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第164話 欲する輝き
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「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」
観客たちは、目の前で起こっている光景に声援を送れなかった。
何故なら……先ほどの準決勝と比べ、結果的にそうなってしまったとはいえ、現在行われている事実上の決勝戦は…………あまりにも一方的な試合だった。
(ここまで、一方的になるか)
ガルジャス・ノルナーバが使用している武器は二振りの戦斧。
二刀流であるため、手数はガルジャスの方が多く、斬るだけではなく叩き潰すことも出来る戦斧に捉えられれば、細剣が破壊される可能性もある。
相性としては、決して悪くない。
観客たちだけではなく戦闘を生業とする騎士や冒険者、VIPルームで観戦している貴族たちも同じ予想をしていた。
いくらアルフォンスといえど、これまで通り余裕のある戦いにはならないと。
しかし……実際は余裕があるのかは解らないものの、決勝戦とは思えないほど一方的な戦いであるのは間違いなかった。
「っ、ぅおらあああああああッッッッ!!!!!」
「………………ッ!!!」
「ぐっ!!!!????」
ガルジャスの反撃を冷静に見切り、得意の刺突を叩き込む。
当然一度で終わるわけがなく、二発三発と数か所ほど叩き込まれ……ガルジャスがなんとか勢いよく双斧を振り回すことで距離を取れた。
「バトムス……これ、決勝戦、なんだよね?」
「事実上であはるけど、決勝戦なのは間違いない………………ただ、対戦相手のガルジャスとアルフォンス様では、見えてる景色が違う……いや、アルフォンス様が視え過ぎているだけ、か?」
アルフォンスはガルジャスという決して弱くない……山を登ってきた強者を相手に、一切輝かせない動きを見せていた。
(キラーインスティンクト、だったか? 多分、アルのやつにはガルジャスの泣き所が見えてるんだろうな……じゃなきゃ、あれだけ全ての攻撃に対応しながらカウンターを決められる理由が解らない)
双斧を扱うガルジャスは一見パワータイプに思われがちだが、同等かそれ以上にスピードも優れていた。
そのため、スピードタイプであるアルフォンスであっても、完全に圧倒することは難しい相手である。
(でも、アルってそんなに闘争心が強い奴だったか? そりゃ強くなることに良い意味で妥協しないやつではあると思うけど……いや、単にセンスや洞察力の話か?)
まだ確定できないところが多いものの、一つだけ断言できることがある。
今……目の前で行われている決勝戦は、間違いなく闘争ではない。
「……アルフォンス様は、なんで終わらせないんだろう」
「細剣という武器の特徴だ。鋭く回転率が高い武器だが、一撃で仕留める力がない。一撃で仕留めるなら急所を刺す必要がある。けど、そうすれば試合じゃなくて殺し合いになる」
「そ、そっか」
シエルは決して思考力が高い方ではないが、それでもおバカではない。
少し考えれば解っていたが、目の前の戦いの影響もあってから、それすら考えられなかった。
「加えて……ガルジャス・ノルナーバの体が思っていたよりも頑丈だからだ」
「…………あまり、出血してない?」
「伊達に準決勝まで上げってきてないってことだな。それもあって、アルフォンス様もあっさりと終わらせられない……と、思う」
細剣の特徴、ガルジャスの頑丈さ……そのどれも正しい。
だが、バトムスが断言できなかったのには、ある憶測があったから。
そして、その憶測は……的中していた。
「……アルフォンス様は、見たいのかもしれないな」
「見たい、とは?」
「バトムスも解っているのではないか。アルフォンス様が、あの二人が見せた輝きを期待していることに」
「っっ……ノウザスさんとライラさんも同じことを考えてるなら、そうなのかもしれませんね」
ルチア、ラニエの二人は限界を越えた戦いを繰り広げた。
それは普段の模擬戦、試合では見られることのない様々な要素が混ざり合った結果、両者が魅せた輝き。
「けど、それは…………絶対に、無理じゃないでしょうか」
「あぁ……そうだな。どれだけアルフォンス様が望まれようとも、この戦いでは叶わぬ願いだ」
ノウザスの言葉に、周囲にいる観客たちは誰一人として反論する言葉は口にせず、多くの者たちが小さく頷くだけ。
(あれだけ完璧に見切られてたら……対等な戦いじゃない。ガルジャスには申し訳ないけど……完璧に格上と格下の戦いだ)
バトムスは決してガルジャス・ノルナーバのことを嘗めてはおらず、見下してもいない。
仮に自分が真正面から戦えば、絶対にアルフォンスの様な圧倒的過ぎる戦いは出来ないと断言できる。
(アルフォンス……無理だ。あれは……あぁいった戦いは、どちらも絶対に勝ちたいって思いがなければ発生しない戦いなんだよ)
事実上の決勝戦という戦いに対し、アルフォンスには勝つ気がないという訳ではない。
ただ、アルフォンスの中で無意識ではあるものの、この戦いに関して勝つことは決定事項だと認識してしまっていた。
あまりにも不遜で傲慢な認識である。
