【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
43 / 230

43 このプレートが目に入らぬか! 

しおりを挟む
 俊也たちが、町の手前にさしかかったとき。

「あ~れ~、どなたかお助け下さいませ!」
 単に「助けて~」と娘は叫んでいるだけだが、ブルーの脳内妄想ではそう聞こえる。

「おっと、マジできましたよ~。
御老公、いかがいたしますか?」
 俊也は「誰が御老公だよ」と、内心再び突っ込みながら、
「様子見」
 と淡白に応える。

この二人には、身体に対する加減というものが、まだ十分身に付いていない。

俊也はゆうべ、イザベルのお相手を生身で勤め、しみじみと思い知らされている。

青あざ、噛み痕多数。大人しい方のイザベルでこれだから、俊也モードでブルーのお相手は少し怖い。

幸い彼女は、もっぱらレジモードだ。

なんて思っている場合じゃない。

あの女の子、囲まれちゃったよ。あの男たち、どう見ても正義の味方じゃないよね?

「いざさん、ちょっとだけ懲らしめてやりなさい」
 俊也は軽い攻撃を命じる。

「青さんは? ね、ね、青さんは!」
 ブルーは猛烈に抗議する。

「ちょっとだけ、マジで誓う?」
「マジで誓う!」
「では、最小限で懲らしめてやりなさい」
「ラジャー!」
 ブルーは生き生きと突撃した。


 ドスッ、ボコッ、ガス、ボキ……。

結果は……、死者が出なかったようだからよしとしよう。

俊也はがっくりと肩を落とした。俊也に暴走娘たちを抑える力はない。



 俊也の予想より、事態はめんどくさくなった。「手ごめ」にされかけたはずの、町娘が姿を消していた。

もっとも「手ごめ」目的だと俊也は思っていなかった。

十人では数が多すぎる。ちらっと見ただけだが、あの女性はとくに際立った容貌でもなかったし。

何より、目立つ町の入り口で「てごめ」もないだろう。

あの男たちは、他に目的があったのではないかと想像していた。

その十人は、町唯一の病院でうめいているはずだ。


そして、めんどくさい事態とは、俊也たちの方がケンカをふっかけた、と見られていることだった。

被害の状況を鑑みたら、うなずけなくもないが、なんとなく作為が働いている予感。


三人は逮捕され尋問を受けている。尋問しているのは、シャネル侯爵の私兵だ。

ここは私兵の駐屯基地で、警察機能も代行している。

「まず住所と名前を聞こう」
 多分責任者だろう。偉そうにふんぞり返ったおっさんが言った。

「ゆえあって、姓名と住所は明かせません。
シャネル侯爵から特命を受け、この地に滞在しております。
これがその証拠です」
 俊也はいきなりミツバアオイのインローならぬ、ガラスプレートを出した。
 もったいぶって、番組終了間際まで出さないという、お約束はない。

そのシャネル家の紋章が刻まれたプレートの中には、魔石が埋められ、魔力を持った者には侯爵のメッセージが聞ける。

無用のトラブルを避けるため、侯爵が与えてくれたものだ。使用したらシャネル侯爵に伝わるはずだから、かっこ悪くて、本当なら使いたくなかったのだが。

このおっさん、多分あの連中から鼻薬をかがされている。

「確かにシャネル家の紋章はあるが、贋造したのではないか?」
 責任者はプレートを確かめる。

「失礼ながら、魔力はお持ちですか?」
 俊也が聞く。

「残念ながら魔力は持ってない」
 責任者はそっぽを向いて応える。この世界では、魔力を持っていない方が珍しく、引け目に感じているようだ。

「いざさん、投影を」
「はい、御老公」
 まだそのノリ続ける? 反省は不十分のようだ。まあ、いいけど。俊也は苦笑してフォロー。

「ゴローコー、とは私の世をしのぶ仮の名です。
魔法を発動する者はイザサン、赤毛の者はアオサンと呼びならわしております」

「では……」
 いざさんは、ライトとスピークの魔法を使って、壁にシャネル侯爵の姿を映した。


『シャイン・シャネルである。このプレートを持つ者は余の盟友である。
シャネル侯爵領において、一切の自由を余が保証している。
この者と、従者の自由は侵してはならぬ。
なお、余のメッセージを聞きし者は、一層の緊張を持って任務にあたるべし』
 
責任者は、最後の言葉で、侯爵の計算通りの誤解をした。

こいつ…この方は、巡検察官に近い立場だろう。いや、侯爵が『盟友』と呼んだからには、さらに重い任務を帯びた方だ。

巡検察官とは、身分を隠し、領内を巡る監督官だ。要衝に置かれた兵を、監督する任を帯びている。

「失礼ながら、当地に不穏な動きでもあるのでしょうか?」
 責任者はびくびくしながら聞く。思い当たることは、…それほどないのだが。

「わからぬ。当地で滞在しているのは、とある事情で供の者が四名、活動しにくい状況にあるからだ。
この街に来て、偶然若い娘に救いを求められた。
その娘に筋骨隆々の男が、十名襲おうとしていた。
事情はわからぬが、弱い者の味方をしたくなるのは、人情というもの。
間違っておるか?」
 俊也は可能な限り、威厳を取り繕い弁明した。

先入観というものは恐ろしい。責任者は、なんとなく俊也が超偉く見えてきた。

「もちろん、間違っておりません!」
 責任者は、すかさず応えた。

「ならよい。
供の者はひのえ熊との戦闘を終えたばかりで、気が立っておる。
やり過ぎたことは認める。
怪我の保障は……」

「とんでもございません! あの者たちは山師のグループです。
新しい鉱脈を探し、生計を立てております。
税はきちんと払っているので、多少の目こぼしは……」

 はは~ん……、やっぱりね。俊也は大体のストーリーが見えてきた。

「つまり、そのグループは、目に余る寸前のことをやってきたと? 
ずいぶん大きな目を持っておることだな。
襲われた女性の見当も、ついておるだろう? 
想像にすぎないが、その女性はどこからか少しずつ鉱物を持って帰り、生計を立てている。
違うか?」

俊也は襲撃者が「山師」と聞いて、即座に推理した。つまり、おそらくあの娘は、鉱物採集に関する特殊能力を持っており「山師」グループは、その「能力」を欲しがっていたのではないか?

「お、恐れ入りました! 
その通りです。今後思い切り目を小さくします! 
寛大なご処置を!」
 その責任者は極限まで腰を折り、頭を下げた。

「まあよい。今後はそのように計らえ。その女性の名前はなんという?」

「ブリリアンと申します。姓はあるのか不明です」
 この世界で平民は姓を持っていない。たとえば、ルマンダの母親は姓を持たない平民出身だ。

貴族たちは平民の女を、愛妾とするのは恥とする。だから表には絶対出さないと、俊也は聞いていた。ルマンダが父親の姓名を知らないのはそのためである。

「ブリリアンのねぐらに案内せよ。多分住所不定であろうが」
 俊也はブリリアンを、保護するべきだと判断した。この街では、超貴重な獲物であるはずだから。

「おおせのとおり、住所はわかりません。
ただ、その者がよく立ち寄る場所はわかります。
アンリ、ラブミーテンダーへご案内しろ。
くれぐれも粗相のないように」
 アンリと呼ばれた女性兵は、緊張の面持ちで「はい!」と敬礼した。

容疑者の二人が女性だったから、女性兵を警備につけたのだろう。この責任者、そこそこは気がまわると俊也は判断した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...