転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
9 / 481

第9話 さっさと消えるに限る

しおりを挟む
「どういうことだ、あれは」

「一位は……イシュド・レグラ?」

成績と合格者が張り出されている貼り紙を見て、多くの者たちが疑問を抱き、首を傾げる。

張り出されている張り紙は外部受験をした者の合格発表と順位だけではなく、内部進学生を含めた順位が記されている。

そのトップに……内部進学生のエリートたちの内の一人ではなく、殆ど耳にしない家名を持つ者の名前が記されていた。

「レグラ家とは……あのレグラ家なのか!!!???」

学生たちは疑問を頭に浮かべる者が多いが、子供たちと一緒に結果を見に来た大人たちの中にはレグラ家という存在をしっかりと覚えている者が多い。

ただ……その名前が目の前の張り紙に記され、尚且つトップの成績を叩きだしたことが信じられない。
当然、自分たちがトップになると思っていたザ・エリートたちはいったいあの名前の男は誰なのだと……周囲を見渡す。

外部受験者であれば、この場に居ないのはあり得ない。

そんな内部進学生たちの考えは正しかったが……イシュドは自身が合格していることと、順位が解かると直ぐにその場から去り、待機している騎士たちの元へ戻った。

「どうでしたか、イシュド様」

「問題無かったよ」

指で一という数字をつくり、面倒を起こさないように順位を伝えた。

「流石です」

「いやぁ~~、やっぱり最強っすね」

イシュドが落ちるわけがない、内部進学生も含めてトップであることは間違いない!!

内心ではそう思っていても、いざ結果でその予想が現実になったと解かると、喜びが顔に溢れてしまう。

「てか、よく他の合格者や内部進学生たちに絡まれなかったっすね」

「学生のダチはいないからな。それに、合格してるのと順位を確認してから速攻で戻ってきたからな」

仮に……まだイシュドが発表場に残っていれば、勘の良い生徒にバレていたかもしれない。

「んじゃ、王都の観光を楽しもっと」

その日も日が暮れるまで観光を楽しみ、翌日には実家へ帰還。
既に一位合格の情報が届いていたため、到着と同時に宴会が行われた。

「いやぁ~~、良くやった。イシュド」

「ありがとう、父さん。といっても、しっかり準備してから受けたからそんなに難しいというか……困りはしなかったよ」

「はっはっは!!! マジでイシュドは何でも出来るよな! 俺はあんな興味がないことを学ぶ気なんてこれっぽちも起きねぇよ」

「イシュド、良くやった。お前の努力の成果が実り、レグラ家も脳筋だけではないということが少しは広まったであろう」

「父さんやダンテの言う通り、本当に良くやったよイシュド。ほら、もっと食べて食べて」

「全く、少しは落ち着きなさい……でも、本当に良くやったわ、イシュド」

家族総出でイシュドの功績を褒め称える。

バカ寄りのミハイルや脳筋思考が強いアレックスなどは知らないが、外部受験性が内部進学生を蹴散らし、一位で入学するという記録は……今まで一度もない。

イシュドの戦闘力や苦手なことに関しても前向きな性格を考えれば難しい事ではないが、それでも世間一般ではあり得ない功績なのは間違いない。

「だが、やはり入学してからの三年間、退屈なのではないか?」

「そんな事はないと思いますよ、アレックス兄さん。俺の戦闘試験を担当してくれた教師とか、結構強かったし……あんまり見てないけど、学生の方にもチラホラ面白そうな奴はいましたよ」

すっかりこの世界に……レグラ家に染まったイシュドは気付いていないが、チラホラと面白そうな奴はいました……という言葉は、完全にその発言に含まれる学生を下に見ているのと同じ。

本音で言えば……遊び相手としか思っていない。

「ふ~~~ん……けどよ、三年生でもイシュドより強い奴はいねぇだろ」

「さっき言ったじゃないですか、ミハイル兄さん。その学生たちに色々と教える教師は、俺が楽しいって思えるくらい強いんですよ」

「……だったら一応通う価値はあるのかもな」

そう口にしながらも、ミハイルは一ミリも学園に通ってみたいという気持ちは生まれなかった。


「っし、よろしくお願いしゃす!!!!!」

「うむ……来い」

宴会後の翌日……イシュドと先々代当主であるロベルトの二人は周囲にモンスターがいないなど気にせず、バチバチ過ぎる模擬戦を始めた。

「シャアアアアァアアアアッ!!!!」

「ッ!! どうした!!! そんなもんか!!!!」

「まだまだぁあああああッ!!!!!」

学園に入学すれば、気軽にロベルトと模擬戦を行えなくなってしまう。

という事で、今日も元気に殺す気で攻撃を仕掛ける。

「ク、ソ!!! はぁ、はぁ……曾爺ちゃん、マジ強過ぎるぜ」

「当たり前だ。お前らの曾爺ちゃんだぞ。まっ、初めてイシュドと会ったころと比べれば、強くなったんじゃねぇか」

「いったい何年前の話をしてるんだよ。ったく……俺が本気になれば、爺ちゃんには勝てるかな」

本気の眼を向けて問う。

イシュドの言う爺ちゃんとは、レグラ家の先代当主であるアルフレッド。
先々代当主であるロベルトほど飛び抜けすぎて色々と限界突破している存在ではないが、それでもレグラ家の当主となった男……まず簡単に強いという言葉の枠に当てはまる男ではない。

「…………多分、無理だろうな」

「無理か~~~~~~」

「とは言っても、お前が全力の全力を出せば、アルフレッドに重傷を負わせることは出来る筈だ」

「……それって、成長してるって言えるの?」

「イシュド、この世に何人……モンスターも含めて、いったいどれだけの者がアルフレッドに重傷を負わせられると思っとるんだ」

「あぁ~~~~……なるほど。それは確かに成長したって言えるね」

しかし、まだまだ互角の勝負は出来ないと言われては、挑みたくなってしまうもの。
翌日……同じく周囲にモンスターがいてもお構いなしにアルフレッドとバチバチ過ぎる模擬戦を行った。

「じ、爺ちゃん……最近は、戦い以外のことに、ハマってるんじゃ、なかったの?」

「はっはっは!!! 確かにそれはそうだが、あれだ……まだまだ若いもんには負けんってことだ!!!!」

「クッソ~~~、もうちょい善戦できると思ったんだけどな」

「何を言っとるんだ。その年齢、レベルを考えれば十分善戦出来とるっての」

終始アルフレッドがある程度セーブした状態での戦闘ではあったものの、鋼の肉体に幾つか切傷ができていた。

(全く、本当に若いもんは成長著しいもんだ。他の家の子供なんて興味はないが、この子と同じ時代を生きなければならないと思うと……ほんのちょっとだけ可哀そうと思えてしまうな)

その後も日が暮れるまで何度も何度も地面に転がされたが、最後の模擬戦が終わる頃には十を越える切傷を与えることに成功した。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】

一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。 その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。 それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ
ファンタジー
国庫の一割を独断で使い、帝国から追放!?  日本から異世界転生したユクトは皇族の暮らしに飽き飽きしていた。  公務に帝王学の勉強で自由はほぼなく、皇太子である自分の顔色を伺う大人達、皇城内では競争相手を蹴落とそうと常に謀略が蔓延っている。  こんな生活はもう嫌だ! せっかく異世界ファンタジーに転生したのだから、もっと自由に行きたい!  それに俺は特別な【固有スキル】を持ってるからな。  どうにかこの生活から抜け出そうと考えた時、あることが思いついた。 「狙って追放されるか⋯⋯」  言葉にしたらもう衝動を止めることは出来なかった。  ユクトはすぐに行動に移し、皇太子の地位を剥奪されるのであった。  これは異世界転生した元皇子が、最弱と言われたギルドマスターになったけど実は最強で、弱き者に代わって悪に裁きを下す物語です。

伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき
ファンタジー
 停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。  どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。  だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。  もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。  後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...