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183 ナームをどうするか
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同じころ、湖の館。幹部嫁三人は困惑していた。
王都から呼び出され、ユーノとマサラは王都へ跳んだ。二人は王都から帰ったばかりだ。
二人が会談したイスタルト三首脳によれば、ナームから侵入する、夜盗集団が倍増しているという。
背水の陣で臨んだ戦に敗れ、しかも巨額の賠償金を請求されている。
ナームをとことん飢えさせるのはまずいから、ミストは分割払いにしているそうだが、それでも貧しいナームにとっては、痛いどころではない。
本格的な冬になったら、いっそう人民は飢えそうだ。
「仕方ない、という言葉では、済まされないね。
かといって、ミストが敗れるのは、今以上に大問題だった」
ルラが珍しく愚痴っぽい調子でもらす。
「お父様は、余剰の食料を、ナームに格安で輸出してるそうだけど。
とても追いつかないみたい」
フラワーも憂鬱な顔で言う。
フラワーの父親が所有するシャネル領は、三首脳の領地の中で最もナームに近い。夜盗集団の被害も、一番大きいはずだ。
「我が尊敬する王は?」
エレンが聞く。
「また若い側室を増やしてご機嫌です。
あの王は、やることしか興味ないですから」
王都で三首脳から様子を聞いたユーノがぼやく。
「まあ、色欲意外に欲がないのは、あの王の数少ない長所だから。
よかった。
あの王に子種がなかったみたいで。
館の強壮剤、絶対王には飲まさないでおこう。
あれってすごいよね?」
ルラの言葉に、全員首肯する。ミストからは、三人の妃懐妊の報告が届いている。
そして、さっき三幹部の父親からも。つまり、例の強壮剤のおかげで、ルラ達三人に弟か妹が増えることになった。
主原料が、館前の特級畑から採集した薬草だからかもしれないが。あの畑は特殊だと判断するしかない。
今後区別して慎重に扱う必要があるだろう。
「私たちには、手の打ちようがないように思うんだけど。
夜盗の討伐隊を、組織するわけにいかないし。
仮にやったとしても、根本的な解決策にはならない」
フラワーが言う。
「日本の作物だね。種を輸入しよう。
日本には北海道という厳寒地帯があるそうよ。
そこで育つ作物なら、ナームでも育つんじゃない?」
ルラが提案する。
「たしか、ジャガイモ? ポテトチップスの原料だと聞いた。
イモ類なら飢えはしのげる。
それでいこう!」
エレンがパチンと手を合わせた。
「余剰の食料がある近隣領主にも、輸出働きかけてもらおう。
ユーノ、マサラ、面倒だけど急ぐ必要がある。
引き返してそう伝えて。
館の方針は、俊也が帰ったら、日本の作物で、何とかならないか、考えてみるということで」
「了解しました」
ユーノとマサラは、ルラの命に従い、慌ただしく王都へ引き返した。
「俊也に聞きだしてもらおうか?
ナームの詳しい事情。
下の密偵さんに」
ルラが苦笑を浮かべながら、二人に振る。
「一発二発はしょうがない。
俊也、大喜びだ。
最近嫁がみんな筋肉質になって、皮下脂肪に飢えてるみたい」
エレンも苦笑を浮かべて応える。
少女体型がまだ色濃いマサラとエンランは別として、魔力の器がピークに達したユーノやローランは、ときどきレジと励んでいるようだ。
誰があおったか知らないが、研修生嫁たちも。ミーナは細身だし。
「私たち妊婦と日本嫁だけだもんね。柔らかボディー。
出産後も精々筋肉つけないようにしよう」
フラワーの言葉に、首肯する二人だった。
エジパトから俊也が帰ってきた。早速嫁たちは詳細を報告。
「ナームがいっそう窮乏するのは、分かってたんだけどね。
盗賊が増えることも。
仕方ないとは思うけど。
俺たちは戦争の結果まで、責任は持てない。
だけど、できることはしたいね。
ルラ、ジャガイモに目をつけたのは卓見だと思う。
米はジャガイモより、効率的な作物だけど、栽培が難しい。
日本の米は品種改良が進んでて、北海道でも栽培できる品種があるけど、種を採れるかどうかわからないし。
向こうで調べてみる」
嫁たちは俊也の言葉にうなずく。
嫁たちは知っていた。俊也が「戦争の結果」について、意識的に考えないようにしていたことを。考えたとしても、個人レベルでできることは限られているから。
あちらの世界でのコ〇ナ禍がそうだった。
「素朴な質問なんだけど、ジャガイモには種があるの?」
さすが大貴族の娘。俊也はルラの基本的な質問にこう答える。
「詳しいことは知らないけど、種子で増えるものじゃない。
イモ類は種イモや苗を使うのが普通だと思う。
種イモを使うのが手っ取り早そう。
だから逆に援助するのは難しいね。
ナームの民は餓えてるから、種イモとして送っても、きっと食べちゃう。
極端な量を輸入するわけにもいかないし」
嫁たちはうなずく。
「難しいものね。だから俊也は手を出さなかったんだ?」
エレンがため息をつく。
「個人レベルではね。だけど、イスタルトの三首脳から相談があった。
方法によっては、かなり有効な援助も可能ということだ」
俊也は慰めるように言った。心の中では、有効な援助にするには、数年計画になるかもしれないと思いながら。
その間、ナームの餓死者はどれほどになるだろう?
「とりあえず、ナーム事情に詳しそうな人、身近にいるでしょ?
聞き取り調査してきなさい」
ルラは苦笑して命じた。
「いいの?」
俊也は恐る恐る嫁たちを見渡す。みんな肩をすくめ「どうぞ」と答えた。
王都から呼び出され、ユーノとマサラは王都へ跳んだ。二人は王都から帰ったばかりだ。
二人が会談したイスタルト三首脳によれば、ナームから侵入する、夜盗集団が倍増しているという。
背水の陣で臨んだ戦に敗れ、しかも巨額の賠償金を請求されている。
ナームをとことん飢えさせるのはまずいから、ミストは分割払いにしているそうだが、それでも貧しいナームにとっては、痛いどころではない。
本格的な冬になったら、いっそう人民は飢えそうだ。
「仕方ない、という言葉では、済まされないね。
かといって、ミストが敗れるのは、今以上に大問題だった」
ルラが珍しく愚痴っぽい調子でもらす。
「お父様は、余剰の食料を、ナームに格安で輸出してるそうだけど。
とても追いつかないみたい」
フラワーも憂鬱な顔で言う。
フラワーの父親が所有するシャネル領は、三首脳の領地の中で最もナームに近い。夜盗集団の被害も、一番大きいはずだ。
「我が尊敬する王は?」
エレンが聞く。
「また若い側室を増やしてご機嫌です。
あの王は、やることしか興味ないですから」
王都で三首脳から様子を聞いたユーノがぼやく。
「まあ、色欲意外に欲がないのは、あの王の数少ない長所だから。
よかった。
あの王に子種がなかったみたいで。
館の強壮剤、絶対王には飲まさないでおこう。
あれってすごいよね?」
ルラの言葉に、全員首肯する。ミストからは、三人の妃懐妊の報告が届いている。
そして、さっき三幹部の父親からも。つまり、例の強壮剤のおかげで、ルラ達三人に弟か妹が増えることになった。
主原料が、館前の特級畑から採集した薬草だからかもしれないが。あの畑は特殊だと判断するしかない。
今後区別して慎重に扱う必要があるだろう。
「私たちには、手の打ちようがないように思うんだけど。
夜盗の討伐隊を、組織するわけにいかないし。
仮にやったとしても、根本的な解決策にはならない」
フラワーが言う。
「日本の作物だね。種を輸入しよう。
日本には北海道という厳寒地帯があるそうよ。
そこで育つ作物なら、ナームでも育つんじゃない?」
ルラが提案する。
「たしか、ジャガイモ? ポテトチップスの原料だと聞いた。
イモ類なら飢えはしのげる。
それでいこう!」
エレンがパチンと手を合わせた。
「余剰の食料がある近隣領主にも、輸出働きかけてもらおう。
ユーノ、マサラ、面倒だけど急ぐ必要がある。
引き返してそう伝えて。
館の方針は、俊也が帰ったら、日本の作物で、何とかならないか、考えてみるということで」
「了解しました」
ユーノとマサラは、ルラの命に従い、慌ただしく王都へ引き返した。
「俊也に聞きだしてもらおうか?
ナームの詳しい事情。
下の密偵さんに」
ルラが苦笑を浮かべながら、二人に振る。
「一発二発はしょうがない。
俊也、大喜びだ。
最近嫁がみんな筋肉質になって、皮下脂肪に飢えてるみたい」
エレンも苦笑を浮かべて応える。
少女体型がまだ色濃いマサラとエンランは別として、魔力の器がピークに達したユーノやローランは、ときどきレジと励んでいるようだ。
誰があおったか知らないが、研修生嫁たちも。ミーナは細身だし。
「私たち妊婦と日本嫁だけだもんね。柔らかボディー。
出産後も精々筋肉つけないようにしよう」
フラワーの言葉に、首肯する二人だった。
エジパトから俊也が帰ってきた。早速嫁たちは詳細を報告。
「ナームがいっそう窮乏するのは、分かってたんだけどね。
盗賊が増えることも。
仕方ないとは思うけど。
俺たちは戦争の結果まで、責任は持てない。
だけど、できることはしたいね。
ルラ、ジャガイモに目をつけたのは卓見だと思う。
米はジャガイモより、効率的な作物だけど、栽培が難しい。
日本の米は品種改良が進んでて、北海道でも栽培できる品種があるけど、種を採れるかどうかわからないし。
向こうで調べてみる」
嫁たちは俊也の言葉にうなずく。
嫁たちは知っていた。俊也が「戦争の結果」について、意識的に考えないようにしていたことを。考えたとしても、個人レベルでできることは限られているから。
あちらの世界でのコ〇ナ禍がそうだった。
「素朴な質問なんだけど、ジャガイモには種があるの?」
さすが大貴族の娘。俊也はルラの基本的な質問にこう答える。
「詳しいことは知らないけど、種子で増えるものじゃない。
イモ類は種イモや苗を使うのが普通だと思う。
種イモを使うのが手っ取り早そう。
だから逆に援助するのは難しいね。
ナームの民は餓えてるから、種イモとして送っても、きっと食べちゃう。
極端な量を輸入するわけにもいかないし」
嫁たちはうなずく。
「難しいものね。だから俊也は手を出さなかったんだ?」
エレンがため息をつく。
「個人レベルではね。だけど、イスタルトの三首脳から相談があった。
方法によっては、かなり有効な援助も可能ということだ」
俊也は慰めるように言った。心の中では、有効な援助にするには、数年計画になるかもしれないと思いながら。
その間、ナームの餓死者はどれほどになるだろう?
「とりあえず、ナーム事情に詳しそうな人、身近にいるでしょ?
聞き取り調査してきなさい」
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「いいの?」
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