42 / 92
四十二話 どちらにしろ挑む
しおりを挟む
「いや、その通りなんだが……予想出来てたってことか」
「そうですね。というか、参加出来るなら参加したいと思ってたんで」
Dランクモンスターをソロで倒せる実力を持っている。
であれば、そんな自分をギルドが誘わない訳がない。
自惚れではなく、確かな自信。
「一つ、よろしいでしょうか」
「おぅ、良いぞ」
「クランド様は、現在Eランクです。既に私も含めて、盗賊の討伐というDランクへの昇格内容は満たしていますが、それでも参加出来るのですか?」
リーゼの質問……の中に含まれていた言葉に、青年は固まってしまった。
そして数秒かけ、目の前の女性が何を言ったのか、冷静に理解した。
「二人とも、既に経験があるのか」
「偶々ですけどね。あの時はがっつり吐いちゃいましたよ」
あっはっは! と笑うクランドを見て、ますます常識離れしたルーキーだと実感。
この報告は、青年としても有難いものだった。
「そうか、そうだろうな。俺も我慢しながらぶっ殺した後、思いっきり吐いたよ。まっ、そこに関しては特例ってことでなんとかなる」
人を利用するのに便利な言葉、特例。
過去にその特例で、規格外の力を持つ新人が戦場に連れていかれることがあった。
それは決して一度や二度ではない。
「分かりました。それなら、ジェネラルかグレートウルフのうち、一体は俺に戦らせてください」
「……正気か?」
本気か? ではなく、正気か? と尋ねてしまった青年。
しかし、そう問うてしまうのも無理はない。
その気持ちが解るからこそ、リーゼは青年に冷たい目を向けていなかった。
(やはり、それが参加の条件なのでしょうね)
クランドが冒険者になった理由を考えれば、それを要求するのは当たり前。
「はい、正気ですよ。俺は強い奴と戦って勝つために、冒険者になったんで」
規格外のルーキーの口から出た言葉に、青年は開いた口が塞がらなくなる。
片方を一人で相手してくれる。
それは非常に有難い提案なのだが、さすがにルーキーに相手をさせる訳にはいかない。
だが……噂通りの人物であれば、自分が想像しているよりも、何倍もの実力を有している。
「……そっちの、リーゼは納得しているのか?」
「クランド様はこういう方なので、悩むだけ無駄だと思ってます」
半ば呆れ顔なのを見て、心中お察しする青年。
(苦労してそうだな)
パーティーメンバーである魔族の少女が反対しないこともあり、青年はクランドの頼みを承諾し、ギルドに持ち帰った。
当然、討伐戦に参加する主要メンバーや、ギルドのお偉いさん達からは反対意見が飛び出る。
色々な理由があるが、とりあえず反対という意見が殆ど。
「ワイルドボアや、ラーズンスネークを一人で倒す。そんな桁外れの実力を持つルーキーだ。しかも、自分から強敵と戦いたいと宣言してるんだ。戦らせてやるべきだと思う」
本人がそう宣言しているとしても、伯爵家の子息ともなれば、ギルドとしても死なれては立場的に困る。
「というか、クランドの場合……自分から倒しに行くぞ」
青年の言葉に、その場にいる全員が嫌な音を立てて固まった。
「仮にこの討伐戦に特例として参加させなければ、勝手に群れに突撃するだろうな」
更に嫌な音が室内に響いた。
「強者と戦って勝つために、冒険者になった。騎士になれる実力があるのに、騎士にならなかった酔狂者だぞ」
十分、クランドがちょっと異常者であることが理解出来る情報。
この場にいる者たちも、手に入る程度の情報は得ている。
そのため、渋い顔で頭を悩ませることにはなるが……最終的にはクランドの要求を飲むことにした。
そして翌日、クランドと……加えて、リーゼに特例で討伐戦に参加する命が届く。
伝えられた場所はギルド内で、周囲にはちらほらとルーキーたちがいた。
当然とは言えば当然だが、その命に上を目指すという意欲が強いルーキーたちは、青年に自分も参加したいと宣言。
「話を聞いてたんだろ。この二人の場合は、特例なんだ」
「ッ!!!」
自分はその特例に当てはまる実力を持っていない。
そう宣告されたと感じ……実質、その感じと青年からの言葉は同じ内容。
周りより頭一つ抜けた実力を持つルーキー、ぐらいの実力では今回の討伐戦に参加させられない。
一瞬……一瞬だけ、その特例として選ばれたクランドに強烈な視線を向けるが、直ぐに先日の一件を思い出し、目を伏せた。
「そういう訳だから、頼むぞ。スーパールーキー」
「きっちり仕事は果たします」
数日後、DランクからCランクの冒険者たちで構成された討伐隊が出動。
巣は一日も歩けば到着する場所にある。
その為、なにがなんでも討伐しておきたい。ま
ジェネラルやグレートウルフがその気になれば、ハリストンの人間たちが準備出来る前に、街への襲撃を仕掛けられる。
「予想通りの実力、ってことか」
「あんな子もいるのね~」
「従者の女の子の方もヤバいな。知り合いの魔族と比べて……どっちが上だろ」
道中、本当に特例として参加し、我儘を押し通すだけの実力があると証明するために、クランドは自ら戦闘を買って実力を示し、先輩たちからの信用を得た。
