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109 ミネットの秘密
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「俊也、そろそろ大使館の場所、決めてね」
日本へ転移しようとする俊也を、ルラが呼び止めた。
「東京の地価、知ってる? カナや俺の実家、壊すわけにいかないし。まあ、一応探してみる」
俊也がコツコツ貯めた円は、まだ相当残っているが、東京のふざけた地価の前では、ひとへに風の前の塵に同じ。
現在は、こちらとの関係完全バレバレの、カナの実家を臨時大使館として利用している。
王国の金貨は純金。しかも超派手な演出によって話題性は抜群。プレミア的な価値もつき、しかも「特別資格」が与えられたカナの父親は、税務申告の必要なし。
流通量は当然抑えているが、カナの両親は笑いが止まらない感じ。
もちろん王国産の宝石も、堂々と販売できるようになった。
家はカナに明け渡し、現在夫婦でマンション暮らしをしている。二階から聞こえる声が、たまらないということもあるようだが。特に父親の方が。
娘の声も嫌だし、あちらから、たびたび王国民も訪れる。
嫁たちは声を抑えるなどという、水臭いことを大家さんにしない。
俊也とミネットが、カナの部屋へ転送された。
館三幹部は会議を始めた。
さっき王都から送られてきた手紙について。
ミネットの父親が残した剣を、写真に撮って鑑定を依頼していた。その結果、もしや、が現実みを帯びてきた。
「あの子、やっぱりつながってる可能性高いね。エレンと」
ルラが言う。
「下の兄上は、俊也並みに好き者だから。それにしても、相手は選ぼうよと言いたい。しかも……」
記者の都合でフェードアウト。館の外の様子をのぞいてみよう。
「ヒートウエイブ! …どうしてなのよ! ちょっぴりしか溶けない!」
ニーナは癇癪をおこした。彼女は多少魔法が使える。だが、生活魔法レベルの腕だ。
俊也は彼女に「秘儀」を施すつもりはない。だから上達は難しい。
貴族と平民の差は、サラブレッドと農耕馬にたとえたら、わかりやすい。貴族は貴族だけと交配し(建前では)、高い魔力の器を守ってきた。
その結果、外見も平民とは明らかに違う。だから魔法の力を背景に、特権階級を維持できている。
この世界は、濃い魔力の気が漲(みなぎ)っている。そのため、平民でも魔力を持つ者が多い。
だが、サラブレッドと農耕馬が競争しても、全然勝負にならない。
平民でかなりの魔力を持つ者も、いるにはいる。それはまず例外なく、なんらかの形で貴族の血が流れているからだ。
館の嫁たちが、ミネットの出自を気にしているのは、ミネットの外見と魔力量が、平民としてはありえないレベルだからだ。
ミネットの話を聞けば、彼女の父親も相当の魔力を、間違いなく持っていた。弓や槍の腕も高いレベルだったようだ。
つまり、優秀な魔法戦士だったと推定できる。
魔法戦士は、下級貴族出身や、子の多い中流貴族の子弟で、その多くが構成されている。
魔導戦士は、上流貴族の冷や飯食い、つまり、家督継承者に選ばれなかった者だ。
したがって、魔法戦士に比べ、魔導戦士の数は、二百分の一程度と考えていただきたい。
ミネットは魔導師の中でも、大きな特徴がある。つまり、「オールマイティー型」だということ。
この特徴は「三大貴族の血」と、大いに関連する。
以前嫁たちの特徴を、簡単に紹介したことがある。ルラ、エレン、フラワーが、その「オールマイティー型」であることも記した。
オールマイティー型は、どんな魔法でも非常に高レベルで使えることを意味する。
つまり、戦力として最高に役立つから、三大貴族は大きな権勢を誇っている。
館の嫁たちが、ミネットの出自を大いに気にしたのも、それが原因だ。
つまり、ミネットの父親は、実の父親でない可能性が高く、三大貴族の濃い血が、入っている可能性も高かったからだ。
話を館の外に戻そう。ニーナたち元村人六人は、エンランとマサラの監督下で、雪かきをやっているわけだ。
ニーナが悔しがっているのは、二人の監督官なら、一度で溶かせる雪に対し、悪戦苦闘しているからだ。
他の五人はあきらめて、雪かき用のスコップや、一輪車で雪をどかしている。
他の五人が文句を言わないのは、そういった道具を使っての作業より、ニーナの魔法の方が、多少効率がいいからだ。
そして、監督官二人は、何をしているのかといえば…、
「雪山はこんなものじゃない? ある程度固める必要があるよね?」
エンランは、直径三メートルほど、半球形に盛り上げた雪山を見ながら言う。
「中に入ったらグシャ、ドシャ。全然シャレにならないよね。どうやって固める?」
同じく雪山を見ていたマサラは、エンランをうかがう。
「霧雨じゃダメでしょうね。小雨?」
「小雨じゃ表面が固まるだけでしょ。小雨二倍マシマシ?」
「とりあえずそれでやってみよう……」
そうです。二人は魔法だけで、カマクラ造りに取り組んでいるのです。
まあ、マサラとエンランは、中学生の外見ですから、雪を見たら遊びたくなりますよね?
そう思った方。それはノーです。
彼女たちの外見はあれだが、中身は思慮深い大人なのだ。単に遊んでいるだけではない。
魔法だけで、このドーム状の雪の小山を作ること、それはそれで、高度のテクニックが要求される。
単純に物体を破壊する魔法なら簡単だ。魔法で造形するには、どの魔法を、どれぐらいで発動するか、選択と微妙なさじ加減が要求されるからだ。
来春から二人には、本格セックスが約束されている。つまり、膨大な魔力量が得られる。
それが即活かせるように、魔法センスを磨くため、二人はカマクラづくりなどの特訓を重ねているのだ。
遊びがてらだが。
ちなみに、気になる方がいるかもしれないので説明を加える。
マサラやエンランだけではなく、嫁たちが魔法を発動するとき、なるべく漢語を使用していること、お気づきだろうか?
それは漢字が表意文字だからだ。つまり、短い発音で多くの意味がこもった詠唱が可能となる。複雑な魔法でも早く発動できるわけだ。
ただし、条件がある。その漢字の意味を知らなければ、魔法を発動できない。嫁たちが日本語を一生懸命勉強しているのは、そのためでもある。
もう一つちなみに『X倍』というのは、自分の平均的な魔法の効果を、どれほど増すか、ということだ。『マシマシ』というのは、単なる気分だ。『マシ』とつけるより、リラックスして魔法が使える、気がする(猫又ナイト大先生談)。
「それって誰のおっぱい? 見たことない形だ」
スキー板を担いだ、ブルーが言う。スタイルも『私をスキーに連れてって』という感じだ。
古っ! と思ったら、すでにあなたは、年金世代だ。若人は何のことだかわからない。
泣いてよいぞ。
何の話だか、わからなくても問題はない。
「おっぱいじゃありません。それなら片乳でしょうが! 先端も寂しすぎます。
ならば、私たちは何を作ろうとしているのか!
ブルーさん、どうぞ!」
マサラが振る。
「やかましいわい! トゥー!」
ぴょ~~んとブルーがジャンプ。
気分は久しぶりにライーダー。ドス、ゲス、ガス……。
無惨にも雪山は崩れた。
「私にクイズなんて十年早い! じゃ!」
あ~あ、とエンランは思った。マサラ、ブルーさんにクイズなんて出す方が悪い。
あの人は考えるより早く、手と足が出るのだから。
日本へ転移しようとする俊也を、ルラが呼び止めた。
「東京の地価、知ってる? カナや俺の実家、壊すわけにいかないし。まあ、一応探してみる」
俊也がコツコツ貯めた円は、まだ相当残っているが、東京のふざけた地価の前では、ひとへに風の前の塵に同じ。
現在は、こちらとの関係完全バレバレの、カナの実家を臨時大使館として利用している。
王国の金貨は純金。しかも超派手な演出によって話題性は抜群。プレミア的な価値もつき、しかも「特別資格」が与えられたカナの父親は、税務申告の必要なし。
流通量は当然抑えているが、カナの両親は笑いが止まらない感じ。
もちろん王国産の宝石も、堂々と販売できるようになった。
家はカナに明け渡し、現在夫婦でマンション暮らしをしている。二階から聞こえる声が、たまらないということもあるようだが。特に父親の方が。
娘の声も嫌だし、あちらから、たびたび王国民も訪れる。
嫁たちは声を抑えるなどという、水臭いことを大家さんにしない。
俊也とミネットが、カナの部屋へ転送された。
館三幹部は会議を始めた。
さっき王都から送られてきた手紙について。
ミネットの父親が残した剣を、写真に撮って鑑定を依頼していた。その結果、もしや、が現実みを帯びてきた。
「あの子、やっぱりつながってる可能性高いね。エレンと」
ルラが言う。
「下の兄上は、俊也並みに好き者だから。それにしても、相手は選ぼうよと言いたい。しかも……」
記者の都合でフェードアウト。館の外の様子をのぞいてみよう。
「ヒートウエイブ! …どうしてなのよ! ちょっぴりしか溶けない!」
ニーナは癇癪をおこした。彼女は多少魔法が使える。だが、生活魔法レベルの腕だ。
俊也は彼女に「秘儀」を施すつもりはない。だから上達は難しい。
貴族と平民の差は、サラブレッドと農耕馬にたとえたら、わかりやすい。貴族は貴族だけと交配し(建前では)、高い魔力の器を守ってきた。
その結果、外見も平民とは明らかに違う。だから魔法の力を背景に、特権階級を維持できている。
この世界は、濃い魔力の気が漲(みなぎ)っている。そのため、平民でも魔力を持つ者が多い。
だが、サラブレッドと農耕馬が競争しても、全然勝負にならない。
平民でかなりの魔力を持つ者も、いるにはいる。それはまず例外なく、なんらかの形で貴族の血が流れているからだ。
館の嫁たちが、ミネットの出自を気にしているのは、ミネットの外見と魔力量が、平民としてはありえないレベルだからだ。
ミネットの話を聞けば、彼女の父親も相当の魔力を、間違いなく持っていた。弓や槍の腕も高いレベルだったようだ。
つまり、優秀な魔法戦士だったと推定できる。
魔法戦士は、下級貴族出身や、子の多い中流貴族の子弟で、その多くが構成されている。
魔導戦士は、上流貴族の冷や飯食い、つまり、家督継承者に選ばれなかった者だ。
したがって、魔法戦士に比べ、魔導戦士の数は、二百分の一程度と考えていただきたい。
ミネットは魔導師の中でも、大きな特徴がある。つまり、「オールマイティー型」だということ。
この特徴は「三大貴族の血」と、大いに関連する。
以前嫁たちの特徴を、簡単に紹介したことがある。ルラ、エレン、フラワーが、その「オールマイティー型」であることも記した。
オールマイティー型は、どんな魔法でも非常に高レベルで使えることを意味する。
つまり、戦力として最高に役立つから、三大貴族は大きな権勢を誇っている。
館の嫁たちが、ミネットの出自を大いに気にしたのも、それが原因だ。
つまり、ミネットの父親は、実の父親でない可能性が高く、三大貴族の濃い血が、入っている可能性も高かったからだ。
話を館の外に戻そう。ニーナたち元村人六人は、エンランとマサラの監督下で、雪かきをやっているわけだ。
ニーナが悔しがっているのは、二人の監督官なら、一度で溶かせる雪に対し、悪戦苦闘しているからだ。
他の五人はあきらめて、雪かき用のスコップや、一輪車で雪をどかしている。
他の五人が文句を言わないのは、そういった道具を使っての作業より、ニーナの魔法の方が、多少効率がいいからだ。
そして、監督官二人は、何をしているのかといえば…、
「雪山はこんなものじゃない? ある程度固める必要があるよね?」
エンランは、直径三メートルほど、半球形に盛り上げた雪山を見ながら言う。
「中に入ったらグシャ、ドシャ。全然シャレにならないよね。どうやって固める?」
同じく雪山を見ていたマサラは、エンランをうかがう。
「霧雨じゃダメでしょうね。小雨?」
「小雨じゃ表面が固まるだけでしょ。小雨二倍マシマシ?」
「とりあえずそれでやってみよう……」
そうです。二人は魔法だけで、カマクラ造りに取り組んでいるのです。
まあ、マサラとエンランは、中学生の外見ですから、雪を見たら遊びたくなりますよね?
そう思った方。それはノーです。
彼女たちの外見はあれだが、中身は思慮深い大人なのだ。単に遊んでいるだけではない。
魔法だけで、このドーム状の雪の小山を作ること、それはそれで、高度のテクニックが要求される。
単純に物体を破壊する魔法なら簡単だ。魔法で造形するには、どの魔法を、どれぐらいで発動するか、選択と微妙なさじ加減が要求されるからだ。
来春から二人には、本格セックスが約束されている。つまり、膨大な魔力量が得られる。
それが即活かせるように、魔法センスを磨くため、二人はカマクラづくりなどの特訓を重ねているのだ。
遊びがてらだが。
ちなみに、気になる方がいるかもしれないので説明を加える。
マサラやエンランだけではなく、嫁たちが魔法を発動するとき、なるべく漢語を使用していること、お気づきだろうか?
それは漢字が表意文字だからだ。つまり、短い発音で多くの意味がこもった詠唱が可能となる。複雑な魔法でも早く発動できるわけだ。
ただし、条件がある。その漢字の意味を知らなければ、魔法を発動できない。嫁たちが日本語を一生懸命勉強しているのは、そのためでもある。
もう一つちなみに『X倍』というのは、自分の平均的な魔法の効果を、どれほど増すか、ということだ。『マシマシ』というのは、単なる気分だ。『マシ』とつけるより、リラックスして魔法が使える、気がする(猫又ナイト大先生談)。
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スキー板を担いだ、ブルーが言う。スタイルも『私をスキーに連れてって』という感じだ。
古っ! と思ったら、すでにあなたは、年金世代だ。若人は何のことだかわからない。
泣いてよいぞ。
何の話だか、わからなくても問題はない。
「おっぱいじゃありません。それなら片乳でしょうが! 先端も寂しすぎます。
ならば、私たちは何を作ろうとしているのか!
ブルーさん、どうぞ!」
マサラが振る。
「やかましいわい! トゥー!」
ぴょ~~んとブルーがジャンプ。
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