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千七十話 改めて誓おう
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(……涙を、流したのは……いつ振りだろうな)
訓練場を出た後、アラッドは涙を拭いながら過去を振り返るも……パッと頭の中に浮かぶのは数回程度。
その記憶は正しく、アラッドはこの世界に生まれてから片手で数えられるほどしか涙を流していなかった。
(………………あれが、俺の噓偽りない気持ちだ)
あんな事を伝えてしまって良かったのかと、今更ほんの少し後悔の気持ちが零れるも……間違っていなかったと、自分に言い聞かせる。
その直後、訓練場の方から戦う者たちの咆哮が響き渡る。
「っ!!!!????」
思わずびくっと震えるアラッド。
彼だけではなく、屋敷にいる者たち……侯爵家周辺にいる者たちにまで咆哮が、雄叫びが響きわたっていた。
「アラッド、訓練場の方から凄い声が聞こえたんだけど」
孤児院の近くで子供たちの相手をしていたスティームが、一体何事があったのかと尋ねる。
「さぁ……何があったんだろうな」
誤魔化している訳ではない。
激励……のつもりで、自分が伝えたい事を伝えた。
ただ、その後何かがあって、訓練場だけではなく、屋敷まで震わせるほどの雄叫びを放ったのかは……本当に知らなかった。
「さ、さぁって……?」
「ん? なんだ、スティーム。顔に何か付いてるか?」
「いや、その…………ちょっと、目が赤いなって、思って」
「あぁ……それか」
「アラッド! もしかして泣いたの!!!!」
驚くような、からかう様な声で泣いたのかと尋ねるガルーレ。
「……そうだな。少し、涙を流した」
特に否定しようとは思わず、大体その通りだと答えたアラッド。
しかし、あまりにも予想外の返答だったのか、質問した張本人であるガルーレは石のように固まってしまい、スティームやフローレンス……子供たちまで、同じ様に固まってしまった。
「おい……おい。大丈夫か」
「はっ!!! え、えっと……その、本当に、泣いたの?」
「泣いてはいないが、涙は流した。それは間違いない」
「えぇーーー………………ほ、本当に?」
「本当だ」
「本当に本当に本当に?」
「事実だと言ってるだろう。何をそんなに疑ってるんだ」
「だ、だって。アラッドが涙を流すとか……ねぇ」
周りの者たちに同意を求めるガルーレ。
すると、スティーム達は全員小さく首を縦に振った。
「お前ら……俺をなんだと思ってるんだ」
「だってほら、アラッドはアラッドだし?」
「おい、理由になってないぞ」
アラッドからすれば理由になっていないが、ガルーレたちからすれば一応理由にはなっていた。
「ったく……まぁ、あれだ。特に戦る前から悲しい事があったわけじゃないから気にするな」
「そう言われても……」
戦る前から悲しい事があったわけじゃない……それにはホッとする。
しかし、それでもアラッドが涙を流した理由に関して、気にするなという方が無理であった。
(本当に珍しいですね…………………………しかし、おかしな事ではないですね)
離れた場所から会話内容を聞いていたマザーアルリアだけが、何故アラッドが涙を流したのか……ある程度察することが出来た。
だが、マザーはそれを誰かに伝えることはなかった。
「息子からの激励は以上だね」
アラッドが訓練場を出て直ぐ、フールはあれが息子の気持ちだと、ハッキリと伝えた。
「驚いたかい? 正直なところ、僕も驚いている」
そして、彼は彼で騎士たちに嘘偽りのない感想を零す。
「僕はアラッドの親だけど、涙を流すアラッドを見たのは初めてだったよ」
普段から当主としての仕事に追われているからという理由はあるが、それでも約十五年……同じ屋敷の下で生活していたにもかかわらず、フールは本当にアラッドの涙を見たことがなかった。
「僕はね……アラッドに、どういった激励をしてほしいかは、伝えてないんだ」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「実際のところ、あの内容が激励として正しいのか否かは、解らないね。でも……だからこそ、あれがアラッドの君たちに対する噓偽りのない本音だと僕は思う」
泣いていた。
貴族出身ではなくとも、アラッドと同じ場所で過ごしてきた彼らなら、解る。
あの涙は、本当に……本物の熱さが籠った、涙だと。
「君たちのうち、誰か一人で亡くなってしまえば……アラッドはまた涙を流すだろうね」
フールは当然であり、アリサも同じく……亡くなった者の家族も涙を流す。
違いはない。
等しく、亡くなった者を想うが故に零れる涙である。
だが……彼らの中で、アラッドが涙を流すというのは、訳が違った。
説明してくれと言われれば、上手く言葉には出来ない。
それでも、騎士や魔術師たちの心に薪がくべられ、熱く……激しく燃え盛っていた。
「また、アラッドに涙を流させても良いのかい」
「「「「「「「「「「「「いいえッ!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」
「では、改めて誓おう……この戦い、必ず勝利し!!!! 全員生きて帰ってくると!!!!!!!!!!」
吼えた。
男も女も、騎士や魔術師も……若者もベテランも関係無く、これまでの人生で一番と断言出来るほど誓いの雄叫びを上げた。
