転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
218 / 483

第218話 あれと比べれば

しおりを挟む
「ブルルルゥゥゥウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!」

「「「「っ!!!!!?????」」」」

放たれた突然の咆哮。

それは……イブキやアドレアスにとっては、チャンスとも取れる動きだった。

溜まりに溜まったストレスを声に出して発散する。
特に狙った訳ではない怒号…………本来であれば、吼えている間に斬撃を、刺突を叩き込める筈だった。

ただ、計算外の事態が起きた。

それは、ミノタウロスが今、この瞬間に主の咆哮というスキルを得てしまったこと。

モンスターであれば……一定以上の重さを持つ武器を扱う前衛職であれば、ウォークライといった似た様なスキルを会得でき、更にリーダー経験を積み重ねれば咆哮という上位スキルを会得出来る。

ミノタウロスが会得した主の咆哮とは、その更に上位スキル。
ほんの短期間の間とはいえ、ミノタウロスは他種族のモンスターを従えて行動し、群れの長だった。

その経験が……フィリップたちにとって、最悪のタイミングで活きてしまった。

(ま、不味い!!!!!!!)

ウォークライ、咆哮、主の咆哮にはそれぞれ敵対者を怯ませる、精神面への攻撃を行う。
しかし、一定以上の精神力を持つ者には効かず、ある程度距離を取っていなければ、逆に大きな隙を晒すことになる。

だが、ミノタウロスの放った主の咆哮は……四人全員、怯ませることに成功した。

「ッ!!!!!!!!!!!」

そして真っ先に狙われたのは……メインアタッカーであるイブキだった。
ミノタウロスからすれば、四人とも全員ウザい、鬱陶しい。
纏めてぶっ殺せるならそれが一番なのだが、本能が囁く。まずは、あのメスを殺せと。

(う、動け動け動け、動きやがれ!!!!!!!)

(友人が、仲間が死ぬかもしれないと、いうのにっ!!!!!!!!!!!)

意識の問題ではない。
二人の闘志は未だに折れていない。

だが、主の咆哮を発動しながら放たれた怒号による破壊力が、彼らの精神力を上回り、怯ませた。

(せめて、せめて、脚を、動かさなければ!!!!)

そして真っ先に狙われたイブキも闘志は折れていない。
ただ、今自分が行わなければならないのは相殺やカウンター、受け流しでもなく……全力で振り下ろされる雷大斬から逃げること。

ぎりぎり躱せたところで、地面に突き刺さった影響で飛び散る石などのせいで、無傷とはいかない。
それでも、直撃だけは避けなければならない。

何故なら……振り下ろされる雷斧は、間違いなくイブキを一刀両断、一撃粉砕してしまう。

「さ、せるかあああああああああッ!!!!!!!!!!!」

そんな中、唯一……ただ一人、ガルフだけが動けた。

主の咆哮を発動した怒号の影響を受けなかったのか?
結果は、ノーである。
ガルフは間違いなくミノタウロスの放った怒号を受け、間違いなく怯んだ。

だが……即座に思い出したことがあった。

それは、レグラ家に滞在している際、個人的に稽古を付けてほしいと頼み込んだレグラ家の長男であり、次期当主のアレックス。

彼はガルフのイシュドに並びたい、追いつきたいという意を汲み取り、出来る限りのことはした。
その中の一つに……蟻と暴獣の差を教えるという内容があった。

(あれに、比べればッ!!!!!!)

