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40 ご老女をナンパしよう!
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※めんどくさいので章分けをしていませんが、猫又の原稿的に新章突入です。
季節は移ろい、俊也と十人の巫女は、翌年の深まる秋を迎えていた。
彼らの安住の地は、透き通ったレ・マン湖畔(「レ」は、いわゆる冠詞で、「THE」に相当するが、響きがなんとなく卑猥なので、今後レマン湖と、ナカグロ抜きで表記することにする)。
この地は、王都から二百キロ離れた、シャネル侯爵の領地だった。シャネル侯爵の計らいで、当地の元大商人の別荘を俊也たちは手に入れた。
その大商人は、この地で産出される鉱物資源を扱っていたらしい。
相当な資産家だったそうだが、人間の欲はあさましい。
産出量をごまかし、温かい懐をさらに温め、大やけどを負った。
資産はすべて没収。裸同然で、侯爵領を追放されたとのこと。
この別荘の購入資金はもちろん無料。
シャネル侯爵は巫女の一人、フラワー・シャネルの父親で、ルラの父親とは、魔法学校時代の同級生。宰相ヘンリー・リラーナ公爵が、心許せる友人の一人だった。
俊也たちの居場所を知っているのは、巫女たちの父親だけだった。ルマンダは父親の名前を知らないので、全部で九人。
ルラの部屋は父親の魔法で封印され、転位魔法陣は連絡の便宜のため残されている。
旅の邪魔になるので、置いてきた資金や日用品は、別荘の地下倉庫に移されている。
別荘での俊也と巫女たちは、当初魔法の修行や、近くの廃坑ダンジョン探検に明け暮れていた。
ところが、重大な問題が発生した。ルラ、エレン、フラワー、ルマンダの四人が、そろって妊娠してしまった。
妊娠しにくい、貴族の血を引く女を四人も孕ませ、図らずして俊也の生殖能力は証明された。
だが、ルマンダ以外、家事能力がある者は皆無。なにせみんな貴族のお嬢様なのだから、家事の方はさっぱり。
フラワーが「手助け無用」の大見えを切った以上、シャネル侯爵に、いまさら泣きつくわけにいかない。
一番深刻なのは料理係。残念なことに調理魔法は誰も心得がない。
一番早く妊娠したルマンダは、つわりの症状が現れ始めた。俊也の癒しの手のおかげで、症状は軽いが、嗅覚や味覚までには及ばない。
つまり、肉や魚の臭いが鼻について、料理ができなくなった。
残されたファミリーの中で、料理がまともに作れるのは俊也だけとなった。
もちろん、ルマンダが妊娠する前から、交替で手伝っていたが、最大の戦力が欠けたら、俊也に負担が一挙にのしかかってくる。
巫女たちは、十一人分の食事を作る俊也を見ていると、情けないやら申し訳ないやら。
見かねたルラはこう言った。
「しょうがない。俊也、町に出て料理上手な女、二三人ナンパしてきなさい。
ご老女が好ましいけど、俊也は若い方がいいでしょ?」
「これ以上若い女性はけっこうです。
なるべく麗しいご老女をナンパしてきます。
間違っても孕まないような」
間違っても孕まないような…ね。
間違う自信はあるんだ? 一同そう思ったが、俊也のナンパを全員認めた。
俊也は魔法戦士修行中の、ブルーとイザベルを伴い、レジ形態となって街へ急いだ。
お伴が必要なのは、俊也形態やただ猫ナイト形態は、気の毒なほど弱いから。変身媒体となる必要もある。
そして、レジ形態の俊也について走れるのは、ブルーとイザベルだけだった。
不在時の食事は、朝陽や両親にレトルト食品を依頼した。
この地から、ぬいぐるみプリンに通訳してもらい、東京の近親者と連絡が可能である。
そして、魔法陣に置かれた物を、こちらから呼び寄せる技術も、もちろんある。
カントの地は、物流に恵まれているとは言えない。そこで、公爵家から魔法陣を通し、食材は定期的に送られてくる。業務用冷蔵庫も、日本から取り寄せている。
だが、王都の各種食材は豊富にあっても、調理できなかったら話にならない。完成した料理をたびたび送ってもらうのも、女性としての沽券が保てない。
俊也不在の数日なら、ジャンクフードも悪くない。デリバリーやテイクアウトという手もある。
カナちゃんのおすそわけも期待できる。彼女の料理の腕は抜群だ。
共働き世帯の彼女は、高校へ通いながら、家族の夕食を支度しているという。
そうだ! カナちゃんを呼ぼう! あちらの世界では、タチの悪いウイルスが大流行し、目下自宅に閉じこもる生活だという。
彼女も気が晴れるだろうし、万一ウイルスに汚染されていても、症状が出ない程度なら清浄魔法で一掃できる。
念のため自然治癒魔法(俊也が言うには、免疫力を超アップさせる魔法らしい)をメンバーに重ね掛けすれば万全。
問題は俊也が巫女、つまり嫁が十人であることを、伝えていないことだ。カナちゃんは俊也に相当気がある雰囲気だったし。
これは俊也と相談する必要がある。カナちゃんは俊也が帰るまで待とう。
俊也は多分猫又形態にならないだろうし、なったとしても、いつだとは確定できない。
ルラは猫又ナイトなら、念話で交信できようになっていた。猫又ナイト2は、声が大きすぎて会話にならない。
猫又ナイト2にも、変身条件と活動限界以外、弱点がもう一つあることが、以前のデモンストレーションで発覚した。
つまり、魔法を使う時のさじ加減が大雑把なのだ。
「魔法でお魚釣ってきて」
と頼んだら、クジラでも釣ってきそうだ。
俊也によれば、クジラは哺乳類で魚類ではないらしいけど。
「ルラ、俊也にあんなこと言っていいの?」
エレンが少し怒った顔で聞く。「あんなこと」とは、「若い方がいいでしょ?」という言葉だ。
「あれは釘を刺しただけよ。
俊也は嫌がる女を、無理やり手に入れようとする男じゃない。
だから俊也は言ったでしょ?
ご老女を探すって。
私の言葉の裏を即理解したの」
一同なるほど、と感心した。ルラに「俊也トリセツ(取扱説明書の略)」書いてもらおう。エレンはそう思った。
とりあえず、今夜はデリバリーを頼もう。
多人数を用意してもらうのは、いつもの通り「メイド巫女の分」で、押し通す。
料理のできない「メイド」相当無理があるのだが……。
俊也、いつまで嫁のことを、隠し続けるつもりなんだろう?
あちらの世界では、一夫一妻制が通常らしいから、無理もないが、ちょっぴり不満が残るルラだった。
季節は移ろい、俊也と十人の巫女は、翌年の深まる秋を迎えていた。
彼らの安住の地は、透き通ったレ・マン湖畔(「レ」は、いわゆる冠詞で、「THE」に相当するが、響きがなんとなく卑猥なので、今後レマン湖と、ナカグロ抜きで表記することにする)。
この地は、王都から二百キロ離れた、シャネル侯爵の領地だった。シャネル侯爵の計らいで、当地の元大商人の別荘を俊也たちは手に入れた。
その大商人は、この地で産出される鉱物資源を扱っていたらしい。
相当な資産家だったそうだが、人間の欲はあさましい。
産出量をごまかし、温かい懐をさらに温め、大やけどを負った。
資産はすべて没収。裸同然で、侯爵領を追放されたとのこと。
この別荘の購入資金はもちろん無料。
シャネル侯爵は巫女の一人、フラワー・シャネルの父親で、ルラの父親とは、魔法学校時代の同級生。宰相ヘンリー・リラーナ公爵が、心許せる友人の一人だった。
俊也たちの居場所を知っているのは、巫女たちの父親だけだった。ルマンダは父親の名前を知らないので、全部で九人。
ルラの部屋は父親の魔法で封印され、転位魔法陣は連絡の便宜のため残されている。
旅の邪魔になるので、置いてきた資金や日用品は、別荘の地下倉庫に移されている。
別荘での俊也と巫女たちは、当初魔法の修行や、近くの廃坑ダンジョン探検に明け暮れていた。
ところが、重大な問題が発生した。ルラ、エレン、フラワー、ルマンダの四人が、そろって妊娠してしまった。
妊娠しにくい、貴族の血を引く女を四人も孕ませ、図らずして俊也の生殖能力は証明された。
だが、ルマンダ以外、家事能力がある者は皆無。なにせみんな貴族のお嬢様なのだから、家事の方はさっぱり。
フラワーが「手助け無用」の大見えを切った以上、シャネル侯爵に、いまさら泣きつくわけにいかない。
一番深刻なのは料理係。残念なことに調理魔法は誰も心得がない。
一番早く妊娠したルマンダは、つわりの症状が現れ始めた。俊也の癒しの手のおかげで、症状は軽いが、嗅覚や味覚までには及ばない。
つまり、肉や魚の臭いが鼻について、料理ができなくなった。
残されたファミリーの中で、料理がまともに作れるのは俊也だけとなった。
もちろん、ルマンダが妊娠する前から、交替で手伝っていたが、最大の戦力が欠けたら、俊也に負担が一挙にのしかかってくる。
巫女たちは、十一人分の食事を作る俊也を見ていると、情けないやら申し訳ないやら。
見かねたルラはこう言った。
「しょうがない。俊也、町に出て料理上手な女、二三人ナンパしてきなさい。
ご老女が好ましいけど、俊也は若い方がいいでしょ?」
「これ以上若い女性はけっこうです。
なるべく麗しいご老女をナンパしてきます。
間違っても孕まないような」
間違っても孕まないような…ね。
間違う自信はあるんだ? 一同そう思ったが、俊也のナンパを全員認めた。
俊也は魔法戦士修行中の、ブルーとイザベルを伴い、レジ形態となって街へ急いだ。
お伴が必要なのは、俊也形態やただ猫ナイト形態は、気の毒なほど弱いから。変身媒体となる必要もある。
そして、レジ形態の俊也について走れるのは、ブルーとイザベルだけだった。
不在時の食事は、朝陽や両親にレトルト食品を依頼した。
この地から、ぬいぐるみプリンに通訳してもらい、東京の近親者と連絡が可能である。
そして、魔法陣に置かれた物を、こちらから呼び寄せる技術も、もちろんある。
カントの地は、物流に恵まれているとは言えない。そこで、公爵家から魔法陣を通し、食材は定期的に送られてくる。業務用冷蔵庫も、日本から取り寄せている。
だが、王都の各種食材は豊富にあっても、調理できなかったら話にならない。完成した料理をたびたび送ってもらうのも、女性としての沽券が保てない。
俊也不在の数日なら、ジャンクフードも悪くない。デリバリーやテイクアウトという手もある。
カナちゃんのおすそわけも期待できる。彼女の料理の腕は抜群だ。
共働き世帯の彼女は、高校へ通いながら、家族の夕食を支度しているという。
そうだ! カナちゃんを呼ぼう! あちらの世界では、タチの悪いウイルスが大流行し、目下自宅に閉じこもる生活だという。
彼女も気が晴れるだろうし、万一ウイルスに汚染されていても、症状が出ない程度なら清浄魔法で一掃できる。
念のため自然治癒魔法(俊也が言うには、免疫力を超アップさせる魔法らしい)をメンバーに重ね掛けすれば万全。
問題は俊也が巫女、つまり嫁が十人であることを、伝えていないことだ。カナちゃんは俊也に相当気がある雰囲気だったし。
これは俊也と相談する必要がある。カナちゃんは俊也が帰るまで待とう。
俊也は多分猫又形態にならないだろうし、なったとしても、いつだとは確定できない。
ルラは猫又ナイトなら、念話で交信できようになっていた。猫又ナイト2は、声が大きすぎて会話にならない。
猫又ナイト2にも、変身条件と活動限界以外、弱点がもう一つあることが、以前のデモンストレーションで発覚した。
つまり、魔法を使う時のさじ加減が大雑把なのだ。
「魔法でお魚釣ってきて」
と頼んだら、クジラでも釣ってきそうだ。
俊也によれば、クジラは哺乳類で魚類ではないらしいけど。
「ルラ、俊也にあんなこと言っていいの?」
エレンが少し怒った顔で聞く。「あんなこと」とは、「若い方がいいでしょ?」という言葉だ。
「あれは釘を刺しただけよ。
俊也は嫌がる女を、無理やり手に入れようとする男じゃない。
だから俊也は言ったでしょ?
ご老女を探すって。
私の言葉の裏を即理解したの」
一同なるほど、と感心した。ルラに「俊也トリセツ(取扱説明書の略)」書いてもらおう。エレンはそう思った。
とりあえず、今夜はデリバリーを頼もう。
多人数を用意してもらうのは、いつもの通り「メイド巫女の分」で、押し通す。
料理のできない「メイド」相当無理があるのだが……。
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