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102 ノベチャン、漢の花道
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国会再開。野辺首相は、席へ付く前に、こう言った。
「議長、審議に移る前に、首相として国民に話すべきことがあります。これは緊急事態です。発言させていただきます」
有無を言わせず、首相は答弁席に向かった。
野党から野次が起こる。ケンサンのノベチャンはひるまない。
「先ほど私は、ある国の特任大使と接見いたしました。
その国とはシュンヤーダ王国。
地球上には存在しない国です」
なんだよそれ、ふざけてんの、などなど、野次多数。
「地球上には、と申し上げました。地球以外に存在する国だと、私は断言いたします。
いわゆる異世界の王国です。
その王国の代理と、わが政府は、何度か交渉を持ちました。
政府が特任で依頼した、医療関係の者には常識となっております。
その国の有益なご指導のおかげで、昨年何人のコ〇ナ患者が救われたか。
急ぎのことですので、詳しくは国会終了後、数字を含め、記者会見で答えます。
そのことより、重大なことが起こりました。
シュンヤーダ王国は、我が国に宣戦布告をいたしました。
私の正式な謝罪がない限り、以下の事柄を決行する。
一つ、明日午前十時、国会議事堂破壊。
二つ、同十時十分、スカイツリー破壊。十時二十分、レインボーブリッジ破壊。
その方法は不明です。
しかし、私は彼らなら可能だと確信しております。
これは真面目な言葉です。
彼らは強力な魔法使いです。
それは今までの交渉、そして本日の交渉で、私は信じるしかなくなりました。
なぜなら、私の目の前で、一匹の猫と二人の女性が転送されました。
存在がどこかに消えてしまったのです。
ノベ、狂ったか。
そのそしりは覚悟の上です。
明日予告された事態が、現実になるよりはるかにましだ。
なぜそれほど、かの国の人は怒ったのか。
心ない雑誌社の記事と、マスコミの態度に激怒したのです。
その記事の対象は、高校生の女性二人であります。
国民の皆様には、ああ、あの子たちか。そう思われる方も多いでしょう。
その二人は、王国の許可を得て、異世界を取材しました。
彼女たちの映像は全部本物です。そうとしか解釈できないのです。
彼女たちは、実際の魔法を現場で写したのです。
お暇な方は検証してください。
ネットで流したのに、どうして怒る?
確かにそうかもしれません。
ですが、自らの意思で情報を発信することと、許可なく写されることは違います。
しかも、彼女たちは、何の犯罪も犯してない、未成年です。
実際彼女たちはそれらの報道を受け、学校へ行っていません。
私は、内閣総理大臣として、すなわち、心ない出版社やマスコミを含め、すべての日本人を代表し、ここに深くお詫び申し上げます。
二人の女の子、大人が傷つけてごめんなさい!
そして、彼女たちの人権を、自国の名誉にかけ守ろうとした、シュンヤーダのみな様、深くお詫びいたします。
なにとぞ、なにとぞ、我が国に大きな打撃を与える制裁は、お許しください。
以上です」
野次は途中で静まり、最後には大きな拍手に変わった。
「よ、のべ、男だ!」
「見なおした!」
大体において好意的だった。ノベチャンはジーンときた。
打たれても、打たれても我慢したかいがあった。
ノベチャンは目を潤ませながら席に着いた。
「首相、猫の手さんからです。いかがいたしますか?」
野本秘書が、スマホを持ってきた。
「電話?」
秘書はうなずく。
「議長、今問題の大使から、電話が入りました。
国会中ですが応答してよろしいでしょうか?」
「認めます」
議長は許可を出した。
『国会で正式に謝罪していただけるとは、思いませんでした。
感動しました!
両国のよりよい関係を築くため、努力することを誓います。
あの乱暴な発言お許しください。
ですが、あの発言がブラフだと思われたら心外です。
被害や危険のない場所で、デモンストレーションを行います。
場所をご指定ください』
「わかりました。ご理解感謝いたします。
詳しいお話は後ほど。秘書に代わります。
……今、私の、誠意に感動し、謝罪を受け入れたという旨、連絡を受けました。
もちろん攻撃はありません。
ただ、彼らの言葉が、ブラフだと疑われるのが心外だそうです。
デモンストレーションの場所を、指定してほしいとのことです。
つまり、魔法を我々の目の前で、証明してくれるということです。
国会の審議が終了次第、検討いたします。
お時間をいただきまして申し訳ない。以上です」
ノベチャン首相就任以来の、大きな拍手が起こった。
だが、正直なところ信じている議員は、一割にも満たなかっただろう。
後は一信九疑といったところか。総理があれまで断言した以上、嘘だとも言い切れない。
一割弱の信じる派議員は、何らかの形で、例の魔法の布や魔法石に関する情報を、知っていた者だ。
「議長、審議に移る前に、首相として国民に話すべきことがあります。これは緊急事態です。発言させていただきます」
有無を言わせず、首相は答弁席に向かった。
野党から野次が起こる。ケンサンのノベチャンはひるまない。
「先ほど私は、ある国の特任大使と接見いたしました。
その国とはシュンヤーダ王国。
地球上には存在しない国です」
なんだよそれ、ふざけてんの、などなど、野次多数。
「地球上には、と申し上げました。地球以外に存在する国だと、私は断言いたします。
いわゆる異世界の王国です。
その王国の代理と、わが政府は、何度か交渉を持ちました。
政府が特任で依頼した、医療関係の者には常識となっております。
その国の有益なご指導のおかげで、昨年何人のコ〇ナ患者が救われたか。
急ぎのことですので、詳しくは国会終了後、数字を含め、記者会見で答えます。
そのことより、重大なことが起こりました。
シュンヤーダ王国は、我が国に宣戦布告をいたしました。
私の正式な謝罪がない限り、以下の事柄を決行する。
一つ、明日午前十時、国会議事堂破壊。
二つ、同十時十分、スカイツリー破壊。十時二十分、レインボーブリッジ破壊。
その方法は不明です。
しかし、私は彼らなら可能だと確信しております。
これは真面目な言葉です。
彼らは強力な魔法使いです。
それは今までの交渉、そして本日の交渉で、私は信じるしかなくなりました。
なぜなら、私の目の前で、一匹の猫と二人の女性が転送されました。
存在がどこかに消えてしまったのです。
ノベ、狂ったか。
そのそしりは覚悟の上です。
明日予告された事態が、現実になるよりはるかにましだ。
なぜそれほど、かの国の人は怒ったのか。
心ない雑誌社の記事と、マスコミの態度に激怒したのです。
その記事の対象は、高校生の女性二人であります。
国民の皆様には、ああ、あの子たちか。そう思われる方も多いでしょう。
その二人は、王国の許可を得て、異世界を取材しました。
彼女たちの映像は全部本物です。そうとしか解釈できないのです。
彼女たちは、実際の魔法を現場で写したのです。
お暇な方は検証してください。
ネットで流したのに、どうして怒る?
確かにそうかもしれません。
ですが、自らの意思で情報を発信することと、許可なく写されることは違います。
しかも、彼女たちは、何の犯罪も犯してない、未成年です。
実際彼女たちはそれらの報道を受け、学校へ行っていません。
私は、内閣総理大臣として、すなわち、心ない出版社やマスコミを含め、すべての日本人を代表し、ここに深くお詫び申し上げます。
二人の女の子、大人が傷つけてごめんなさい!
そして、彼女たちの人権を、自国の名誉にかけ守ろうとした、シュンヤーダのみな様、深くお詫びいたします。
なにとぞ、なにとぞ、我が国に大きな打撃を与える制裁は、お許しください。
以上です」
野次は途中で静まり、最後には大きな拍手に変わった。
「よ、のべ、男だ!」
「見なおした!」
大体において好意的だった。ノベチャンはジーンときた。
打たれても、打たれても我慢したかいがあった。
ノベチャンは目を潤ませながら席に着いた。
「首相、猫の手さんからです。いかがいたしますか?」
野本秘書が、スマホを持ってきた。
「電話?」
秘書はうなずく。
「議長、今問題の大使から、電話が入りました。
国会中ですが応答してよろしいでしょうか?」
「認めます」
議長は許可を出した。
『国会で正式に謝罪していただけるとは、思いませんでした。
感動しました!
両国のよりよい関係を築くため、努力することを誓います。
あの乱暴な発言お許しください。
ですが、あの発言がブラフだと思われたら心外です。
被害や危険のない場所で、デモンストレーションを行います。
場所をご指定ください』
「わかりました。ご理解感謝いたします。
詳しいお話は後ほど。秘書に代わります。
……今、私の、誠意に感動し、謝罪を受け入れたという旨、連絡を受けました。
もちろん攻撃はありません。
ただ、彼らの言葉が、ブラフだと疑われるのが心外だそうです。
デモンストレーションの場所を、指定してほしいとのことです。
つまり、魔法を我々の目の前で、証明してくれるということです。
国会の審議が終了次第、検討いたします。
お時間をいただきまして申し訳ない。以上です」
ノベチャン首相就任以来の、大きな拍手が起こった。
だが、正直なところ信じている議員は、一割にも満たなかっただろう。
後は一信九疑といったところか。総理があれまで断言した以上、嘘だとも言い切れない。
一割弱の信じる派議員は、何らかの形で、例の魔法の布や魔法石に関する情報を、知っていた者だ。
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