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第113話 可能性は、ある
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「ふぅ~~~~~」
アルフォンスが訪れてきた日の夜、バトムスは鍛冶作業でかいた汗を風呂場で流していた。
「ふふ、良い湯だね」
「だろ」
その風呂場には、当然と言わんばかりにアルフォンスが……そして老執事のゴルドまでいた。
「それにしても、一つの家にこの湯船…………中々お金が掛かったんじゃないかい?」
平民の懐事情に関してはそこまで詳しくないアルフォンス。
それでも、一個人の為に現在自分が使用している風呂場を用意することは、その人物の身内が許さない。
だが、バトムスに関しては、本当に自分の財力だけで用意したため、周囲の人物があれこれ言える隙が無い。
「あぁ~~~……かもしれないな。まぁ、全部俺の財布から出したから、あんまり気にする必要はないよ」
(……やはり、ここ数年で様々な料理が出た要因は、バトムス君であったか)
ゴルドは、豚骨のラーメンというのは、バトムスから教えられるまで知らなかった。
偶々、という可能性も捨てきれなくはない。
それでもゴルドはバトムスが普通の少年ではないと理解している。
だからこそ、その事実に至り……これだけの風呂場や防暑防寒対策が整っている家、鍛冶場まで個人のポケットマネーで造ったことに対し、疑問を持つことはなかった。
「そういえば、今日ジョゼフ君と一緒に訓練したよ」
「っ!!!!!?????」
湯船に浸かって今日の疲れを癒している最中、とんでもない爆弾発言を聞き、癒されている感覚が消し飛んだ。
「え……いや、なんで?」
「バトムスからの手紙によく書かれていたからね」
「あっ…………そ、そうか」
原因が自分だと解り、心の中で速攻ジョゼフに謝罪の言葉を告げる。
「そ、そんで……えっと、どうだったよ。どうせ模擬戦までしたんだろ」
「うん。正直に言うと、素晴らしかったよ。こう……中々隙が付けない堅さを感じた」
ジョゼフの友人であるバトムスが目の前にいるから、といった気遣いは一切ない。
純粋にジョゼフという騎士候補と模擬戦を行い、感じとった感想であった。
「もしかしなくても、彼に色々教えてるんだろぅ」
「まぁ、そうだな。つっても、最近は特に教えることなんてないけどな」
バトムスは今よりも幼い頃からジョゼフと友達になり、戦闘に関してあれこれ意見を伝えていた。
本来であれば、自分より歳が一つ下の者から意見、助言など……十歳以下の子供という事を考えれば、特に受け入れられないもの。
しかし、ジョゼフは違った。
この少年は凄く強く、特別な人間だと……素直に認められる心を有していた。
結果、まだ幼くそれらの訓練、考え方などがどういった結果に繋がるか解らずとも、バトムスから伝えられた助言を実行し続けた。
「……偶に手合わせをする貴族の令息たちと比べても遜色ない……いや、その中でも上澄みの者たちに届く強さを持っている」
「ふふ。アルフォンスからそれだけ褒められれば、あいつも嬉しいだろうな」
「…………僕の感覚だと、ジョゼフ君はこれからもっと伸びると思う。だから、気を付けた方が良いと思うよ」
「気を付ける、か…………クレステントの外に出れば、そうなる可能性はあるか」
スカウトを受ける。
それ自身は悪い事ではない。
ただ、それをジョゼフが望んでいるか否かは別。
他家が引き抜くことはアブルシオ辺境伯家に喧嘩を売っているため、基本的には起こりえないスカウトではあるが……国に属している騎士団であれば、実行してもおかしくはない。
「……ジョゼフなら、どこまでいくと思う」
「ん~~~~~~……可能性だけで語るなら、近衛騎士団が声を掛けてもおかしくないんじゃないかな」
「そんなにか」
「うん。少なくとも、現段階での強さを考えれば、全くあり得ない話ではないよ」
近衛騎士団とは、主に王族を守る騎士団。
当然ながら、それ相応の実力がなければ入団することは敵わない、エリート中のエリート。
他の騎士団と比べ、実力だけを考えれば下っ端と呼べる存在がいない。
「…………ジョゼフの奴が望まないなら、止めてやってほしいもんだが」
ジョゼフにその気がないのであれば、当然ながらまずアブルシオ辺境伯家の当主であるギデオンが止める。
ただ、辺境伯と言えど、相手が王族を守る近衛騎士団となると、簡単に事は終らない。
加えて……王族からの推薦もあれば、中々に厳しい。
「僕は、彼のことを口にはしないと約束するよ。ただ、情報はどこから零れるか解らない」
「そういうものだよなぁ……やれるなら、俺の方でもなんとか出来ないか、頑張ってみるか」
基本的に平民である少年に何が出来るのか。
何も知らない者であればそう思うが、正体は隠しているものの……商人や料理人たちからすれば、バトムスはやや神格化されていた。
相手が王族と言えど、バトムスが知らぬ間に入手しているコネを使えば、何も出来ない……ということはない。
(とりあえず、今は目の前のことに集中しないとな)
何故、あれ以降短剣についての話をしないのか……バトムスはアルフォンスの気遣いに気付いていた。
