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千百十五話 隙がない
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「おかえりなさい、アラッド」
「フローレンス……まだ起きてたのか」
アラッドたちのパーティー専用として用意された部屋に戻ると、まだ起きていたフローレンスが出迎えた。
「えぇ。なんだか、少し寝れなくて」
「…………そうか」
まだ戦争は続くんだから早く寝ろ、とは言えない。
アラッドも、それはよく解っていた。
ただ、寝れないと感じる要因が、もしかしたらと頭の中に浮かぶ。
「フローレンス、もしかして昼間に戦ったあの女性陣たちのことについて考えてたのか?」
「っ……はい、そうです。どうにかして、彼女たちを救える道はないかと思って」
アラッドの糸と同じく、ケプトのヒモは五歳の誕生日を迎えた際に得たスキルである可能性が高い。
ケプトが……望んで得た訳ではない場合もあり得る。
そして、コントロールしようにも、コントロール出来ず……結果として、もうその流れに身を委ねてしまってもいいやと思った。
そんな過去があったのかもしれない。
それは、フローレンスも完全否定しようとは思わない。
ただ、女性であるフローレンスからすれば、どうしても……ヴェラたちが被害者だと感じてしまう。
そして、戦争で捕虜となってしまった者がどういった未来を語るか解っているからこそ、どうにかしたいという思いを持ってしまう。
「それについて、さっき彼女たちと話してきた」
「えっ?」
「全員、前を向こうという意思はある。だから、戦争が終わった後は俺がどうにかする」
「そ、それは……しかし、どうにかすると言っても」
フローレンスからすれば嬉しい……非常に嬉しい行動ではある。
だが、そう簡単にすんなり事が運ばないことを知っている。
「金ならある。溜まっている硬貨を使えば、なんとかなる筈だ」
「っっっ……」
驚くな、という方が無理である。
アラッドが多数の身寄りがない子供たちを一か所に集め、彼らが大人になるまで面倒を見ているという事は、出会ってから直ぐに知った。
フローレンスもアラッドから言葉だけで彼らの腹が膨れる訳ではないと伝えられ、真似事を初めてみた。
結果、どれだけお金が、定期的に物や食材を供給する難しさを知った。
(明確に聞いたことはないですが、彼の懐にはいったいどれだけの……)
全く関りのない人間よりはアラッドの事を知っているからこそ、解ることがある。
今回の一件で大金をを消費しようとも、絶対に孤児院のために使用する金をカットすることはない。
それが解るからこそ、アラッドの懐に眠る財力に驚きを隠せない。
「っ、しかし」
「もうあいつらにそうすると伝えた」
「…………」
「それに、使わずに溜め込んでおいたら、経済が回らなくなるだろ。まぁ、今回使う金はお偉いさんたちの懐に入るだろうが」
彼の言う通り、金というのは使わなければ経済が回らない。
孤児院を運営する上で彼はそれなりに経済を回してはいるが……アラッドが懐に溜め込んでいる金額を考慮すると、まだまだ回し足りない。
「……ありがとう、ございます」
「どうしてお前が頭を下げるんだ」
「今回の件は、アラッドが自らの判断で下したことなのは解っています。それでも……その判断のお陰で、私の心に残っていた不安や心残りが消えました」
財力での解決。
それに関しては、フローレンスも考えていた。
彼女もアラッドと同じ様なことを行っている中で、しっかりと自分の財産を確保している。
自身の武器を新調する際の費用に、討伐するモンスターに必要な使い捨て素材の購入費。
加えて……仲間思いである彼女は、同僚の騎士や魔術師たちが武器を新調する際に金額が足りない分を出す……そんな用途の貯金まで行っていた。
新米騎士としてはかなり懐が暖かく、なんなら……これまで実家の期待通りの応え続け、寧ろそれ以上の活躍を続けているフローレンスに対し……実家も、カルロスト公爵も正当な評価を下している。
そのため、彼女が大金が欲しいと……貸してくれという我儘を伝えても、喜んで与える。
ただ、それでも、五人全員分には足りないことが予想される。
それだけ五人のうち二人は交渉材料になり、他三人も戦力を考えれば良い売値が付く。
「ですが、そのうちのいくらかは、私にも出させてください」」
「…………いらん。全部俺が出すっての」
「そ、そういう訳にはいきません!」
「俺が良いって言ってるんだから良いんだよ。いや、本当にマジで溜め込み過ぎるのも良くないと思ってんだよ」
アラッドは、決して贅沢をしない人間ではない。
酒場でがっつり飯を食べるのも好きだが、高級店の料理を食べるのも好き。
宿は睡眠の質を確保する為に、毎回それなりにレベルの高い宿屋に泊っている。
そのため、アラッドは冒険者としてそれなりに金を使っていない訳ではない。
羅刹という高品質で高価な武器も購入している(させられた?)。
ただ……それらの金額は、全てアラッドが冒険者として活動を始めてから得た金額で全て事足りる。
「それに、お前が出そうと思ってる金は、どうせ何かの為に溜めてる金だろ」
「うっ!」
「なら、それはその為に使え。解ったな」
それだけ伝えると、アラッドはパパっと寝間着に着替え、ベッドに入った。
(……全く。お礼をさせてもらう隙が無いというのも、困りものですね)
苦笑いを浮かべながらフローレンスもパパっと寝間着に着替え、明日の為に眠りにつくのだった。
※次の話からは、主人公であるアラッドたちが出ません。
どれぐらい出ないかと言いますと……正直、解りません。
