執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第123話 噓の知人を

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「ベジャラスさん、ですよね」

「ん? 確かに俺はベジャラスだが…………あれだよな。君は確か、バトムスっていう少年だったよな」

タリアから命を助けた少年に告白された後、バトムスはひとまず穏便になんとかしようという事で、クレステントの冒険者ギルドを拠点に活動している冒険者、ベジャラスの元を訪れた。

あまり人気の多いところでは面倒を呼ぶと思い、バトムスはベジャラスが贔屓にしている武器屋の情報を手に入れ、細かく来店していた。

「はい。そのバトムスで合ってます。少しお時間良いですか」

「…………」

よく解らない。

という感想が心の中で零れた。
だが、多少の事情を知ってる店員がベジャラスに声を掛ける。

「ベジャラスさん、ちょっとだけで良いんで聞いてやってくださいよ。その坊主、ただ毎回ベジャラスさんが店に来てるか確認するだけじゃ失礼だからって、律儀に毎回武器を買ってってんだよ」

「へぇ~~~~~」

何回訪れたのかは知らないが、子供の財力ではまず無理である。
だからこそ、そこを含めてベジャラスはバトムスと話すことにした。

「場所は変えた方が良い感じかな」

「そうですね」

「よし、んじゃ移動しようか」

ベジャラスは同業者から聞いた個室のあるカフェに入り、適当に飲み物と軽食を注文し、本題へと入る。

「それで、俺にバトムス君がいったい何の用だい」

「実は、俺の姉弟子に惚れた若い冒険者がいるんです」

ある程度の内容を話し終えると……ベジャラスは抑えていた笑いを解放。
個室で良かったと思う声で爆笑した。

「あっはっはっは!!!!!! いやぁ~~~~~、その少年中々勇気あるね~~~~」

「そうですね。まだ一度も告白したことがない俺からすれば、本当に勇気のある人だと思います」

「でも、タリアはその少年に自分への想いを諦めてほしいと…………恋って面倒だね~~。そう思わない、バトムス君」

「…………そうですね。個人的には、簡単なものではないと思います」

バトムスの答えに満足そうな顔を浮かべながら、ベジャラスは目の前の少年に頼まれた件に関して話しを進めていく。

「俺に頼んだ理由は、先輩冒険者の話なら関係無い人物であっても、ちゃんと話を聞くんじゃないか、ってところかな」

「はい。Bランク冒険者であるベジャラスさんからの言葉であれば、あの少年も無視出来ないかと」

ベジャラスはただ腕の立つ冒険者ではない。

冒険者のランクは一番下がFであり、そこからE、D、C、Bと続き、一番上が基本的にAとされている。

Bランクは冒険者の中でも一握りの者しか到達できないランク。
タリアに助けられた少年は新人卒業と言われているDランクにすら到達出来ていない。

ベジャラスにその様な趣味はないが、Dランク以下の者がBランク冒険者からの助言や話を無視すれば、裏でボロ雑巾にされる可能性もある。

「そうだね~~……けどよ、バトムス君。そりゃ俺はこう見えて三十を越えてる。それなりに人生経験、冒険者経験を積んできてはいるけど、恋愛経験が豊富って訳じゃないんだ」

ベジャラスの見た目は気の良いに兄ちゃんという印象が強く、その外見だけであれば二十代前半から半ばに見えるが、しっかりと三十を越えているベテラン冒険者である。

ただし、恋愛はベテランではない。

「歳上なんか狙わずに、同世代の方を狙った方が良い。多分無理だろうから諦めた方が良い。実は人気者だから狙うだけ無駄。そういうのじゃ駄目だっていうのは俺も解る。でもね、恋愛経験は豊富じゃないけど、同業者たちが恋愛する姿はよく見てきたから解るんだよ……ちょっと良い感じのことを言っただけじゃあ、皆諦めないんだよ」

「……それで諦めるなら、本気になってないと」

「だね」

「………………では、嘘の知人を用意してくれませんか」

「嘘の知人?」

「はい、そうです。今回の話を元にして、死んだ知人の話をすれば、あの少年も一旦冷静になれるんじゃないかと思います」

「…………ふふ、なるほど。バトムス君、面白いこと考えるね~~」

恋愛経験がないのは本当であるが、冒険者経験はしっかり積んできているベジャラスはバトムスがどういった嘘の知人を用意し、どういった内容を伝えれば良いのかまで直ぐに理解した。

「タリアさんが心配してるのは、彼の視野が物凄く狭くなってしまうことです。なので、そこをどうにかして貰えれば、最低限の問題はクリア出来るので」

「うん、そうだね。よっぽどのバカじゃなきゃ、理解してくれる自信があるよ」

「では、よろしくお願いします」

そう告げると、バトムスはテーブルの上に金貨を一枚置いた。

「っ!? バトムス君、これってもしかして依頼金かい?」

「はい。ギルドを通してはいませんけど、ベジャラスさんに頼みごとをする、依頼をするという形なのは間違いないので」

「いやいや、そんなに面倒な事じゃないし、ただ後輩にアドバイスするだけの内容だからいらないよ」

「そういう訳にはいきませんよ。Bランク冒険者に依頼をするんですから。それに、先日友人の為にある者を造ったのですが、その際にしっかりと代金を貰いました。なので、ベジャラスさんと友人ではない俺が依頼をするなら、金を払って当然かと」

あまり年齢に相応しくない詰め方に、ベジャラスはギブアップ。

「解った解った。ったく、律儀な性格してるね~~~」

今回が本当にバトムスとの初対面だったこともあり、ベジャラスはバトムスに対してかなりの好印象を持った。

しかし、バトムスは基本的によそ行きの顔や態度をしていたため、普段の彼をよく知る者が見れば……特にある令嬢が彼の様子を見れば「私にもその態度で接しなさいよ!!!!!」と、怒鳴り散らすこと間違いなかった。
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