盟約の花婿─魔法使いは黒獅子に嫁ぐ─

沖弉 えぬ

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「魔法使いは黒獅子に嫁ぐ」前編

13王都ジャナヴァラ

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 野宿をしながらアルタナ地区を出る事四日かけて辿り着いた〈王都ジャナヴァラ〉の城下町。フォトス魔法国とはまるで違う景観にアルタナ同様カルディアが感嘆を漏らしたのは言うまでもない。
 どこまでも続いていた枯れ草と砂の景色の中を走る街道が次第に舗装された物に変わり始め、その終点に現れたレンガ屋根の家並みはこれまたアルタナとも違った風情がある。赤いレンガ屋根に白い壁、窓枠にはこの辺りでは珍しいはずの木材が使われていて、民家の外観はあたたかみのある風合いを醸し出している。
 アルタナはどこも箱のように四角い家ばかりだったが、こちらは本を開いて被せたような切妻屋根がほとんどだ。雨季の間の長雨をやり過ごすための建築だろう。
 緩やかな曲線を描きながら城壁まで続く大通りには商店が建ち並んでいるが、アルタナのように人でごった返すという事はない。それでも、フォトスよりはずっと通行人は多いのだが。
 アスランはここに至って再びフードを目深に被る。カルディアも同じようにされた。しかしすれ違う人々の中にはこれが王子の一団だと気付く者たちがおり、道を脇に避けて挨拶をしていく。その様子を馬上から見下ろして、カルディアは不思議に思った。
 王太子が伴侶を連れて帰ってきたというのに、国民たちは皆まずいものでも見たかのような顔付きで頭を下げるのだ。
 もしこれが逆であったなら。アスランがフォトスに輿入れし、カルディアが伴侶を連れてきて城の前を二人で歩いていたとしたら、町の人たちは慌てて花を摘んできて即席の花束を贈ったろう。秘蔵の酒をキッチンの奥から引っ張り出してきて妻に怒られるのだ。それからみんな笑顔で祝福してくれる。「おめでとう」という朗らかな祝いの言葉が聞こえてきそうなほどその光景を容易に想像出来るというのに、一方でジャナヴァラの人たちからはいっそアスランたちに気付きたくなかったかのような居心地の悪さを感じた。
 アスランに訊ねたかったが、大通りに差し掛かった辺りからアスランから漏れ伝わるディナミに微かに変化が起きていた。緊張、だろう。固く尖ったような、ずっと背中に剣でも突きつけられているような、じりじりと張り詰めたものを感じる。そのディナミに感化されカルディアも僅かながら緊張してしまい、疑問を口にする事は出来なかった。
 大通りの最後には跳ね橋があった。橋の下は水路だ。近くの川から引いてきているのだろう。
 頑強でいかめしい威容を放つ城壁は石造りだ。白から灰色までの色の石が削られ積み上げられて、四方には物見の高い塔がある。塔の上には旗がゆらめいている。黒い縁取りに赤と緑の布地に縦線が三本。何か象徴的な意味合いがあるように見えた。
「お帰りなさいませアスラン様」
 跳ね橋を守っていた兵士たちが臣下の礼をとる。獅子族だ。大通りしか通ってきていないが、ジャナヴァラは獅子族の町というだけあってどこを見てもライオンの亜獣人ばかりだ。時々違う種族も見かけたものの、アルタナほど多種多様ではない。
 轟音を立てて跳ね橋が降ろされると、アスランが橋を通っていく間兵士たちはずっと手指を組んだままだった。何とも物々しい王子の帰還にカルディアはすっかり気後れしてしまっていたが、異国文化の出迎えはまだまだ続く。
「お帰りなさいませアスラン様」
 跳ね橋を渡り終えたところで馬から降りると、再び兵士たちに一斉に声を掛けられて、その迫力にカルディアは及び腰になる。自分も王子であるというプライドがどうにか足を進めさせたが、城壁を潜り抜けた先に広がる光景にはカルディアも足を止めずにはおれなかった。
 ジャナヴァラ宮殿と呼ばれている王の居所だが、頑強で無骨な石造りの城壁の内側には何ともまばゆいばかりの黄金の宮殿が築かれていた。城壁の中と外でがらりと雰囲気が変化して、城壁の門はどこか別の世界を一瞬で繋げてしまう不思議な門だったのではないかと疑ってしまうほど。
 跳ね橋から真っすぐ正面と左手には宮殿の中へ続く格子戸に守られた大扉があり、アスランはさっさと正面の扉の方へと行ってしまう。軽く足を縺れさせながらも後を追うと、扉の先では南国の植物が移植された美しい中庭が出迎えてくれた。庭には優雅に寝そべる獅子の石像が噴水の中央に飾られており、ここがまさに獅子の治める国である事を知らしめる。
 中庭の終わりには複雑な彫りが施されたやはり金の柱が建っており、噴水へと続く水路が東西の壁の下を潜るようにして伸びていた。
 アスランは金の柱に守られるようにして佇む扉を自ら押し開け中へ入ると、彼の帰還に気付いた兵士たちがさっと並んで手指を組んだ。
 まず、フォトスの王族は自国へ帰国するという事そのものが起こらない。帰城する事はあってもしょっちゅう城を抜け出しては城下町の子供たちと遊んできたカルディアは、騎士たちに大仰に出迎えられるという経験は皆無だった。
 大勢の兵士たちが敬礼をする中をアスランと共に歩かされるだけでも緊張は限界に近かったというのに、奥の階段から今度は侍女たちに出迎えられてカルディアの緊張は臨界点を超えた。
「カルディア様はこちらへ」
「はい」
 侍女の案内でアスランとは別々の部屋へと連れて行かれる。冷静だったならアスランと別れて一人になることに怯えていただろうが、立て続けに想像を越える出迎え方をされてすっかり思考が止まっていた。
 まるでそういう機械のように言われる事全てに「はい」と返事を繰り返しているうちに、気付いたら部屋の奥へと辿り着いていた。衝立の向こうから湿気ったような気配を感じると思ったら、どうやらそこは浴場らしい。
「お体を清めさせて頂きます」
「はい。えっ!?」
「さあ、お召し物を」
「さあ」
「さあさあ」
 あーれー! という間抜けなカルディアの悲鳴を聞いたのは獅子族の侍女たちだけであった。
「あ、あの待って! 自分で洗えるから!」
「そうは言われても、ねぇ?」
「これが私たちのお仕事ですし」
 服を剥かれて素っ裸になったところで漸く我に返ったカルディアは腕を突っ張り侍女たちを近付かせないようにするも、彼女たちは顔を見合わせて呆れた表情をするだけで止まらない。腕を取られてぐいぐい引っ張られ、石で出来た椅子に座らされる。力が強い。さすがに獅子族とあって女でさえもカルディアより腕力に勝るようだ。だがいかんせん状況が状況なので悔しさよりも羞恥心がよっぽど勝る。
 浴室の中央にはたっぷりの湯を張った浴槽があって、そこから湯桶を使って汲んだ湯をそろりと足先や手先から順にかけられていく。
「まぁ白くてすべすべのお肌! なんて、言うと思いました? カルディア様」
「え……?」
「まぁまぁ呆けちゃって可愛らしい。けどちょっと幼いわね」
「えっと」
「はぁ、こんな子供とアスラン様が、はぁ……。でも髪は綺麗ね」
 褒められているのかけなされているのか分からず俄かに混乱する。カルディアを更に戸惑わせるのは体を洗う彼女たちの手つきだ。言葉では文句を言っているし急に態度もやさぐれだしたのだが、侍女たちはそれはそれは丁寧にカルディアの体を洗ってくれる。泡立ちの良い石鹸を肌触りの良い布に付けて擦られているが、擦られているというより撫でられているという感じでくすぐったくて仕方がない。
「アルタナから馬を飛ばしてきたんでしょう?」
「じゃあ早くて四日くらい? その割には獣臭がしないのね」
「やだ、カルディア様は亜獣人じゃないのよ?」
「そうだったわ」
 カルディアの体を洗ってくれている侍女たちは、カルディアと歳の頃はそう変わらなく見える。同年代の女たちに全身すみずみまで洗われるのはあまりにも恥ずかしくて堪えられない。しかし何を言ってもやめてくれそうにないので終いには顔を手で覆うしかなかったのだが、そうすると今度は彼女たちから漂う甘いような女の香りを意識せざるを得なくなる。αの女の匂いだ。湯殿での奉仕のためにか薄衣うすぎぬ一枚だけを身に付け体の凹凸がはっきりと分かる格好を匂いの向こうに想像してしまってカルディアは最早唸る事さえ出来なかった。
「あらっ!」
「あら、あらあら!」
 女たちがフフフと笑う声に、カルディアはみっともなく背中を丸める事しか出来ない。垢を落とすと共に男の矜持まで削ぎ落とされた気がする。
 カルディアの葛藤など知らない侍女たちは、全身余すところなく全てカルディアの体をぴかぴかに磨いてくれたのだった。




