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千六十二話 大き過ぎる壁
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夕飯前、最後の模擬戦。
先程行われたディーナとフローレンスの模擬戦も、確かに激しい戦いだった。
だが……訓練場にいる騎士たちは、全員同じ事を考えていた。
今、目の前で行われているアラッドとフローレンスの模擬戦が、今日……一番熱いと。
互いに拳を振るい、脚を振り上げ、振り落とし……その動きを読んで躱し、なんとか防ぐ。
アラッドだけではなく、ディーナも読み切れずにガードを選ばざるを得ない状況に追い込まれ、アラッドの鉄拳をなんとか堪える。
相手の攻撃を受けるというのは、間違いなくダメージを受けるのと同じ。
それは間違いないのだが……二人の場合、相手の攻撃をガードする度に……闘争心に薪をくべられ、更に燃え上がる。
結果……アラッドだけではなく、ディーナも同じく今日一……戦闘者としての笑みを零す。
「……うちらにはあれだけ気を付けて戦えよ~~って、模擬戦なんだぞ~~って言ってたくせに~~」
「まだ、一応模擬戦の範囲内だと思うよ」
「えぇ~~~、そう?」
壁側で観戦しているガルーレは、本当に模擬戦の範囲内で戦っているのかと疑問を持ち、不満を零す。
「うん。だって、まだ魔力もスキルも使ってないからね」
「それはまぁ……そっか」
魔力やスキルを使っていないため、遠距離攻撃を放つこともない。
完全に己の五体だけを使った激しいぶつかり合い。
(ガルーレが不満に感じるのは……多分、あれだけアラッドが満足そうな顔を浮かべて戦ってるからかな)
ガルーレは、ディーナという存在に対して嫉妬しているわけではない。
ただ……自分よりも満足気な笑みを浮かべながら戦っているのが、羨ましいと感じたのだ。
「おそらく、二人ともまだ骨にヒビは入ってないだろうからね」
「だから、まだまだ終わらないってことだよね~~~……でもさ、割と青痣はできてきたよね」
珍しい体質により、身体能力が頭二つ三つ抜けているアラッドの打撃は、見た目以上の速さと重さがある。
対して、ディーナの肉体は鬼人族のパワーとネコ科獣人族の反射速度、瞬発力を兼ね備えており、見た目通りの重さと見た目以上の素早さを有している。
そのため、両者ともガードという選択肢を選ばされれば、スティームの言う通りまだ骨にヒビまで至っていないものの、ガルーレの言う通り幾つかの青痣が生まれてしまう。
「そうだね…………そういうレベルで戦えてるからこそ、アラッドはあんなに楽しそうに戦ってるんじゃないかな」
「な~~~るほど~~~」
二人の戦いを観て、友人であるスティームとガルーレが思ったことは……ただ一つ。
もっともっと、強くなる。強くなってやる。
ただ、本当に純粋な向上心が、二人の心を熱く灯した。
「っ!!!! …………ふぅーーーーーー、参った」
模擬戦が始まってから五分以上が経過。
ディーナの右ストレートを躱し、懐に潜り込んだアラッドが右ボディを叩き込んだ。
躱されたことを瞬時に把握して腹筋に力を込めたディーナだったが、アラッドの一撃は堅い腹筋を通り越した。
ディーナはなんとか即座に後方へ跳んで距離を取ったものの、これ以上は無理だと……模擬戦を終わらせる一撃を食らってしまったと認めた。
「……お疲れ様でした」
「お互いにな。しかし、相変わらず素手でも強いな」
「そちらも鍛えてますんで。ただ、スキルの使用がありなら、さっきの一撃は逆に俺がやられていたでしょう」
以前、虎竜の一件で試合を行った際、アラッドはこれが決定打になると思った一撃を放った際、ディーナが発動した金剛によって、逆に拳の骨を破壊された。
「どうだろうな。アラッドが狂化を発動していれば、話しは別だと思うが」
「それはまぁ…………どうでしょうね。やってみないと、解らないと言いますか」
「そうか。では、今度はそういうのもありで戦ってみようか」
「……冗談、ですよね?」
「ふふ。あぁ、冗談だ」
フローレンスにスティーム、ラディア・クレスタ―。
過去に三人の人間を相手に狂化を使用したことがあるアラッドだが、基本的に人間相手には使用しないように心がけている。
盗賊などの悪党や、大事な……負けられない戦いなどであればまだしも、模擬戦程度の試合で使うものではない。
それこそ、戦争前の準備期間で知人との模擬戦、試合で使う様なスキルではない。
「勘弁してくださいよ」
「ふふ、すまない」
少々焦った表情を浮かべるアラッドの顔が面白く、先程まで浮かべていた笑みとはまた違う……優しさのある笑みを零すディーナ。
その笑みに、訓練場にいた幾人かの男性騎士がやられた。
戦闘時とのギャップから出た笑みの破壊力は中々に強い。
それが、相手がアラッドだからこそ零れたのかどうかは、解らない。
ただ、勘の鋭いエリナなどは、彼女の笑みにやられてしまった騎士を即座に把握。
(……今のところ、二人の距離感は友人のそれに思えますが………………最大のライバルがアラッド様となると、お気の毒としか言えませんね)
強面だが顔は整っており、半端ではない実力を有しており……金も持っている。
