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幸せの記憶
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『付き合って下さい…きっと、君は俺の運命の番だ』
いきなり目の前に赤い薔薇を1輪、捧げ持ち片膝を地面に着けて僕を見上げてそう告げた疾風夏樹は本当に王子様みたいだった。
僕がαか…せめて可愛いΩなら絵になるところだっただろう。
でも僕は、残念ながら平凡なβ。
いくら恋愛は自由だといっても、貴重なαの遺伝子を生産性のない恋愛で駄目にするわけにはいかない。
僕がΩなら…いや、せめてβでも女性なら…例え捨てられる事になっても、気紛れでも、気の迷いでも、迷わず夏樹の胸に飛び込んでいっただろうけど。
夏樹は一目惚れだと言ってくれたけど、僕の方が夏樹よりも先に夏樹に一目惚れした事を夏樹は知らないだろう。
…初めて夏樹が薔薇を持って僕の目の前に現れてくれた時、僕がどんなにドキドキしたのか夏樹はきっと知らない。
夜、寝る前に明日も夏樹は僕を待ってくれているだろうかと心配になる事。
毎朝、家を出る時、今朝は夏樹はいるんだろうかと心配になる事。
僕が平凡なβだと気付いて…αである自分には釣り合わないと気付いて僕に対する熱が冷める事。
それらを僕がどれだけ恐れているか…夏樹は知らない。
毎日、夏樹が僕の前に現れる度に僕がどれだけ安堵して現れなくなる事に恐怖しているか、知らないだろう。
毎朝、夏樹の顔を見る度、緩みそうになる口許を引き締めている事も…。
(この気持ちは夏樹に知られてはならない)
特に夏樹の家族に知られる事は避けたい。
今はまだ、αである夏樹の気紛れ…そして僕が相手にしていないと思っているから、皆は笑って放置してくれているけど。
僕まで本気だと知られたら…。
きっと、引き離される。
そしたら、もう2度と夏樹に会えなくなってしまう。
それくらいなら。
この思いは、誰にも言わないし、知られる訳にはいかない。
それが、例え…夏樹本人であっても。
…この恋心は一生、心の中に秘めておく。
いきなり目の前に赤い薔薇を1輪、捧げ持ち片膝を地面に着けて僕を見上げてそう告げた疾風夏樹は本当に王子様みたいだった。
僕がαか…せめて可愛いΩなら絵になるところだっただろう。
でも僕は、残念ながら平凡なβ。
いくら恋愛は自由だといっても、貴重なαの遺伝子を生産性のない恋愛で駄目にするわけにはいかない。
僕がΩなら…いや、せめてβでも女性なら…例え捨てられる事になっても、気紛れでも、気の迷いでも、迷わず夏樹の胸に飛び込んでいっただろうけど。
夏樹は一目惚れだと言ってくれたけど、僕の方が夏樹よりも先に夏樹に一目惚れした事を夏樹は知らないだろう。
…初めて夏樹が薔薇を持って僕の目の前に現れてくれた時、僕がどんなにドキドキしたのか夏樹はきっと知らない。
夜、寝る前に明日も夏樹は僕を待ってくれているだろうかと心配になる事。
毎朝、家を出る時、今朝は夏樹はいるんだろうかと心配になる事。
僕が平凡なβだと気付いて…αである自分には釣り合わないと気付いて僕に対する熱が冷める事。
それらを僕がどれだけ恐れているか…夏樹は知らない。
毎日、夏樹が僕の前に現れる度に僕がどれだけ安堵して現れなくなる事に恐怖しているか、知らないだろう。
毎朝、夏樹の顔を見る度、緩みそうになる口許を引き締めている事も…。
(この気持ちは夏樹に知られてはならない)
特に夏樹の家族に知られる事は避けたい。
今はまだ、αである夏樹の気紛れ…そして僕が相手にしていないと思っているから、皆は笑って放置してくれているけど。
僕まで本気だと知られたら…。
きっと、引き離される。
そしたら、もう2度と夏樹に会えなくなってしまう。
それくらいなら。
この思いは、誰にも言わないし、知られる訳にはいかない。
それが、例え…夏樹本人であっても。
…この恋心は一生、心の中に秘めておく。
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