【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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65 どうして嫁になったんですか?

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 馬車を一時間近くギシギシ言わせ、ぴたっと静まった。

前の馬車に乗っていたユーノは、一呼吸置いて後ろの馬車へ。

俊也が持ち帰った、LEDのカンテラで、場車内は見渡せた。ちょうど猫又2が変身を解いたところだった。

ただ猫に還ったナイトは、アンリの股間に頭を張り付けている。

嫁たちは相談の上、三十分はそのまま寝かせると決めた。あまりにも幸せそうな顔で寝るので、起こしづらい。

「ごめんなさい。時間かけちゃいましたね」
 素っ裸のアンリは、羽根布団と毛布を体にかける。この羽根布団は超優れもの。アンリはもちろん、別荘へ行って、初めてその軽さを経験した。
 
ユーノは「いいんですよ」と言いながら、上着だけ脱ぎ、アンリの隣へ滑り込んだ。

「あん…」
 アンリは内もものくすぐったいところに、猫髭が触れ、小さく声をもらした。

「本当ならくすぐったいはずなんだけど、終わった後、なんかいいでしょ? ひげやモフモフ」
 めずらしく下ネタのユーノに、アンリは少し照れながらうなずく。

「ユーノさん、どうしてSAに入ったんですか?」
 アンリは口数の少ないユーノと、サシで話すのは初めてだった。

「一つは、黙って殺される気になれなかったから。俊也さんがこの世界に来なかったら、私たち貴族は、ほとんど殺された。
魔法学校関係者は真っ先にね。
もう一つは、俊也さんに抱かれて力を得たかった。
たいていの線は妥協するつもりだったけど、一度抱かれたらメロメロになった。
抱かれる動機は、みんな不純だったけど、誰も後悔なんて、ひとかけらもないと思う」
 ユーノはしみじみと語る。

「私も似たようなもんです。ルラさんに『抱かれて嫁になる?』と聞かれたとき、うなずいちゃった。
嫌と言ったら、とんでもなく後悔する気がして。
最高の選択だったと思います。
筋肉が付きすぎちゃったことぐらいかな。
女の魅力が……ね?」
 アンリはわりと真顔で言う。

「今は余裕ないと思うけど、ブルーさん、かなり柔らかい体になったでしょ? 
アンさんがうまく要所に散らしてくれるから」
 そうなんです! ブルーの超乏しい皮下脂肪を、アンはかきあつめ、かきあつめ。お尻とおっぱいは、なんとか柔らかさをキープできているのです。

 油断するとブルーは、あっというまに脂肪を燃焼させてしまう。痩せたい、と願う女子や中年男性にとって、うらやましく感じられるかもしれないが、当人にとっては、結構深刻な問題なのです。

「ですよね~、アンさんの施術受けるの、超楽しみ。
変ですよね。男の人のために変わりたい。そんな女だとは思わなかった」
 アンリは股間に張り付く猫頭をなでながら言う。

アンリは男に媚びることを仕事にする女たちを、日常的に見てきた。そんな娼婦たちを、醜いとまでは思わなかったが、少なからぬ抵抗を感じていた。

 また、その「媚び」を買いに来る男たちに、心のどこかで忌避感をいだいていた。

「私こそ。かなり極端な男嫌いだったから。
見え透いたお世辞ばっか。
顔と体にしか興味ないのか。
そんなふうに軽蔑してた」
 ユーノがナイトの背中をなでながら言う。

 アンリはなるほど、と思った。ユーノさんのクールさは、男の嫌な部分が見えすぎるからなのだ。
頭がよすぎるのも善し悪しだ。

「お世辞じゃないと思うけどわかります。男ってそんなものですかね~」

「たいていはそうみたいですね。俊也さんは少し違ってる。
女の顔と体には、人並み以上に興味がある。
状況が許し、ストライクゾーンなら誰でも可。
それは普通の男と同じじゃないかな? 
だけど、自ら抱いてと乞う女以外には手を出さない。
ある意味ずるいけどやさしい。
アンリさんは例外の部類ですよ。
出会いの話を聞いたら、ほとんどナンパでしょ? 
俊也さんにそんなことできると思ってなかったから、びっくりした」

「多分、私は抱いて、とりこんだ方がいいと踏んだんでしょうね。
実家にも軍にもいたくなかった。
そんな心、見透かされたと思います」

「軍にも居たくなかったの?」

「軍曹に相当言い寄られました。
多分娼家の娘だから、安く見られたんだと思います。
私、つい言ってはならないこと言いました。『この身体、金で買えると思わないでください』。
ほんとは実家の従業員、心のどこかで見下してたんです。
情けなくて……。
何様だよ、自己嫌悪にかられて」
 
ユーノはぐっと胸を突かれた。この人、なんて優しい人なんだろう。そう思えたから。

ユーノにとって、娼婦や男娼は、どうでもいい存在だった。

身体を売ることは、貴族も同じだ。「仕方ない」から、貴族の多くの娘は、目をつむって抱かれている。

自分も最初は、そう思っていた。俊也の異能力は大きな魅力だったが、彼に抱かれて満足できるとは思わなかった。
つまり、目をつむって抱かれる気でいた。

抱かれてみたら、あっと驚く嬉しい大誤算。ほとんどの嫁は同じだと思う。

だから新しい嫁が増えても、嫁たちはたじろがない。俊也には感謝の気持ちしかないから。
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