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第16話 農業国家エルドニア
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フロストン男爵領からエルドニアに渡る関所を何事もなく通過した二人はエルドニア南東部にある湖のある田舎町【アクアヒル】を目指す。
「レイ~、なんでスライム集めてるなの?」
「箱庭のためにちょっとね」
《ピキー!》
スライムは魔獣最弱といわれる魔獣だが使い道がある魔獣だ。スライムは汚水や排泄物、人間が出す生ゴミなどを吸収してくれる。
「箱庭のゴミを処分するために飼育しようかと思ってさ。燃やしても良いんだけど煙とか煩わしいだろ? そこでスライムが活躍してくれるんだ」
「それで集めてたなの~。まだ集めるなの?」
「いや、もう十分かな。スライムは分裂するからね。とりあえず二十体確保したから大丈夫かな」
「わかったなの~」
レイは箱庭に入り確保したスライムを使いゴミ処理場と汚水処理場を作った。これは住人達にも大好評でまた幸福度が上がった。
そして再びエルドニアの南東部に向かう。
「これでゴミ問題は解決かな」
「レイ」
「ん?」
街道を進んでいるとリリーが嫌そうな顔をしながら話し掛けてきた。
「エルフは仲間にしない?」
「エルフ? ああ、エルフか。今の所エルフとかドワーフのいる町には向かわないかな。とりあえずアクアヒルに着いてから先の事を考えるよ」
「そ、そうなの。エルフは傲慢だから嫌いなのっ」
「相容れないねぇ。仲良くしたら良いのに」
するとリリーは地団駄を踏み怒り散らした。
「無理なのっ! 生理的に受け付けないなのっ! 同じ長命種の癖に美男美女ばかり! エルフ達はドワーフの容姿をバカにしてくるなのっ!」
「ははは……。そんなに嫌なら余程の事がない限り仲間には加えないでおくよ」
「ありがとうなのっ」
レイはそんな事でと呆れていたが、エルフとドワーフの対立は古の時代から続いていると知っていただけにどうにかしたいと思う気持ちもあった。レイ自身のように拒絶されてしまったらどうしようもないが、エルフとドワーフは対立こそしてはいるがお互いに命の奪い合いまでしているわけではない。ただ意見が食い違っているだけでいわば反りが合わないだけだと思っていた。
「あ、レイ! 町があるなの!」
「えっと、あれは……」
レイは地図を開き町の名前を確認した。
「あれはエルドニア最初の町【エスタ】だね。寄る?」
「エスタには寄らないなの?」
「何かあるなら寄っても良いけど。リリーはこっち出身だから寄った事あるよね? どんな町?」
エスタについて尋ねるとリリーは腕組みをし唸り始めた。
「リリー?」
「わからないなの」
「え? わからない? いやいや、エスタはフォールガーデン前にある最後の町だろ? まさか寄った事ないの?」
「うんなの。最後の町エスタの前に王都【エルドニア】があるから普通は素通りなの」
「……あっ! なるほど。必要な物資は全部王都で揃うのか」
「うんなの。だからフォールガーデンに向かう人はエスタを素通りするなの」
レイはエスタの町を見る。町は強固な外壁に囲まれている。
「あの外壁は有事に備えているんだろうな。戦がない国とはいえ隣がフォールガーデンだし」
「町っていうより砦なの。もしかしたらフォールガーデンからきたレイは入れないかもなの」
「スパイだと思われるからか。う~ん……じゃあ寄らないで良いかな。エスタは素通りして王都に寄ろう。そこで要らない素材を売って馬車でアクアヒルに向かおうか」
「それが良いなのっ」
いらぬ疑いをかけられ拘束されては面倒だと考えたレイはエスタに寄らず次の町である王都エルドニアに向かう事にした。
そうしてエルドニアに向かう中で事件が起きた。
「レイ! 前から兵士が来るなのっ!」
「えっ!?」
エルドニア側から武装した軍隊が馬を走らせてきた。二人は街道の端に寄り軍隊が通過するのを待つ。だが軍隊は二人の前で一旦停まり、先頭にいた兵士が馬上から二人に問い掛けてきた。
