127 / 166
第127話 割とおかしくない
しおりを挟む
「……………………ふぅーーーー。エルリック師匠、どうでしょうか」
「ふむ…………………………うん、良いね。間違いなく、中級に届いているよ」
「ぃよし!!!!!!」
先程まで、バトムスは薬草の中でもある程度品質の高い薬草を使用し、ポーションを造っていた。
ある程度の品質を有している薬草であっても、確かな腕を持たない者が使えば、ポーションのランクが中級に届くことはない。
だが、バトムスが造ったポーションは錬金術の師であるエルリックから視ても……姉弟子であるファエリナから視ても、確かに中級に到達していた。
「やりましたね! バトムス!!!!」
「ふぐ!!?? あ、ありがとう、ございまふ」
感動で弟弟子を抱きしめるファエリナ。
身長はまだファエリナの方が高いということもあり、豊満な胸に顔がうずめられる。
思春期の男子であれば恥ずかしがり、直ぐに離れようとするものの……ようやっと前世の年齢……思春期に追い付いたバトムスだが、一応人生二周目だからか、とりあえず役得だから受け入れようと考えていた。
「うん……ここに来てない間も、しっかり造り続けてるみたいだね」
「それはまぁ、錬金術は俺の趣味なんで」
「ふふ、そうか」
趣味だから……今しがたバトムスが造り上げたポーションを視て、エルリックは思った……これは、そういう範疇を越えていると。
趣味だから。
その心構えで到達出来るところではないと。
(環境、という利点もあるだろう。ただ、その環境を造っているのもバトムス君自身だと聞く…………それでも、十二歳でこの段階に至れる者は、そうそういないだろう)
エルリックという錬金術師の中でも上澄みに位置する人物から教えられている……錬金術師としてエリート人生を歩んでいると言えば、そうかもしれない。
ただ、エルリックから視てバトムスにはずば抜けた錬金術の才があるようには思えない。
あるのは……人よりもずば抜けた興味、好奇心……続けられる努力。
(この子が本気で錬金術師としの道を…………と思ってしまうのは、多分ジョランさんも同じだろうね)
ジョランというのは、バトムスの鍛冶の師匠。
彼も鍛冶師として上澄みに位置する腕前を持つ者であり、バトムスが幼い頃から鍛冶に関して教え、実際に行う姿を見せている。
もし、この子がこの道だけを進めば……と、両者は思う。
しかしそこは長い人生を歩んできた男たち。
彼が、ただ一つのことに囚われるのではなく、複数の物事に手をなばしているからこそ、今の成長がある事を理解している。
「そういえばバトムス君。友人になった冒険者たちから、仕事を頼まれたりしないのかい?」
「えっと、今のところポーションは頼まれませんね。ただ、武器は造ってほしい偶に頼まれます」
「あら、人気者ね。バトムス」
何故ポーションやマジックアイテムの依頼ではなく武器の製作依頼なのか……と思わなくはないものの、姉弟子としては弟弟子が友人から頼られている話は聞いてて嬉しいものがある。
だが、バトムス本人としては、勘弁してくれと言いたい。
「そういうもんですかね。俺としては、まだまだ半人前だからしっかりと店で売ってる武器を買ってほしいんですけど」
知り合い、一応友人と言えるであろう若い冒険者たちは、バトムスに対してきっちりと相応の料金を払っている。
バトムスとしても、そこをきっちりしてくれるな、まぁ……と思わなくもない。
「……バトムス君。一流の職人たちは彼らで行うべき仕事があるんだ」
「は、はい」
「簡単に言ってしまうと、あまり初心者の武器ばかりを造っていられない。まだ若い……いや、若くなくとも、永遠に向上心という名の炎を燃やしている鍛冶師であれば尚更ね」
初心に帰り、鉄鉱石などの一般的な鉱石を使って武器を造ることは、確かにある。
だが、本当に高みを目指し続ける者はランク、品質の高い素材を使ってこれまでの最高を越える一品を造ろうとする。
「だから、冒険者として活動を始めて、まだ卵と言える子たちが使う武器は、同じくまだ製作者から見て卵である者たちが造ってることが多いんだ」
「…………それは、そうなのかも……というか、そうですね。ちょっと、冷静に考えられてませんでした」
ちょっと考えれば解ることだったと思い、反省するバトムス。
「そんなに落ち込むことじゃないよ。だから、友人たちがバトムス君を頼るのはそこまでおかしい事ではないということだよ。それに……腕前を上達させるという意味では、定期的に受けておいて損はないと思うよ」
「……かもしれませんね」
友人からの頼みとはいえ、客は客。
アドレアスから頼まれた時と同じ……ように造り終えた後、ぶっ倒れることはないものの、それでも全身全霊で造り上げていた。
誰かの為に造る武器だからこそ、普段造る時と比べて心構えが異なる。
(…………少しは、自分がこれまで頑張ってきた努力に対して、自信を持っても良いのかもな)
弟子が良い笑みを浮かべる姿を見て、師匠と姉弟子もほっこりとした笑みを浮かべるのだった。
「ふむ…………………………うん、良いね。間違いなく、中級に届いているよ」
「ぃよし!!!!!!」
先程まで、バトムスは薬草の中でもある程度品質の高い薬草を使用し、ポーションを造っていた。
ある程度の品質を有している薬草であっても、確かな腕を持たない者が使えば、ポーションのランクが中級に届くことはない。
だが、バトムスが造ったポーションは錬金術の師であるエルリックから視ても……姉弟子であるファエリナから視ても、確かに中級に到達していた。
「やりましたね! バトムス!!!!」
「ふぐ!!?? あ、ありがとう、ございまふ」
感動で弟弟子を抱きしめるファエリナ。
身長はまだファエリナの方が高いということもあり、豊満な胸に顔がうずめられる。
思春期の男子であれば恥ずかしがり、直ぐに離れようとするものの……ようやっと前世の年齢……思春期に追い付いたバトムスだが、一応人生二周目だからか、とりあえず役得だから受け入れようと考えていた。
「うん……ここに来てない間も、しっかり造り続けてるみたいだね」
「それはまぁ、錬金術は俺の趣味なんで」
「ふふ、そうか」
趣味だから……今しがたバトムスが造り上げたポーションを視て、エルリックは思った……これは、そういう範疇を越えていると。
趣味だから。
その心構えで到達出来るところではないと。
(環境、という利点もあるだろう。ただ、その環境を造っているのもバトムス君自身だと聞く…………それでも、十二歳でこの段階に至れる者は、そうそういないだろう)
エルリックという錬金術師の中でも上澄みに位置する人物から教えられている……錬金術師としてエリート人生を歩んでいると言えば、そうかもしれない。
ただ、エルリックから視てバトムスにはずば抜けた錬金術の才があるようには思えない。
あるのは……人よりもずば抜けた興味、好奇心……続けられる努力。
(この子が本気で錬金術師としの道を…………と思ってしまうのは、多分ジョランさんも同じだろうね)
ジョランというのは、バトムスの鍛冶の師匠。
彼も鍛冶師として上澄みに位置する腕前を持つ者であり、バトムスが幼い頃から鍛冶に関して教え、実際に行う姿を見せている。
もし、この子がこの道だけを進めば……と、両者は思う。
しかしそこは長い人生を歩んできた男たち。
彼が、ただ一つのことに囚われるのではなく、複数の物事に手をなばしているからこそ、今の成長がある事を理解している。
「そういえばバトムス君。友人になった冒険者たちから、仕事を頼まれたりしないのかい?」
「えっと、今のところポーションは頼まれませんね。ただ、武器は造ってほしい偶に頼まれます」
「あら、人気者ね。バトムス」
何故ポーションやマジックアイテムの依頼ではなく武器の製作依頼なのか……と思わなくはないものの、姉弟子としては弟弟子が友人から頼られている話は聞いてて嬉しいものがある。
だが、バトムス本人としては、勘弁してくれと言いたい。
「そういうもんですかね。俺としては、まだまだ半人前だからしっかりと店で売ってる武器を買ってほしいんですけど」
知り合い、一応友人と言えるであろう若い冒険者たちは、バトムスに対してきっちりと相応の料金を払っている。
バトムスとしても、そこをきっちりしてくれるな、まぁ……と思わなくもない。
「……バトムス君。一流の職人たちは彼らで行うべき仕事があるんだ」
「は、はい」
「簡単に言ってしまうと、あまり初心者の武器ばかりを造っていられない。まだ若い……いや、若くなくとも、永遠に向上心という名の炎を燃やしている鍛冶師であれば尚更ね」
初心に帰り、鉄鉱石などの一般的な鉱石を使って武器を造ることは、確かにある。
だが、本当に高みを目指し続ける者はランク、品質の高い素材を使ってこれまでの最高を越える一品を造ろうとする。
「だから、冒険者として活動を始めて、まだ卵と言える子たちが使う武器は、同じくまだ製作者から見て卵である者たちが造ってることが多いんだ」
「…………それは、そうなのかも……というか、そうですね。ちょっと、冷静に考えられてませんでした」
ちょっと考えれば解ることだったと思い、反省するバトムス。
「そんなに落ち込むことじゃないよ。だから、友人たちがバトムス君を頼るのはそこまでおかしい事ではないということだよ。それに……腕前を上達させるという意味では、定期的に受けておいて損はないと思うよ」
「……かもしれませんね」
友人からの頼みとはいえ、客は客。
アドレアスから頼まれた時と同じ……ように造り終えた後、ぶっ倒れることはないものの、それでも全身全霊で造り上げていた。
誰かの為に造る武器だからこそ、普段造る時と比べて心構えが異なる。
(…………少しは、自分がこれまで頑張ってきた努力に対して、自信を持っても良いのかもな)
弟子が良い笑みを浮かべる姿を見て、師匠と姉弟子もほっこりとした笑みを浮かべるのだった。
94
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる