8 / 481
第8話 台風の目どころじゃない
しおりを挟む
「三十七番の生徒、リングに上がれ」
「おう」
不敵な笑みを浮かべながらリングに上がるイシュド。
(このおっちゃんか……ふっふっふ、当たりだな。無茶苦茶楽しめそうだ)
リングに上がる際、名前を呼ばれることはないため、受験生たちにざわめきが広がる事はない。
ただ……受験生の相手をする教師陣たちは、イシュドのある程度のデータをしっているため、顔に緊張が走っていた。
(おいおいおい……本当に十五歳の子供か? こりゃ実技試験なんてやる必要ないだろ)
直ぐにでも上に進言したい。
実際に対面したことで、レグラ家から送られてきたデータが嘘や誇張ではないと解り、おっちゃん教師は正直逃げ出したい気分だった。
「それでは……始め!!!!!」
他の試験監督が開始の合図を行った瞬間、イシュドは貸出品である二振りの手斧を上空にぶん投げ……素手の状態で試験監督に殴り掛かった。
「ッ!!??」
突然の奇行に驚く隙を与えないブロードジャブをギリギリ回避し、反射的に五割以上の力でロングソードを振るう。
(中途半端な斬撃にしては、良い切れ味だな!!!)
基本的におっちゃん試験監督が五割の力で武器を振れば、殆どの受験生たちは為す術なくやられてしまう。
だが、イシュドは嬉々とした表情を変えることなく素手による攻防を繰り返し、二振りの手斧が落ちてくるタイミングで大きく後方に下がった。
「あんた、本当に強いな」
「はっはっは、それは光栄……と言えば良い感じかな?」
「そんなに偉そうな立場から言ったつもりはない。ただ、純粋な感想だ。だからこそ……あんたとは純粋に戦いたい」
片方の手斧を向け、ガチバトルを申し込んだ。
(……レグラ家の人間は皆狂戦士、バーサーカーだって聞いてたけど、どうやら本当にそうみたいだね……でも、ここで彼の提案を断ったら……大人として、これから彼の教師になる立場の者として、如何なものかってところだね)
おっちゃん試験監督にとって、イシュドとのガチバトルなど、嫌いな嫌いな残業とさして変わらない。
だが……それでも戦士として、多少ではあるものの……楽しみという思いがあった。
「一分、一分だけだ。おそらく、それがリミットだ。君も解るだろ」
「あぁ……それじゃあ、いくぞ」
駆け出したタイミングはほぼ同時。
イシュドが繰り出した手斧の重撃は受け止められ、緩急を付けて流された。
(やっぱり、最高だなこの人!!!!)
貸出品の武器を使っている為、使用出来る攻撃手段、スキルによる技も限られる。
そんな中で……二人は殆どそれぞれの職業を活かす最善の動きで攻め続けた。
二人に防御という手段はなく、回避しながらのカウンター。
それを何度も何度も繰り返す。
「み、見えねぇ……」
「し、試験監督の教師は解かる、けど……あいつは、何なんだよ」
自分たちが入ろうと臨む学園の教師が、自分たちの眼では追えない動きをする。
非常に混乱することがない事実であり、そうでないと困るという思いすらある。
だが……片方は間違いなく自分たちと同年代の同級生なのだ。
そんな同世代の令息が……学園の教師である試験監督と同じく、眼で追いきれない速度で動き続けている。
「ここまでだな」
「……しょうがないっすね」
きっかり一分、おっちゃん試験監督の斬撃とイシュドの重撃がぶつかり合い、貸出品の装備が完全に砕け散った。
「んじゃ、楽しみに結果を待っててくれ」
「あぁ、王都をゆっくり観光しながら待ってる」
最初から最後までふてぶてしい態度は変わらない。
そんな態度に不満を持つ者が受験生、試験監督の教師たちにもいたが……圧倒的な戦いぶりを見せ付けられた。
強ければ何をしても許される?
それは間違いだが……強さは己の意志を押し通すもの。
今のこの場に、イシュドの言動を指摘できる者はいなかった。
(お~~いててて。ったく、流石狂戦士らしいパワーってことか。本気で戦えば学生に負けることなんてあり得ねぇとか思ってたけど、ありゃ別格だ。完全に新入生の中で台風の目ってやつになる…………って、確かあいつ三次転職が済んでるんだったか? ってことは、台風の目どころか……ぶっちぎりの最強、まさに王……って言葉を使うのは不味いな。そうなると、帝王か?)
