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第146話 熱
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「………………」
周囲が騒ぐ中、バトムスはじっくり闘技場で行われている戦いを観戦していた。
(……バトムスにとっては、やや物足りないか?)
戦いのレベルが低い、という訳ではない。
トーナメントの優勝候補と呼ばれる者たちではないが、それでも見応えのある戦いを繰り広げていた。
しかし……バトムスはアブルシオ辺境伯家の訓練場で、学生たちの試合以上の模擬戦を毎日のように観ていた。
そして、バトムス自身……訓練の虫というわけではないが、訓練の時間は全力で強くなることに集中している。
その結果が、これまで討伐してきたモンスターの数として現れている。
(そうよね~~。限界値はトーナメントに参加する子たちの方が大きいかもしれないけど、現時点での完成度はバトムスの方が上。身体能力に魔力量……技術力、戦闘経験、戦いに関する技術に思考力…………まだ、この子に並ぶ者は殆どいないでしょう)
バトムスは自身のことを凡だと思っている。
だが、本当に凡なのか否かはこの先解ることではあるが……現段階では、戦う者としての完成度が違う。
事実、パワーに関してはバトムスを上回り始めてはいるが、ルチアはバトムスとの模擬戦や試合でまだ一度も勝てていない。
それはルチアだけではなく、アルフォンスも似た様な戦績内容である。
「いけっ!! そこだっ!!! あっ、惜しい!!!!」
そんな中、シエルはすっかり闘技場の熱が移り、声を張り上げて声援を送っていた。
特に現在舞台で戦っている生徒のどちらかと知り合いという訳ではなく、気に入った方に肩入れをして応援していた。
「そこまでっ!!!!!!!!」
そして第一試合が始まってから四分ほどが経ち、終了。
槍使いの男子学生が長剣使いの男子学生を打ち破り、勝利を掴み取った。
勝者の名前が告げられ、会場のボルテージは一層高まる。
「……退屈だったか、バトムス」
「………………」
「バトムス?」
「っ、あぁ。なんですか、ノウザスさん」
「いや、バトムスにとっては少々退屈だったかと思ってな」
護衛騎士の問いに、バトムスはほんの少し悩んでから答えた。
「普段観てる模擬戦よりも、内容が薄いとは思いました。でも……普段観ている模擬戦にはない、熱を感じました」
「熱か」
「はい。多くの観客が騒いでるからではなく、こう……舞台で戦っている学生たちが、持つ意志が……本当に熱いなと、感じました」
普段観ている模擬戦よりも内容が薄いというのは、間違いない。
ただ、舞台で戦う学生たちは、己の未来を懸けて、全身全霊で戦っている。
勿論学生の力量差次第では、そうならない可能性もあると解っている。
それでも……今しがた舞台で行われた試合は、間違いなく互いが己の全てをぶつけ合い、勝利を掴み取ろうとする熱い激闘だった。
(ギデオン様に誘われて観に来たけど……うん、観に来て良かったな)
自分が闘うからこそ、心の奥底が熱くなるというのは解る。
だが、これまで人の戦いを観て、同じ様な熱さを感じることは、今までなかった。
「観に来て良かったと」
「えぇ……とりあえず、今回は観に来て良かったと思います」
人生を懸けてぶつかり合う者たちの戦いを始めて観るからこそ、今心に灯っている様な熱を感じられる……のかもしれないと、バトムスは熱くなっている割に冷静に今の感覚について考えていた。
(何度も何度も観てたら飽きそうだけど、それこそ……一年に一回のペースなら、この熱に慣れることもない、か)
あれこれ考えている間に、一回戦の第二試合が始まった。
(もっとハイレベルな同じく熱くさせてくれる戦いを観れば、これには熱く感じなくなってしまうのかな………………いや、もう答えが出てるか)
この闘技場で行われているのが、中等部一年生のトーナメント。
この会場にいる観客たちが、毎年中等部一年のトーナメントだけを観ているとは限らない。
にもかかわらず……多くの者たちが熱く叫び、盛り上がり……学生たちに声援を送っていた。
(一年に一回か…………それぐらいなら、ありかな)
基本的に故郷の領地から出るつもりはないバトムス。
しかし、目の前で行われている様な観ているだけで心の奥底を熱くさせてくれる戦いは、観られる場所が限られている。
そして、王都であれば毎年それを定期的に観ることが出来る。
「ハマったかしら?」
「そうですね……本当に、来て良かったと……良いものを観れていると思います」
自分もあんな戦いをしたい!!!!!! という思いが湧き上がってくることはない。
そこはバトムスらしいものの、間違いなく心の奥底から湧き上がる炎に心地良さを感じていた。
そしてもう一試合、二試合……三試合と進んだところで、ようやっとルチアの出番がやってきた。
周囲が騒ぐ中、バトムスはじっくり闘技場で行われている戦いを観戦していた。
(……バトムスにとっては、やや物足りないか?)