ニコニコ笑顔が寧ろ恐ろしさを与えるアレックス。
普段は気の良い兄ちゃんではあるが、そのニコニコ笑顔にバーサーカーとしての狂気が混ざれば……二次職に転職している戦闘職の者であっても、ジョボぉ……ではなく、ジョバババババババババババババババババと、勢い良く漏らしてしまう。

アレックスは実際に襲い掛かることはなかったが、本気のプレッシャーを与え……当然、ガルフはなんとか失神するのだけは耐えられたが、生まれたての小鹿の様に震え……ジョバババババババババババババババ!!!!!! と、思いっきり零してしまった。

事前にアレックスがあれこれ用意していたため、その失態がイシュドにバレることはなかった。

ただ強烈な殺気を向けられ、明確な死をイメージしてしまうのとはまた違う。
逃げ場のない空間に、生物として絶対に勝てないと……死ぬのではなく勝てない、このまま食われると……そんな真の意味で敗北とも思えてしまうプレッシャーが、ミノタウロスの怒号を上回った。

(ガード、するしかない!!!!!!!)

欲を言えば、全力で振り下ろされる雷斧の側面にドロップキックをかまし、軌道を逸らせればよかった。

遠距離攻撃という方法もあるにはあったが、本能がそれでは無意味だと悟った。

結果、ガルフが取った行動はイブキの前に入り、振り下ろされる雷斧をガードすること。

(無理だ、ガルフッ!!!!!!!!!!!!!!!!!)

叫んだ、心の奥底から叫んだ。
このままでは、無理だと。ぶっ倒れるほどの闘気量を纏ったとしても……振り下ろされた雷斧に、ガルフが叩き潰されるイメージしか湧かない。

それは……ガルフも同じだった。
動けた、それは良かった。
イブキに向けて振り下ろされる雷斧をガードする……これもイブキを助けるといった行動を考えれば、最善の選択肢と言えた。
ただ…………最善が、確実に成功するとイコールで結びつくとは限らない。

(守るんだ、守るんだ。絶対に…………絶対にッ!!!!!!!!!!)

一瞬、一瞬だけ……脳裏に浮かんだ。
もし……この場にイシュドがいればと。

あの人がいれば、どんな状況でもその圧倒的な身体能力で友人を、仲間を助けることが出来た。

それが、ガルフにとって後悔ではなく、着火剤となった。

「っ!!!!!!!???????」

ガルフのロングソードと、ミノタウロスの雷斧が激突した。
その衝撃は、大気を震わせる。

離れた場所にいる冒険者たちの耳にも、その衝撃音が届いた。
だが……地面には亀裂が入った、凹んだ………………それでも臓器が零れ墜ち、鮮血が舞い散ることはなかった。

(っ、あれは……護身剛気!!!!????)

アドレアスの視線の先で、ガルフが身に纏っていた力は……イシュドがガルフに感じていた可能性だった。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん
ファンタジー
たった一人で敵軍を殲滅し、『死神』と恐れられた男は人生に絶望して自ら命を絶つ。 しかし目を覚ますと500年後の世界に転生していた。 前世と違う生き方を求めた彼は人の為、世の為に生きようと心を入れ替えて第二の人生を歩み始める。 家族の温かさに触れ、学園で友人を作り、世界に仇成す悪の組織に立ち向かって――――慌ただしくも、充実した日々を送っていた。 しかし逃れられたと思っていたはずの過去は長い時を経て再び彼を絶望の淵に追いやった。 だが今度こそは『己の過去』と向き合い、答えを導き出さなければならない。 後悔を糧に死神の新たな人生が幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき
ファンタジー
 停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。  どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。  だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。  もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。  後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

デイリーさんに叱られる〜転生先を奪われた悪役令息は、デイリーミッションで世界の秘密を知るようです〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
いじめっ子である八阪直樹を助けようとして死んだ桐野佳祐は、八阪直樹とともに転生することになったが、八阪直樹に転生先の神の使徒の座を奪われ、別の体で転生することになってしまう。 その体は生まれながらに魔王復活の器の役割をになう呪われた期限付きの命だった。 救いの措置として、自分だけに現れるデイリーミッションを使い、その運命に抗う為、本当の神の使徒として世界を救う為の、佳祐=シルヴィオの戦いが今始まる。 ※こちらは1ヶ月の間毎日連載致します。  1ヶ月経過後、金土日更新となる予定です。  許可を得て転載しているものになる為、取り下げする場合があります。

処理中です...