「君達はどこからきた」
「フォールガーデンからです」
「ふむ。エスタには寄られたか?」
「いえ、寄らずに王都に向かう途中です」
「そうか。それなら良い。自国の恥で言い辛いのだがな、今エスタで問題が起きていてな」
「問題……ですか」
「ああ。君達は冒険者だろう? もしかすると王都にある冒険者ギルドから緊急依頼が入るかもしれない。もし荒事に関わりたくないなら王都にも寄らない事を勧める」
レイは身を案じてくれた兵士に尋ねた。
「何が起こっているのですか?」
「……恥ずかしながらエスタで反乱が起きてな」
「は、反乱ですか!?」
「うむ。首謀者は我が国の副大臣【ドーレ・マルキン】だ。奴はこの国も戦をして国土を広げようと考えていたようでな。極秘裏に仲間を集め昨夜エスタを奪ったのだ」
「そうでしたか……」
「我々はこれからエスタを囲み降伏勧告を告げる。恐らく食糧が尽きるまでエスタには入れんだろう」
そこでレイは先ほどギルドから緊急依頼があるという話を思い出し尋ねた。
「緊急依頼とはあなた方の食糧運搬係ですか?」
「そうなるな。我々は兵糧攻めをする」
「そうなったら中にいる町の人達は……」
「いずれ餓死者が出るだろう」
「そ、そんな! 助けてあげられないのですか!?」
「エスタの守りは強固だ。あれはフォールガーデンから国を守るための砦だからな。門を閉じられていては侵入すらままならんのだよ」
そこまで告げ兵士は馬の手綱をひいた。
「これよりエスタは危険となる。なるべく近づかないように。はっ!」
「あ……」
そうして軍隊はエスタに向け北上していった。
「レイ、どうするなの?」
「……助けたいな。巻き込まれた住人達が可哀想だ」
「手段はあるなの?」
「もちろんある。リリー、しばらく箱庭の中にいてくれ。後は僕が動く」
「大丈夫なの?」
「ああ。別に戦うわけじゃないからね。ちょっと侵入して町の人達を箱庭に迎えるだけだよ」
「簡単に言い過ぎなの」
呆れたリリーを箱庭に入れ、レイは辺りが暗くなるまでエスタの近くで待った。
「一気にやるとバレるかもしれないな。少しずつ助け出していこう。【飛行】!」
レイは闇に紛れ空中に浮かび上がったのだった。
「レイ~、なんでスライム集めてるなの?」
「箱庭のためにちょっとね」
《ピキー!》
スライムは魔獣最弱といわれる魔獣だが使い道がある魔獣だ。スライムは汚水や排泄物、人間が出す生ゴミなどを吸収してくれる。
「箱庭のゴミを処分するために飼育しようかと思ってさ。燃やしても良いんだけど煙とか煩わしいだろ? そこでスライムが活躍してくれるんだ」
「それで集めてたなの~。まだ集めるなの?」
「いや、もう十分かな。スライムは分裂するからね。とりあえず二十体確保したから大丈夫かな」
「わかったなの~」
レイは箱庭に入り確保したスライムを使いゴミ処理場と汚水処理場を作った。これは住人達にも大好評でまた幸福度が上がった。
そして再びエルドニアの南東部に向かう。
「これでゴミ問題は解決かな」
「レイ」
「ん?」
街道を進んでいるとリリーが嫌そうな顔をしながら話し掛けてきた。
「エルフは仲間にしない?」
「エルフ? ああ、エルフか。今の所エルフとかドワーフのいる町には向かわないかな。とりあえずアクアヒルに着いてから先の事を考えるよ」
「そ、そうなの。エルフは傲慢だから嫌いなのっ」
「相容れないねぇ。仲良くしたら良いのに」
するとリリーは地団駄を踏み怒り散らした。
「無理なのっ! 生理的に受け付けないなのっ! 同じ長命種の癖に美男美女ばかり! エルフ達はドワーフの容姿をバカにしてくるなのっ!」
「ははは……。そんなに嫌なら余程の事がない限り仲間には加えないでおくよ」
「ありがとうなのっ」
レイはそんな事でと呆れていたが、エルフとドワーフの対立は古の時代から続いていると知っていただけにどうにかしたいと思う気持ちもあった。レイ自身のように拒絶されてしまったらどうしようもないが、エルフとドワーフは対立こそしてはいるがお互いに命の奪い合いまでしているわけではない。ただ意見が食い違っているだけでいわば反りが合わないだけだと思っていた。