だが……それでも、目の前で起こっている結果が全て。
誰の目から見ても、ここからの逆転劇は……あり得なかった。
観客たちは、目の前で起こっている光景に声援を送れなかった。
何故なら……先ほどの準決勝と比べ、結果的にそうなってしまったとはいえ、現在行われている事実上の決勝戦は…………あまりにも一方的な試合だった。
(ここまで、一方的になるか)
ガルジャス・ノルナーバが使用している武器は二振りの戦斧。
二刀流であるため、手数はガルジャスの方が多く、斬るだけではなく叩き潰すことも出来る戦斧に捉えられれば、細剣が破壊される可能性もある。
相性としては、決して悪くない。
観客たちだけではなく戦闘を生業とする騎士や冒険者、VIPルームで観戦している貴族たちも同じ予想をしていた。
いくらアルフォンスといえど、これまで通り余裕のある戦いにはならないと。
しかし……実際は余裕があるのかは解らないものの、決勝戦とは思えないほど一方的な戦いであるのは間違いなかった。
「っ、ぅおらあああああああッッッッ!!!!!」
「………………ッ!!!」
「ぐっ!!!!????」
ガルジャスの反撃を冷静に見切り、得意の刺突を叩き込む。
当然一度で終わるわけがなく、二発三発と数か所ほど叩き込まれ……ガルジャスがなんとか勢いよく双斧を振り回すことで距離を取れた。
「バトムス……これ、決勝戦、なんだよね?」
「事実上であはるけど、決勝戦なのは間違いない………………ただ、対戦相手のガルジャスとアルフォンス様では、見えてる景色が違う……いや、アルフォンス様が視え過ぎているだけ、か?」
アルフォンスはガルジャスという決して弱くない……山を登ってきた強者を相手に、一切輝かせない動きを見せていた。
(キラーインスティンクト、だったか? 多分、アルのやつにはガルジャスの泣き所が見えてるんだろうな……じゃなきゃ、あれだけ全ての攻撃に対応しながらカウンターを決められる理由が解らない)
双斧を扱うガルジャスは一見パワータイプに思われがちだが、同等かそれ以上にスピードも優れていた。
そのため、スピードタイプであるアルフォンスであっても、完全に圧倒することは難しい相手である。
(でも、アルってそんなに闘争心が強い奴だったか? そりゃ強くなることに良い意味で妥協しないやつではあると思うけど……いや、単にセンスや洞察力の話か?)
まだ確定できないところが多いものの、一つだけ断言できることがある。
今……目の前で行われている決勝戦は、間違いなく闘争ではない。
「……アルフォンス様は、なんで終わらせないんだろう」
「細剣という武器の特徴だ。鋭く回転率が高い武器だが、一撃で仕留める力がない。一撃で仕留めるなら急所を刺す必要がある。けど、そうすれば試合じゃなくて殺し合いになる」
「そ、そっか」
シエルは決して思考力が高い方ではないが、それでもおバカではない。
少し考えれば解っていたが、目の前の戦いの影響もあってから、それすら考えられなかった。
「加えて……ガルジャス・ノルナーバの体が思っていたよりも頑丈だからだ」
「…………あまり、出血してない?」
「伊達に準決勝まで上げってきてないってことだな。それもあって、アルフォンス様もあっさりと終わらせられない……と、思う」
細剣の特徴、ガルジャスの頑丈さ……そのどれも正しい。
だが、バトムスが断言できなかったのには、ある憶測があったから。
そして、その憶測は……的中していた。
「……アルフォンス様は、見たいのかもしれないな」
「見たい、とは?」
「バトムスも解っているのではないか。アルフォンス様が、あの二人が見せた輝きを期待していることに」
「っっ……ノウザスさんとライラさんも同じことを考えてるなら、そうなのかもしれませんね」
ルチア、ラニエの二人は限界を越えた戦いを繰り広げた。
それは普段の模擬戦、試合では見られることのない様々な要素が混ざり合った結果、両者が魅せた輝き。
「けど、それは…………絶対に、無理じゃないでしょうか」
「あぁ……そうだな。どれだけアルフォンス様が望まれようとも、この戦いでは叶わぬ願いだ」
ノウザスの言葉に、周囲にいる観客たちは誰一人として反論する言葉は口にせず、多くの者たちが小さく頷くだけ。
(あれだけ完璧に見切られてたら……対等な戦いじゃない。ガルジャスには申し訳ないけど……完璧に格上と格下の戦いだ)
バトムスは決してガルジャス・ノルナーバのことを嘗めてはおらず、見下してもいない。
仮に自分が真正面から戦えば、絶対にアルフォンスの様な圧倒的過ぎる戦いは出来ないと断言できる。
(アルフォンス……無理だ。あれは……あぁいった戦いは、どちらも絶対に勝ちたいって思いがなければ発生しない戦いなんだよ)
事実上の決勝戦という戦いに対し、アルフォンスには勝つ気がないという訳ではない。
ただ、アルフォンスの中で無意識ではあるものの、この戦いに関して勝つことは決定事項だと認識してしまっていた。
あまりにも不遜で傲慢な認識である。
だが……それでも、目の前で起こっている結果が全て。
誰の目から見ても、ここからの逆転劇は……あり得なかった。
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