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幸せの記憶
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『…駆け落ちしよう!!』
そう、言われた時。
軽く言われた口調とは反対に、あまりにも眞司の瞳が真剣で。
切羽詰まっているように感じて。
学校が………。
とか。
家族が………。
とか。
αが…Ωが…βが…。
とか。
いろいろな事が頭の中に浮かんだけど。
夏樹の瞳を見詰めた時、それらは全て吹き飛んだ。
そして…無意識の内に、夏樹の手を握った。
その時。
「………兄貴!」
「……………真哉?」
僕が家を出る時、まだ家にいて朝食をのんびり食べていた真哉が僕達の方へ走ってきている。
「…これ、体操服、忘れ………」
真哉は言葉を不自然に止めると、走ってきていた足まで止める。
視線は、夏樹と僕が繋いでいる手に………。
真哉は僕と夏樹が繋いでいる手を見て、事情を察したようだった。
多分、昨日僕の部屋の中、漂っていたΩのフェロモンの香りで薄々は気付いていたんだろう。
そして、βとΩの恋愛が難しい事も。
真哉の憐れむような瞳がその事を物語っていた。
僕達の恋の結末も。
「………真哉……」
僕が何かを言う前に、真哉は口を開いた。
「…分かった……俺が何とかする」
それからの真哉の行動は早かった。
αとはいえ、ただのβの家庭である真哉にどんなツテとコネがあったのか。
街の上外れに木造の古いアパートを見つけてくると、高校をまだ卒業していない僕のアルバイト先まで見つけてきてくれた。
そこで新しい生活をするようになって、僕の家はともかく夏樹の実家である疾風家が何も言ってこない事が不気味だったが、表面上は何事もなく僕達は暮らしていた。
-けど、最初から分かっていた。
こんな幸せが続くはずはないって……………。
そう、言われた時。
軽く言われた口調とは反対に、あまりにも眞司の瞳が真剣で。
切羽詰まっているように感じて。
学校が………。
とか。
家族が………。
とか。
αが…Ωが…βが…。
とか。
いろいろな事が頭の中に浮かんだけど。
夏樹の瞳を見詰めた時、それらは全て吹き飛んだ。
そして…無意識の内に、夏樹の手を握った。
その時。
「………兄貴!」
「……………真哉?」
僕が家を出る時、まだ家にいて朝食をのんびり食べていた真哉が僕達の方へ走ってきている。
「…これ、体操服、忘れ………」
真哉は言葉を不自然に止めると、走ってきていた足まで止める。
視線は、夏樹と僕が繋いでいる手に………。
真哉は僕と夏樹が繋いでいる手を見て、事情を察したようだった。
多分、昨日僕の部屋の中、漂っていたΩのフェロモンの香りで薄々は気付いていたんだろう。
そして、βとΩの恋愛が難しい事も。
真哉の憐れむような瞳がその事を物語っていた。
僕達の恋の結末も。
「………真哉……」
僕が何かを言う前に、真哉は口を開いた。
「…分かった……俺が何とかする」
それからの真哉の行動は早かった。
αとはいえ、ただのβの家庭である真哉にどんなツテとコネがあったのか。
街の上外れに木造の古いアパートを見つけてくると、高校をまだ卒業していない僕のアルバイト先まで見つけてきてくれた。
そこで新しい生活をするようになって、僕の家はともかく夏樹の実家である疾風家が何も言ってこない事が不気味だったが、表面上は何事もなく僕達は暮らしていた。
-けど、最初から分かっていた。
こんな幸せが続くはずはないって……………。
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