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第128話 折れるなよ
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「こいつを付けろ」
「え」
「ほら、良いからさっさと付けろ」
ギリギリ残っていた右腕部分に、腕輪タイプのマジックアイテムを装着。
腕輪は自動で新米騎士の腕に合う大きさに変化し、ジャストフィット。
「お前はこれからもりもり飯を食って、そんで訓練を続けろ。そうしてりゃあ、そのうち左腕が元に戻る」
「え、えっと……それは、本当、ですか」
「マジのマジだ」
イシュドが新米騎士に装着させた腕輪は、使い捨てではあるが、超高額のマジックアイテム。
どういった形で四肢が欠損しようとも、再び失われる前の状態で戻すことができる。
しかし、欠点がないわけではなく、元に戻る段階で体の栄養や他の部分の組織を利用して再生するため、一定以上の栄養を取っていなければ……再生する力によって屈強な体が衰弱した病人の様にガリガリになってしまう。
新米騎士の様に経験が浅くとも強靭な肉体を持っていない者であれば、そのまま息絶えてしまう可能性すらある。
「本当に……、俺は、まだ……戦えるん、ですか」
片腕を失っても、利き手である右腕があれば、これからも戦える。
強がりではあるが、その言葉に嘘はなかった。
だが……それでも喪失感がなかった訳ではない。
「そうだ。だから、折れるんじゃねぇぞ」
まだ、これからも本気で戦える。上を目指せる。
だから……折れるんじゃない。
イシュドの言葉を真正面から伝えられた新米騎士の心には……本当の意味で、前を向き始めた。
「イシュド様……本当に、ありがとうございます」
「おぅよ。とりあえずまだ飯を食ってねぇなら、がっつり食ってさっさと寝ろ」
それだけ言い残すと、イシュドは宿舎から出て自室に戻った。
「イシュド様!!」
「おぅ、どうした?」
その前に、普通ではないオーガに襲われた部隊の隊長である男が呼び留めた。
「本当に感謝いたします!!!!!」
男は腰を九十度に折り、深々と頭を下げ、感謝の言葉を伝えた。
今回、部下の騎士が片腕を失ったのは、完全に自分の責任だと認識しており、責任を感じていた。
「気にしないでくれ。良いマジックアイテムを持っていても、使わなけりゃ意味がない」
「それでも……それでも!! 本当に、ありがとうございます!!!!」
「……分かった。その感謝の気持ちは素直に受け取っとく。だから、あんたも折れるなよ」
「っ、また一から、鍛え直します!!!!!!」
男はイシュドの姿が見えなくなるまで、最敬礼の形を保ち続けた。
「あっ、お帰りイシュド」
「何話してたんだ?」
「どうやら、ちょっと面白いモンスターがいるらしくてな」
ちょっと面白いモンスター。
そう聞いて、いったいどんなモンスターなのかとガルフたちは頭の中でイメージするが……イシュドが思うちょっと面白いモンスターとはどれ程の強さ、存在のか上手く想像出来なかった。
(もし出会えたら……きっちりぶっ殺さねぇとな)
翌日の実戦、イシュドはわざと普通ではないオーガを探す様な私情は挟まず、ガルフたちの為に適当なモンスターと遭遇し続けた。
(ん~~~……他の地域に生息してる個体よりも一回り強いつっても、攻撃方法が普通じゃねぇって訳じゃないからか、割と余裕を持って倒せるようになってきたか?)
当然のことながらも、アドレアスとディムナも実戦慣れしており、他のメンバーと組んで挑んだとしても……悪くない連携を取れていた。
(坊ちゃんの場合は元々備わってるのか、戦場を見渡せる良い眼を持ってんな。一応前衛だが、指揮が出来るタイプの前衛だな。んで、不器用クール野郎はがっつり前に出てはいるが、反射で……本能で合わせるタイプってところか)
今のところ、イシュドが関わっている人物の中で、イチオシなのは当然ガルフ。
だが、実戦で輝く姿を見ていると……新たに加わった二人も、決して悪くはない。
このままいけばと、イシュドの捕食本能がざわつくぐらいの輝きを有していた。
((っ!?))
周囲にモンスターがいない状態にもかかわらず、背後に野獣がいる気配を感じて周囲を見渡す二人だが、当然ながらモンスターはいない。
ただ……現在指導者の皮を被った異常な狂戦士がいるだけ。
「あん?」
昼食を食べ終えてから約二時間後、イシュドは真っすぐ……自分たちに向かって歩を進める存在を感知。
「「「「「「「「「「っ!!!!!」」」」」」」」」」
その姿、存在を感知した瞬間……イシュド以外、全員の表情に緊張が走る。
「ふ~~~~~ん? おそらくどころか、絶対にあいつだろうな」
ゆったりと歩を進めるモンスターの正体は、二振りの大剣を持つオーガ。
「お前ら、下がってろ」
「っ、イシュド」
「ダメに決まってんだろアホたれが。ディムナぁ……戦ったところで、得るものなんてなく終わるから諦めろ」
格が違う。
確実にガルフたちと比べてワンランク違う存在。
仮にイシュド以外、全員で挑んだとしても、そもそもそういった戦い方は訓練していないということもあり、九割以上の確率で全滅してもおかしくない。
強敵と実戦で戦うことで、得るものがある。
それはイシュドも身に染みて解っている。
だが、目の前の二刀流オーガは……それが得られると期待して良いほど、緩い相手ではない。
「聞いてた話通り、マジで二刀流なんだな……まっ、だからなんだって話か」
アイテムバッグから二振りの戦斧を取り出し、同じくゆったりと歩を進める。
「お前ら、自分の身は自分で守れよ」
一時の間、イシュドは二刀流のオーガを相手に集中する。
絶対に無理という訳ではないが、イシュドの手が間に合わない場合もありうる。
自分の身は自分で守れよ。
それは戦いの世界に生きる者たちにとって、至極当然の信念であり、プライド。
標準装備の心構えとも言える。
イシュドという同性代の絶対的なトップが同行している以上、ガルフたちはこれまで何が起こっても守られるであろう立場として森の中を探索していたが……いきなり言われても困る、なんて闘争心が死んでいる言葉を口にする者は一人もいなかった。
「え」
「ほら、良いからさっさと付けろ」
ギリギリ残っていた右腕部分に、腕輪タイプのマジックアイテムを装着。
腕輪は自動で新米騎士の腕に合う大きさに変化し、ジャストフィット。
「お前はこれからもりもり飯を食って、そんで訓練を続けろ。そうしてりゃあ、そのうち左腕が元に戻る」
「え、えっと……それは、本当、ですか」
「マジのマジだ」
イシュドが新米騎士に装着させた腕輪は、使い捨てではあるが、超高額のマジックアイテム。
どういった形で四肢が欠損しようとも、再び失われる前の状態で戻すことができる。
しかし、欠点がないわけではなく、元に戻る段階で体の栄養や他の部分の組織を利用して再生するため、一定以上の栄養を取っていなければ……再生する力によって屈強な体が衰弱した病人の様にガリガリになってしまう。
新米騎士の様に経験が浅くとも強靭な肉体を持っていない者であれば、そのまま息絶えてしまう可能性すらある。
「本当に……、俺は、まだ……戦えるん、ですか」
片腕を失っても、利き手である右腕があれば、これからも戦える。
強がりではあるが、その言葉に嘘はなかった。
だが……それでも喪失感がなかった訳ではない。
「そうだ。だから、折れるんじゃねぇぞ」
まだ、これからも本気で戦える。上を目指せる。
だから……折れるんじゃない。
イシュドの言葉を真正面から伝えられた新米騎士の心には……本当の意味で、前を向き始めた。
「イシュド様……本当に、ありがとうございます」
「おぅよ。とりあえずまだ飯を食ってねぇなら、がっつり食ってさっさと寝ろ」
それだけ言い残すと、イシュドは宿舎から出て自室に戻った。
「イシュド様!!」
「おぅ、どうした?」
その前に、普通ではないオーガに襲われた部隊の隊長である男が呼び留めた。
「本当に感謝いたします!!!!!」
男は腰を九十度に折り、深々と頭を下げ、感謝の言葉を伝えた。
今回、部下の騎士が片腕を失ったのは、完全に自分の責任だと認識しており、責任を感じていた。
「気にしないでくれ。良いマジックアイテムを持っていても、使わなけりゃ意味がない」
「それでも……それでも!! 本当に、ありがとうございます!!!!」
「……分かった。その感謝の気持ちは素直に受け取っとく。だから、あんたも折れるなよ」
「っ、また一から、鍛え直します!!!!!!」
男はイシュドの姿が見えなくなるまで、最敬礼の形を保ち続けた。
「あっ、お帰りイシュド」
「何話してたんだ?」
「どうやら、ちょっと面白いモンスターがいるらしくてな」
ちょっと面白いモンスター。
そう聞いて、いったいどんなモンスターなのかとガルフたちは頭の中でイメージするが……イシュドが思うちょっと面白いモンスターとはどれ程の強さ、存在のか上手く想像出来なかった。
(もし出会えたら……きっちりぶっ殺さねぇとな)
翌日の実戦、イシュドはわざと普通ではないオーガを探す様な私情は挟まず、ガルフたちの為に適当なモンスターと遭遇し続けた。
(ん~~~……他の地域に生息してる個体よりも一回り強いつっても、攻撃方法が普通じゃねぇって訳じゃないからか、割と余裕を持って倒せるようになってきたか?)
当然のことながらも、アドレアスとディムナも実戦慣れしており、他のメンバーと組んで挑んだとしても……悪くない連携を取れていた。
(坊ちゃんの場合は元々備わってるのか、戦場を見渡せる良い眼を持ってんな。一応前衛だが、指揮が出来るタイプの前衛だな。んで、不器用クール野郎はがっつり前に出てはいるが、反射で……本能で合わせるタイプってところか)
今のところ、イシュドが関わっている人物の中で、イチオシなのは当然ガルフ。
だが、実戦で輝く姿を見ていると……新たに加わった二人も、決して悪くはない。
このままいけばと、イシュドの捕食本能がざわつくぐらいの輝きを有していた。
((っ!?))
周囲にモンスターがいない状態にもかかわらず、背後に野獣がいる気配を感じて周囲を見渡す二人だが、当然ながらモンスターはいない。
ただ……現在指導者の皮を被った異常な狂戦士がいるだけ。
「あん?」
昼食を食べ終えてから約二時間後、イシュドは真っすぐ……自分たちに向かって歩を進める存在を感知。
「「「「「「「「「「っ!!!!!」」」」」」」」」」
その姿、存在を感知した瞬間……イシュド以外、全員の表情に緊張が走る。
「ふ~~~~~ん? おそらくどころか、絶対にあいつだろうな」
ゆったりと歩を進めるモンスターの正体は、二振りの大剣を持つオーガ。
「お前ら、下がってろ」
「っ、イシュド」
「ダメに決まってんだろアホたれが。ディムナぁ……戦ったところで、得るものなんてなく終わるから諦めろ」
格が違う。
確実にガルフたちと比べてワンランク違う存在。
仮にイシュド以外、全員で挑んだとしても、そもそもそういった戦い方は訓練していないということもあり、九割以上の確率で全滅してもおかしくない。
強敵と実戦で戦うことで、得るものがある。
それはイシュドも身に染みて解っている。
だが、目の前の二刀流オーガは……それが得られると期待して良いほど、緩い相手ではない。
「聞いてた話通り、マジで二刀流なんだな……まっ、だからなんだって話か」
アイテムバッグから二振りの戦斧を取り出し、同じくゆったりと歩を進める。
「お前ら、自分の身は自分で守れよ」
一時の間、イシュドは二刀流のオーガを相手に集中する。
絶対に無理という訳ではないが、イシュドの手が間に合わない場合もありうる。
自分の身は自分で守れよ。
それは戦いの世界に生きる者たちにとって、至極当然の信念であり、プライド。
標準装備の心構えとも言える。
イシュドという同性代の絶対的なトップが同行している以上、ガルフたちはこれまで何が起こっても守られるであろう立場として森の中を探索していたが……いきなり言われても困る、なんて闘争心が死んでいる言葉を口にする者は一人もいなかった。
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