執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第142話 後輩?

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(よほど、この店にある武器が気に入ってくれたみたいだな)

その日の内に戻ってきたことに、黒髪美人……ミヤは少々驚くも、やはり嬉しいという感情が零れる。

少年が店内の商品に対し、目を輝かせて見ていたのは主に刀剣類。

この国では一般的な武器ではないと解っている。
そこにどうこう思う事はないが、それでも少年が刀剣の類を気に入っていることに嬉しさを感じずにはいられなかった。

「えっと、これと……これと、これと」

「…………」

「それとこれと……あと、これと、これ。ごめん、シエル。持ってくれ」

「は~~い」

「あと……これと、これ」

「……?」

購入する得物を選んでいく少年。
それは構わない……普段通りの光景である。

だが、少年が購入する数はどんどん増えていく。
加えて……選んだ物たちは、どれも安くない。
値段だけで推察しているのではなく、確かな目利きが出来るのが解る。

ただ……多い。
どう考えても、一人で購入する量ではない。

「すいません」

「っ! あ、あぁ。どうしたかな」

「ショーケースの中にある物も幾つか買いたくて。あっ、安心してください。ちゃんとお金は用意してるんで」

バトムスは懐に備えていた黒曜金貨を取り出し、ミヤに見せる。

「なっ!!!!!?????」

ある程度の金を引き下ろしてきたのは予想出来ていた。

そのため、白金貨までであれば驚くこともなかった。
しかし……黒曜金貨は、完全に想定外である。

(貴族の令息なのかとは思っていたが……侯爵…………いや、公爵の子、なのか?)

ミヤはそこまで貴族のあれこれに関して詳しくない。
だが、それぐらの地位に立つ親を持たなければ、用意出来る金額ではないことは解る。

「そ、そう、か……わ、解った」

鍵を使い、ショーケースを開ける。

「これと……これ。それと、こっちと……あと、これとこれも」

「……………………」

ミヤは意識が飛びそうになるのをなんとか堪え、少年が選んだ武器を取り出していく。

ショーケースの中に入っている得物ということもあり、良いお値段がするものばかり。
それこそ、金貨だけでは足りず……白金貨数枚だけでは足りないものもザラにある。

だが、それらの武器も、黒曜金貨という最強の硬貨があれば、購入出来る。

「あっ、えっと……その、予約されてる武器とかは、ないですよね」

「あ、あぁ。そうだな。店に置いてある武器なら、予約とかはされてないが」

「良かった~~~。それじゃあ、あとこれと」

(ま、まだ買うのか!?)

店の売り上げが増えるのは喜ばしいことである。

売上が増えて嬉しくない商売人はいない。
ミヤは鍛冶師の一面を持ってるが、それでも売り上げが増えるのは普通に嬉しいが……ここまでくると、色々と怖くなってくる。

「これらを全部買います」

「わ、分かった。少し待ってほしい」

空になった部分の値札を確認していき、ミヤは素早く計算していく。
計算するたびに金額が恐ろしくなっていくが……商売であるため、しっかりと漏れがないように確認しなければならない。

「ご、合計で黒曜金貨が二枚と白金貨が八十五枚……それと、金貨が五十七枚、だ」

「分かりました」

合計額を聞き、バトムスは素早く懐から黒曜金貨二枚と白金貨八十五枚、金貨五十七枚をピッタリだした。

それらの大金をまたピッタリあるか計算していくミヤ。

「……………………ちょ、丁度、ピッタリだ」

「では」

アイテムバッグやリングに刀たちを入れていくバトムス。

その光景と、カウンターに置かれている金額を何度も交互に見る。

(これが貴族の大人買い……大人買い? おそらくだが、富豪買いといった額のような気が)

貴族の詳しい懐事情は知らない。
それでも、そこら辺の貴族がほいっと出せる金額ではないのは間違いなかった。

(こりゃあ、暫く店の方は休業にした方が良いって伝えとかないと)

店にはまだ商品が残っているものの、目玉と言える商品の大半はバトムスが購入してしまった。

「すまない。私も購入させてもらう」

「あ、はい……ま、まいど」

バトムスの跡にノウザスが購入した二つの太刀は……決して低品質な物ではない。
彼としても、決して安くない出費だった。

ただ、ミヤとしては黒曜金貨を使う様な購入の後だったため、なんとも言えない感覚を覚えるのだった。

「良き刀剣や槍を買わせていただき、ありがとうございました!!!!!」

「あ、あぁ……それらを造った人たちに、しっかりと伝えておくよ」

まだ噴火の様な驚きが止まらない中、ミヤは少年の手を見て……落ち着きを取り戻した。

何故なら、彼の手は武器を振るう者の手であり、何かを造る者の手でもあったから。

(まさか後輩と呼べる立場の者だったとは……ふふ、しかも同種の後輩…………しかし、あの様な貴族の令息などいたのか?)

店の扉にクローズの看板を掛け、大富豪少年がまさかの自分と同じく鍛冶と戦闘を両立させている後輩だと知り、何故だか笑みが零れるミヤ。

ただ、色々と目立つ内容がてんこ盛りであるにも関わらず、一度も自分の耳に少年の情報が入っていなかったことに首を傾げるのだった。
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