1,074 / 1,361
千七十二話 単純
しおりを挟む
アラッドたちが拠点とする街に到着すると……当然のように、緊張感が漂っていた。
拠点地……サルトがゴリディア帝国の者に侵略されることはない。
もしそうなれば、本格的な戦争が始まってしまう。
そのため、基本的に街が襲われることはない……が、サルトに滞在する冒険者たちの中にも戦争に参加し……彼らにも身内が存在する。
これまでの冒険でも命を落とす危機があったのは間違いない。
それでも……戦争という戦場では更にその危機感が増す。
「初めまして、アラッド君。フローレンスさん。私はこの街の騎士団長を務めるローダンという者だ」
サルトに訪れ、酒場で夕食を食べていると、一人の騎士がアラッドたちに話しかけてきた。
「どうも…………一緒に食べますか?」
「うむ、そうだな。同席させてもらおう」
ローダンという男性騎士は、アラッドたちと共に戦うと四人の知らないところで決まっている……もしくは思い込んでいる面倒な人間ではない。
ただ、場所は違えど同じ戦場で戦う同士として、戦争が始まる前に少しでも交流しておきたいと思った。
加えて……アラッドたちにとっては今回の戦争において、本当に無関係の人物とは言えない。
アラッドたちは今回の戦争では、主力として……王手をかける戦力として期待されている。
そのため、なるべく早く敵陣本営に辿り着くことを求められているため、道中では本来の進行スピードなら戦わなければならない相手とも戦わずに済んでしまう場合がある。
そういった零れた者たちを仕留めるのがローダンたち騎士団やサルトで活動する冒険者たち……他の街で活動しており、戦力を集中させる為にサルトに集まった同業者たちの仕事である。
「体調の程は、如何かな」
「悪くはありません。後は戦場の中で高めていくだけかと」
単純な戦闘、試合ではない。
戦争が始まる前に念入りにウォーミングアップを行って体力を消耗し、いざという時に切れてしまっては意味がない。
アラッドたちにはこれまで体験したことがない体力調整が求められるが、それでも知識に関しては既に頭に入っていた。
「そうか…………君たちは、恐ろしいとは感じていないか」
ローダンがどういった内容に関して自分たちに問うているのか、アラッドたちは直ぐに察した。
一番最初に答えたのは、ガルーレだった。
「ぶっちゃけ、盗賊たちと戦うのと同じかな~~って思ってますね。ほら、別にこれまで戦ってきた盗賊たちから聞いたって訳じゃないですけど、全員が全員盗賊になりたくて盗賊になったとは思えないんですよ」
「なるほど…………確かに、理に適っている考え方だ」
「でしょう。もう、こうなっちゃったら仕方ないって感じがしますし」
「僕も、ガルーレと似た様な考えですね」
スティームは、アルバース王国の人間ではない。
ローダンも多少の事情を知っているからこそ、彼が今回のゴリディア帝国との戦争に参加した理由も多少気になっていた。
「向こうにも、戦争をしたくしてしたい者だけではないと、そう割り切るのが一番と」
「はい。ここまでくれば、悩んでも意味はありませんから」
「…………それでも、君は参加する必要はなかった。しかし、参加しようと決めた……その理由を、意思を知りたくてね」
ローダンからの問いに対し、スティームは頬をかきながら苦笑いを浮かべる。
「そんな大した理由はありませんよ。ただパーティーメンバー、友人が戦場へ向かう。だから、僕も一緒に向かうだけですよ」
「本当に、それだけの理由なのかい?」
「……ローダンさんは、逆に僕の立場で……自分だけ関係無いと、知らい顔をして参加しないという選択を取れますか」
「むぅ…………」
「他人からすれば、冷静になれと……落ち着いてもう一度考えろと言われるかもしれません。ですが、ここで友人と一緒に戦う道を選ばなければ……僕は、一生後悔することになると思っています」
人は大袈裟だと口にするかもしれない。
しかし、スティームは断言する。
決して……大袈裟ではないと。
「アラッドは、とても強いです。本当に強いです。僕が心配する必要はないと思っています」
嫌味ではない。
その感想は、スティームにとって純然たる事実。
「それでも……戦場では、何が起こるか解りません。その何かが起こった際、後で自分がその場に居ればどうにか出来たのではないか。そんな後悔を、僕はしたくありません」
アラッドは自分が心配する必要がないと程強い。
ただ……何があった時、力になることは出来る。
それは紛れもなくスティームがこれまでの冒険で培い、積み重ねてきた確かな自信である。
「今回の戦争に参加する人たちの中には、複雑な事情を持ちながら参加する人もいるでしょう。ただ……大半の方々は、そこまで複雑な事情は持っておらず……参加する理由は、単純だと思います」
自分たちの国に仕掛けてきた連中の事が気に入らない。
祖国を守るために戦う。
今こそ、騎士としての務めを果たすとき。
次期当主として、逃げる訳にはいかない。
この戦争で功績を上げて、成り上がってみせる。
思いは様々であっても、深く複雑な事情を持つ者は、スティームの予想通り多くはない。
「僕は、友人の為に……仲間の為に戦う、戦いたい。だからこそ……誰が相手でも、戦場で出会えば斬り裂きます」
見れば解る。
その瞳には、既に覚悟が宿っていた。
拠点地……サルトがゴリディア帝国の者に侵略されることはない。
もしそうなれば、本格的な戦争が始まってしまう。
そのため、基本的に街が襲われることはない……が、サルトに滞在する冒険者たちの中にも戦争に参加し……彼らにも身内が存在する。
これまでの冒険でも命を落とす危機があったのは間違いない。
それでも……戦争という戦場では更にその危機感が増す。
「初めまして、アラッド君。フローレンスさん。私はこの街の騎士団長を務めるローダンという者だ」
サルトに訪れ、酒場で夕食を食べていると、一人の騎士がアラッドたちに話しかけてきた。
「どうも…………一緒に食べますか?」
「うむ、そうだな。同席させてもらおう」
ローダンという男性騎士は、アラッドたちと共に戦うと四人の知らないところで決まっている……もしくは思い込んでいる面倒な人間ではない。
ただ、場所は違えど同じ戦場で戦う同士として、戦争が始まる前に少しでも交流しておきたいと思った。
加えて……アラッドたちにとっては今回の戦争において、本当に無関係の人物とは言えない。
アラッドたちは今回の戦争では、主力として……王手をかける戦力として期待されている。
そのため、なるべく早く敵陣本営に辿り着くことを求められているため、道中では本来の進行スピードなら戦わなければならない相手とも戦わずに済んでしまう場合がある。
そういった零れた者たちを仕留めるのがローダンたち騎士団やサルトで活動する冒険者たち……他の街で活動しており、戦力を集中させる為にサルトに集まった同業者たちの仕事である。
「体調の程は、如何かな」
「悪くはありません。後は戦場の中で高めていくだけかと」
単純な戦闘、試合ではない。
戦争が始まる前に念入りにウォーミングアップを行って体力を消耗し、いざという時に切れてしまっては意味がない。
アラッドたちにはこれまで体験したことがない体力調整が求められるが、それでも知識に関しては既に頭に入っていた。
「そうか…………君たちは、恐ろしいとは感じていないか」
ローダンがどういった内容に関して自分たちに問うているのか、アラッドたちは直ぐに察した。
一番最初に答えたのは、ガルーレだった。
「ぶっちゃけ、盗賊たちと戦うのと同じかな~~って思ってますね。ほら、別にこれまで戦ってきた盗賊たちから聞いたって訳じゃないですけど、全員が全員盗賊になりたくて盗賊になったとは思えないんですよ」
「なるほど…………確かに、理に適っている考え方だ」
「でしょう。もう、こうなっちゃったら仕方ないって感じがしますし」
「僕も、ガルーレと似た様な考えですね」
スティームは、アルバース王国の人間ではない。
ローダンも多少の事情を知っているからこそ、彼が今回のゴリディア帝国との戦争に参加した理由も多少気になっていた。
「向こうにも、戦争をしたくしてしたい者だけではないと、そう割り切るのが一番と」
「はい。ここまでくれば、悩んでも意味はありませんから」
「…………それでも、君は参加する必要はなかった。しかし、参加しようと決めた……その理由を、意思を知りたくてね」
ローダンからの問いに対し、スティームは頬をかきながら苦笑いを浮かべる。
「そんな大した理由はありませんよ。ただパーティーメンバー、友人が戦場へ向かう。だから、僕も一緒に向かうだけですよ」
「本当に、それだけの理由なのかい?」
「……ローダンさんは、逆に僕の立場で……自分だけ関係無いと、知らい顔をして参加しないという選択を取れますか」
「むぅ…………」
「他人からすれば、冷静になれと……落ち着いてもう一度考えろと言われるかもしれません。ですが、ここで友人と一緒に戦う道を選ばなければ……僕は、一生後悔することになると思っています」
人は大袈裟だと口にするかもしれない。
しかし、スティームは断言する。
決して……大袈裟ではないと。
「アラッドは、とても強いです。本当に強いです。僕が心配する必要はないと思っています」
嫌味ではない。
その感想は、スティームにとって純然たる事実。
「それでも……戦場では、何が起こるか解りません。その何かが起こった際、後で自分がその場に居ればどうにか出来たのではないか。そんな後悔を、僕はしたくありません」
アラッドは自分が心配する必要がないと程強い。
ただ……何があった時、力になることは出来る。
それは紛れもなくスティームがこれまでの冒険で培い、積み重ねてきた確かな自信である。
「今回の戦争に参加する人たちの中には、複雑な事情を持ちながら参加する人もいるでしょう。ただ……大半の方々は、そこまで複雑な事情は持っておらず……参加する理由は、単純だと思います」
自分たちの国に仕掛けてきた連中の事が気に入らない。
祖国を守るために戦う。
今こそ、騎士としての務めを果たすとき。
次期当主として、逃げる訳にはいかない。
この戦争で功績を上げて、成り上がってみせる。
思いは様々であっても、深く複雑な事情を持つ者は、スティームの予想通り多くはない。
「僕は、友人の為に……仲間の為に戦う、戦いたい。だからこそ……誰が相手でも、戦場で出会えば斬り裂きます」
見れば解る。
その瞳には、既に覚悟が宿っていた。
453
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる