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第64話 覚悟を持った行動?
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「おい、あの話を知ってるか」
ある従者候補の話。
それは、令嬢たちだけではなく、令息たちの中でも話題の種となっていた。
「あぁ、聞いてるよ。というか、僕は実際にあの場に居たからね」
やんちゃ坊主な見た目の令息の言葉に、アルフォンスと同じく紳士、もしくは優男というワードが似合う見た目の令息が答える。
「そういえばそうだったか。なぁ、それを見てどう思った」
「どう思った、とはどういう事かな」
「簡単な話じゃん。平民が何を出しゃばった真似をしてるんだって話だよ」
平民が出しゃばった。
例の従者候補を褒める一方で、やはり中には平民という立場上、その行為を咎めるべきだという声もある。
「…………言いたい事は解るよ。でも、まず最初に原因を作ってしまったのは、あの三人なんだ」
「うむ! 俺は確かに見ていた!!!」
元気たっぷりな少年が、優男少年の意見に大きな声で同意する。
話の流れから、例え運悪く三人の会話を聞いておらず、見ておらずとも例の三人が要因を作ってしまったことが解る。
「あの三人は、ルチア嬢に一度も勝てていない。直近の合同訓練の際に行った試合では……全員、殆ど何も出来ずに負けていたかな」
「元から強かったが、更に強くなったといった感じだったな!!!」
元気少年と優男少年も騎士の道を志しており、ルチアの実力と例の三人の実力はある程度把握していた。
「正直……醜い会話だったよ」
「まぁ、そりゃ確かに負け惜しみたっぷりの会話だろうけどよ……けど、平民がそいつらを思いっきりバカにしたんだろ。ルチアがやったんならまだしも、平民がそれをやったってのはどうなんだよ」
「ん~~~~……難しいところ、だね。僕も良くはない、とは思うかな」
「そうか? 俺はあの行動に痺れたぞ!!!!」
教育内容によって、同じ世代の少年たちであっても、平民に対する感想というのが異なる。
「平民なのに貴族を相手に恐れず立ち向かった!! 俺はあの勇気を賞賛するべきだと思う!!」
「うん、そうなんだよね……僕も、そこには思うところがある」
「そこってどこだよ」
「従者候補なら、平民が貴族に対してあぁいった行動を取っていいわけがない。それぐらいは教えられてる筈なんだ」
例の従者候補は全くもって従者候補としての教育は受けていないものの、優男少年が語る内容は決して間違ってはいない。
「にもかかわらず、仕えるかもしれない令嬢の為に、覚悟を持ってあぁいった行動を取った……そうなると、話しは変ってこないかい」
「あぁ~~~~~~……なるほど、なぁ…………それは……ん~~~」
彼らの中でも平民を下に見る傾向が強いやんちゃ少年。
しかし、彼もこの世代の中でもエリートに入る部類の令息。
もし自分がルチアの立場だったらと考えられる頭は持っている。
平民である従者が、身分の差を顧みず、暫定主である自分の不快な思いを晴らす為に、身分が上の者を上手く小バカにした。
「…………悪くはねぇ、のか」
「ふふ、そうでしょう。無論、あれが普通の状態になるのは良くないでしょうが」
「状況次第、ってやつか」
「そういうことです。どう思いますか?」
「…………」
話を振られたのは、茶会が始まってから殆ど喋っていない寡黙少年。
彼も、優男少年が語る内容は理解している。
平民に対してあまりプラスの感情は持っていないものの、それでも従者候補の立場を考えれば、主を想う見事な行動だと称賛する。
ただ……当時、あの現場には寡黙少年もいた。
「……普通、ではなかったな」
「普通ではない、ですか。それはあの従者候補の行動や度胸ですか? それとも……別のところがですか」
「後者だ」
寡黙少年もまた騎士の道を志す者であり、実力に関しては四人の中で一番。
同世代の者たちと比べて細剣技の技術が頭一つか二つアルフォンスとも張り合える実力の持ち主。
そんな寡黙少年から視て……バトムスが普通の従者候補とは思えなかった。
「もしや、強さか!!」
「……あぁ、おそらくな」
元気少年の返答に、寡黙少年は小さく頷く。
しかし、そのやり取りに対してやんちゃ少年は不満げな表情を浮かべる。
「度胸はすげぇとは思うけど、お前がそういう事を言うような強さなのか?」
「俺はそう感じた」
寡黙少年は相手の細かい情報を調べる鑑定系と呼ばれるスキルは持っていない。
ただ、ある者と例の従者候補の雰囲気が似ていると感じた。
ある者とは……寡黙少年がやんちゃ少年ほど平民を下に見ない要因となった人物。
(どこか近い雰囲気を感じた……それと、もう一つ……明確に、俺たちと違う点がある筈だ)
エリートと言えど、彼らはまだ八歳。
全てにおいて気付けない事は仕方ない。
だが、寡黙少年が気付いた自分たちと明確に違うと感じたという感覚は、確かに正しかった。
「……彼を引き込みたいと」
「………………無理であろう」
主に降りかかる不快感を払拭するため、後に受けるであろう罰を覚悟でルチアを守った。
