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八十一話 どこまでいっても平行線
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「……ッ」
明確に喧嘩を売ってきている。
Bランク冒険者であるアルティスに悪意はなく、喧嘩を売ってるつもりはない。
ただ、Dランクの冒険者がBランクのワイバーン気象に敵うわけがないよね、という純然たる事実を伝え、確認しているだけ。
Dランク冒険者の中にも、ルーキーの中にも例外的存在は実在する。
それはアルティスもある程度解っている。
何故なら、彼自身がその例外的な存在だから。
しかし、そんな例外的な存在にも限界はある。
Bランクといえば、優秀な冒険者の中でも限られた者たちにしか倒せない難敵。
そんな難敵に挑もうとする蛮勇者がいれば、先輩として当然といった思いがアルティスの中にある。
この悪意のない言葉に、クランドは当然カチンときた。
これが、まだ自身の実力をある程度知っているライガー家に属する騎士たちや、槍の名手である父、オルガからの言葉であれば怒りが湧くことはない。
挑もうという挑戦心が消えることはないが、今一度自身の実力を見つめ直す。
ただ……いきなり現れた先輩冒険者とは、全く面識がない。
そんな優男からの言葉に一番切れていたのは、クランドではなく従者のリーゼだった。
(こいつは……誰に何を言ってるんだ)
拾われてから、ずっと主人の努力を見続けてきた。
主人が強敵、難敵と戦うのは当然心配ではある。
だが、それよりも主人が今まで積み重ねてきたもの、強さを信じている。
だからこそ、希少種のワイバーンと戦うと決めた主人の意志を尊重し、止めることはなかった。
そんなリーゼからすれば、アルティスの言葉は主人の実力を侮辱する内容。
今すぐにでも声を荒げ、自身の手札の中で最強の攻撃魔法をぶち込みたい。
我慢せずに怒りを爆発させて、嫌味や侮りがない……寧ろ質が悪いその顔面に鉄拳を叩きこみたい。
しかし、ギリギリ……現在は冒険者でありクランドの仲間ではあるが、従者という今までもこれからも続く立場故に、主人の許可なしに攻撃をぶちかますことはなく、本当にギリギリで耐えていた。
(ふぅーー、隣にこんな起こってる人がいると、逆に冷静になるな)
冒険者だから云々関係無しに、ここまで面と向かって嘗められてると、嘗めたことをぬかした口から訂正した言葉を吐き出させたくなる。
とはいえ、いきなり殴りかかるのは、普通に考えてアウト。
アウトだが……一先ず、先輩だからといって引く気はなかった。
「いや、全然挑むつもりですよ。ワイバーンの希少種なんて、中々遭遇できるモンスターじゃないんで」
「ん~~~、もしかして死にたがりなのかな? そういう精神はあまり否定するようなものではないと思ってはいるけど、正直カッコ良くはないよ」
カッコ良い云々でこっちは動いてねぇんだよクソ〇ス、と暴言を吐きたい気持ちをグッと堪える。
「それはあんたの感想だろ。あんまり自分の考えを押し付けて、後輩の行動を制限しようとするのは止めくれませんか。それが良くないって解ってるから、死にたがり精神を強く否定したくないんだろ」
一応先輩ではあるが、敬語は殆ど捨てている。
そんな後輩、クランドの態度に今度はマルティの仲間たちが苛立ち、怒り始めるが、リーダーであるマルティがそれを制した。
「そうだね……でも、死んでしまったらそこまでだ。アブスタの危機ではあるかもしれないけど、国家滅亡の危機とかではなく、蛮勇を用いて挑んだところで、後世に名が残る訳ではないんだよ」
「俺が死ぬ前提で話しを進めるなよ。強い奴との戦いは好物だが、どんな戦いにも勝つつもりで挑んでんだ。今回の戦いに限っても、負けるつもりは一切ないんだよ」
「……君の隣にいる仲間が悲しむとしても、君は挑むのかい」
傍から見れば、それなりに痛いところを突いた……と思わなくもないが、クランドからすれば全く痛くも痒くもない言葉だった。
「リーゼは心配こそすれど、悲しみはしない」
「そうは思えないけどね」
「何勝手に他人の気持ちを解かった気でいるんだ? というか、そもそも大前提が違うって言ってるだろ」
ここで初めて、クランドはマルティスに向けて怒気だけではなく、闘気を向けた。
「っ……なるほど。どうやら、強敵と戦いたい。そんな言葉が口に出せるぐらいの力は持ってるみたいだね」
「…………あのさ、一々その上から目線な態度止めろよ。俺の親や教師になったつもりか?」
マルティには全くそんなつもりはない。
ただ、これまでの経験やマルティス自身の強さが相まって、冒険者歴が下の後輩……もしくは、冒険者歴が自分より上であっても、無意識の上から目線な言葉遣いをしてしまう。
しかしあくまで、マルティスは活きが良いルーキーが簡単に命を投げ捨てない様に、注意しているだけ。
二人の主張は、どこまでいっても平行線だった。
「はぁ~~~、もう良い。ここでどれだけあんたと言い合ったところで、何かが動いたり解決しそうにない。とりあえず、あんたは俺の知人でも友人でもない。立場としては、どこにでもいるただの先輩だ。これ以上、俺らに関わらないでくれ」
明確な嫌悪を伝え、クランドとリーゼはその場から去った。
明確に喧嘩を売ってきている。
Bランク冒険者であるアルティスに悪意はなく、喧嘩を売ってるつもりはない。
ただ、Dランクの冒険者がBランクのワイバーン気象に敵うわけがないよね、という純然たる事実を伝え、確認しているだけ。
Dランク冒険者の中にも、ルーキーの中にも例外的存在は実在する。
それはアルティスもある程度解っている。
何故なら、彼自身がその例外的な存在だから。
しかし、そんな例外的な存在にも限界はある。
Bランクといえば、優秀な冒険者の中でも限られた者たちにしか倒せない難敵。
そんな難敵に挑もうとする蛮勇者がいれば、先輩として当然といった思いがアルティスの中にある。
この悪意のない言葉に、クランドは当然カチンときた。
これが、まだ自身の実力をある程度知っているライガー家に属する騎士たちや、槍の名手である父、オルガからの言葉であれば怒りが湧くことはない。
挑もうという挑戦心が消えることはないが、今一度自身の実力を見つめ直す。
ただ……いきなり現れた先輩冒険者とは、全く面識がない。
そんな優男からの言葉に一番切れていたのは、クランドではなく従者のリーゼだった。
(こいつは……誰に何を言ってるんだ)
拾われてから、ずっと主人の努力を見続けてきた。
主人が強敵、難敵と戦うのは当然心配ではある。
だが、それよりも主人が今まで積み重ねてきたもの、強さを信じている。
だからこそ、希少種のワイバーンと戦うと決めた主人の意志を尊重し、止めることはなかった。
そんなリーゼからすれば、アルティスの言葉は主人の実力を侮辱する内容。
今すぐにでも声を荒げ、自身の手札の中で最強の攻撃魔法をぶち込みたい。
我慢せずに怒りを爆発させて、嫌味や侮りがない……寧ろ質が悪いその顔面に鉄拳を叩きこみたい。
しかし、ギリギリ……現在は冒険者でありクランドの仲間ではあるが、従者という今までもこれからも続く立場故に、主人の許可なしに攻撃をぶちかますことはなく、本当にギリギリで耐えていた。
(ふぅーー、隣にこんな起こってる人がいると、逆に冷静になるな)
冒険者だから云々関係無しに、ここまで面と向かって嘗められてると、嘗めたことをぬかした口から訂正した言葉を吐き出させたくなる。
とはいえ、いきなり殴りかかるのは、普通に考えてアウト。
アウトだが……一先ず、先輩だからといって引く気はなかった。
「いや、全然挑むつもりですよ。ワイバーンの希少種なんて、中々遭遇できるモンスターじゃないんで」
「ん~~~、もしかして死にたがりなのかな? そういう精神はあまり否定するようなものではないと思ってはいるけど、正直カッコ良くはないよ」
カッコ良い云々でこっちは動いてねぇんだよクソ〇ス、と暴言を吐きたい気持ちをグッと堪える。
「それはあんたの感想だろ。あんまり自分の考えを押し付けて、後輩の行動を制限しようとするのは止めくれませんか。それが良くないって解ってるから、死にたがり精神を強く否定したくないんだろ」
一応先輩ではあるが、敬語は殆ど捨てている。
そんな後輩、クランドの態度に今度はマルティの仲間たちが苛立ち、怒り始めるが、リーダーであるマルティがそれを制した。
「そうだね……でも、死んでしまったらそこまでだ。アブスタの危機ではあるかもしれないけど、国家滅亡の危機とかではなく、蛮勇を用いて挑んだところで、後世に名が残る訳ではないんだよ」
「俺が死ぬ前提で話しを進めるなよ。強い奴との戦いは好物だが、どんな戦いにも勝つつもりで挑んでんだ。今回の戦いに限っても、負けるつもりは一切ないんだよ」
「……君の隣にいる仲間が悲しむとしても、君は挑むのかい」
傍から見れば、それなりに痛いところを突いた……と思わなくもないが、クランドからすれば全く痛くも痒くもない言葉だった。
「リーゼは心配こそすれど、悲しみはしない」
「そうは思えないけどね」
「何勝手に他人の気持ちを解かった気でいるんだ? というか、そもそも大前提が違うって言ってるだろ」
ここで初めて、クランドはマルティスに向けて怒気だけではなく、闘気を向けた。
「っ……なるほど。どうやら、強敵と戦いたい。そんな言葉が口に出せるぐらいの力は持ってるみたいだね」
「…………あのさ、一々その上から目線な態度止めろよ。俺の親や教師になったつもりか?」
マルティには全くそんなつもりはない。
ただ、これまでの経験やマルティス自身の強さが相まって、冒険者歴が下の後輩……もしくは、冒険者歴が自分より上であっても、無意識の上から目線な言葉遣いをしてしまう。
しかしあくまで、マルティスは活きが良いルーキーが簡単に命を投げ捨てない様に、注意しているだけ。
二人の主張は、どこまでいっても平行線だった。
「はぁ~~~、もう良い。ここでどれだけあんたと言い合ったところで、何かが動いたり解決しそうにない。とりあえず、あんたは俺の知人でも友人でもない。立場としては、どこにでもいるただの先輩だ。これ以上、俺らに関わらないでくれ」
明確な嫌悪を伝え、クランドとリーゼはその場から去った。
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