執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第126話 死にはしない

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「菓子を渡す、か……」

「? そ、そんなに変なあれだったか?」

恋愛相談をされたから乗ったものの、バトムスとしては恋愛経験が豊富ではないため、自身のアドバイスにそこまで自信はない。

「い、いや。多分変なことじゃねぇと思うぜ。ただ、俺がそういう事をして、変って
思われねぇかと思ってよ」

彼は決して陰キャと呼ばれるタイプの人間ではない。
ただ、十八歳になるまで彼女はおらず、素人童貞。

コミュニケーション能力は普通、もしくはそれ以上有していたとしても、本気で行動する為の第一歩が中々踏み出せない。

(…………解るな~~~……うん、マジ解る)

前世のバトムスは中学生らしく、気になる女子生徒がいた。
一応スマホを持っていたので、どうすれば気を引けるのかと調べたものの……そのどれも、実行出来る気がせず、結局一歩も踏み出せなかった。

「なぁ、ブランディ。自分が望む美女とか、彼女っていきなり扉の向こうから現れる訳じゃないんだよ」

「うぐっ!!!」

偉そうに告げるバトムスではあるが、その言葉はバトムスが考えた言葉ではなく、前世の父親が彼に時おり告げていた言葉であった。

その言葉を聞くたびに「そんな事解ってるよ!!」と言い返していたバトムス。
だが、紛れもない事実であり、結局のところ行動しなければ始まらない。

「それに、お礼でって言っただろ。そりゃ普段のブランディらしくはないかもしれないけど、仲間に礼に何かを上げるってのはそんなに変なことではないでしょ」

「そりゃまぁ、そうだな」

「冒険者らしく、武器とかマジックアイテムとかでも良いとは思うけど、それこそ適当な物渡せないでしょ」

「だな」

「それに……懐事情は知らないけど、武器とかマジックアイテムってなたら、それ相応の物買える?」

「っっっっ…………む、難しいな」

「でしょ」

ブランディのランクは、現在D。
既に冒険者として卵から孵り、ケツの殻も取れている。

バトムスだけではなく、先輩冒険者やベテラン職員たちから視ても、更に上のCランクに到達する可能性は十分あると思われている。

そのため、金には困ってないように思われるが……パーティーの貯金はともかく、ブランディ自身の貯金はそこまでである。

「はぁ~~~、やっぱあれかぁ…………娼館に行くのを止めねぇとあれか」

前世でも十二を越えており、現在十二歳に到達してることもあり、一応下世話な話をしても問題は無い。

「あんまり値段は知らないけど、回数は減らした方が良いかもね」

加えて、バトムスもこの世界で肉体的に思春期を迎え始めているため、下世話な話は嫌いではない。

「菓子の値段はちょっと高いって思うかもしれないけど、多分娼館に行く値段よりは安いと思うぞ」

「……オッケー。こう、さりげなく礼を言いつつ、渡せば良いんだな」

「それなら、思いっきり変に思われたり、警戒されることはないと思う」

気になる異性の気を引く……であれば、ここまで問題ない。

ただ、当然ながらその後、大きな問題がある。

「っし……そうだよな。度胸がなきゃ、やれるもんもやれねぇよな」

「そうだな………………それでさ、ブランディ。気になってるってことは、その人と恋人になりたいんだよね」

「っっ……そう、だな」

本当に今更な話なので、さすがに隠そうとはしなかった。

「てことはさ、最終的には告白しなきゃいけないんだよな」

「そうなる、な…………っ!!!!!!」

(あっ、ショートしちゃったか)

自分が気になっている異性に告白する。
その恥ずかしさや諸々をイメージしてしまい、顔が真っ赤に染まるブランディ。

「はぁ~~~~……クソ。モンスターと殺り合ってる方がよっぽど楽だぜ」

「……そうなのかもしれないな」

「なぁ、バトムス。なんかこう……気が楽になるアドバイスとかねぇか」

「なんでそれを……はぁ~~、もういいや」

答える気はあるため、とりあえずツッコむのは止めた。

「そうだなぁ~~…………一途なのは良い事だと思う。ただ、最初に好きになった人と結ばれて、ずっとそのままってのは超珍しいこと……だと思う。だから、ガキの戯言……うん、本当にそう思って欲しんだけど、ブランディの人生、その恋が破れたからって、終わるわけじゃないだろ」

「……そうだな」

ちょっと何か言いたげな顔になるも、バトムスの言う通りだと思い、反論の言葉を口にしなかった。

「失敗しても、死ぬわけじゃない……って考えれば、冒険者からすれば気持ちが楽になるんじゃないか?」

「失敗しても死ぬわけじゃない、か…………ふふ、あっはっは!!!! そうか、そうだな……そりゃ間違いねぇな」

彼らの日常は、狩るか狩られるか。
殺すか、殺されるかが当たり前の世界で生きている。

そう思うと、ブランディの心は多少なりとも軽くなった。

(もっとアドバイスするなら、他にも色々とあるんだろうけど……今は、これで十分か)

友人の表情が軽くなったことで、自然と笑みが零れる。

そして相談が終わった後、多少苦しくはあるも、歳上の意地でカフェでの代金は勿論ブランディが支払った。
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