執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第134話 今でも変わらず

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「……バトムス……これ、本気か?」

「えぇ、本気です」

現在、バトムスは何度か依頼をしたことがある建設業の男性に依頼書を提出していた。

バトムスが家を建ててもらった時にも関わっているため、目の前の少年がただの少年ではないことは十分理解していた。
理解しているが……それでも、再度普通ではないと……本音では、頭おかしいのかとツッコミたくなる。

「まぁ、出来なくはない……俺らとしても、懐が潤うのは嬉しいんだが……金は大丈夫なのか?」

「えぇ、大丈夫です。溜め込んでばっかりいるとあれなんだ、偶にはがっつり使わないといけないんで」

「そ、そうか……うん、そうだな。お前がそういうなら、引き受けさせてもらうわ」

依頼金の額は、中々にぶっ飛んでいる。

家を建てた時ほどの額ではないが、それでも貴族の令息でも出せない……貴族の当主であっても、気軽に使える額ではない。

しかし、本人が良いと……問題無いと、寧ろ偶にはがっつり使わないとよろしくないと言っているため、男は有難くバトムスからの依頼を引き受けた。






「~~~~~♪」

「……随分と機嫌が良いな」

深夜、厨房でクローゼルと共に夜食のラーメンを作るバトムス。

そんな中、彼は楽し気に鼻歌を零していた。
バトムスにしては、珍しく機嫌が良いのが解り易い。

「そうですか?」

「あぁ。鼻歌を零すなど、珍しいだろう」

「……かもしれませんね」

無意識に零していたため、やや恥ずかしさを感じるも、機嫌が良さそうということに関しては否定しなかった。

「何か良いことでもあったのか」

「そうですね……実は、今度王都に行くんですよ」

「ほぅ、王都か…………あれか、ルチアお嬢様が参加する大会を見に行くためか」

過去、クローゼルも参加したことがあるため、訊かずともバトムスが王都へ向かう理由を言い当てた。

「まぁ、そうですね。それで、俺は思ったんですよ。王都へ向かう間、鍛冶が出来ないと」

「…………まぁ、それはそうだな」

クローゼルはツッコミたいところがあるも、一先ずその通りではあると同意する。

「俺としてはそれが嫌なんですよ。だって、王都まで結構距離があるじゃないですか」

「そうだな」

「錬金術は出来なくもないですけど、鍛冶は鍛冶場がないと出来ないじゃないですか」

「あぁ、その通りだ」

「だから、移動用の鍛冶場を造ってもらうんですよ」

「……………………そう、か」

ちょっと何を言てるのか解らなかった。

言葉の意味は理解出来る。
そこは理解出来るが……それでも、それを実行してしまう行動力やその他諸々が理解出来なかった。

「出発までには間に合いそうです」

「それは良かったな…………しかし、とんでもない金額になるのではないか」

「ここ最近大金を使ってなかったので、そこまで問題はなかったです」

「…………ふふ、そうだな」

新しい料理、というのは一つの財産になる。
加えてバトムスが権利を得たのは料理だけではないため、その点に関して気にする無駄だと思い出すクローゼル。

誰もが思う通り、バトムスの金遣いは時々バカかとツッコミたくなる。

しかし、バトムスとしてはどこでもスローライフを送りたい人間。
普段行っている趣味を欠かしたくないからこそ、別の街へ向かうことを躊躇う。

「……王都以外の街へ向かう時も、道中で退屈することはなさそうだな」

「あぁ~~~~…………そうかも、しれませんね」

道中の退屈、腕が錆びることへの恐怖は今回の依頼によって消える。
であれば、クローゼルが語る通り、別の街へ向かうことも出来る。

(………………つっても、別に俺は冒険者じゃないからな)

興味は、ゼロではない。
ただ、バトムスはやりたい事だけをやって生活したい。
そんな生活を望むからこそ、不安要素を解消出来そうだとしても、あまりその気にはならない。

しかし、ラーメンが出来上がって夜食を食べている間、クローゼルが話すクレステント以外の街のあれこれを聞いて少し……ほんの少しではあるが、興味が大きくなるのだった。





「んじゃ、留守番頼むぞ」

「バウ!!」

マーサルベアであるパーズを共に連れて行くと、道中での護衛としては頼もしいものの、王都に着いてから面倒事に巻き込まれる要因になるかもしれないため、お留守番になった。

パーズとしては当然寂しい。
ただ、バトムスがいなくなったとしても、彼をもふもふしてくれる人は大勢いるため、寂し過ぎてバトムスを追いかけようとすることはない。

現在のパーズはバトムスと出会ってから五年以上が経ち、既に成体と言っても過言ではない。
何も知らない者が見れば、可愛さとは無縁じゃないかと思ってもおかしくない……だが、アブルシオ辺境伯家の従者たちにとっては、体が大きくなろうとも可愛いマスコット……癒しを与えてくれる存在であることに変わりはない。

「帰ってきたら、一緒に美味い飯食べようぜ」

「っ、バウ!!!!!」

それはそれで楽しみであり、パーズはギュッとバトムスを抱きしめるのだった。
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