そのため、多少気になる程度であれば、いつも以上に話数を溜めて読むことをお勧めします。
「フローレンス……まだ起きてたのか」
アラッドたちのパーティー専用として用意された部屋に戻ると、まだ起きていたフローレンスが出迎えた。
「えぇ。なんだか、少し寝れなくて」
「…………そうか」
まだ戦争は続くんだから早く寝ろ、とは言えない。
アラッドも、それはよく解っていた。
ただ、寝れないと感じる要因が、もしかしたらと頭の中に浮かぶ。
「フローレンス、もしかして昼間に戦ったあの女性陣たちのことについて考えてたのか?」
「っ……はい、そうです。どうにかして、彼女たちを救える道はないかと思って」
アラッドの糸と同じく、ケプトのヒモは五歳の誕生日を迎えた際に得たスキルである可能性が高い。
ケプトが……望んで得た訳ではない場合もあり得る。
そして、コントロールしようにも、コントロール出来ず……結果として、もうその流れに身を委ねてしまってもいいやと思った。
そんな過去があったのかもしれない。
それは、フローレンスも完全否定しようとは思わない。
ただ、女性であるフローレンスからすれば、どうしても……ヴェラたちが被害者だと感じてしまう。
そして、戦争で捕虜となってしまった者がどういった未来を語るか解っているからこそ、どうにかしたいという思いを持ってしまう。
「それについて、さっき彼女たちと話してきた」
「えっ?」
「全員、前を向こうという意思はある。だから、戦争が終わった後は俺がどうにかする」
「そ、それは……しかし、どうにかすると言っても」
フローレンスからすれば嬉しい……非常に嬉しい行動ではある。
だが、そう簡単にすんなり事が運ばないことを知っている。
「金ならある。溜まっている硬貨を使えば、なんとかなる筈だ」
「っっっ……」
驚くな、という方が無理である。
アラッドが多数の身寄りがない子供たちを一か所に集め、彼らが大人になるまで面倒を見ているという事は、出会ってから直ぐに知った。
フローレンスもアラッドから言葉だけで彼らの腹が膨れる訳ではないと伝えられ、真似事を初めてみた。
結果、どれだけお金が、定期的に物や食材を供給する難しさを知った。
(明確に聞いたことはないですが、彼の懐にはいったいどれだけの……)
全く関りのない人間よりはアラッドの事を知っているからこそ、解ることがある。
今回の一件で大金をを消費しようとも、絶対に孤児院のために使用する金をカットすることはない。
それが解るからこそ、アラッドの懐に眠る財力に驚きを隠せない。
「っ、しかし」
「もうあいつらにそうすると伝えた」
「…………」
「それに、使わずに溜め込んでおいたら、経済が回らなくなるだろ。まぁ、今回使う金はお偉いさんたちの懐に入るだろうが」
彼の言う通り、金というのは使わなければ経済が回らない。
孤児院を運営する上で彼はそれなりに経済を回してはいるが……アラッドが懐に溜め込んでいる金額を考慮すると、まだまだ回し足りない。
「……ありがとう、ございます」
「どうしてお前が頭を下げるんだ」
「今回の件は、アラッドが自らの判断で下したことなのは解っています。それでも……その判断のお陰で、私の心に残っていた不安や心残りが消えました」
財力での解決。
それに関しては、フローレンスも考えていた。
彼女もアラッドと同じ様なことを行っている中で、しっかりと自分の財産を確保している。
自身の武器を新調する際の費用に、討伐するモンスターに必要な使い捨て素材の購入費。
加えて……仲間思いである彼女は、同僚の騎士や魔術師たちが武器を新調する際に金額が足りない分を出す……そんな用途の貯金まで行っていた。
新米騎士としてはかなり懐が暖かく、なんなら……これまで実家の期待通りの応え続け、寧ろそれ以上の活躍を続けているフローレンスに対し……実家も、カルロスト公爵も正当な評価を下している。
そのため、彼女が大金が欲しいと……貸してくれという我儘を伝えても、喜んで与える。
ただ、それでも、五人全員分には足りないことが予想される。
それだけ五人のうち二人は交渉材料になり、他三人も戦力を考えれば良い売値が付く。
「ですが、そのうちのいくらかは、私にも出させてください」」
「…………いらん。全部俺が出すっての」
「そ、そういう訳にはいきません!」
「俺が良いって言ってるんだから良いんだよ。いや、本当にマジで溜め込み過ぎるのも良くないと思ってんだよ」
アラッドは、決して贅沢をしない人間ではない。
酒場でがっつり飯を食べるのも好きだが、高級店の料理を食べるのも好き。
宿は睡眠の質を確保する為に、毎回それなりにレベルの高い宿屋に泊っている。
そのため、アラッドは冒険者としてそれなりに金を使っていない訳ではない。
羅刹という高品質で高価な武器も購入している(させられた?)。
ただ……それらの金額は、全てアラッドが冒険者として活動を始めてから得た金額で全て事足りる。
「それに、お前が出そうと思ってる金は、どうせ何かの為に溜めてる金だろ」
「うっ!」
「なら、それはその為に使え。解ったな」
それだけ伝えると、アラッドはパパっと寝間着に着替え、ベッドに入った。
(……全く。お礼をさせてもらう隙が無いというのも、困りものですね)
苦笑いを浮かべながらフローレンスもパパっと寝間着に着替え、明日の為に眠りにつくのだった。
※次の話からは、主人公であるアラッドたちが出ません。
どれぐらい出ないかと言いますと……正直、解りません。
そのため、多少気になる程度であれば、いつも以上に話数を溜めて読むことをお勧めします。
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