それほどの想い、信念を持つ者を引き込むことなど出来ない……と、寡黙少年は例の従者候補にとって有難い勘違いをするのだった。
ある従者候補の話。
それは、令嬢たちだけではなく、令息たちの中でも話題の種となっていた。
「あぁ、聞いてるよ。というか、僕は実際にあの場に居たからね」
やんちゃ坊主な見た目の令息の言葉に、アルフォンスと同じく紳士、もしくは優男というワードが似合う見た目の令息が答える。
「そういえばそうだったか。なぁ、それを見てどう思った」
「どう思った、とはどういう事かな」
「簡単な話じゃん。平民が何を出しゃばった真似をしてるんだって話だよ」
平民が出しゃばった。
例の従者候補を褒める一方で、やはり中には平民という立場上、その行為を咎めるべきだという声もある。
「…………言いたい事は解るよ。でも、まず最初に原因を作ってしまったのは、あの三人なんだ」
「うむ! 俺は確かに見ていた!!!」
元気たっぷりな少年が、優男少年の意見に大きな声で同意する。
話の流れから、例え運悪く三人の会話を聞いておらず、見ておらずとも例の三人が要因を作ってしまったことが解る。
「あの三人は、ルチア嬢に一度も勝てていない。直近の合同訓練の際に行った試合では……全員、殆ど何も出来ずに負けていたかな」
「元から強かったが、更に強くなったといった感じだったな!!!」
元気少年と優男少年も騎士の道を志しており、ルチアの実力と例の三人の実力はある程度把握していた。
「正直……醜い会話だったよ」
「まぁ、そりゃ確かに負け惜しみたっぷりの会話だろうけどよ……けど、平民がそいつらを思いっきりバカにしたんだろ。ルチアがやったんならまだしも、平民がそれをやったってのはどうなんだよ」
「ん~~~~……難しいところ、だね。僕も良くはない、とは思うかな」
「そうか? 俺はあの行動に痺れたぞ!!!!」
教育内容によって、同じ世代の少年たちであっても、平民に対する感想というのが異なる。
「平民なのに貴族を相手に恐れず立ち向かった!! 俺はあの勇気を賞賛するべきだと思う!!」
「うん、そうなんだよね……僕も、そこには思うところがある」
「そこってどこだよ」
「従者候補なら、平民が貴族に対してあぁいった行動を取っていいわけがない。それぐらいは教えられてる筈なんだ」
例の従者候補は全くもって従者候補としての教育は受けていないものの、優男少年が語る内容は決して間違ってはいない。
「にもかかわらず、仕えるかもしれない令嬢の為に、覚悟を持ってあぁいった行動を取った……そうなると、話しは変ってこないかい」
「あぁ~~~~~~……なるほど、なぁ…………それは……ん~~~」
彼らの中でも平民を下に見る傾向が強いやんちゃ少年。
しかし、彼もこの世代の中でもエリートに入る部類の令息。
もし自分がルチアの立場だったらと考えられる頭は持っている。
平民である従者が、身分の差を顧みず、暫定主である自分の不快な思いを晴らす為に、身分が上の者を上手く小バカにした。
「…………悪くはねぇ、のか」
「ふふ、そうでしょう。無論、あれが普通の状態になるのは良くないでしょうが」
「状況次第、ってやつか」
「そういうことです。どう思いますか?」
「…………」
話を振られたのは、茶会が始まってから殆ど喋っていない寡黙少年。
彼も、優男少年が語る内容は理解している。
平民に対してあまりプラスの感情は持っていないものの、それでも従者候補の立場を考えれば、主を想う見事な行動だと称賛する。
ただ……当時、あの現場には寡黙少年もいた。
「……普通、ではなかったな」
「普通ではない、ですか。それはあの従者候補の行動や度胸ですか? それとも……別のところがですか」
「後者だ」
寡黙少年もまた騎士の道を志す者であり、実力に関しては四人の中で一番。
同世代の者たちと比べて細剣技の技術が頭一つか二つアルフォンスとも張り合える実力の持ち主。
そんな寡黙少年から視て……バトムスが普通の従者候補とは思えなかった。
「もしや、強さか!!」
「……あぁ、おそらくな」
元気少年の返答に、寡黙少年は小さく頷く。
しかし、そのやり取りに対してやんちゃ少年は不満げな表情を浮かべる。
「度胸はすげぇとは思うけど、お前がそういう事を言うような強さなのか?」
「俺はそう感じた」
寡黙少年は相手の細かい情報を調べる鑑定系と呼ばれるスキルは持っていない。
ただ、ある者と例の従者候補の雰囲気が似ていると感じた。
ある者とは……寡黙少年がやんちゃ少年ほど平民を下に見ない要因となった人物。
(どこか近い雰囲気を感じた……それと、もう一つ……明確に、俺たちと違う点がある筈だ)
エリートと言えど、彼らはまだ八歳。
全てにおいて気付けない事は仕方ない。
だが、寡黙少年が気付いた自分たちと明確に違うと感じたという感覚は、確かに正しかった。
「……彼を引き込みたいと」
「………………無理であろう」
主に降りかかる不快感を払拭するため、後に受けるであろう罰を覚悟でルチアを守った。
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