転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第342話 一に二に強さ

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「っし、そろそろ昼飯食うか」

そう言うと、イシュドは適当なところを見つけ、ゆっくりと魔法の絨毯を下降させて地上に着陸。

「飯は適当なので良いっすよね」

「あぁ」

護衛者たちは全員貴族出身ではあるが、何度も任務で遠征を経験しており、野営時に食べられる物がどういった物か理解している。

だからこそ……数十分後に目の前に用意された物に、大なり小なり驚かされた。

「……随分と、その……大盤振る舞い、なのだな」

「? そうっすか。割と普通っすけどね」

保存用のアイテムバッグから取り出した肉や野菜を適当に取り出し、刻んで焼いて味付け。
イシュドたちが行ったのは、ただそれだけである。

「…………イシュド君、一つ訊かせてもらっても良いか」

「面倒じゃない内容なら良いっすよ」

フランガルの言葉に、イシュドは熊系モンスターの焼き肉を頬張りながら応える。

「クルトや私たちを含めて、君の実家に仕えている者たちと比べて、どちらの方が強い」

フランガルの問いを耳にし、ヨセフたちの間に緊張が走る。

だが、問いの内容に対し、イシュド的には面倒な内容ではないと判断し、応える為に五人の護衛者たちとクルトの事をじっくりと眺めた。

「……………………そうっすね。うちの実家に仕えてる騎士とか戦士たちの方が強いっすね」

「っ、そうか」

「まぁ、落ち込むことないっすよ。だって、皆さんとうちの騎士たちじゃあ、強くなる為に使ってる時間の長さが違うんで」

相変わらず目上の者たちに対し、それ相応ではない態度で話し続けるイシュドに対し、帰ってきた返答に……フランガルたちはほんの少しだけ表情がピクリと動くも、そこから口論に発展はしなかった。

「長さが違う、か……具体的に尋ねても、良いだろうか」

「……エリヴェラ、この人たちに俺たちがここ数日どんな訓練をしてたか教えてやってくれ」

「えっ!! う、うん。分かったよ」

いきなり話を振られる、エリヴェラは先輩たちに対して少し緊張しながらも、ここ数日間どういった訓練を受けていたのかを説明。

訓練内容を聞いたフランガルたちは顔にこそ出さなかったが、心の内で無茶が過ぎないかと、五人五色の感想を零していた。

「違うところはあるっすけど、仕事中じゃない騎士たちはそんな感じの訓練を朝から晩まで休憩を挟みながら行ってて、仕事中の騎士たちは街中を巡回するか、モンスターと戦って戦って戦っての日々を送ってるんで、そりゃ普通の騎士生活を送ってる人たちとは差が開きますよ」

「…………なるほど。納得のいく、理由だな」

騎士の、聖騎士たちの仕事は、ただ強くあることだけじゃない。
強く、人々を守り、導き、後輩たちに誇れる背を目指す……加えて、書類仕事などもある。

だが、レグラ家に仕えている者たちには……一応巡回などの仕事はあれど、他の領地で活動している騎士たちほど書類仕事などはしていない。
加えて、レグラ家の騎士や戦士に求められるのは、一にも二にも強さ。
まずそれがなければ話にならない。

では、強ければ性格が終わっていても構わないのかというと……まず、世間一般的には野蛮だの蛮族だの言われているレグラ家だが、トップの人間が性格は割とまともであるため、仕える者たちも必然的に多少の荒さは残ったとしても、極度の傍若無人野郎にはならない。

「……意外っすね」

「どこかだ?」

「いや、そんなあっさり納得してくれるとは思ってなかったんで」

割と冷静で怒気を剥き出しにしない人たちだな~と思っていたイシュド。
しかし、フランガルの問いに対して返した返答内容的に、何回かは反論が飛んでくるかと思っていた。

「ふっふっふ、それもそうか。先日、クルトの先輩が君に粗相をしただろう。それもあって、私たちも学園長から忠告されていてな」

「なっはっは!!! そうだったんすね。まぁ、俺としてはそのまま粗相してもらって、バチバチに戦っても良かったんすけどね~~~~」

イシュドの表情から、冗談ではなく本気で言っているのが窺える。

そんな他国で噂になっていた学生を見て、フランガルは小さな笑みを浮かべた。

「ふふ……私は、君がその笑みを浮かべる姿、浮かべることで感じる恐ろしさというべきか。初めて会った時に、それを感じた」

「フランガルの言う通りだな。学生に……他国の貴族に言うことではないと解っているが、悪鬼という言葉が相応しい強さと恐ろしさを感じた」

身長は二メートルを越えており、分厚い肉体を持つタンクの聖騎士の三十代半ばの男性はある程度イシュドの性格を理解した上で、悪鬼の様な印象を受けたと口にした。

「あっはっは!!!! そう思ってくれたんなら、光栄っちゃ光栄か。俺としては、侮ってくれてなんやかんやで試合でも出来ればって思ってたんだけどな~~」

相変わらず自分本位であり、アリンダやシドウたちにとって恐ろしい事を口にする。

「一応護衛者として、君と喧嘩をすることは出来ないよ。勿論、本格的に依頼を始める前であれば、どこかしらで試合を行うことは出来るが」

「ん~~~~…………まぁ、それはそれでありなんすけど、それだとやっぱりちょっと物足りない感があるんすよね」

「どうしてだい?」

「フランガルさんたちの護衛対象である学生と喧嘩してはならないって感覚は正しいと思うっすよ。でも、そういう時じゃないと発しない、爆発しない感情ってあるじゃないっすか。なんで、とりあえずまた今度ってことにしとくっす」

(…………レグラ家の中でも、珍しいタイプの人間という情報は得ていたが……これではただ態度や言葉遣いが少々生意気なだけで、普通の理知的な学生ではないか)

フランガルは、本当にレグラ家にはイシュドの様な者は他にもいないのかと、ある意味不安を感じた。

何故なら……イシュドが軽く説明した通り、レグラ家にはレグラ家に仕える者だからこそ強くなる仕事環境が整っている。

だが、イシュドの思考に関しては育つ環境だけで決まるものではない。

(そういった意味での交友を推奨するのは……大人として思うところはあるが、是非ともエリヴェラやステラたちには、末永くイシュド君と友好的な関係を築いてほしいものだな)

本当のところは、レグラ家ではイシュドという存在はあまりイレギュラーではないのではないか。

そんな考えに至ったのはフランガルだけではなく、他の護衛者たちも不意に背中がぞくりと震えた。
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