「あ、レイ! 町があるなの!」
「えっと、あれは……」
レイは地図を開き町の名前を確認した。
「あれはエルドニア最初の町【エスタ】だね。寄る?」
「エスタには寄らないなの?」
「何かあるなら寄っても良いけど。リリーはこっち出身だから寄った事あるよね? どんな町?」
エスタについて尋ねるとリリーは腕組みをし唸り始めた。
「リリー?」
「わからないなの」
「え? わからない? いやいや、エスタはフォールガーデン前にある最後の町だろ? まさか寄った事ないの?」
「うんなの。最後の町エスタの前に王都【エルドニア】があるから普通は素通りなの」
「……あっ! なるほど。必要な物資は全部王都で揃うのか」
「うんなの。だからフォールガーデンに向かう人はエスタを素通りするなの」
レイはエスタの町を見る。町は強固な外壁に囲まれている。
「あの外壁は有事に備えているんだろうな。戦がない国とはいえ隣がフォールガーデンだし」
「町っていうより砦なの。もしかしたらフォールガーデンからきたレイは入れないかもなの」
「スパイだと思われるからか。う~ん……じゃあ寄らないで良いかな。エスタは素通りして王都に寄ろう。そこで要らない素材を売って馬車でアクアヒルに向かおうか」
「それが良いなのっ」
いらぬ疑いをかけられ拘束されては面倒だと考えたレイはエスタに寄らず次の町である王都エルドニアに向かう事にした。
そうしてエルドニアに向かう中で事件が起きた。
「レイ! 前から兵士が来るなのっ!」
「えっ!?」
エルドニア側から武装した軍隊が馬を走らせてきた。二人は街道の端に寄り軍隊が通過するのを待つ。だが軍隊は二人の前で一旦停まり、先頭にいた兵士が馬上から二人に問い掛けてきた。
「君達はどこからきた」
「フォールガーデンからです」
「ふむ。エスタには寄られたか?」
「いえ、寄らずに王都に向かう途中です」
「そうか。それなら良い。自国の恥で言い辛いのだがな、今エスタで問題が起きていてな」
「問題……ですか」
「ああ。君達は冒険者だろう? もしかすると王都にある冒険者ギルドから緊急依頼が入るかもしれない。もし荒事に関わりたくないなら王都にも寄らない事を勧める」
レイは身を案じてくれた兵士に尋ねた。
「何が起こっているのですか?」
「……恥ずかしながらエスタで反乱が起きてな」
「は、反乱ですか!?」
「うむ。首謀者は我が国の副大臣【ドーレ・マルキン】だ。奴はこの国も戦をして国土を広げようと考えていたようでな。極秘裏に仲間を集め昨夜エスタを奪ったのだ」
「そうでしたか……」
「我々はこれからエスタを囲み降伏勧告を告げる。恐らく食糧が尽きるまでエスタには入れんだろう」
そこでレイは先ほどギルドから緊急依頼があるという話を思い出し尋ねた。
「緊急依頼とはあなた方の食糧運搬係ですか?」
「そうなるな。我々は兵糧攻めをする」
「そうなったら中にいる町の人達は……」
「いずれ餓死者が出るだろう」
「そ、そんな! 助けてあげられないのですか!?」
「エスタの守りは強固だ。あれはフォールガーデンから国を守るための砦だからな。門を閉じられていては侵入すらままならんのだよ」
そこまで告げ兵士は馬の手綱をひいた。
「これよりエスタは危険となる。なるべく近づかないように。はっ!」
「あ……」
そうして軍隊はエスタに向け北上していった。
「レイ、どうするなの?」
「……助けたいな。巻き込まれた住人達が可哀想だ」
「手段はあるなの?」
「もちろんある。リリー、しばらく箱庭の中にいてくれ。後は僕が動く」
「大丈夫なの?」
「ああ。別に戦うわけじゃないからね。ちょっと侵入して町の人達を箱庭に迎えるだけだよ」
「簡単に言い過ぎなの」
呆れたリリーを箱庭に入れ、レイは辺りが暗くなるまでエスタの近くで待った。
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レイは闇に紛れ空中に浮かび上がったのだった。
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