【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
161 / 230

161 ミーナの焦燥

しおりを挟む
 すっかり陽が落ちた、第四魔法練習所。

ミーナは杖で魔法陣を描く。魔法の公式を埋め込む。

「ファイアウオール!」
 五十メートルほど向こう。幅・高さ三メートル、長さ三十メートルほど、炎の壁が生まれる。

対騎馬戦において、足止めにきわめて有効な魔法だ。
だけど、遅い……。

ミーナは王宮に上がってからも、魔力操作の修行を、たゆまず行ってきた。したがって、魔力量が爆発的に増えた今、かつてなら有頂天になれるほどの魔導師となれた。

客観的に見て、先の王妃、アンナ様に匹敵するほど。
だが、館の嫁たちと、どうしても比べてしまう。あの連続して放てる発動方を知りたい。

館外に漏れてしまったら脅威となる。それはわかるのだが。

ミスト人の私を、信用しろという方が無理か。

今日はこのへんで、やめておこう。魔力が相当消耗している。

「ミーナさん、気持ちはわかりますが、集中力が切れかけて練習しても、身につきませんよ」
 ローランが、心配して様子を見にきた。

「そうですね。もうふらふらだし。
戦いが近いかと思ったら、つい」
 ミーナは疲れた笑顔で応える。

「俊也さん、帰ってきてますよ。
今、研修生の三人にお説教です。
足手まといだ。君たちを守ろうとしたら、自分や嫁たちが危険だ。
超落ち込んでますから、なにか言ってあげてください。
私たちが言えば、慰めとしか聞こえないと思います」

「まっすぐな子たちですから。貴族には珍しいほど。
だけど、事実は事実です」

「ご自分にもあの三人にも、厳しすぎるんじゃないですか?」

「わたくしは、自分に甘過ぎたのです。
恋に恋し、思いつめて道を踏み外しました。
後宮へ上がってしまったら、もうあの方に会えない。
せめて一夜でも……。
結果を考えない衝動は罪です」

 ローランは、一つため息をついた。このまま戦場に送っていいものだろうか?
 無茶をしそうな気がする。

「俊也さんは、自分の好みに合う女性に求められたら、必ず応えてきました。
一度抱いちゃったら、とことん守ろうとしますよ。
どんな無理をしてでも。
俊也さん、そんな自分が分かってるから、あの三人を戦場に送らないんです。
今のミーナさん、俊也さんにとって、あの三人以上に危険だと思います」

 ミーナはローランの言葉に、頭を殴られた気分だった。
そう。俊也さんなら、わたくしを守ろうとする。

文字通り命がけで。

「俊也さんに悪いことをしましたね。こんな価値のない女に……」

「価値は自分で決めるものじゃありませんよ。
少なくとも、俊也さんにとって、あなたは価値ある女です。
ご自分の命をおろそかにしないでください。
俊也さんに、価値を認められたあなたの責任です。
帰りましょうか?」

 ミーナは思う。一本取られてしまった。わたくしの半分ほどしか生きていない女の子に。

「そうですね。無茶はしません。俊也さんのために」

「そうですよ。愛する誰かのために。
一番わかりやすくて、確かな指針です」
 ミーナはうなずき、ローランと肩を並べ、坂道を登り始めた。

そうね、わたくしは俊也さんを愛し始めている。……もっと生きたい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...