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千七十三話 任せてほしい
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「私としましては、ただアルバース王国の騎士として、己の正義を疑わずに戦うだけです」
「うむ…………既に理解しているようですね」
己の正義を疑わずに戦う。
そんなフローレンスの考えは、騎士であればいたって当たり前の事ではないかと思われやすい。
しかし、ただのモンスターとの戦いではなく、盗賊との戦いではなく……敵対する者にも、確かな正義を持つ者との戦いに直面した際……己の正義に疑問を感じ、揺らいでしまう者は決して少なくない。
だからこそ、事前にその問題に直面するかもしれないと知っているだけで、戦闘時に襲い掛かる危機を避けられる可能性が高まる。
「何かを、感じてしまうことはあるでしょう。ですが、それでも民を守るために私は騎士になりました。そして、大切な仲間にも出会うことが出来ました。そんな彼らも……守りたい。であれば、戦場で鬼になる覚悟は出来ています」
今回の戦争で対峙した者たちから、自身がどう呼ばれようとも構わない。
それが、民を……仲間を守ることに繋がるのなら。
そんな彼女の言葉に、同じ騎士であるローダンは感心した。
「アラッド君は、如何だろうか」
「一応、自分も騎士であり侯爵家の令息として生まれた以上、こういった有事の際に動くのは当然だと思っています」
民の税金によって生活し、育まれ……成長してきた。
そんな中、民たちの力ではどうしようもない問題が訪れた。
そこで動かなければ、本当に税金で活かされてるだけの無能になってしまう。
各々の得意分野は違うため、全員が全員自身の考えに当て嵌まるとは思っていない。
それでも……アラッドはここで動かなければ、その無能に自分が当て嵌まると思っている。
「それと、これはフローレンスと同じ考えですが、自分たちが目の前の兵士や騎士、冒険者に情けを掛けて殺さなかった場合……仲間が、知人が殺されるかもしれない」
それを知った後、後悔するのは目に見えていた。
「正直なところ、生まれ云々よりも甘えを捨てきれなかったせいでその最悪の事態が起こるかもしれない……それだけで、戦場で心を鬼にする理由は十分かと」
肝が据わっている、覚悟が決まっている……そういうレベルではないと、ローダンは感じ取った。
(既に……経験があるかのような貫禄を感じる。以前から噂を耳にするたびに思っていたが……本当に、まだ二十にもなっていないのか疑いたくなってしまうな)
小さく零れるその笑みは、嬉しさから零れたものだった。
疑問は残る。
それでも、味方としてはこれ以上なく頼もしい若者たちだと解る。
だからこそ…………ローダンは深く、頭を下げた。
「ローダンさん、いったい何を?」
「大きな力を持っているとはいえ、君たち若者に最前線を任せてしまい、申し訳ない」
自己満足である事は、ローダンも理解している。
だが……それでも、年長の騎士として謝らなければならないと思っていた。
四人が年齢に似合わない力を有していることは理解している。
それでも、戦場という場所ではそんな若くとも強い彼らであっても、死ぬ可能性は当然ある。
ローダンとしては、最も死ぬ可能性が高い場所へ向かうべきは、自分たちの様なある程度の戦闘力を有しながら、安心して後ろに任せられる世代だと考えていた。
少なくとも……まだ二十にも至っていない、未来ある若者たちに任せるべきではない。
「俺としては、上の方々がそう思っていると知れただけでも、嬉しいものがあります」
「アラッドと同じく。それに……私たちは一定の場所以外からは動くなと言われても、留まることは無理かと」
フローレンスから視線を送られてアラッドは、苦笑いを零しながらも確かにその通りだと頷いた。
「確かに、前に出れば出るほど強大な敵と戦い、死ぬ可能性が増すでしょう。しかし、俺たちは誰一人として今回の戦争で死ぬつもりはありません。なので、心配するよりも……任せてくれると嬉しいです」
「……ふふ、そうだな。アラッド君の言う通りだね。君たちに、託させてもらう」
「任せてください」
ローダンは、決して意図したわけではない。
これまで耳に入ってきたアラッドの情報から、わざわざ屋敷に呼ばれたりするのは嫌だろうと思い、夕食中にお邪魔させてもらった。
アラッドたちが食事を取っていた場所は、酒場。
当然ながら、酒場には夕食を食べているアラッドたちの冒険者たちもいた。
荒くれ者、自身の実力に自信がある者。
そんな者たちであっても、戦争という初めて足を踏み入れる戦場を想像し、大なり小なり緊張感を感じていた。
だが、そんな中で……その戦場で最前線の場所へ向かう者たちの想いを聞いた。
下手に考えても仕方ない。
友の為にという単純明快な考えを持って。
騎士として……守ると決めた者たちを守るために。
ただ、自分の甘さで仲間や知人を失いたくない為に。
若いのに自分たちよりも数段上の実力を有している者たちが戦場に臨む想いは……いたって単純なものだった。
