カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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八十二話 通りそうな無茶が、一番危ない

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クランドとリーゼが去った後、ギルド内では緊張感が解かれたものの、ざわめきが止まらない状況が続いていた。

「アルティスが善意で言ってるのに」

「随分と、生意気なルーキーね」

「ん~~~……でも、あぁいう態度を取るだけの実力はあるみたいだね」

先程までクランドが希少種のワイバーンに挑むのを止めようとしていたアルティスだが、自身に向けられた闘気を感じ、少し考えが変わった。

「あら、あの子はアルティスさんが認めるだけの実力を有してるのですね」

「うん、そうだね。解ってはいたけど、見た目や年齢で決めつけたら駄目だね」

真っ当に冒険者として生活を送っていれば、あまり関係を持っていない後輩ではあっても、どう考えても無茶な行動を取らないでほしいと思ってしまう。

無駄死にしようとしてる者がいれば、偽善と言われても止めたくなる。

「ただ……二人でなら、命を懸ければ本当の倒せる可能性を持っていそうだ。だからこそ、止めたいんだけどね」

見た目が貴族の令息では? と思ってしまう程、容姿端麗で高い実力を持っている。

故に、同業者から嫉妬などの負の感情をよく向けられるが、逆に尊敬の目を向けられることも多い。
自身の現状に満足している者たちであれば、ベテラン冒険者であっても、アルティスたちに有効な態度を取る。

「そこまでの実力が、二人にはあるかしら? 普通のワイバーンなら倒せそうだけど、希少種のワイバーンはどう考えても無理だと思う」

「私も同じ意見ね。上手くいっても……片翼を潰せるぐらいじゃないかしら」

「普通に戦えば、そこで終わるかもしれない。でも、命を懸ければ話は別だと思う。あの闘気……少し自分が天狗になり過ぎてたと思い知らされたよ」

仲間たちの意見とは別に、自身の認識が甘かったと口にするマルティス。

とはいえ、それでもタイマン勝負でクランドに負けるとは思っておらず、パーティーのそう戦力であれば、尚更自分たちは負けていないと断言出来る。

(……確かに、僕はたちは彼らにとって、ただの先輩でしかない。無理矢理希少種のワイバーンとの戦いを止めることは出来ない。だったら、あの二人よりも先に遭遇しないと)

マルティスは気を引き締め直し、情報集めを行い始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…………」

「リーゼ、そろそろ機嫌直したらどうだ?」

「別に機嫌はいつも通りですが」

「何年も一緒にいるのは俺も同じだ。そんなに顔に現れてたら、俺だって不機嫌なんだなって気付く」

そこまで言われては、素直に認めるしかない従者。

とはいえ、中々機嫌を直ぐに直すことは難しい。

「……クランド様らしくありませんでしたね」

「そうか? まぁ、かなり売られた喧嘩は買ってやる! って態度で対応してしまったのは間違いないな」

喧嘩っ早くても良いことはないと、若干反省はしていた。

結果的にマルティスが力づくでクランドをどうこうする事はなかったため、適当に無視して去ることも出来た。
ただ、リーゼが「らしくない」と口にした点は、その態度ではなかった。

「いえ、そこに関しては向こうから売ってきた喧嘩なので、どうこう思いません」

「それなら、どこが俺らしくなかったんだ?」

「クランド様なら、上手くあの優男を挑発して、訓練場でボコボコにするのかと思ってたので」

本音を言えば、リーゼ自身がマルティスをボコボコにしたい。

マルティスが口だけの男ではないと解ってはいるが、それでも勝算はある。
しかし、現在クランドのパーティーメンバーではあるが、根っこは主人に仕える従者。

主人の許可なしに、他者をぶん殴る訳にはいかなかった。

「……正直、ぶん殴れるならぶん殴りたいとは思ったよ。でも、第三者から見ればさっきの状況は、無茶しようとしてる後輩を止める優秀な先輩たち、って感じだろ」

「そうですね」

リーゼ的にはマルティスが優秀な先輩というのは認めている。
ただ、個人的にはパーティーメンバーの女三人は同列だとは思えなかった。

「俺はもう冒険者なんだから、下手に悪い印象を与えるのは良くないだろ。家族やお前をバカにされたとかなら話は別だけど、今回は基本的に俺だけ集中して色々と言われただけだ」

「……クランド様がそれで良いのであれば、私はもう何も言いません」

クランドが家族だけではなく、従者である自分も大切に思ってくれていることは嬉しい。

本当に良い主人に拾われたと思うリーゼだが……同時に、そう思っているのはあなただけではない、っと口にしたいが、ギリギリで堪えた。

クランドが家族やリーゼをバカにされたら怒るように、リーゼも主人であるクランドが馬鹿にされる、もしくは嘗められればキレるというもの。

そんな従者の思いを薄っすらと感じ取っていた主人は、無意識に口角を上げていた。

「まっ、とりあえず明日から気合入れて探そうぜ」

「えぇ。絶対に彼らより先に見つけましょう」

翌日、二人は戦闘時にスタミナがなくならない程度に全力で走り、希少種のワイバーンを探し始めた。
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