戦いのレベルが低い、という訳ではない。
トーナメントの優勝候補と呼ばれる者たちではないが、それでも見応えのある戦いを繰り広げていた。
しかし……バトムスはアブルシオ辺境伯家の訓練場で、学生たちの試合以上の模擬戦を毎日のように観ていた。
そして、バトムス自身……訓練の虫というわけではないが、訓練の時間は全力で強くなることに集中している。
その結果が、これまで討伐してきたモンスターの数として現れている。
(そうよね~~。限界値はトーナメントに参加する子たちの方が大きいかもしれないけど、現時点での完成度はバトムスの方が上。身体能力に魔力量……技術力、戦闘経験、戦いに関する技術に思考力…………まだ、この子に並ぶ者は殆どいないでしょう)
バトムスは自身のことを凡だと思っている。
だが、本当に凡なのか否かはこの先解ることではあるが……現段階では、戦う者としての完成度が違う。
事実、パワーに関してはバトムスを上回り始めてはいるが、ルチアはバトムスとの模擬戦や試合でまだ一度も勝てていない。
それはルチアだけではなく、アルフォンスも似た様な戦績内容である。
「いけっ!! そこだっ!!! あっ、惜しい!!!!」
そんな中、シエルはすっかり闘技場の熱が移り、声を張り上げて声援を送っていた。
特に現在舞台で戦っている生徒のどちらかと知り合いという訳ではなく、気に入った方に肩入れをして応援していた。
「そこまでっ!!!!!!!!」
そして第一試合が始まってから四分ほどが経ち、終了。
槍使いの男子学生が長剣使いの男子学生を打ち破り、勝利を掴み取った。
勝者の名前が告げられ、会場のボルテージは一層高まる。
「……退屈だったか、バトムス」
「………………」
「バトムス?」
「っ、あぁ。なんですか、ノウザスさん」
「いや、バトムスにとっては少々退屈だったかと思ってな」
護衛騎士の問いに、バトムスはほんの少し悩んでから答えた。
「普段観てる模擬戦よりも、内容が薄いとは思いました。でも……普段観ている模擬戦にはない、熱を感じました」
「熱か」
「はい。多くの観客が騒いでるからではなく、こう……舞台で戦っている学生たちが、持つ意志が……本当に熱いなと、感じました」
普段観ている模擬戦よりも内容が薄いというのは、間違いない。
ただ、舞台で戦う学生たちは、己の未来を懸けて、全身全霊で戦っている。
勿論学生の力量差次第では、そうならない可能性もあると解っている。
それでも……今しがた舞台で行われた試合は、間違いなく互いが己の全てをぶつけ合い、勝利を掴み取ろうとする熱い激闘だった。
(ギデオン様に誘われて観に来たけど……うん、観に来て良かったな)
自分が闘うからこそ、心の奥底が熱くなるというのは解る。
だが、これまで人の戦いを観て、同じ様な熱さを感じることは、今までなかった。
「観に来て良かったと」
「えぇ……とりあえず、今回は観に来て良かったと思います」
人生を懸けてぶつかり合う者たちの戦いを始めて観るからこそ、今心に灯っている様な熱を感じられる……のかもしれないと、バトムスは熱くなっている割に冷静に今の感覚について考えていた。
(何度も何度も観てたら飽きそうだけど、それこそ……一年に一回のペースなら、この熱に慣れることもない、か)
あれこれ考えている間に、一回戦の第二試合が始まった。
(もっとハイレベルな同じく熱くさせてくれる戦いを観れば、これには熱く感じなくなってしまうのかな………………いや、もう答えが出てるか)
この闘技場で行われているのが、中等部一年生のトーナメント。
この会場にいる観客たちが、毎年中等部一年のトーナメントだけを観ているとは限らない。
にもかかわらず……多くの者たちが熱く叫び、盛り上がり……学生たちに声援を送っていた。
(一年に一回か…………それぐらいなら、ありかな)
基本的に故郷の領地から出るつもりはないバトムス。
しかし、目の前で行われている様な観ているだけで心の奥底を熱くさせてくれる戦いは、観られる場所が限られている。
そして、王都であれば毎年それを定期的に観ることが出来る。
「ハマったかしら?」
「そうですね……本当に、来て良かったと……良いものを観れていると思います」
自分もあんな戦いをしたい!!!!!! という思いが湧き上がってくることはない。
そこはバトムスらしいものの、間違いなく心の奥底から湧き上がる炎に心地良さを感じていた。
そしてもう一試合、二試合……三試合と進んだところで、ようやっとルチアの出番がやってきた。
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