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第212話 持っていかれた
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(相変わらず視線が集まりやがるな)
ギルドに入った瞬間、ロビーにいる冒険者たちだけではなく、受付嬢たちの視線も同時に向けられた。
視線を向けられる。
これだけで面倒が押し寄せてくるかもしれないと警戒するフィリップ。
対して、アドレアスは逆にこの状況を楽しんでいた。
楽しんでいるが故に、思わず笑みを零しそうになるが、それが冒険者たちを挑発することに繋がるかもしれないと解っていた。
だからこそ、これまでの生活で培ったポーカーフェイスの力で、全力で隠す。
「失礼、尋ねたいことがあるんだが、少し良いだろうか」
「は、はい。だ、大丈夫です」
一般的な冒険者たちが身に付けている防具ではなく、制服を着ている。
それだけでも驚きを隠せない。
加えて、声を掛けてきた人物が……そこら辺の野郎冒険者たちとは天と地ほどの差がある顔面を持つ青年。
物腰が柔らかいこともあり、声を掛けられた受付嬢の頬がほんのり赤くなっていた。
「この街の周辺にミノタウロスが現れたと聞いた。良ければ、そのミノタウロスの情報をお聞きしたい」
「も、もしかして、その……四人で、ミノタウロスに挑むのですか?」
「あぁ、その通りだ」
声を掛けられた受付嬢は、制服イコール学園に通っている学生……学生とは、国に仕える騎士や魔術師の卵。
それぐらいの知識は持っていた。
そして、ミノタウロスは現役の騎士や魔術師であっても、殺される可能性がある化け物。
どう考えても、卵たちが勝てる相手ではない。
「っ、その、ミノタウロスはBランクのモンスターでして、学生が……よ、四人で挑んで無事に帰ってこれる、モンスターではありません」
受付嬢もまだケツに殻が付いているものの、決して考える頭を持たないバカではない。
貴族にそれは無謀だと、命を捨てるようなものだと……無意味な挑戦だと伝えれば、不敬だと処されるかもしれない。
だが、仮にここで止めずに四人がミノタウロスに挑み、全員死亡してしまったらどうなるか…………それはそれで、恐ろしい未来が容易に想像出来てしまう。
そのどちらが最悪の未来になるのか、天秤に重ねた結果……受付嬢は、無謀な挑戦だと彼らに伝えることを選択した。
(……本当に、私たちの事を心配している眼だな)
受付嬢が何を考えて、自分たちを止めようとする選択肢を取ったのかも把握したアドレアス。
とはいえ、既に依頼を受けている身であるため、聞き入れられない。
「世間知らずの坊ちゃんがな~に夢見てんだか」
「おいおい、あんまからかってやるなよ。精一杯背伸びしようとして頑張ってんだからよ」
「それもそうか。ぎゃっはっはっは!!!!」
離れた場所にいた冒険者たちの会話が耳に入り、フィリップはため息を吐いた。
それはもう……思いっきり嫌な顔をしながら。
イブキはまたかと思うだけで、特に表情を変えることはなかった。
そして四人の中で唯一坊ちゃん嬢ちゃんではないガルフは、平民の冒険者は冒険者であぁいった悪態を突く光景を見て……少し、思うところがあった。
(私が理解を示そうとしても、無意味なのだろうな)
アドレアスは意味ありげな視線をフィリップ……ではなく、ガルフに向けた。
(致し方ないかと)
(では、そうしようか)
二人の目線だけの会話内容を察したフィリップとイブキ。
「「「「「っ!!!???」」」」」
次の瞬間には、四人とも自身の得物抜いて全力の殺意を飛ばした。
「な、なんだてめぇら!!!!!!」
「? 冒険者ギルドで、先程の様な言葉を向ける者たちは、言葉をぶつけた者と喧嘩をしたい。そう思っているからこそ、わざわざ口にしなくても良い言葉を口にすると、友人に教わった」
誰だそんな事を教えた奴は!!!!!!!!! といった怒鳴り声が上がることはなかった。
