スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第21話 広がる世界

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 人口およそ五千人。かつて暮らしていたイストリア侯爵領の半分近い人口が箱庭に集まっている。レイは集まってくれた人々に感謝し、世界樹に触れる。

《人口が五千人を越えました。一度に増えたため今より全段階における特別ボーナスを支給いたします》
「なるほど。一気に増えるとこうなるんだ」

 特別ボーナスの支給内容を以下にまとめていく。

・箱庭の空間が資源により拡張可能となる。
・特別家屋タイプの種類増加。
・魔獣牧場が進化し、魔獣のタイプ別に飼育可能な場所が増える。
・世界樹の麓に回収ボックスが設置される。住民が必要のない物資を投入すると金銭に変わる。
・居住環境の選択が可能となる。村は千人まで。町は五千人まで。主都は一万人まで居住可能となり、空間内に町や村を制作可能になる。
・魔獣合成施設が建設可能になる。
・スキルを得るための教会が設置される。司祭はおらず、神の水晶が自動で儀式を執り行う。
・満足度ポイントが十倍になる。
・獲得資源が十倍になる。
・仮想訓練場が建設可能になる。

 全ての特別ボーナスを見てさすがのレイも固まった。

「五千人でこんなにもらえて良いの!? まだ国を一つ出ただけなのに!? いや、安易に喜んでばかりもいられないか。住民が減れば特別ボーナスは使用不可能になる。となると……」

 レイは特別ボーナス一覧を確認しながら今後の方針を固めていく。

「箱庭の中をどこよりも快適にしてしまえば良いんだ。新しい機能で貨幣も生まれる。環境さえ整えてしまえば誰も出たくなくなるだろう。よし、次の確認は……」

 今後の方針は住民に飽きられないように快適な環境を整える事とし、次にステータスの確認に移る。

「このステータスはもう何て言うか……ははっ」

 魔獣のスキルはともかく、五千人近くのスキルがレイ一人に集まっている。スキルにはスキルレベルが設定されているものがあるのだが、例えばある人が【魔力値上昇:1】を持っており、他の人が【魔力値上昇:2】を持っているとする。このスキル二つがレイの中で積算され、【魔力値上昇:3】になる。

 この結果、現在レイの能力値は世界中の誰よりも高くなっていた。レイはステータスをそっと閉じる。

「これは……もしかすると非常にまずい状況なのでは……。うっかり鑑定でバレようものなら……」

 エルドニアは戦がないとはいえ、大きな力を得たら人は変わる生き物だ。人の欲は底なしだとレイもわかっている。一つ望みが叶えばまた一つ。叶わなければ失望する。レイはそんな連中に関わりたいとは思わなくなっていた。

「うん、この考えは変わらないな」

 この考えに至ったきっかけは追放ではない。それ以前より欲深い者達とは距離をとっていた。その際たる例が実弟【ノワール・イストリア】にレイの婚約者だった【エリス・セイラム】嬢だ。

 ここで場面はイストリア侯爵領、領主邸に移る。

 レイが追放した父はレイの弟であるノワールを後継者にしようとしたが、才能にのみ頼り努力しないノワールに執務室で仕事を捌きつつ落胆していた。

「あのバカめ。才能はあるというのになぜ努力せんのだ!」

 そこにノワールがレイの婚約者だったエリスを連れ現れた。

「父上~、少しお話があります」
「……ノックもできんのか貴様らはっ!!」
「「ひっ」」

 ノワールとエリスは侯爵の威圧に怯み尻餅をついた。

「……醜い。少しは鍛錬したらどうだノワール」
「え、えっと……その……」

 侯爵の前には子どものオークが二体転がっているようだ。

「ぼ、僕は~その~……ね? そう! 魔法師なので!」
「まだ儀式前なのにか? 私が剣聖なのは知っているだろう。ならば貴様も──」

 そこでノワールが禁断の言葉を口にした。

「しかしレイは──」
「誰の話だ」
「あ、いやっ!」

 侯爵の額と拳に血管が浮かび上がる。

「も、申し訳ありません、父上!」
「貴様はいつも言い訳ばかりだ。魔法師になりたい理由は動かなくても良いからだろうが! そのような根性ではとても侯爵の座は譲れんな」
「し、しかし父上! この家には僕しか……」

 侯爵はエリスを見た。

「そのためにセイラム男爵から娘を回してもらっている。貴様には過ぎた娘だがな。今すぐ世継ぎを作れ。貴様に期待しているのはそれだけだ」
「ま、待って下さい侯爵様!」
「なんだ」

 怯えながら黙っていたエリスが口を開く。

「わ、私の婚約者は別にいたはずですわっ。彼ならばと納得しておりましたがノワール様では釣り合いませんっ」
「何を言うか。見た目から何から釣り合っているではないか。セイラム男爵からは娘の浪費癖をどうにかして欲しいと頼まれている。今後は私の娘のつもりで厳しくいく。逆らったらノワールと同様厳しい訓練を課す。覚えておけ」
「そ、そんなっ!」

 エリスは床に崩れ落ちた。

「……私はレイ様だから婚約を決めたのです! レイ様ならばあの見た目だけで何をされようが許せます! この白豚と私が釣り合っている? 私を侮辱しているのですか!」
「貴様こそ爵位が上の私に口ごたえなど侮辱しているのか? 今ここで無礼討ちにしても良いのだぞ」
「ひっ」

 侯爵の手が腰から下がる剣に伸びる。

「二度言わせるな。貴様らには世継ぎしか望まん。出て行け」

 侯爵は二人を執務室から追い出し窓から空を見上げる。

「この家は終わりかもしれんな。私は子に恵まれなかったらしい。神よ、恨むぞ」

 その頃部屋を追い出された二人はと言うと。

「エ、エリス? 僕と子作りする?」
「す、するわけないでしょう! 貴方は侯爵になれない、つまり贅沢な暮らしができないではないですか! あんな父親も貴方もこちらから願い下げですわっ! 婚約なんて破棄です! 失礼っ!」

 エリスは床を踏み鳴らしながら侯爵邸を出ていった。

「ど、どいつもこいつも兄さんと僕を比べてばかり! あんな不遇スキルしか授からなかった兄さんの何が良いんだよっ! 今に見てろ……儀式で最高のスキルを授かったら全員追放してやるからなっ!」

 ノワールは未だ授かっていないスキルに望みを託し今日も自堕落な生活を送るのだった。
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