人格者でもあるため、立ち向かうには余りにも大き過ぎる壁であった。
先程行われたディーナとフローレンスの模擬戦も、確かに激しい戦いだった。
だが……訓練場にいる騎士たちは、全員同じ事を考えていた。
今、目の前で行われているアラッドとフローレンスの模擬戦が、今日……一番熱いと。
互いに拳を振るい、脚を振り上げ、振り落とし……その動きを読んで躱し、なんとか防ぐ。
アラッドだけではなく、ディーナも読み切れずにガードを選ばざるを得ない状況に追い込まれ、アラッドの鉄拳をなんとか堪える。
相手の攻撃を受けるというのは、間違いなくダメージを受けるのと同じ。
それは間違いないのだが……二人の場合、相手の攻撃をガードする度に……闘争心に薪をくべられ、更に燃え上がる。
結果……アラッドだけではなく、ディーナも同じく今日一……戦闘者としての笑みを零す。
「……うちらにはあれだけ気を付けて戦えよ~~って、模擬戦なんだぞ~~って言ってたくせに~~」
「まだ、一応模擬戦の範囲内だと思うよ」
「えぇ~~~、そう?」
壁側で観戦しているガルーレは、本当に模擬戦の範囲内で戦っているのかと疑問を持ち、不満を零す。
「うん。だって、まだ魔力もスキルも使ってないからね」
「それはまぁ……そっか」
魔力やスキルを使っていないため、遠距離攻撃を放つこともない。
完全に己の五体だけを使った激しいぶつかり合い。
(ガルーレが不満に感じるのは……多分、あれだけアラッドが満足そうな顔を浮かべて戦ってるからかな)
ガルーレは、ディーナという存在に対して嫉妬しているわけではない。
ただ……自分よりも満足気な笑みを浮かべながら戦っているのが、羨ましいと感じたのだ。
「おそらく、二人ともまだ骨にヒビは入ってないだろうからね」
「だから、まだまだ終わらないってことだよね~~~……でもさ、割と青痣はできてきたよね」
珍しい体質により、身体能力が頭二つ三つ抜けているアラッドの打撃は、見た目以上の速さと重さがある。
対して、ディーナの肉体は鬼人族のパワーとネコ科獣人族の反射速度、瞬発力を兼ね備えており、見た目通りの重さと見た目以上の素早さを有している。
そのため、両者ともガードという選択肢を選ばされれば、スティームの言う通りまだ骨にヒビまで至っていないものの、ガルーレの言う通り幾つかの青痣が生まれてしまう。
「そうだね…………そういうレベルで戦えてるからこそ、アラッドはあんなに楽しそうに戦ってるんじゃないかな」
「な~~~るほど~~~」
二人の戦いを観て、友人であるスティームとガルーレが思ったことは……ただ一つ。
もっともっと、強くなる。強くなってやる。
ただ、本当に純粋な向上心が、二人の心を熱く灯した。
「っ!!!! …………ふぅーーーーーー、参った」
模擬戦が始まってから五分以上が経過。
ディーナの右ストレートを躱し、懐に潜り込んだアラッドが右ボディを叩き込んだ。
躱されたことを瞬時に把握して腹筋に力を込めたディーナだったが、アラッドの一撃は堅い腹筋を通り越した。
ディーナはなんとか即座に後方へ跳んで距離を取ったものの、これ以上は無理だと……模擬戦を終わらせる一撃を食らってしまったと認めた。
「……お疲れ様でした」
「お互いにな。しかし、相変わらず素手でも強いな」
「そちらも鍛えてますんで。ただ、スキルの使用がありなら、さっきの一撃は逆に俺がやられていたでしょう」
以前、虎竜の一件で試合を行った際、アラッドはこれが決定打になると思った一撃を放った際、ディーナが発動した金剛によって、逆に拳の骨を破壊された。
「どうだろうな。アラッドが狂化を発動していれば、話しは別だと思うが」
「それはまぁ…………どうでしょうね。やってみないと、解らないと言いますか」
「そうか。では、今度はそういうのもありで戦ってみようか」
「……冗談、ですよね?」
「ふふ。あぁ、冗談だ」
フローレンスにスティーム、ラディア・クレスタ―。
過去に三人の人間を相手に狂化を使用したことがあるアラッドだが、基本的に人間相手には使用しないように心がけている。
盗賊などの悪党や、大事な……負けられない戦いなどであればまだしも、模擬戦程度の試合で使うものではない。
それこそ、戦争前の準備期間で知人との模擬戦、試合で使う様なスキルではない。
「勘弁してくださいよ」
「ふふ、すまない」
少々焦った表情を浮かべるアラッドの顔が面白く、先程まで浮かべていた笑みとはまた違う……優しさのある笑みを零すディーナ。
その笑みに、訓練場にいた幾人かの男性騎士がやられた。
戦闘時とのギャップから出た笑みの破壊力は中々に強い。
それが、相手がアラッドだからこそ零れたのかどうかは、解らない。
ただ、勘の鋭いエリナなどは、彼女の笑みにやられてしまった騎士を即座に把握。
(……今のところ、二人の距離感は友人のそれに思えますが………………最大のライバルがアラッド様となると、お気の毒としか言えませんね)
強面だが顔は整っており、半端ではない実力を有しており……金も持っている。
人格者でもあるため、立ち向かうには余りにも大き過ぎる壁であった。
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