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少年期[756]どう対処しても……

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「その、ゲイルさんの主さんはとんでもなく凄い方だったんですね」

「あぁ……そうだな。その言葉通り、とんでもなく凄い方だ」

ゲイルはゼルートと出会うまで、あまり人間という生物に詳しくなかった。
だが、ゼルートとの真剣勝負に負け、従魔になってから少しずつ知るようになった。

そして……ある程度人について知る様になれば、直ぐに解ることがある。
それは、自分と戦った時の年齢であそこまで高い戦力を有してるのはあり得ない。

天才、怪物と呼ばれる子供がいるのは分かる。
久しぶりにゼルートの実家を訪れ、ゼルートの妹であるセレスがそういった言葉に当てはまるのだろうと感じた。

だが……ゼルートの実力はそんな言葉では捉えられないほど大きく、底知れない。

「今回の戦争に関して、ハッキリと断言出来ることがある……これからゼルート殿たちと戦う隣国の者たちは、不幸だ」

「ふ、不幸……ですか」

「あぁ、言葉通りだ。もう一度言っておくが、ゼルート殿は本当に一人で悪獣を倒してしまった。悪獣と戦闘を行う前に無数の魔物と戦った後にだ……ただ兵士や冒険者など、本気で敵を殺す状態に入ったゼルート殿からすれば、紙屑同然」

本気で殺す状態に入っていなくても、あっさり殺せることに変わりはない。
ただ、完全に盗賊と対峙した状態になれば……本当に容赦なく首を斬り落とし、心臓を貫き、頭部を粉砕する。

「でも、名のある人たちだったらゼルートさんも少しは苦戦するのですか?」

「……普段であれば、ゼルート殿は私たちと同じく強者との戦いを楽しむところがある。故に、相手の力を十分に堪能してから倒すのが一連の流れだ」

強者との戦いを楽しむ。
戦闘職ではない女性たちには全く分からない感情だが、とりあえずそういう人もいるのだと納得した。

「だが、戦争では敵国の者は基本的に敵。殺す対象だ……私や冒険者たちが盗賊を殺すのと似ているな」

「そう、かもしれませんね」

今回の戦争は侵略戦争ではないのだが、ゲイルが言いたい事はなんとく分かった大人の女性陣。

「そしてゼルート殿がある程度本気を出せば、それなりの猛者であったとしても瞬殺される可能性はあるだろう……いや、本気であれば確実に何もさせず殺してしまうな」

「何もさせずに、ですか」

「あぁ、冗談ではなく何もさせないだろう。ゼルート殿は私たちの中でもスピード寄りのステータスを持つ」

そしてゲイルはゼルートの切り札の内の一つ、疾風迅雷がどれだけ恐ろしく脚力を上げるのか……身をもって知っている。

(あれを目の前で使われては、即座に対応するのは非常に困難。通常時でさえ速いゼルート殿が更に速くなる……それなりの猛者では直感や経験で培った勘でギリギリ攻撃が来る場所を予測できるかもしれないが、対応するのは不可能だ)

加えて、ゼルートにはまだ速さを強化する術がある。

全てを使用すれば、Aランクのモンスターを相手に一人で討伐出来る猛者であっても、気付けばあの世に送られている事もあり得る。

(今回の戦争でゼルート殿がどこまで本気を出すかは分からないが……なるべく早く終わらせたいと言っていたな。であれば……残念ながら、隣国は何も出来ず敗戦してしまうだろう)

ゼルートはまだまだ成長中。
今回の戦争でまた一つ成長するかもしれない。

「強敵に囲まれたとしても……ゼルート殿なら、慌てず一人ずつ対処してしまうだろう」

「もし、敵側がゼルートさんに多くの強者を向ければ……」

「それはあり得ない、とだけ言っておこう。ただ……ゼルート殿だけに戦力を集中させていいほど、こちらの戦力は低くない」

隣国がいったいどんな手段でゼルートを抑え込もうとしても、結局のところ大きな被害を食らうという結末だけは変わらない。
ゲイルはその予想が外れることはないと信じている。
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