暴力の戦士という職業、気質を考えれば帝王という異名はある意味合っていた。
(今年の世代は特に豊作って聞いてるが、こりゃ……天才連中が、否が応でも自分たちは真の天才じゃないのだと思い知らされそうだな)
おっちゃん試験監督は少々痛めた手首を治さず、先にイシュドの評価を書き始めた。
「お疲れ様です、イシュド様」
「おう。まっ、疲れてねぇけどな。寧ろ超楽しかったぞ」
「試験監督の中に、それほどの腕を持つ教師がいたのですね」
「俺が入った試験会場では、一番強かったと思うぞ」
護衛の騎士たちと合流後、イシュドはおっちゃん試験監督に伝えた通り、試験の結果が出るまで王都の観光に勤しんだ。
「イシュド様、本当に一人でよろしいのですか?」
数日後、入試試験の結果発表、そして順位が発表される。
順位に関しては中等部から上がってきた学生も含めての順位である。
そのため……護衛の騎士たちは少々嫌な予感がしていた。
「あぁ、一人で良い…………そんな心配なら、門の前辺りで待っといてくれ。何かあったら呼ぶ」
「「「「畏まりました」」」」
騎士たちの胸の内を読み取り、イシュドは渋々門の前で待つことを了承。
そして馬車でフラベルド学園の前に移動し、一人で入試結果が発表される場所へ移動。
既に多くの受験生たちが集まっており、中には両親と一緒に結果を見に来ている受験生もいる。
(……前世の高校入試を思い出すな)
そこまで勉強が好きなタイプではなかったため、その時は結果を見るまで心臓のバクバクが止まらなかったが、現在は全く緊張していない。
たださっさと結果を確認したい。
(筆記試験も手応えあったし、とりあえず受かっているだろ)
実際問題……受かっているどころの話ではなかった。
「……やっぱ努力って大事だな」
イシュドは目の前の結果、そして順位に中等部から高等部に上がる内部進学生のものも入っていることは知っている。
(んじゃ、とりあえず受かった証明書? 的な物を貰いに行かないとな)
イシュド・レグラ……無事に入試に合格。
そして今年高等部一年生になる者たちのなかで、筆記と実力試験の合計点は……トップ。
堂々の一位でフラベルド学園に入学することが決まった。
「おう」
不敵な笑みを浮かべながらリングに上がるイシュド。
(このおっちゃんか……ふっふっふ、当たりだな。無茶苦茶楽しめそうだ)
リングに上がる際、名前を呼ばれることはないため、受験生たちにざわめきが広がる事はない。
ただ……受験生の相手をする教師陣たちは、イシュドのある程度のデータをしっているため、顔に緊張が走っていた。
(おいおいおい……本当に十五歳の子供か? こりゃ実技試験なんてやる必要ないだろ)
直ぐにでも上に進言したい。
実際に対面したことで、レグラ家から送られてきたデータが嘘や誇張ではないと解り、おっちゃん教師は正直逃げ出したい気分だった。
「それでは……始め!!!!!」
他の試験監督が開始の合図を行った瞬間、イシュドは貸出品である二振りの手斧を上空にぶん投げ……素手の状態で試験監督に殴り掛かった。
「ッ!!??」
突然の奇行に驚く隙を与えないブロードジャブをギリギリ回避し、反射的に五割以上の力でロングソードを振るう。
(中途半端な斬撃にしては、良い切れ味だな!!!)
基本的におっちゃん試験監督が五割の力で武器を振れば、殆どの受験生たちは為す術なくやられてしまう。
だが、イシュドは嬉々とした表情を変えることなく素手による攻防を繰り返し、二振りの手斧が落ちてくるタイミングで大きく後方に下がった。
「あんた、本当に強いな」
「はっはっは、それは光栄……と言えば良い感じかな?」
「そんなに偉そうな立場から言ったつもりはない。ただ、純粋な感想だ。だからこそ……あんたとは純粋に戦いたい」
片方の手斧を向け、ガチバトルを申し込んだ。
(……レグラ家の人間は皆狂戦士、バーサーカーだって聞いてたけど、どうやら本当にそうみたいだね……でも、ここで彼の提案を断ったら……大人として、これから彼の教師になる立場の者として、如何なものかってところだね)
おっちゃん試験監督にとって、イシュドとのガチバトルなど、嫌いな嫌いな残業とさして変わらない。
だが……それでも戦士として、多少ではあるものの……楽しみという思いがあった。
「一分、一分だけだ。おそらく、それがリミットだ。君も解るだろ」
「あぁ……それじゃあ、いくぞ」
駆け出したタイミングはほぼ同時。
イシュドが繰り出した手斧の重撃は受け止められ、緩急を付けて流された。
(やっぱり、最高だなこの人!!!!)
