きさまで成長していた。
「基本的に、討伐したモンスターの肉を殆ど与えていたら、ここまであっという間に成長したんだ」
「な、なるほど」
「ところで、薙刀の方は順調に進んでいるのか?」
「俺が実家に帰ってくる少し前に、俺が信頼している鍛冶師、リンが帰って来たんで、ここ最近はリハビリの武器を造ってました」
まだ、本題に入っているかは解らない。
それでも問題は無いと伝える為、アラッドは亜空間から一本のロングソードを取り出した。
「これが、リンがリハビリとして造ったロングソードです」
「…………………………なるほど。確かに、良い腕を持っているようだな」
鞘から引き抜き、刃を眺め……薄っすらと笑みを浮かべるディーナ。
「ここ最近は、属性を持たせた薙刀を幾つか造っていましたね」
「……薙刀への理解を深めるため、か」
そこまでしてくれている事に、ディーナはまだ出会ったことがないリンという鍛冶師に対し、敬意の念を持った。
そして二人があれこれ話している間に、アラッドの実家へ到着。
アラッドは警備の兵士に対して客人だと伝える。
「かしこまりました」
「……さて。どうしますか」
「そうだな………………折角だ。もう少し体を動かしたい」
考える事は同じであり、ディーナも大戦が始まるまで体が鈍らないよう、勘が鈍らないように体を動かしておきたい。
「それじゃあ、訓練場に行きましょうか」
屋敷の中には入らず、そのまま訓練場へ直行。
「ただいま」
「失礼する」
「「「「「「「「「「っ!!!!!」」」」」」」」」」
訓練場に戻ってきたアラッドに対して、一瞬だけ視線が、意識が集まる。
しかし、その視線や意識は次の瞬間、アラッドの隣にいる人物へ即座に移った。
(っ……だ、誰だ?)
(スティーム殿たち以外の冒険者の客人が来る予定はあっただろうか)
(今……間違いなく、アラッド様と一緒に入って来たよな。ってことは、アラッド様と同じく冒険者だよな。けど、女性……女性………………そういう関係、なのか?)
アラッドと、鬼人族の女性冒険者は、そういう関係なのか。
そう思う騎士や魔術師が複数いる中、疑いの視線を向けてくる者たちの感情を察し、アラッドは軽く手を横に振った。
(ったく。どうして皆そういう風に勘違いするんだか)
若干呆れるアラッド。
確かにフローレンスにしろディーナにしろ、そういった関係なのかもと結びつけようとする者が多い。
ただ、それに関してはこれまでアラッドに浮ついた話が全くないからこそ、親し気な女性が傍にいれば、もしやそういった関係なのかと疑ってしまうのは、致し方ない面もあった。
「ふむ………………」
ディーナも、ただいきなり訓練場に現れた知らない人物に対して視線を向けているだけではなく、自分とアラッドへ交互に視線を向けている者がいることを把握し……どう反応すれば良いのか解らなくなる。
「模擬戦相手は、アラッドがしてくれるのか? それとも、スティームかガルーレか?」
ディーナとしては、アラッドだけではなくスティームとガルーレも知った顔であるため、二人と模擬戦をするのもありだと思っていた。
「良ければ、私といたしませんか」
「……あなたは、いったい」
「申し遅れました。私はフローレンス・カルロスト。現在、騎士として活動している者ですわ」
「フローレンス・カルロスト…………あぁ、あのフローレンス・カルロストか」
常に前に出て、討伐任務などを受けているフローレンスは、その途中で冒険者と関わることもある。
冒険者の中には騎士を、貴族を毛嫌いする者も多いため、フローレンスに対して悪辣な態度を取る者もいるが、彼女は基本的にそういった者たちの言動に対し……よっぽど度が過ぎて入れなければ、どうこうすることはない。
標的の捜索中に冒険者を助けても、何も見返りを求めず、女神の様な笑みで大丈夫かと安否を確認する。
そういった事もあって、冒険者たちの中で他の騎士はどうか知らないが、フローレンス・カルロストはまともな騎士だと、冒険者にも優しく理解のある騎士だという話が徐々に広まりつつある。
そして……当然、その強さも広まっている。
「折角の機会だ。それでは、一つ手合わせを願おう」
正直なところ、何故今彼女がアラッドの実家に? という疑問はあれど、そんな疑問は直ぐに吹き飛んだ。
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