実際、先程バカ達がアドレアスに投げた言葉は、どう見ても喧嘩を売っている。挑発されていると受け取れる内容。
「どうした? 戦らないのか? 戦らないのであれば、私たちに絡まないでほしい。私たちは、この街に冒険者と喧嘩をしに来たのではないのだからな」
「「「「「…………」」」」」
納得させられた、という訳ではない。
バカだから、学がないからこそ、制服という珍しい服装を着ている者たちに喧嘩を売るような言葉を投げてしまった。
だが、バカでも学がなかろうとも……彼等は冒険者である。
得物を抜き、全力の殺意を向けられた結果、どう足掻いても自分たちでは勝てないと、本能が理解してしまった。
「お騒がせして申し訳ない」
「っ、い、いえ!! こちらこそ、バカ達がバカ過ぎる真似をして申し訳ありません!!!!!」
受付嬢にバカ、バカと連呼されたバカ冒険者たちは、ようやく体が動くようになり、ふざけんなと……受付嬢に、そして更にアドレアスたちに対して負け惜しみとも取れる暴言を口にしようとした瞬間、盛大に拳骨が振り下ろされた。
「「「「「~~~~~~~~~~っ!!!!????」」」」
「………………」
バカ共に拳骨を振り下ろした者は、巨人族のハーフの元冒険者としての経歴を持つギルド職員。
拳骨を振り下ろした後、無言でバカ共の襟首を掴み、ずるずると訓練場がある方向へ引きずって行く。
「「「「「っ!?」」」」」
そして入り口付近で思いっきりバカ共をぶん投げるとアドレアスたちの方に振り向き、腰を九十度に折った。
その後、彼が訓練場に向かった後……バカ共の悲鳴が微かにロビーまで届いた。
「…………見ての通りというのは少しおかしいかもしれませんが、私たちは貴女が思っている以上に戦えます。ですので、ミノタウロスの情報を教えていただけないだろうか」
「わ、分かりました。少々お待ちください」
ハーフ巨人族の職員の行動に色々と持っていかれたが、バカ共だけに向けられた殺意に頭からつま先まで震えた受付嬢。
今度は止めておいた方が良いと進言はせず、青年の望み通りミノタウロスの情報を伝えることにした。
ギルドに入った瞬間、ロビーにいる冒険者たちだけではなく、受付嬢たちの視線も同時に向けられた。
視線を向けられる。
これだけで面倒が押し寄せてくるかもしれないと警戒するフィリップ。
対して、アドレアスは逆にこの状況を楽しんでいた。
楽しんでいるが故に、思わず笑みを零しそうになるが、それが冒険者たちを挑発することに繋がるかもしれないと解っていた。
だからこそ、これまでの生活で培ったポーカーフェイスの力で、全力で隠す。
「失礼、尋ねたいことがあるんだが、少し良いだろうか」
「は、はい。だ、大丈夫です」
一般的な冒険者たちが身に付けている防具ではなく、制服を着ている。
それだけでも驚きを隠せない。
加えて、声を掛けてきた人物が……そこら辺の野郎冒険者たちとは天と地ほどの差がある顔面を持つ青年。
物腰が柔らかいこともあり、声を掛けられた受付嬢の頬がほんのり赤くなっていた。
「この街の周辺にミノタウロスが現れたと聞いた。良ければ、そのミノタウロスの情報をお聞きしたい」
「も、もしかして、その……四人で、ミノタウロスに挑むのですか?」
「あぁ、その通りだ」
声を掛けられた受付嬢は、制服イコール学園に通っている学生……学生とは、国に仕える騎士や魔術師の卵。
それぐらいの知識は持っていた。
そして、ミノタウロスは現役の騎士や魔術師であっても、殺される可能性がある化け物。
どう考えても、卵たちが勝てる相手ではない。
「っ、その、ミノタウロスはBランクのモンスターでして、学生が……よ、四人で挑んで無事に帰ってこれる、モンスターではありません」
受付嬢もまだケツに殻が付いているものの、決して考える頭を持たないバカではない。
貴族にそれは無謀だと、命を捨てるようなものだと……無意味な挑戦だと伝えれば、不敬だと処されるかもしれない。
だが、仮にここで止めずに四人がミノタウロスに挑み、全員死亡してしまったらどうなるか…………それはそれで、恐ろしい未来が容易に想像出来てしまう。
そのどちらが最悪の未来になるのか、天秤に重ねた結果……受付嬢は、無謀な挑戦だと彼らに伝えることを選択した。
(……本当に、私たちの事を心配している眼だな)
受付嬢が何を考えて、自分たちを止めようとする選択肢を取ったのかも把握したアドレアス。
とはいえ、既に依頼を受けている身であるため、聞き入れられない。
「世間知らずの坊ちゃんがな~に夢見てんだか」
「おいおい、あんまからかってやるなよ。精一杯背伸びしようとして頑張ってんだからよ」
「それもそうか。ぎゃっはっはっは!!!!」
離れた場所にいた冒険者たちの会話が耳に入り、フィリップはため息を吐いた。
それはもう……思いっきり嫌な顔をしながら。
イブキはまたかと思うだけで、特に表情を変えることはなかった。
そして四人の中で唯一坊ちゃん嬢ちゃんではないガルフは、平民の冒険者は冒険者であぁいった悪態を突く光景を見て……少し、思うところがあった。
(私が理解を示そうとしても、無意味なのだろうな)
アドレアスは意味ありげな視線をフィリップ……ではなく、ガルフに向けた。
(致し方ないかと)
(では、そうしようか)
二人の目線だけの会話内容を察したフィリップとイブキ。
「「「「「っ!!!???」」」」」
次の瞬間には、四人とも自身の得物抜いて全力の殺意を飛ばした。
「な、なんだてめぇら!!!!!!」
「? 冒険者ギルドで、先程の様な言葉を向ける者たちは、言葉をぶつけた者と喧嘩をしたい。そう思っているからこそ、わざわざ口にしなくても良い言葉を口にすると、友人に教わった」
誰だそんな事を教えた奴は!!!!!!!!! といった怒鳴り声が上がることはなかった。
実際、先程バカ達がアドレアスに投げた言葉は、どう見ても喧嘩を売っている。挑発されていると受け取れる内容。
「どうした? 戦らないのか? 戦らないのであれば、私たちに絡まないでほしい。私たちは、この街に冒険者と喧嘩をしに来たのではないのだからな」
「「「「「…………」」」」」
納得させられた、という訳ではない。
バカだから、学がないからこそ、制服という珍しい服装を着ている者たちに喧嘩を売るような言葉を投げてしまった。
だが、バカでも学がなかろうとも……彼等は冒険者である。
得物を抜き、全力の殺意を向けられた結果、どう足掻いても自分たちでは勝てないと、本能が理解してしまった。
「お騒がせして申し訳ない」
「っ、い、いえ!! こちらこそ、バカ達がバカ過ぎる真似をして申し訳ありません!!!!!」
受付嬢にバカ、バカと連呼されたバカ冒険者たちは、ようやく体が動くようになり、ふざけんなと……受付嬢に、そして更にアドレアスたちに対して負け惜しみとも取れる暴言を口にしようとした瞬間、盛大に拳骨が振り下ろされた。
「「「「「~~~~~~~~~~っ!!!!????」」」」
「………………」
バカ共に拳骨を振り下ろした者は、巨人族のハーフの元冒険者としての経歴を持つギルド職員。
拳骨を振り下ろした後、無言でバカ共の襟首を掴み、ずるずると訓練場がある方向へ引きずって行く。
「「「「「っ!?」」」」」
そして入り口付近で思いっきりバカ共をぶん投げるとアドレアスたちの方に振り向き、腰を九十度に折った。
その後、彼が訓練場に向かった後……バカ共の悲鳴が微かにロビーまで届いた。
「…………見ての通りというのは少しおかしいかもしれませんが、私たちは貴女が思っている以上に戦えます。ですので、ミノタウロスの情報を教えていただけないだろうか」
「わ、分かりました。少々お待ちください」
ハーフ巨人族の職員の行動に色々と持っていかれたが、バカ共だけに向けられた殺意に頭からつま先まで震えた受付嬢。
今度は止めておいた方が良いと進言はせず、青年の望み通りミノタウロスの情報を伝えることにした。
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