執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第94話 恐怖を感じなかったのか

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「来ていたのか」

「お早いですね」

「ふむ、儂が最後だったか」

バトムスとゼペルがフィーズに到着したその日の内に、残りの二組も到着。

がっちりとした体格の良い執事、ガリダスと……その孫である巌の様な顔を持つ執事候補、マルダー。

ひょろっとした体格の執事、ゲルダンと……その孫である眼鏡をかけた、いかにも
インテリチックな雰囲気を持つ執事候補、ノスト。

ぽっちゃり目の体型を持つ執事、ファルトンと……その孫であり、自信の満ちた表情を浮かべるやんちゃタイプの執事候補、ファスラル。

「また会って茶会を楽しむとは思っていたが、ここまで再会が早いのは初めてではないか?」

「ガリダスの言う通り、本当に初めてですね」

「その理由が孫の自慢をし合うためというんじゃから、儂らも歳を取ったもんじゃな~~~」

「全くだな」

孫自慢をし合っていた際は、四人ともやや喧嘩腰になっていた。
だが、四人とも良い歳をした大人であるため、過去の事を持ち出してやいのやいのと言い合い……また喧嘩に発展するようなことはない。

ただ、祖父たちに自慢されていた孫の執事候補たちは別であった。

全員が祖父に自慢されたということを嬉しく思っており、負けたくないという強い思いを持っている。

(…………なんか、爺ちゃんたちは空気が柔らかいのに、こっちはバチバチだな)

絶対に負けたくないという気持ちが薄れたわけではない。

ただ……思っていた以上に、他の執事候補たちがバチバチな視線を交わしていることに、少々驚きを感じていたバトムス。

「まっ、とはいえあれじゃな。自慢は明日にするとして、今日は儂らの奢りじゃ!!!」

「好きなだけ食べてくれたまえ」

ライバル? の孫たからとはいえ、どうこうしようとするつもりは一切ない。
自分たちの孫と共に、腹一杯食べてほしいと伝えるファルトンやガリダス。

ゼペル、シャルプにゲルダンも同じ気持ちだった。

直ぐに多くのメニューが頼まれ、幼いとはいえ食欲旺盛な子供たちは丁寧に……しかし張り切ってもぐもぐと食べていく。

ゼペルたちは孫たちの話を交えながら会話をする中……本当に、どうこうしようというつもりはない。
ただ、ときおり視線が一人の少年に向かって向けられていた。

(…………俺の勘違いじゃなければ、シャルプさんたちに、ちらちら見られてる、よな?)

執事候補としての経験は殆どないに等しいが、森の中でモンスターから襲われる経験はそれなりに豊富であるため、ほんの僅かにであっても視線を向けられたことに気付きやすくなっていた。

理由としては、割と単純であった。
前回のお茶会が孫自慢大会に発展してしまった際、途中までゼペルはシャルプたちから視れば余裕綽々な表情を浮かべていた。

しかし、ファルトンの挑発に乗ってしまったゼペラは、珍しく熱く孫の凄さを語り始めた。
知り合ってからの年数だけで言えば本当に長い彼ら。
だからこそ、あれほど身内に関して熱く語るゼペラが、本当に珍しかった。

その要因である彼の孫が目の前にいるとなれば、やはり気になってしまうというもの。

「ふふ、どうしたんだ、四人とも。そんなにうちの孫をちらちらと見て」

「いやぁ~~、お前があれほど熱く褒めていた子だからな、どうしても気になってしまうじゃろう」

「ファルトンと同じく」

「特にのう、ほれ。あれじゃあれ。以前開かれた社交界で、主の名誉を守るとはいえ大胆な行動を取ったそうじゃないか」

執事にとって、主を守るためにアクションを起こすことは特に珍しい事ではなく、寧ろ当たり前の事。

だが、それでも一執事、執事候補という立場を考えれば、出来ることにも限度がある。
あの社交界の場でバトムスが取った行動は、間違いなくその限度を越えていた。

勿論、ファルトンやガリダス、ゲルダンもその行動に苦言を呈そうとはしない。
寧ろファルトンなど、バトムスが取った行動の詳細を聞いた時、腹を抱えて大爆笑。
魔術師としての一面も持ち合わせているゲルダンは、その計算された行動に感嘆を覚えた。

「よくあそこであぁいった行動が取れたのう、バトムス。執事候補として頼もしい行動じゃったのは間違いないが、恐ろしいとは感じなかったのか?」

「……お、ルチア様とアルフォンス様がそれなりに仲が良い事は知っていました。ルチア様からもアルフォンス様は曲がった行動を好まないと聞いていましたので、賛同してくれると思い、行動に移せました」

「やはりそういった計算があっての行動でしたか。しかし、それでも躊躇う気持ちはなかったのですか」

ゲルダンもバトムスの行動は褒めつつも、バトムスがほぼほぼ平民の子であるからこそ、恐怖を覚えなかったことに疑問を感じずにはいられなかった。

「あの三人がルチア様よりも努力を積んでおられるとは、とても思えませんでした。アブルシオ辺境伯家に仕える方々の行動を日頃から見ているからか、こう…………本当に、自分の様な平民の子と変わらないように見えてしまいました」

物凄く……ものすご~~~く言葉を選んだバトムス。
立場上、三馬鹿に対して失礼な事を言っている自覚はあるが、それ以上どうオブラートに言えば良いのか解らなかった。
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