スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千七十二話 単純

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アラッドたちが拠点とする街に到着すると……当然のように、緊張感が漂っていた。

拠点地……サルトがゴリディア帝国の者に侵略されることはない。
もしそうなれば、本格的な戦争が始まってしまう。

そのため、基本的に街が襲われることはない……が、サルトに滞在する冒険者たちの中にも戦争に参加し……彼らにも身内が存在する。
これまでの冒険でも命を落とす危機があったのは間違いない。
それでも……戦争という戦場では更にその危機感が増す。

「初めまして、アラッド君。フローレンスさん。私はこの街の騎士団長を務めるローダンという者だ」

サルトに訪れ、酒場で夕食を食べていると、一人の騎士がアラッドたちに話しかけてきた。

「どうも…………一緒に食べますか?」

「うむ、そうだな。同席させてもらおう」

ローダンという男性騎士は、アラッドたちと共に戦うと四人の知らないところで決まっている……もしくは思い込んでいる面倒な人間ではない。

ただ、場所は違えど同じ戦場で戦う同士として、戦争が始まる前に少しでも交流しておきたいと思った。
加えて……アラッドたちにとっては今回の戦争において、本当に無関係の人物とは言えない。

アラッドたちは今回の戦争では、主力として……王手をかける戦力として期待されている。
そのため、なるべく早く敵陣本営に辿り着くことを求められているため、道中では本来の進行スピードなら戦わなければならない相手とも戦わずに済んでしまう場合がある。

そういった零れた者たちを仕留めるのがローダンたち騎士団やサルトで活動する冒険者たち……他の街で活動しており、戦力を集中させる為にサルトに集まった同業者たちの仕事である。

「体調の程は、如何かな」

「悪くはありません。後は戦場の中で高めていくだけかと」

単純な戦闘、試合ではない。
戦争が始まる前に念入りにウォーミングアップを行って体力を消耗し、いざという時に切れてしまっては意味がない。

アラッドたちにはこれまで体験したことがない体力調整が求められるが、それでも知識に関しては既に頭に入っていた。

「そうか…………君たちは、恐ろしいとは感じていないか」

ローダンがどういった内容に関して自分たちに問うているのか、アラッドたちは直ぐに察した。

一番最初に答えたのは、ガルーレだった。

「ぶっちゃけ、盗賊たちと戦うのと同じかな~~って思ってますね。ほら、別にこれまで戦ってきた盗賊たちから聞いたって訳じゃないですけど、全員が全員盗賊になりたくて盗賊になったとは思えないんですよ」

「なるほど…………確かに、理に適っている考え方だ」

「でしょう。もう、こうなっちゃったら仕方ないって感じがしますし」

「僕も、ガルーレと似た様な考えですね」

スティームは、アルバース王国の人間ではない。
ローダンも多少の事情を知っているからこそ、彼が今回のゴリディア帝国との戦争に参加した理由も多少気になっていた。

「向こうにも、戦争をしたくしてしたい者だけではないと、そう割り切るのが一番と」

「はい。ここまでくれば、悩んでも意味はありませんから」

「…………それでも、君は参加する必要はなかった。しかし、参加しようと決めた……その理由を、意思を知りたくてね」

ローダンからの問いに対し、スティームは頬をかきながら苦笑いを浮かべる。

「そんな大した理由はありませんよ。ただパーティーメンバー、友人が戦場へ向かう。だから、僕も一緒に向かうだけですよ」

「本当に、それだけの理由なのかい?」

「……ローダンさんは、逆に僕の立場で……自分だけ関係無いと、知らい顔をして参加しないという選択を取れますか」

「むぅ…………」

「他人からすれば、冷静になれと……落ち着いてもう一度考えろと言われるかもしれません。ですが、ここで友人と一緒に戦う道を選ばなければ……僕は、一生後悔することになると思っています」

人は大袈裟だと口にするかもしれない。

しかし、スティームは断言する。
決して……大袈裟ではないと。

「アラッドは、とても強いです。本当に強いです。僕が心配する必要はないと思っています」

嫌味ではない。
その感想は、スティームにとって純然たる事実。

「それでも……戦場では、何が起こるか解りません。その何かが起こった際、後で自分がその場に居ればどうにか出来たのではないか。そんな後悔を、僕はしたくありません」

アラッドは自分が心配する必要がないと程強い。
ただ……何があった時、力になることは出来る。

それは紛れもなくスティームがこれまでの冒険で培い、積み重ねてきた確かな自信である。

「今回の戦争に参加する人たちの中には、複雑な事情を持ちながら参加する人もいるでしょう。ただ……大半の方々は、そこまで複雑な事情は持っておらず……参加する理由は、単純だと思います」

自分たちの国に仕掛けてきた連中の事が気に入らない。
祖国を守るために戦う。
今こそ、騎士としての務めを果たすとき。
次期当主として、逃げる訳にはいかない。
この戦争で功績を上げて、成り上がってみせる。

思いは様々であっても、深く複雑な事情を持つ者は、スティームの予想通り多くはない。

「僕は、友人の為に……仲間の為に戦う、戦いたい。だからこそ……誰が相手でも、戦場で出会えば斬り裂きます」

見れば解る。

その瞳には、既に覚悟が宿っていた。
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