そんな想いを聞き、受け取り……下手な事を考えても意味はないと、緊張するだけ無駄だと……若い連中が頼もしい背中を見せてくれているのに俺たちが下を向いてどうするのだと!!! ……彼らの心に、確かな闘志が灯った。
「うむ…………既に理解しているようですね」
己の正義を疑わずに戦う。
そんなフローレンスの考えは、騎士であればいたって当たり前の事ではないかと思われやすい。
しかし、ただのモンスターとの戦いではなく、盗賊との戦いではなく……敵対する者にも、確かな正義を持つ者との戦いに直面した際……己の正義に疑問を感じ、揺らいでしまう者は決して少なくない。
だからこそ、事前にその問題に直面するかもしれないと知っているだけで、戦闘時に襲い掛かる危機を避けられる可能性が高まる。
「何かを、感じてしまうことはあるでしょう。ですが、それでも民を守るために私は騎士になりました。そして、大切な仲間にも出会うことが出来ました。そんな彼らも……守りたい。であれば、戦場で鬼になる覚悟は出来ています」
今回の戦争で対峙した者たちから、自身がどう呼ばれようとも構わない。
それが、民を……仲間を守ることに繋がるのなら。
そんな彼女の言葉に、同じ騎士であるローダンは感心した。
「アラッド君は、如何だろうか」
「一応、自分も騎士であり侯爵家の令息として生まれた以上、こういった有事の際に動くのは当然だと思っています」
民の税金によって生活し、育まれ……成長してきた。
そんな中、民たちの力ではどうしようもない問題が訪れた。
そこで動かなければ、本当に税金で活かされてるだけの無能になってしまう。
各々の得意分野は違うため、全員が全員自身の考えに当て嵌まるとは思っていない。
それでも……アラッドはここで動かなければ、その無能に自分が当て嵌まると思っている。
「それと、これはフローレンスと同じ考えですが、自分たちが目の前の兵士や騎士、冒険者に情けを掛けて殺さなかった場合……仲間が、知人が殺されるかもしれない」
それを知った後、後悔するのは目に見えていた。
「正直なところ、生まれ云々よりも甘えを捨てきれなかったせいでその最悪の事態が起こるかもしれない……それだけで、戦場で心を鬼にする理由は十分かと」
肝が据わっている、覚悟が決まっている……そういうレベルではないと、ローダンは感じ取った。
(既に……経験があるかのような貫禄を感じる。以前から噂を耳にするたびに思っていたが……本当に、まだ二十にもなっていないのか疑いたくなってしまうな)
小さく零れるその笑みは、嬉しさから零れたものだった。
疑問は残る。
それでも、味方としてはこれ以上なく頼もしい若者たちだと解る。
だからこそ…………ローダンは深く、頭を下げた。
「ローダンさん、いったい何を?」
「大きな力を持っているとはいえ、君たち若者に最前線を任せてしまい、申し訳ない」
自己満足である事は、ローダンも理解している。
だが……それでも、年長の騎士として謝らなければならないと思っていた。
四人が年齢に似合わない力を有していることは理解している。
それでも、戦場という場所ではそんな若くとも強い彼らであっても、死ぬ可能性は当然ある。
ローダンとしては、最も死ぬ可能性が高い場所へ向かうべきは、自分たちの様なある程度の戦闘力を有しながら、安心して後ろに任せられる世代だと考えていた。
少なくとも……まだ二十にも至っていない、未来ある若者たちに任せるべきではない。
「俺としては、上の方々がそう思っていると知れただけでも、嬉しいものがあります」
「アラッドと同じく。それに……私たちは一定の場所以外からは動くなと言われても、留まることは無理かと」
フローレンスから視線を送られてアラッドは、苦笑いを零しながらも確かにその通りだと頷いた。
「確かに、前に出れば出るほど強大な敵と戦い、死ぬ可能性が増すでしょう。しかし、俺たちは誰一人として今回の戦争で死ぬつもりはありません。なので、心配するよりも……任せてくれると嬉しいです」
「……ふふ、そうだな。アラッド君の言う通りだね。君たちに、託させてもらう」
「任せてください」
ローダンは、決して意図したわけではない。
これまで耳に入ってきたアラッドの情報から、わざわざ屋敷に呼ばれたりするのは嫌だろうと思い、夕食中にお邪魔させてもらった。
アラッドたちが食事を取っていた場所は、酒場。
当然ながら、酒場には夕食を食べているアラッドたちの冒険者たちもいた。
荒くれ者、自身の実力に自信がある者。
そんな者たちであっても、戦争という初めて足を踏み入れる戦場を想像し、大なり小なり緊張感を感じていた。
だが、そんな中で……その戦場で最前線の場所へ向かう者たちの想いを聞いた。
下手に考えても仕方ない。
友の為にという単純明快な考えを持って。
騎士として……守ると決めた者たちを守るために。
ただ、自分の甘さで仲間や知人を失いたくない為に。
若いのに自分たちよりも数段上の実力を有している者たちが戦場に臨む想いは……いたって単純なものだった。
そんな想いを聞き、受け取り……下手な事を考えても意味はないと、緊張するだけ無駄だと……若い連中が頼もしい背中を見せてくれているのに俺たちが下を向いてどうするのだと!!! ……彼らの心に、確かな闘志が灯った。
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