翌日……早めに朝食を食べ終えた後、バトムスは直ぐに鍛冶場へ向かい感覚を研ぎ澄ませにいく。
アルフォンスが訪れてきた日の夜、バトムスは鍛冶作業でかいた汗を風呂場で流していた。
「ふふ、良い湯だね」
「だろ」
その風呂場には、当然と言わんばかりにアルフォンスが……そして老執事のゴルドまでいた。
「それにしても、一つの家にこの湯船…………中々お金が掛かったんじゃないかい?」
平民の懐事情に関してはそこまで詳しくないアルフォンス。
それでも、一個人の為に現在自分が使用している風呂場を用意することは、その人物の身内が許さない。
だが、バトムスに関しては、本当に自分の財力だけで用意したため、周囲の人物があれこれ言える隙が無い。
「あぁ~~~……かもしれないな。まぁ、全部俺の財布から出したから、あんまり気にする必要はないよ」
(……やはり、ここ数年で様々な料理が出た要因は、バトムス君であったか)
ゴルドは、豚骨のラーメンというのは、バトムスから教えられるまで知らなかった。
偶々、という可能性も捨てきれなくはない。
それでもゴルドはバトムスが普通の少年ではないと理解している。
だからこそ、その事実に至り……これだけの風呂場や防暑防寒対策が整っている家、鍛冶場まで個人のポケットマネーで造ったことに対し、疑問を持つことはなかった。
「そういえば、今日ジョゼフ君と一緒に訓練したよ」
「っ!!!!!?????」
湯船に浸かって今日の疲れを癒している最中、とんでもない爆弾発言を聞き、癒されている感覚が消し飛んだ。
「え……いや、なんで?」
「バトムスからの手紙によく書かれていたからね」
「あっ…………そ、そうか」
原因が自分だと解り、心の中で速攻ジョゼフに謝罪の言葉を告げる。
「そ、そんで……えっと、どうだったよ。どうせ模擬戦までしたんだろ」
「うん。正直に言うと、素晴らしかったよ。こう……中々隙が付けない堅さを感じた」
ジョゼフの友人であるバトムスが目の前にいるから、といった気遣いは一切ない。
純粋にジョゼフという騎士候補と模擬戦を行い、感じとった感想であった。
「もしかしなくても、彼に色々教えてるんだろぅ」
「まぁ、そうだな。つっても、最近は特に教えることなんてないけどな」
バトムスは今よりも幼い頃からジョゼフと友達になり、戦闘に関してあれこれ意見を伝えていた。
本来であれば、自分より歳が一つ下の者から意見、助言など……十歳以下の子供という事を考えれば、特に受け入れられないもの。
しかし、ジョゼフは違った。
この少年は凄く強く、特別な人間だと……素直に認められる心を有していた。
結果、まだ幼くそれらの訓練、考え方などがどういった結果に繋がるか解らずとも、バトムスから伝えられた助言を実行し続けた。
「……偶に手合わせをする貴族の令息たちと比べても遜色ない……いや、その中でも上澄みの者たちに届く強さを持っている」
「ふふ。アルフォンスからそれだけ褒められれば、あいつも嬉しいだろうな」
「…………僕の感覚だと、ジョゼフ君はこれからもっと伸びると思う。だから、気を付けた方が良いと思うよ」
「気を付ける、か…………クレステントの外に出れば、そうなる可能性はあるか」
スカウトを受ける。
それ自身は悪い事ではない。
ただ、それをジョゼフが望んでいるか否かは別。
他家が引き抜くことはアブルシオ辺境伯家に喧嘩を売っているため、基本的には起こりえないスカウトではあるが……国に属している騎士団であれば、実行してもおかしくはない。
「……ジョゼフなら、どこまでいくと思う」
「ん~~~~~~……可能性だけで語るなら、近衛騎士団が声を掛けてもおかしくないんじゃないかな」
「そんなにか」
「うん。少なくとも、現段階での強さを考えれば、全くあり得ない話ではないよ」
近衛騎士団とは、主に王族を守る騎士団。
当然ながら、それ相応の実力がなければ入団することは敵わない、エリート中のエリート。
他の騎士団と比べ、実力だけを考えれば下っ端と呼べる存在がいない。
「…………ジョゼフの奴が望まないなら、止めてやってほしいもんだが」
ジョゼフにその気がないのであれば、当然ながらまずアブルシオ辺境伯家の当主であるギデオンが止める。
ただ、辺境伯と言えど、相手が王族を守る近衛騎士団となると、簡単に事は終らない。
加えて……王族からの推薦もあれば、中々に厳しい。
「僕は、彼のことを口にはしないと約束するよ。ただ、情報はどこから零れるか解らない」
「そういうものだよなぁ……やれるなら、俺の方でもなんとか出来ないか、頑張ってみるか」
基本的に平民である少年に何が出来るのか。
何も知らない者であればそう思うが、正体は隠しているものの……商人や料理人たちからすれば、バトムスはやや神格化されていた。
相手が王族と言えど、バトムスが知らぬ間に入手しているコネを使えば、何も出来ない……ということはない。
(とりあえず、今は目の前のことに集中しないとな)
何故、あれ以降短剣についての話をしないのか……バトムスはアルフォンスの気遣いに気付いていた。
翌日……早めに朝食を食べ終えた後、バトムスは直ぐに鍛冶場へ向かい感覚を研ぎ澄ませにいく。
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