 魔法機械の一つである魔法燃料で動く送風機の前に座らせると、侍女たちはカルディアの髪を乾かし花の香りのする香油を髪と体に薄く塗りつける。服は用意されていたシリオ風の衣装に袖を通す。フォトスでは祭儀ではローブ、日常ではシャツやチュニックにズボンを着て過ごしたが、こちらではシャツの上から更にガウンのような前で合わせる裾の長い羽織り物を着るようだ。形はローブ或いはガウンと呼んでも差し支えなさそうだが、何より目を引くのはその柄だ。金糸で花と鳥が刺繍された濃い赤色の生地は、とにかくカルディアの目には派手に映る。が、王族はこれを日常的に着るのだそうだ。これから何かの儀式かと思うような豪奢なローブを纏い、腰の辺りを紐で緩く縛って完成だ。
 故郷から持ってきた装飾品があるがまだ部屋に届けられていないので、やはりシリオ風のピアスをつけられる。カルディアの瞳と同じオレンジ色の宝石『ヘリオライト』を雫型の金縁に嵌めたピアスは、光の角度でちらちらと瞬く。
「羨ましい」
 憎々しげに言われるのでびくっとカルディアの背筋が伸びる。獅子の女たちはみなこんな風に気が強いのだろうか。姉のデイモナに負けずとも劣らない。
 しかしやはり侍女たちの手つきは常に丁寧なのでカルディアの体に傷がつくような事もない。白銀の髪にはローブと揃いの赤い紐を通して緩く編み、唇に淡い色の紅をさすとそこには何とも可愛らしい少女のようなカルディアの姿が完成していた。
「ちょっと可愛くしすぎちゃったかも」
「カルディア様、顔は可愛いから」
 顔という言い方は気になったが、確かにカルディアの顔は可愛い。カルディアも自身の容姿について自覚的だが、旅の間はろくに水浴びも出来ず鏡を見る機会もほとんどなかったのですっかり意識の外だった。
「あ、そういえば、君たちはフォトス語が出来るんだね」
「今気づいたの? カルディア様」
「鈍感ね~」
 流暢に詰られると複雑な気分だ。
「私たちはカルディア様のお世話係りですから、フォトス語をみんな子供の時から学ぶんです」
「そう、なんだ」
 一方カルディアときたらろくにシリオ語を話せないので恥ずかしくなる。自分の情けなさを痛感するのはこれで何度目だろうか。
「さ、そんな事よりカルディア様。アスラン様が部屋でお待ちですよ」
 それらしい畏まった態度に戻った侍女はカルディアを椅子から立たせ、踵が尖った靴を履かせる。少し歩きにくいが転ぶほどではない。
 ジャナヴァラ宮殿は柱や獅子の像、それから屋根の飾りなど一部には金があしらわれているが、基本的には石積みの城である。大木をくり抜き造った城に暮らしていたカルディアからすると、硬く無機質な石に囲まれているのは何だか冷たくそっけない感じがして落ち着かない。ディナミが無い事には慣れてきたが、今度は木の無い生活空間に慣れる必要がありそうだ。
 侍女に手を引かれるまま部屋を出て、大理石の廊下を進んでつき当たりの部屋の前に立たされた。
 そこで何故か侍女に耳打ちをされる。「ノックして。そうそう。それから可愛い声で『アスラン様』」
「あ、アスラン様」
 鍵が開く音の後、アスランは自ら扉を開けて顔を出した。とても呆れた表情を浮かべて。
「お前ら、主人で遊ぶな」
 アスランが侍女たちに声を掛けた瞬間女たちはきゃあと黄色い声を上げて頬に手を当てる。何とも姦しい侍女たちにアスランは溜息をついてカルディアの手を引っ張った。よろめきながらアスランに受け止められる形で部屋の中へと入り扉が閉められると、続けて扉の向こうで侍女たちがきゃあきゃあと叫ぶので、アスランは扉越しに怒鳴った。
「聞き耳立てたら全員解雇だからな!」
 それをされると誰が困るって、恐らくカルディアだ。
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