貸出品の武器を使っている為、使用出来る攻撃手段、スキルによる技も限られる。
そんな中で……二人は殆どそれぞれの職業を活かす最善の動きで攻め続けた。
二人に防御という手段はなく、回避しながらのカウンター。
それを何度も何度も繰り返す。
「み、見えねぇ……」
「し、試験監督の教師は解かる、けど……あいつは、何なんだよ」
自分たちが入ろうと臨む学園の教師が、自分たちの眼では追えない動きをする。
非常に混乱することがない事実であり、そうでないと困るという思いすらある。
だが……片方は間違いなく自分たちと同年代の同級生なのだ。
そんな同世代の令息が……学園の教師である試験監督と同じく、眼で追いきれない速度で動き続けている。
「ここまでだな」
「……しょうがないっすね」
きっかり一分、おっちゃん試験監督の斬撃とイシュドの重撃がぶつかり合い、貸出品の装備が完全に砕け散った。
「んじゃ、楽しみに結果を待っててくれ」
「あぁ、王都をゆっくり観光しながら待ってる」
最初から最後までふてぶてしい態度は変わらない。
そんな態度に不満を持つ者が受験生、試験監督の教師たちにもいたが……圧倒的な戦いぶりを見せ付けられた。
強ければ何をしても許される?
それは間違いだが……強さは己の意志を押し通すもの。
今のこの場に、イシュドの言動を指摘できる者はいなかった。
(お~~いててて。ったく、流石狂戦士らしいパワーってことか。本気で戦えば学生に負けることなんてあり得ねぇとか思ってたけど、ありゃ別格だ。完全に新入生の中で台風の目ってやつになる…………って、確かあいつ三次転職が済んでるんだったか? ってことは、台風の目どころか……ぶっちぎりの最強、まさに王……って言葉を使うのは不味いな。そうなると、帝王か?)
暴力の戦士という職業、気質を考えれば帝王という異名はある意味合っていた。
(今年の世代は特に豊作って聞いてるが、こりゃ……天才連中が、否が応でも自分たちは真の天才じゃないのだと思い知らされそうだな)
おっちゃん試験監督は少々痛めた手首を治さず、先にイシュドの評価を書き始めた。
「お疲れ様です、イシュド様」
「おう。まっ、疲れてねぇけどな。寧ろ超楽しかったぞ」
「試験監督の中に、それほどの腕を持つ教師がいたのですね」
「俺が入った試験会場では、一番強かったと思うぞ」
護衛の騎士たちと合流後、イシュドはおっちゃん試験監督に伝えた通り、試験の結果が出るまで王都の観光に勤しんだ。
「イシュド様、本当に一人でよろしいのですか?」
数日後、入試試験の結果発表、そして順位が発表される。
順位に関しては中等部から上がってきた学生も含めての順位である。
そのため……護衛の騎士たちは少々嫌な予感がしていた。
「あぁ、一人で良い…………そんな心配なら、門の前辺りで待っといてくれ。何かあったら呼ぶ」
「「「「畏まりました」」」」
騎士たちの胸の内を読み取り、イシュドは渋々門の前で待つことを了承。
そして馬車でフラベルド学園の前に移動し、一人で入試結果が発表される場所へ移動。
既に多くの受験生たちが集まっており、中には両親と一緒に結果を見に来ている受験生もいる。
(……前世の高校入試を思い出すな)
そこまで勉強が好きなタイプではなかったため、その時は結果を見るまで心臓のバクバクが止まらなかったが、現在は全く緊張していない。
たださっさと結果を確認したい。
(筆記試験も手応えあったし、とりあえず受かっているだろ)
実際問題……受かっているどころの話ではなかった。
「……やっぱ努力って大事だな」
イシュドは目の前の結果、そして順位に中等部から高等部に上がる内部進学生のものも入っていることは知っている。
(んじゃ、とりあえず受かった証明書? 的な物を貰いに行かないとな)
イシュド・レグラ……無事に入試に合格。
そして今年高等部一年生になる者たちのなかで、筆記と実力試験の合計点は……トップ。
堂々の一位でフラベルド学園に入学することが決まった。
1,134
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい
えながゆうき
ファンタジー
停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。
どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。
だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。
もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。
後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者
マーラッシュ
ファンタジー
国庫の一割を独断で使い、帝国から追放!?
日本から異世界転生したユクトは皇族の暮らしに飽き飽きしていた。
公務に帝王学の勉強で自由はほぼなく、皇太子である自分の顔色を伺う大人達、皇城内では競争相手を蹴落とそうと常に謀略が蔓延っている。
こんな生活はもう嫌だ! せっかく異世界ファンタジーに転生したのだから、もっと自由に行きたい!
それに俺は特別な【固有スキル】を持ってるからな。
どうにかこの生活から抜け出そうと考えた時、あることが思いついた。
「狙って追放されるか⋯⋯」
言葉にしたらもう衝動を止めることは出来なかった。
ユクトはすぐに行動に移し、皇太子の地位を剥奪されるのであった。
これは異世界転生した元皇子が、最弱と言われたギルドマスターになったけど実は最強で、弱き者に代わって悪に裁きを下す物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる