【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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98 勇気がないので

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 日も落ちかけてから一行は、ガスムの街に到着。

ガスムは王国第二の都市、エスタリアに近い。馬車で一日もあればエスタリアへ着く。

そして、明日からは、王都イスタリアとエスタリアを結ぶ中央街道だ。
道には敷石が整備され、しばらくはずっと快適な旅となるはずだ。

ちなみに、両都市は名前も似ているし、規模も王都の方が、少し大きいという程度。イスタルトの双子都市と呼ばれている。
エスタリアはルラの父親、リラーナ公爵の領地内にある。今は父親に代わり、彼の長男ミック・リラーナが領主を代行している。

ルラは長兄と、もう十年会っていない。父親のヘンリーが国政に忙しく、滅多に領地へ帰らないからだ。つまり、領地は、ほとんど長兄が治めているというのが実情だ。

「メシができたら呼んで。俺は馬車で寝る」
 俊也は御者席のマサラにそう言って、後ろに移る。

「ガムスの宿は、これまでと違いますよ。行きは素通りでしたけど」
 マサラが苦笑して馬車から下りる。

ガムスは、エスタリアの衛星都市として栄えた町である。「双子の都市」ほどではないが、上質の宿も何軒かある。

「い~の。お休み」
 要するに眠かったんだ? 眠くなったら、すぐ寝ちゃうもんね。

ああなったらダメだ。マサラは放置することにした。

「俊也さんは?」
 アンが聞く。アンは馬車の結界を張る係りだ。

「オネムターイム。ダメですね。私たちで食堂決めるしかありません」
 マサラは肩をすくめて言う。

「そうなんだ? じゃ、簡単な結界にしておく。解除するの面倒だし。またテイクアウト?」

「一応起こしてと言われましたが、その方が無難ですね。ナイト君、中途半端で起こしたらご機嫌悪いですから」

「今から食堂探すとして…確かに中途半端だ。ちゃっちゃと結界張るからどいて」
 アンは、馬車の四隅に雷属性の魔石を置く。それが一番確実で簡単な方法だから。実は、雷魔石の一般的な使用方法は、この簡易結界ぐらいなのだ。他の魔石より安くて当然。

アンは「雷結界アリ。寄るな危険」の木札を馬車にセットし、呪文を口の中で唱えた。
これで外から結界に入ったら、電流が通り、はじかれてしまう。心臓が弱い者などは、マジで命が危ない。

 アンがみんなの後を追おうとしたら、ブレイブとミーナが、ブルーとちょっぴりもめているような感じ。

二人とも勇気あるな、と感心しながら、アンは歩み寄る。

「だから、俺たち、こんな……持ったことないんですって」
 ブレイブが、泣きそうな目でブルーに訴えている。

「心配で、心配で。こんな大きな街で……を持ってるなんて」
 ニーナはそう言って、周囲をきょろきょろ見る。

あ~、そうか、とアンは納得。二人は勇気がないからもめてたんだ。

「自分の、金貨は、自分で守りなさい」
 アンは金貨をことさら強く発音し、三人の前を通り過ぎた。

「ひっど~!」
 ブレイブとミーナは、マジで泣きそうになった。二人は俊也から、雷魔石の代金を受け取っているから。金貨で。

お、ここにもいたぞ。

「その剣、食堂まで持っていくつもり? 結界に入れておいたら大丈夫だよ」
 アンがそう声をかけた。ミネットが剣を大事そうに抱え、イザベルの後を付いて歩いていた。

「でも……」

「大切だということはわかるんだけどね。
イザベルさん、この街でいっそあの六人に、武器装備させてあげたらどうですか? 
気安めぐらいにはなるでしょ? 昼間あんなことがあったし。
ここの武器屋は、多分カントよりましですよ」
 アンが提案する。

「そうだね。俊也さんに……は?」

「オネムターイム」
 アンはにこっと笑って答える。

「そっか。ミネット、何食べたい? 私がおごって上げるよ」
 おっと~、すっかりあの子がお気に入りですか。

まあ、あの美形なら、ルラさんのゴーサイン、即お褥入りだ。
館の今年の冬は、ずいぶんにぎやかだ。

アンにとって、かつて冬は最悪の季節だった。


 俊也以外のメンバーが、食事をとっていたところ…、
「おい、マスル街道で、強盗団の死体がごろごろ転がってたぞ。
あの人数はショック団だと思うぜ!」
 髭もじゃの男が、食堂へ飛び込んできてそう言った。

「ショック団が? マジかよ! 何人ぐらい死んでた?」
 その男の知り合いだと思われるムサイおっさんが、大声で聞いた。

「わかんね~。三十人ぐらい? 軍が討伐したのかな? みんな矢か魔法で殺されてた」

「軍が動いたら目立つだろ? お前、賞金もらったか?」

「バカ言うんじゃね~よ。そりゃ賞金は欲しいよ。だけど、俺一人で、あいつらやっつけられるわけね~だろ? 
それに、生き残りがいたらおっかねえし。
一応は報告したけどさ、俺は無関係。
ただの発見者」
 
あれだけ大声で騒いでくれたら、状況は見えた。

「イザベルさん、賞金がかかってるそうですよ」
 ミネットがこっそり耳打ちした。

「俊也さんが言うことは決まってる。めんどくさいからいい。放っておきなさい」
 
イザベルは知っている。俊也は事情聴取を嫌う。
聴取する側は、小さな事件でも、調書と報告書が必要だ。

カントに最近赴任してきたジミー軍曹は、俊也の顔を見るたびぼやく。

「またですか?」

俊也はこう答える。

「どうもごめんなさい。またです。ブルーは俺の手に負えません」

俊也が自警団育成を、本気で考える理由、それでお分かりだと思う。
自警団員なら、比較的軽微な犯罪者の腕を、ありえない方向へ曲げることはしない。
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