執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

文字の大きさ
111 / 176

第111話 条件と感謝

「アル、お前からの依頼、受けるよ」

「本当かい!!!!!」

「本当だ。嘘じゃない、だから落ち着け」

アルフォンスに自身の短剣を製作してほしい頼み込んだ。
正直なところ、完全に断られると予想していた。

アルフォンスとしては、是非とも自身の短剣をバトムスに造ってほしい。
バトムスが鍛冶師として半人前……それは、アルフォンスもなんとなく解っている。
それでも、友人であるバトムスに造ってほしいという強い思いがあった。

「ご、ごめん」

「いや、俺としてもそこまで喜んでくれるのは嬉しいよ。ただ、少し条件がある」

「依頼金額の上乗せかい?」

「そうじゃない。それは十分だ。俺の頼みは、せっかくアルにわざわざ王都からクレステントに来てもらって悪いが、数日間……もしかしたらそれ以上、朝から夕方ごろまで俺はアルと共にいれない」

「っ……今すぐ、それらの素材を造る、という訳にはいかないんだね」

「無理だな」

アルフォンスの言葉を、バトムスは無理だと……絶対に無理だと即答した。

自身で語った通り、バトムスは鍛冶師としてまだまだ半人前。
それでも、多少なりとも解ることはある。

(今の俺が最高値を出せたとして、ようやく悪くない短剣が造れるかって話だ)

最高値を常に出してこそ一流ではないのか。
その考えはよく解っているが、バトムス自身がまだまだ半人前だと認めているため、そこは考慮してほしく……最高値に至れるまで、流れを引き上げなければならない。

「まず、普段使ってる素材で幾つか短剣を造る。その後、普段使ってない素材を使って短剣を造る」

「? 途中で、練習……に使う素材のランクを変えるのかい?」

鍛冶、製作について詳しくないアルフォンスだが、素材のランクを変えるのは感覚に変な影響をもたらすのではないかと思えた。

「最初の数回か、それ以上かで短剣を造る感覚を極限まで研ぎ澄ませたい。それでな、アル……さっきも言ったけど、俺はまだまだ半人前なんだ」

「う、うん」

「だからな、こういった素材を使って武器を造ったことは、まだ一度もないんだよ」

挑戦しなければ、壁を乗り越えることは出来ない。
それはバトムスも解らなくはない。
ただ……絶対にゴミが出来上がると解っていて、貴重という訳ではないが、半人前が手を出す様な素材を無駄にしたくない。

「つまり、これらの素材と同等の素材を使用することで、無理矢理にでも慣れる、ということだろうか」

「えぇ。その通りです、ゴルドさん」

「そうなんだね……じゃあ「安心しろ。練習に使う素材なら持ってる」っ!!」

言おうとした内容を先回りされてしまったアルフォンス。

(ったく。生産者としては嬉しいけど、一応……卵? としても、客に練習用の素材を買ってもらうのは)

自分にもプライドがある!!! と語れるほど、己の中に芯はないと思っている。
それでも、既にある素材の為に、友人に金を出させるわけにはいかなかった。

「いや、しかし、今回の頼みは……その、僕の我儘だ」

「さっきはあれこれ言ってしまったけど、俺としては嬉しい我儘だ」

「っ!! バトムス……」

「いずれは挑戦しなきゃいけない壁に、今ぶつかるってだけの話だ。だから、そこに関してはそんな心配しなくて良い」

「………………バトムス、本当にありがとう」

感謝の言葉を告げると、アルフォンスは座った状態とはいえ……腰を折った。

「ばっ!!! ……ったく…………俺が言うのはあれかもしれないけど、アル……お前、王子だろ」

「そうだね。でも、友達が我儘を受け入れてくれたんだ。頭ぐらい下げないとね」

「……そうかよ。んじゃ、そういう訳だ。だから、出来上がるまでは……あれだ。せっかくアブルシオ辺境伯家に来たんだから、お嬢の相手でもしてやってくれ」

バトムスとしては、決してルチアの背を押して将来的にはアルフォンスと、なんて考えは欠片もない。

ただ、それ以外に勧める選択肢がなかった。

「ふふ、そうだね。そうさせてもらうよ」

「おぅ、そうしてくれそうしてくれ。んで、シエル。わざわざ鍛冶場にいる必要はないから、訓練するなりエルリック師匠かジョラン師匠の元に行くんだぞ」

「うっ……わ、分かったよ」

シエルとしては丸一日……は無理でも、鍛冶場で同席しようと考えていたが、見事に阻止された。
妹分としては親分の命令を断れず、素直に従ってこれから数日間、朝から夕方までの過ごし方を考える。




