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110 SA新撰組
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ブルーとアンリが、スキーで雪山を下りていく。ゲレンデはブルーが作った大木滑りのコース。
つまり、幅三メートルほどの直線コースだ。スキーの直滑降をイメージしていただきたい。
山自体のスロープはなだらかだが、加速がついて殺人的なスピードとなる。
だから大木滑りや、スキーの到着点に、町人は誰も近づかない。
また、ここをスキーで滑れるのは、二人のほかイザベルだけだ。
イザベルは、一人のときやブルーと行動を共にする場合に限り、スキーを使う。
なぜなら、降りるのは超早いが、帰りはスキー板を担いでの走りとなるからだ。したがって、スキーを主な移動手段としているのは、この師弟だけだ。
アンリはこれも修行の一環として割り切っている。
だが、アンリは内心思っている。ブルーさん、一体誰と戦いたくて、鍛え続けているのだろう?
この人と接近戦で戦いたいと思うバカは、多分この世にいない。
二人はSA新撰組頓所に到着。元所有者が亡くなった小屋を、俊也が町長と交渉し借り受けている。
スキーを置いてドアを開ける。中には柄の悪いお兄さん方がたむろしていた。
ドアの開く気配で、さっと緊張が走った。全員慌てて整列。
ぴしっと背筋を伸ばして、自称土方副長を迎える。
「局長からの差し入れだ。それと、今月の手当」
自称土方副長の目くばせを受け、アンリがテーブルに、ウイスキー二本と銀貨が入った革袋を置く。
隊士たちにとって、以前からは考えられなかった厚遇だ。彼らを正業につかせ、見廻り手当までつけてくれるようになったのは、近藤局長だ。
ありがとう、近藤局長! 土方副長は飴と鞭の鞭しか知らない人だ。
たまにラブミーテンダーで、おごってくれたけど。
「ごっつぁんになります!」
隊士Aが礼を言う。
「ごっつぁんになります!」
隊士たちが続ける。みんなもちろん名前は持っているが、副長は最初から覚える気がない。
六人の隊士たちは、もうあきらめている。かといって、隊士たちは鬼の副長を嫌っているわけではない。
鼻つまみ者の自分たちに、正面から向き合ってくれたのは彼女だけだ。
「これは館の幹部たちから支給された。
スタン剣だ。
実験台になりたい者?」
副長は背負っていた六本の木刀を、テーブルに置く。
もちろん、「ただの木刀では?」などと、言える者はいない。
「自分、実験台になります!」
こういったケースに備え、被害者となる者は順番で回している。志願者が出なければ、鬼の副長の怒りを買うだけだから。
隊士もそれなりの知恵を働かせている。
「よっし、いいだろう」
副長は志願者の首に、軽く木刀をあてた。
びりっ!
志願者は膝から崩れ落ちた。
アンリがすかさずリカバーの魔法を使う。
隊士たちは、アンリを仏の沖田さんと慕っている。アンリは魔法もうまい。この程度の回復魔法ならお手の物だ。
「ここに雷属性の魔石を仕込んである。
刃に相当する部分には、銅を埋め込んである。
よって刃を当てるだけで、敵を傷つけず、スタンさせることが可能だ」
お~! と隊士たちから歓声が上がる。
これまでの武器は、単なるヒノキの棒だったから。
なんでも、冒険者のスタートは、ヒノキの棒らしい。
ブルーの下で行動するのは、間違いなく冒険者だから、誰もブルーの言葉を「疑え」なかった。
「今日は天気が良い。こういう日はどうする?」
副長が隊士Bに振る。
「もちろん、街の治安を守るため、巡回であります!」
模範回答で応える。
「忘年会だよ! 局長の故郷の風習だそうだ。
みんな、今年一年ご苦労だった。
今日はラブミーテンダーを借りきっている。
飲むぞ~!」
「お~!」
隊士たちは随喜の涙を浮かべて、気勢を上げた。
つまり、幅三メートルほどの直線コースだ。スキーの直滑降をイメージしていただきたい。
山自体のスロープはなだらかだが、加速がついて殺人的なスピードとなる。
だから大木滑りや、スキーの到着点に、町人は誰も近づかない。
また、ここをスキーで滑れるのは、二人のほかイザベルだけだ。
イザベルは、一人のときやブルーと行動を共にする場合に限り、スキーを使う。
なぜなら、降りるのは超早いが、帰りはスキー板を担いでの走りとなるからだ。したがって、スキーを主な移動手段としているのは、この師弟だけだ。
アンリはこれも修行の一環として割り切っている。
だが、アンリは内心思っている。ブルーさん、一体誰と戦いたくて、鍛え続けているのだろう?
この人と接近戦で戦いたいと思うバカは、多分この世にいない。
二人はSA新撰組頓所に到着。元所有者が亡くなった小屋を、俊也が町長と交渉し借り受けている。
スキーを置いてドアを開ける。中には柄の悪いお兄さん方がたむろしていた。
ドアの開く気配で、さっと緊張が走った。全員慌てて整列。
ぴしっと背筋を伸ばして、自称土方副長を迎える。
「局長からの差し入れだ。それと、今月の手当」
自称土方副長の目くばせを受け、アンリがテーブルに、ウイスキー二本と銀貨が入った革袋を置く。
隊士たちにとって、以前からは考えられなかった厚遇だ。彼らを正業につかせ、見廻り手当までつけてくれるようになったのは、近藤局長だ。
ありがとう、近藤局長! 土方副長は飴と鞭の鞭しか知らない人だ。
たまにラブミーテンダーで、おごってくれたけど。
「ごっつぁんになります!」
隊士Aが礼を言う。
「ごっつぁんになります!」
隊士たちが続ける。みんなもちろん名前は持っているが、副長は最初から覚える気がない。
六人の隊士たちは、もうあきらめている。かといって、隊士たちは鬼の副長を嫌っているわけではない。
鼻つまみ者の自分たちに、正面から向き合ってくれたのは彼女だけだ。
「これは館の幹部たちから支給された。
スタン剣だ。
実験台になりたい者?」
副長は背負っていた六本の木刀を、テーブルに置く。
もちろん、「ただの木刀では?」などと、言える者はいない。
「自分、実験台になります!」
こういったケースに備え、被害者となる者は順番で回している。志願者が出なければ、鬼の副長の怒りを買うだけだから。
隊士もそれなりの知恵を働かせている。
「よっし、いいだろう」
副長は志願者の首に、軽く木刀をあてた。
びりっ!
志願者は膝から崩れ落ちた。
アンリがすかさずリカバーの魔法を使う。
隊士たちは、アンリを仏の沖田さんと慕っている。アンリは魔法もうまい。この程度の回復魔法ならお手の物だ。
「ここに雷属性の魔石を仕込んである。
刃に相当する部分には、銅を埋め込んである。
よって刃を当てるだけで、敵を傷つけず、スタンさせることが可能だ」
お~! と隊士たちから歓声が上がる。
これまでの武器は、単なるヒノキの棒だったから。
なんでも、冒険者のスタートは、ヒノキの棒らしい。
ブルーの下で行動するのは、間違いなく冒険者だから、誰もブルーの言葉を「疑え」なかった。
「今日は天気が良い。こういう日はどうする?」
副長が隊士Bに振る。
「もちろん、街の治安を守るため、巡回であります!」
模範回答で応える。
「忘年会だよ! 局長の故郷の風習だそうだ。
みんな、今年一年ご苦労だった。
今日はラブミーテンダーを借りきっている。
飲むぞ~!」
「お~!」
隊士たちは随喜の涙を浮かべて、気勢を上げた。
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