執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第11話 幾ら消えるのか

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「え……な」

「んじゃ、俺の勝ちってことで。さいなら~~~~~」

「ま、待ちなさい!!!!!」

「言い訳は聞きませんよ~~~~」

試合は終了。
勿論、勝者はバトムス。

審判の騎士だけではなく、多くの騎士や魔術師たちが観ていたため、結果が覆ることはあり得ない。
彼等の中にはバトムスではなくルチアのことを応援している者もいるが、それと真剣勝負の結果は別であり、そこに関して文句を言う者はいなかった。

「なん、で……なんで、なんでなのよ」

「…………」

審判を務めていた騎士は、直ぐにルチアへ掛ける言葉が見つからなかった。

ルチアが試合に臨む心意気は十分であり、ウォーミングアップも完璧に行い……まさにベストコンディションの状態であった。
だが……無情にも、試合は一分と経たずに終わった。

(バトムスが追加した、足裏以外の部分が地面が付いたら負けというルール……ルチア様を必要以上に傷付けずに済む以外の考えもあるとは思っていたが…………末恐ろしいな)

騎士は何故ルチアがあっさりと瞬殺されたのか、どうしてバトムスが足裏以外の部分が地面に付いたら負けというルールを追加したのか解った。

解ってしまったが故に、既に訓練場から姿を消したバトムスの末恐ろしさに……震えずにはいられなかった。

「私だって、頑張って、きたのに」

「…………」

審判を担当した騎士だけではない。
瞬殺劇を観ていた者たち、全員が必死で慰めの言葉を考えるも……言葉が出てこない。

魔術師たちは、明確なルチアの範囲が解らなかったが、接近戦がメインである騎士たちは審判を担当した騎士と同様に、諸々の理由を把握。
把握してしまったからこそ、より上手い言葉が出てこない。

(追加したルールを考えれば、ただ真正面から斬り合って勝つよりも、バランスを崩して足裏以外の部分を地面に付ける方が手っ取り早ぇ)

(……理屈は、解る。おそらく、元々あのように倒すと決めていたのだろう。ただ……あまりにもスムーズな動きだったな)

(あちゃ~~~~。こりゃあ、今すぐもう一回試合をしたとしても、多分速攻で負けるだろうなぁ…………なんつ~か、今までは高過ぎる向上心を持ってるて印象だったが、バトムスの奴は純粋に戦いが上手いな)

足裏以外の部分が地面に付いたら負け。
つまり、両脚で立ち続けるというバランスを維持しなければならない。

非常に当たり前過ぎる内容だが、大剣を振るえば体は前に向かう。
避ければ避けた方向に体が動き、大剣でガードすれば、押し込まれない様に耐えようとする力が生まれる。

上半身だけ流れない様に足も動かす。
当たり前のことだが、五歳児に相手がそこを狙って動くようにと伝えても……そもそも伝えたいことが伝わるか怪しい。

「…………ルチア様。確かに、今回試合は残念でした」

「っ……一回も、当てられなかった。何も、出来なかった」

「そうですね。しかし、もう今後……二度とバトムスと戦ってはならないとは、言われていません」

「………………確かに!!!!!!!」

審判を担当した騎士は心の中で「すまない、バトムス。だが、こうするしかないんだ」と、バトムスに謝罪しながら言葉を続ける。

「ルチア様の挑戦は、完全に終わったわけではありません。また次回……十分に力を付けて、また挑みましょう」

「うん!!!!」

歳相応の可愛らしい笑みを浮かべ、ルチアはそのまま訓練に移った。

泣き叫ばれることなく、ポジティブな方向に進み、騎士や魔術師たちはホッと一安心。

そんな中……バトムスの性格をそれなりに知っている騎士は、ある心配事が脳内に浮かんだ。

(そういえば、バトムスの奴ならこういう仕事、素直に引き受けないよな。何かしらの対価を当主様から貰ってそうだよな………………ってことは、ルチアがバトムスの奴に勝負を挑む度に、当主様が対価を支払うのか…………いったい幾ら払うことになるのやら)

心配事が思い付いた騎士も、バトムスが追加したルールの意図に気付いており、改めてその思考と実行力に驚いていた。

騎士の言葉によって前を向き、直ぐに訓練を始めたルチアは確実に今よりも強くなれるという保証はあるが……バトムスはバトムスで向上心がイカれている。

そのため、絶対に差が縮まるという保証はない。

(……まっ、仕方ないよな。あいつが悪いとは言えないからな)

執事やメイドではないが、騎士や魔術師たちも当主の娘であるルチアが涙を零し、悲しんでいれば慰めないという選択肢はない。

誰も慰めの言葉が思い浮かばない中、審判を担当していた騎士がやっとの思いで浮かんだナイスな言葉だった。


「楽にしなさい、バトムス」

「は、はい」

数日後、バトムスがルチアとのタイマン勝負で勝利したという話は直ぐに広まった。

その結果……バトムスは現在初老に入った年齢ではあるものの、現役執事として働き続けている祖父と一対一での対談が始まってしまった。
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