「バトムス君」

「ゴルドさん……どうかしましたか?」

アルフォンスがルチアの元へ向かう中、鍛冶場へ向かうバトムスに声を掛けるゴルド。
すると……いきなり九十度に綺麗に腰を折った。

「本当に、感謝する」

「ご、ゴルドさんまで勘弁してくださいよ」

立場が上の者に、年齢が上の者に腰を折りながら感謝の言葉を伝えられ慣れておらず、焦ってしまう。

それでも、ゴルドはバトムスに感謝の言葉を、意を、深く伝えたかった。

「実際のところ、アルフォンス様の頼みは我儘を越えて無茶だという事は、私も理解している。だからこそ、君の懐の大きさに……感謝の意を伝えたかった」

「…………分かりました。その意、確かに受け取りました」

(……なんと、頼もしい表情を浮かべてくれることか)

無責任なことは、口に出来ない。
それでも……ゴルドは、バトムスならやってくれると思えた。
感想 6

あなたにおすすめの小説

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生少年は、魔道具で貧乏領地を発展させたい~アイボウと『ジョウカ魔法』で恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 男(30歳)は、仕事中に命を落とし異世界へ転生する。  捨て子となった男は男爵親子に拾われ、養子として迎えられることになった。  前世で可愛がっていた甥のような兄と、命を救ってくれた父のため、幼い弟は立ち上がる。  魔道具で、僕が領地を発展させる!  これは、家族と領地のために頑張る男(児)の物語。

ダンジョン銭湯 ~鎧は脱いでお入りください~

こまちゃも
ファンタジー
祖父さんから受け継いだ銭湯ごと、ダンジョンに転移してしまった俺。 だがそこは、なぜか”完全安全地帯”だった。 風呂に入れば傷は癒え、疲れも吹き飛ぶ。 噂を聞きつけた冒険者たちが集まり、宿やギルドまでできていく。 俺には最強の武器もスキルもないがーー最強のヒーラーや個性豊かな常連たちに囲まれながら、俺は今日も湯を沸かす。 銭湯を中心に、ダンジョンの中に小さな拠点が広がっていく。 ――ダンジョン銭湯、本日も営業中。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

銀髪幼女のスローライフ旅 ~お料理バンバン魔法バンバン~

滝川 海老郎
ファンタジー
銀髪で生まれた主人公レナは辺境の村で育った。そこで出会ったのがボーパル・バニーのレクスだった。 レクスは村でなかなか受け入れられず、レナは二人で村を出ることに。 レナの料理が好きなレクス。二人はご飯を食べながら進んでいく。 近くの町について冒険者を始めたレナに、フィオが加わった。 レナとフィオは色々あってレッサー・ワイバーン退治に参加、見事討伐する。 カレーもどきを振舞って、仲間内では有名になっていく。 でも、目標はのんびり生活できるスローライフを目指すこと。旅をして安住の地を探すのだ。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

転生貴族は現代日本の知識で領地経営して発展させる

ファンタジー
大陸の西に存在するディーレンス王国の貴族、クローディス家では当主が亡くなり、長男、次男、三男でその領地を分配した。 しかしこの物語の主人公クルス・クローディスに分配されたのはディーレンス王国の属国、その北に位置する土地で、領内には人間族以外の異種族もいた上、北からは別の異種族からの侵攻を受けている絶望的な土地だった。 そこで主人公クルスは前世の現代日本の知識を使って絶望的な領地を発展させる。 目指すのは大陸一発展した領地。 果たしてクルスは実現できるのか? これはそんなクルスを描いた物語である。