「そうですね。というか、参加出来るなら参加したいと思ってたんで」
Dランクモンスターをソロで倒せる実力を持っている。
であれば、そんな自分をギルドが誘わない訳がない。
自惚れではなく、確かな自信。
「一つ、よろしいでしょうか」
「おぅ、良いぞ」
「クランド様は、現在Eランクです。既に私も含めて、盗賊の討伐というDランクへの昇格内容は満たしていますが、それでも参加出来るのですか?」
リーゼの質問……の中に含まれていた言葉に、青年は固まってしまった。
そして数秒かけ、目の前の女性が何を言ったのか、冷静に理解した。
「二人とも、既に経験があるのか」
「偶々ですけどね。あの時はがっつり吐いちゃいましたよ」
あっはっは! と笑うクランドを見て、ますます常識離れしたルーキーだと実感。
この報告は、青年としても有難いものだった。
「そうか、そうだろうな。俺も我慢しながらぶっ殺した後、思いっきり吐いたよ。まっ、そこに関しては特例ってことでなんとかなる」
人を利用するのに便利な言葉、特例。
過去にその特例で、規格外の力を持つ新人が戦場に連れていかれることがあった。
それは決して一度や二度ではない。
「分かりました。それなら、ジェネラルかグレートウルフのうち、一体は俺に戦らせてください」
「……正気か?」
本気か? ではなく、正気か? と尋ねてしまった青年。
しかし、そう問うてしまうのも無理はない。
その気持ちが解るからこそ、リーゼは青年に冷たい目を向けていなかった。
(やはり、それが参加の条件なのでしょうね)
クランドが冒険者になった理由を考えれば、それを要求するのは当たり前。
「はい、正気ですよ。俺は強い奴と戦って勝つために、冒険者になったんで」
規格外のルーキーの口から出た言葉に、青年は開いた口が塞がらなくなる。
片方を一人で相手してくれる。
それは非常に有難い提案なのだが、さすがにルーキーに相手をさせる訳にはいかない。
だが……噂通りの人物であれば、自分が想像しているよりも、何倍もの実力を有している。
「……そっちの、リーゼは納得しているのか?」
「クランド様はこういう方なので、悩むだけ無駄だと思ってます」
半ば呆れ顔なのを見て、心中お察しする青年。
(苦労してそうだな)
パーティーメンバーである魔族の少女が反対しないこともあり、青年はクランドの頼みを承諾し、ギルドに持ち帰った。
当然、討伐戦に参加する主要メンバーや、ギルドのお偉いさん達からは反対意見が飛び出る。
色々な理由があるが、とりあえず反対という意見が殆ど。
「ワイルドボアや、ラーズンスネークを一人で倒す。そんな桁外れの実力を持つルーキーだ。しかも、自分から強敵と戦いたいと宣言してるんだ。戦らせてやるべきだと思う」
本人がそう宣言しているとしても、伯爵家の子息ともなれば、ギルドとしても死なれては立場的に困る。
「というか、クランドの場合……自分から倒しに行くぞ」
青年の言葉に、その場にいる全員が嫌な音を立てて固まった。
「仮にこの討伐戦に特例として参加させなければ、勝手に群れに突撃するだろうな」
更に嫌な音が室内に響いた。
「強者と戦って勝つために、冒険者になった。騎士になれる実力があるのに、騎士にならなかった酔狂者だぞ」
十分、クランドがちょっと異常者であることが理解出来る情報。
この場にいる者たちも、手に入る程度の情報は得ている。
そのため、渋い顔で頭を悩ませることにはなるが……最終的にはクランドの要求を飲むことにした。
そして翌日、クランドと……加えて、リーゼに特例で討伐戦に参加する命が届く。
伝えられた場所はギルド内で、周囲にはちらほらとルーキーたちがいた。
当然とは言えば当然だが、その命に上を目指すという意欲が強いルーキーたちは、青年に自分も参加したいと宣言。
「話を聞いてたんだろ。この二人の場合は、特例なんだ」
「ッ!!!」
自分はその特例に当てはまる実力を持っていない。
そう宣告されたと感じ……実質、その感じと青年からの言葉は同じ内容。
周りより頭一つ抜けた実力を持つルーキー、ぐらいの実力では今回の討伐戦に参加させられない。
一瞬……一瞬だけ、その特例として選ばれたクランドに強烈な視線を向けるが、直ぐに先日の一件を思い出し、目を伏せた。
「そういう訳だから、頼むぞ。スーパールーキー」
「きっちり仕事は果たします」
数日後、DランクからCランクの冒険者たちで構成された討伐隊が出動。
巣は一日も歩けば到着する場所にある。
その為、なにがなんでも討伐しておきたい。ま
ジェネラルやグレートウルフがその気になれば、ハリストンの人間たちが準備出来る前に、街への襲撃を仕掛けられる。
「予想通りの実力、ってことか」
「あんな子もいるのね~」
「従者の女の子の方もヤバいな。知り合いの魔族と比べて……どっちが上だろ」
道中、本当に特例として参加し、我儘を押し通すだけの実力があると証明するために、クランドは自ら戦闘を買って実力を示し、先輩たちからの信用を得た。
21
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる