【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
153 / 230

153 秘儀の効果

しおりを挟む
 第三練習場では、ユーノが研修生三人に、魔法を指導していた。
猫又式魔法は教えられないから、魔法の杖を片手に握りながら。

「う~ん……。
何度も言うようだけど、魔法陣に魔力が集中しきれてない。
あなたの魔力なら、もう少し大きな火が出るはずよ。
あっ、おはようございます」
 ユーノは館三幹部と、ミーナに気づいた。研修生三人も四人と挨拶をかわす。

三人とも、しょげきった表情だった。

「どう?」
 ルラがユーノに聞く。

「俊也さんとのセックス、しばらく見送った方がいいと思います。
急に魔力が増えたら、暴走しかねません」
 ユーノは正直に答えた。

三人とも初心者に近い。イスタリアの魔法学校なら門前払いされるレベルだ。
もう少しまともな研修生を、送ってくると思っていたのだが。

「この子たち、自ら志願してここへ参りました。
なんといいますか、この子たちより高い魔力を持った者は、軍に組み込まれていたり、性格が悪かったり。ですから、長い目で見て下さい」
 
それと、見目が極端に悪かったり。ミーナは心の中で言葉を補う。ロン王は、これでも精一杯頑張って三人を選んだ。

「魔法の秘訣は思い込みよ。
誤解しないで。
思い上がりとは全く違う。
言い変えたら、できるはずだという信念ね。
おっかなびっくり魔法陣に魔力を通したら、ろくな魔法が発動しない」
 ルラは指で魔法陣を描く。

「松葉針!」
 魔法発動。

「足元の石、よく見て」
 三人はなんだろうと思い、それぞれの足元を見る。

「あっ! 松葉が石に刺さってる!」
 ソフィアが気づいて足もとの石を取り上げた。

他の二人も石を取り上げ、じっくり観察する。確かに松葉が、半分ほど石に刺さっていた。

目でも狙ったら、松葉さえ立派な凶器となるんだ! 石に刺さるぐらいだから、脳まで届いてしまうだろう。

「見た目派手なだけが、魔法じゃないということ。
とりあえず、板に松葉が刺さるよう練習してみたら? 
それができたら、俊也とのセックスを許可する。
ミーナさん、あの岩を狙って、インプロージョンを」
 ルラは前方の岩を指さし、ミーナを促す。

ミーナはうなずき、愛用の杖を構えた。なんだか、あの一抱えもありそうな岩さえ、破壊できそうな気がする。

杖で魔法陣を描き、手順に沿って公式を埋め込む。
「インプロージョン!」
 どか~ん! 岩は粉々に砕けた。

「本当にできた」
 できるという予感はあったものの、半分信じられない気分だった。
これなら今すぐにでも、ミストの大きな戦力になる。

「もう一度同じ魔法を」
 ルナは悪い顔をして言う。

「はい!」
 ミーナは自信満々で、再び魔法陣を描き、同様の作業を繰り返す。

「インプロージョン!」
「アンチ!」
 ミーナの詠唱が終わる寸前、ルラが魔法を発動する。ミーナの魔法は打ち消され、発動しなかった。

「上級魔導師なら、これぐらい朝飯前ですよ。
自慢ではないですが、魔法陣が完成する前に、強制キャンセルもできます。
もっとも、先に命をいただく方が手っとり早いですけど。
まだまだだということ、おわかりですね?」

「はい……」
ミーナはがっくりと肩を落とし、そう答えるしかなかった。

その後、館三幹部とユーノは、見本に中規模魔法を連射した。

この第三魔法練習場は、畑地にする予定だ。思う存分攻撃魔法を打ちまくり、四人は超すっきり。

傾斜地は、ほぼ平らにならされてしまった。気づいて振り返ると、四人の研修使節団員は目を大きく見開いていた。

「杖をあまり使わなかったこと、見なかったことにして」
ルラはしまった、と思いながらそう言った。

幹部とユーノは、今さらながら気づいた。調子に乗ってネコマを使ってしまったことに。

研修使節団員は一様に思う。この四人だけでも、ミストなんて簡単に滅ぼされてしまうだろう。

それにしても、あの魔法の発動の仕方、どうなっているのだろう? 

最初はちゃんと杖を使って、手順通り魔法を発動していたが、そのうち杖は、円を描くだけになった。

手のひらを当てる形で、魔法の公式を埋め込んだとしか見えなかった。

大魔導師レベルになったら、あんなチートな方法が使えるのだろうか? 
「見なかったことに」とルラさんが言う以上、例の「教えられない魔法」の一つに間違いない。

「教えられない」という理由もわかった。あの方法は、圧倒的に早く魔法が発動できてしまう。

つまり、対魔法戦においてまさに無敵だ。

「一つだけ、お聞きしてもよろしいですか?」
 ミーナが勇気を振り絞って聞く。

「答えられることなら」
 ルラは、来たな、と思いつつそう言った。

「みなさん、あんなことができるんですか?」
「忘れて下さいね。館の者は全員できます。
そんなものだと納得してください」 
 研修団員は、もちろん納得できなかったが、「はい」と答えるしかなかった。


「みんな、動きやすい服を買ってきたから。
館に帰って」
 一度大使館に帰っていた俊也が、大声で呼んだ。

「さ、私達の旦那様が、せっかく買って来たんだから。着られない、なんて言えないよね?」
 エレンが楽しそうに言う。

「覚悟してくださいね。
特に下着は、気合い入れてるはずですから」
 フラワーが澄まして言う。

昨日、夕食前にサイズを計られた。服を買うためか、と使節団は納得。
フィード伯爵が帰った後、たしかにどの嫁も、動きやすそうな服装に着替えていた。

スカートは、思い切り短かったが。

「はい!」
 使節団員は、初めて心からいい返事ができた。

楽しみ! きっと異世界で買ってきたのだ。そう想像し、ミーナは見当がついた。

「教えられない」もう一つの魔法。きっと転移魔法に違いない。
そして、「教えられない」理由は一つ。異世界との行き来だけでなく、この世界でも転移可能なのだ。

それが可能なら、これまでの戦術なんて、全く意味がなくなってしまう。

なるほど、とミーナは思った。

この館の人たちが、どうしてこんな辺鄙な地で閉じこもっているのか、はっきりした理由がわかった。

強大すぎる力を、自ら封じ込めているわけだ。

ミーナは固く決意した。二つの魔法の秘密は、絶対ミストに明かさない。
何が何でもその秘密を手に入れようとしたら、ミストが本当に滅ぼされかねない。

「今日は本当にうかつだった。
だけど、いずれは見られると思ってた。
念のために言っておく。
ゆうべの約束を破ったら、生かしておけない」
 ルラは冷厳な表情と口調できっぱり言った。

「もちろんです。いいわね? みんな」
 ミーナ団長は三人を見据えて言った。

「はい。私たちなんて、殺そうと思ったらそれこそ瞬殺。十分わかりました」
 ソフィアの言葉に、他の団員は、はっきりうなずいた。この人たちの言葉に逆らうなんて、そんな恐ろしいことはできない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...