勝利し、必ず生きて帰ってくると、誓いの炎を灯した。
訓練場を出た後、アラッドは涙を拭いながら過去を振り返るも……パッと頭の中に浮かぶのは数回程度。
その記憶は正しく、アラッドはこの世界に生まれてから片手で数えられるほどしか涙を流していなかった。
(………………あれが、俺の噓偽りない気持ちだ)
あんな事を伝えてしまって良かったのかと、今更ほんの少し後悔の気持ちが零れるも……間違っていなかったと、自分に言い聞かせる。
その直後、訓練場の方から戦う者たちの咆哮が響き渡る。
「っ!!!!????」
思わずびくっと震えるアラッド。
彼だけではなく、屋敷にいる者たち……侯爵家周辺にいる者たちにまで咆哮が、雄叫びが響きわたっていた。
「アラッド、訓練場の方から凄い声が聞こえたんだけど」
孤児院の近くで子供たちの相手をしていたスティームが、一体何事があったのかと尋ねる。
「さぁ……何があったんだろうな」
誤魔化している訳ではない。
激励……のつもりで、自分が伝えたい事を伝えた。
ただ、その後何かがあって、訓練場だけではなく、屋敷まで震わせるほどの雄叫びを放ったのかは……本当に知らなかった。
「さ、さぁって……?」
「ん? なんだ、スティーム。顔に何か付いてるか?」
「いや、その…………ちょっと、目が赤いなって、思って」
「あぁ……それか」
「アラッド! もしかして泣いたの!!!!」
驚くような、からかう様な声で泣いたのかと尋ねるガルーレ。
「……そうだな。少し、涙を流した」
特に否定しようとは思わず、大体その通りだと答えたアラッド。
しかし、あまりにも予想外の返答だったのか、質問した張本人であるガルーレは石のように固まってしまい、スティームやフローレンス……子供たちまで、同じ様に固まってしまった。
「おい……おい。大丈夫か」
「はっ!!! え、えっと……その、本当に、泣いたの?」
「泣いてはいないが、涙は流した。それは間違いない」
「えぇーーー………………ほ、本当に?」
「本当だ」
「本当に本当に本当に?」
「事実だと言ってるだろう。何をそんなに疑ってるんだ」
「だ、だって。アラッドが涙を流すとか……ねぇ」
周りの者たちに同意を求めるガルーレ。
すると、スティーム達は全員小さく首を縦に振った。
「お前ら……俺をなんだと思ってるんだ」
「だってほら、アラッドはアラッドだし?」
「おい、理由になってないぞ」
アラッドからすれば理由になっていないが、ガルーレたちからすれば一応理由にはなっていた。
「ったく……まぁ、あれだ。特に戦る前から悲しい事があったわけじゃないから気にするな」
「そう言われても……」
戦る前から悲しい事があったわけじゃない……それにはホッとする。
しかし、それでもアラッドが涙を流した理由に関して、気にするなという方が無理であった。
(本当に珍しいですね…………………………しかし、おかしな事ではないですね)
離れた場所から会話内容を聞いていたマザーアルリアだけが、何故アラッドが涙を流したのか……ある程度察することが出来た。
だが、マザーはそれを誰かに伝えることはなかった。
「息子からの激励は以上だね」
アラッドが訓練場を出て直ぐ、フールはあれが息子の気持ちだと、ハッキリと伝えた。
「驚いたかい? 正直なところ、僕も驚いている」
そして、彼は彼で騎士たちに嘘偽りのない感想を零す。
「僕はアラッドの親だけど、涙を流すアラッドを見たのは初めてだったよ」
普段から当主としての仕事に追われているからという理由はあるが、それでも約十五年……同じ屋敷の下で生活していたにもかかわらず、フールは本当にアラッドの涙を見たことがなかった。
「僕はね……アラッドに、どういった激励をしてほしいかは、伝えてないんだ」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「実際のところ、あの内容が激励として正しいのか否かは、解らないね。でも……だからこそ、あれがアラッドの君たちに対する噓偽りのない本音だと僕は思う」
泣いていた。
貴族出身ではなくとも、アラッドと同じ場所で過ごしてきた彼らなら、解る。
あの涙は、本当に……本物の熱さが籠った、涙だと。
「君たちのうち、誰か一人で亡くなってしまえば……アラッドはまた涙を流すだろうね」
フールは当然であり、アリサも同じく……亡くなった者の家族も涙を流す。
違いはない。
等しく、亡くなった者を想うが故に零れる涙である。
だが……彼らの中で、アラッドが涙を流すというのは、訳が違った。
説明してくれと言われれば、上手く言葉には出来ない。
それでも、騎士や魔術師たちの心に薪がくべられ、熱く……激しく燃え盛っていた。
「また、アラッドに涙を流させても良いのかい」
「「「「「「「「「「「「いいえッ!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」
「では、改めて誓おう……この戦い、必ず勝利し!!!! 全員生きて帰ってくると!!!!!!!!!!」
吼えた。
男も女も、騎士や魔術師も……若者もベテランも関係無く、これまでの人生で一番と断言出来るほど誓いの雄叫びを上げた。
勝利し、必ず生きて帰ってくると、誓いの炎を灯した。
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