転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
343 / 485

第343話 無理だと解っている

しおりを挟む
「ねぇ、イシュド。少しだけ体を動かしても良いかな」

昼食を食べ終えた後、ガルフはイシュドにそう尋ねた。

「ふふ、良いんじゃねぇの。でも、どうせなら普段手合せ出来ない人たちに相手してもらったらどうだ」

イシュドが口にした普段手合せ出来ない人たちというのは、当然フランガルたちの事。

「むっ……ここでか?」

フランガルたちとしては、頼まれれば相手をするつもりではあった。
バトレア王国の金の卵たちの実力を知っておきたいという思いもあり、全然ウェルカムなのだが……場所が場所である。

現在イシュドたちは街中にいるのではなく、道中からされた林の中。

護衛者が付く状況を考えれば、まずここで模擬戦などを行うべきではない。

「大丈夫っすよ。逆に今回は俺らがそっち側に回っておくし、ほら……色々と大丈夫じゃないっすか」

「…………」

「それに、俺らがギルドの訓練場とかに行くと、それはそれで面倒が起きるんすよ」

「ふむ……経験談、なのか?」

「経験談っすね」

当時の件を思い出し、ガルフとフィリップ、ミシェラとイブキはぎこちなく頷いた。

「……解った。では、少しだけ模擬戦の相手をしよう」

フランガルが承諾したことで、他の護衛者たちもやれやれ、といった表情を浮かべながらもガルフたちの食後の運動相手をすることになった。

(気付いていたか……いや、学園長とやり取りをしていたのを考えると、知っていたという方が正しいのか? だが……随分と、確信を持っていたな)

アンジェーロ学園の学園長が派遣した嫉妬に狂ったクソ野郎たちからダイヤモンドの原石たちを守るために派遣した護衛者は、フランガルたちだけではない。

表の護衛者たちは彼等であり、また別に陰からガルフたちを守る者たちもいる。

だが、影は影。
相手が……一応護衛対象であろうとも、気配を悟らせないのがプロ。

(……本当に気付いていたのであれば、恐ろしいのはやはり戦闘力だけではないということだな)

影の護衛者たちの中に知人がいるフランガルは、その知人の隠遁、隠行力の高さを身を持って知っている。

フランガルは盗賊やモンスターの討伐する仕事だけではなく、御要人の護衛任務を受けることもある。
故に、要人を狙う攻撃に反応して守る技術だけではなく、狙われていることに気付く感知力も必要になる。

そんなフランガルも気付けない存在を……イシュドは本当になんとなく…………簡単に言ってしまうと、野性の勘で気付いていた。

「すぅーーー、はぁーーーー……よろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそよろしく」

フランガルは盾は持たず、ロングソードのみで対応。
その対応に、ガルフは不満など無く……ゴブリンとウルフ系モンスターの討伐に向けて少しでも感覚が鈍らないよう、全力で模擬戦に取り組む。

「っ!!! シッ!!」

(…………うむ。思っていた以上に、基礎は出来ているな)

アンジェーロ学園側としては、客はイシュドだけではない。

なので、フランガルたちはイシュドだけではなく、他のフラベルト学園の学生たちの情報もある程度伝えられていた。

だからこそ、フランガルはガルフが平民出身の珍しい学生であることを知っている。
フランガルと歳が近い者で、騎士団に所属はしていないものの、冒険者として活動する平民の聖騎士を知っており……その実力もある程度知っているからこそ、平民だからといってあからさまに見下すことはない。

だが、まだ学園に入学して一年も経っていない。

入学出来たことを考えれば、ある程度の戦闘力を有していることは想像つくが、それでも基礎的な型はあまり出来ていないのではと予想していた。

しかし、いざ手合せをしてみると、フランガルの予想以上に基礎的な動きが出来上がっていた。

(元々良い師がいたか、それとも………………学園で良き教師に巡り合えたか)

イシュドと出会ったからという要素も一瞬思い付くも、フランガルの人生経験から、イシュドという戦士はあまり基礎的な動きを重要視するタイプには思えなかった。

「ふっ! はっ!!」

「ぐっ!! っ! ッ、せやッ!!!!」

模擬戦ということもあり、フランガルからも攻撃を行うが、攻めだけではなく防御や回避の技術も悪くないと感じた。

(当然だけど、強い……でも、まだまだ!!!!!)

自分たちの護衛を務めてくれる者が、自分より弱い訳がない。
そんな当たり前を裏切ることはなく、フランガルたちは当然の様に強く、既に身体強化を使い始めたガルフに対し、フランガルたちは素の状態で模擬戦を続けていた。

それは当たり前過ぎる光景であり……だからこそ、ガルフはただただ前だけを向き、今度は闘気を纏い始めた。

「むっ……」

ガルフが闘気を使い始めると、ほんの少しだけフランガルの平静を保たれていた表情が崩れた。

(話には聞いていたが、本当に闘気を使えるのか…………武器にまで纏わず、体だけに纏っている。加えて、必要な分だけを纏えているのだろう……発言したのは、約半年前からと聞いていたが…………違うな。血の滲む鍛錬があってこその結果か)

今回護衛者たちリーダーを務めるフランガルは、戦闘者たち全体を見れば才がある者であり、学生時代……騎士として、聖騎士として活動を始めてからも彼を天才と評する者はいた。

だが、そんな彼であっても闘気を会得出来ない。

これまた聖騎士ではない知人に扱える者がいるため、多少の知識は有している。
魔力と同じく、扱えるようになったからといって、直ぐに自由自在に扱えるものではない。

しかし、フランガルから見て、ガルフはある程度闘気を無駄なく扱えている様に思える。

(……少しだけ、確認させてもらおうか)

素の状態で一気にギアを上げ、ガルフに回避か防御の選択を強制的に迫る。
よっぽどの馬鹿でなければ、タイミング的に相殺は無理だと解る。
回避にしても……成功しても、そこからの対応が難しい。
なので、最適解の対応は間違いなく防御。

「っ!!!!!! ……ふぅーーーー」

(あれが、護身剛気か)

ガルフは見事最適解の行動を取り、ほんの少しの間だけ護身剛気を纏い、最小限の衝撃でやり過ごした。

(…………本来であれば声を掛けたいところだが、多くの意味で無理だな)

諦めるには本当に惜しいなと思いつつ、数十秒後にフランガルは模擬戦を終わらせた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

処理中です...