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第70話 解禁
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国境で選別を始め一ヶ月が経過した。フォールガーデンから避難してきた住民の総数は焼く一万人。その内七千人が箱庭の中に移動し、箱庭の住民はついに一万を超え一万五千人にまで達した。
この一万人の内、入れなかった三千人は犯罪者や愚かにも守るべき民を捨ててきた貴族だ。この住民達は現在エスタに設置された保護施設に隔離されている。
そして箱庭では住民が一万人を超えた所で新たな発展ボーナスが与えられていた。
「なるほどなるほど。これが一万人のボーナスかぁ」
「なにもらえたなの?」
レイはリリーに言った。
「異世界の知識だよ」
「い、異世界の知識? それってたまに現れるとんでもない力を持った迷い人達の世界のなの!?」
「うん。もらった知識は狭い土地でも多くの人が暮らせるようになるものと、食に娯楽、あとは物作りに関する知識だね。どうやら満足度ポイントを稼がせたいみたいだ」
「ふぇ~……。じゃあ箱庭の中が迷い人の世界に似た世界になるなの?」
レイは首を横に振った。
「いや、完全に似せる気はないよ。使う知識は建物と食、娯楽くらいにする」
「なんでなの?」
「……正直物作りに関しては無理なんだ」
「無理?」
「うん。知識としてはわかったけどこの世界にはない素材が多くてね。再現したくても出来ないんだよ」
「魔導具でも再現できないなの?」
「魔導具……なるほど、さすがドワーフだな。そこは気付かなかった。こっちの世界にはそれがあったね」
「どんな物か知らないけど、魔法で再現できるものは魔法や魔石を使えば良いなの」
レイは少し考え込みリリーに言った。
「そうだな。そろそろ頃合いかもしれない。リリー、新しくきた住民から商人を探して連れてきてくれない?」
「あの新しい地区? わかったなのっ」
しばらくしてリリーが商人を数名連れてきた。
「こ、この度は救っていただき感謝しておりますっ。私はフォールガーデンで商会を開いていた【モリス】と申します。後ろの者は我が商会のスタッフにございます」
「モリス商会か。耳にした事はある。大商会じゃないか」
「いえいえ。あの、それで私が呼ばれた理由は……」
レイはモリスに言った。
「実はこの世界には迷宮があってね」
「め、迷宮ですか!」
「うん。ただ外の迷宮と違って迷宮の中で死んでも持ち物が没収されるだけで死なないんだよ」
「それはまたなんとも不思議な迷宮ですな」
「うん。で、あなたには迷宮の前に店を構えてもらいたい」
「店を?」
「うん。迷宮から手に入る品の買い取りと販売を任せたい。やってもらえるかな」
するとモリスはレイに跪き頭を垂れた。
「も、もちろんでございます! その様な大任を新参である私に任せていただき感謝いたします!」
「頼むよ。あ、価格は適正でね。儲け重視にしたらすげ替えるから」
「もちろんですとも。当商会は儲けより信頼を重視しております。それに、この世界は安全なため護衛を雇う必要もありませんしね。コストはだいぶ抑えられましょう」
「ありがとう。では迷宮前に案内いたします」
「ははっ!」
そうしてレイはモリスらを世界樹の前に連れて行き、近くに商店を設置した。
「レイ様、あの箱はなんでしょう?」
「あれは物を入れると金に変わる箱だよ」
「な、なんと!? いや、しかしそれでは私どもの店を使う者はいないのでは……」
「そこは考え方次第でしょ。箱より高値で買い取れば客は流れる。そして買い取って欲しい物がいくつかあってね」
「なるほど。物資が必要なのですね?」
レイは驚きモリスに尋ねた。
「凄いな。今のでわかったの?」
「ええ。でなければ店を構える必要性がありませんので。私どもの役目はレイ様が必要とする物資の確保、そうでしょう?」
「うん。あとで必要になる物資をリストにして渡すよ」
「かしこまりました。必ずや御期待に沿いましょう」
この翌日、これまで封鎖していた世界樹の迷宮を一般に解放した。入り口に説明文を出し、レイは箱庭の住民に新たな稼ぎ場を与えた。
「中で死んでも死なないってなんだ?」
「死んだら持ち物没収か~。無茶しなきゃそれなりに稼げるのかね」
「誰か入ってみろよ」
「お前が行けよ。つーかソロじゃ無理だな。メンバー探すか」
「シーフ急募! あとヒーラー!」
「当方タンクできます! アタッカーいませんかっ!」
最初は戸惑っていた住民達だが、避難してきた中に冒険者がいたため、一気に流れは迷宮アタックへと傾いた。そしてそこにモリスが現れ、高額買い取りを触れ回り、さらに熱は加速していった。
「マジかよ、魔石の買取価格なんてギルドの三割増しじゃねぇか!」
「こりゃやるしかねぇっ! 迷宮アタックならこれまでもやってきたんだ。死なない迷宮なら腕も磨ける! 最高の訓練場だぜっ」
そうして解放された迷宮は多くの冒険者の稼ぎ場となり、連日賑わいを見せた。
そして解放から一週間後。
「見ろよこれ! 魔剣だぞ魔剣!」
「マジかよ!? くっそ~、あそこで死ななきゃ俺も手にしてたのにっ!」
「今日は宴だ! いつの間にか近くに酒場に宿もできたしなぁ~。こりゃもう二度と外に出られねぇわ」
「それな。いや、この中マジ最高! この調子で金級目指すわ俺」
「よっしゃ、飲むぞ~!」
冒険者達は本来の生き方を取り戻し活気に満ち、レイは目的の品を手に入れ益々箱庭は発展していくのだった。
この一万人の内、入れなかった三千人は犯罪者や愚かにも守るべき民を捨ててきた貴族だ。この住民達は現在エスタに設置された保護施設に隔離されている。
そして箱庭では住民が一万人を超えた所で新たな発展ボーナスが与えられていた。
「なるほどなるほど。これが一万人のボーナスかぁ」
「なにもらえたなの?」
レイはリリーに言った。
「異世界の知識だよ」
「い、異世界の知識? それってたまに現れるとんでもない力を持った迷い人達の世界のなの!?」
「うん。もらった知識は狭い土地でも多くの人が暮らせるようになるものと、食に娯楽、あとは物作りに関する知識だね。どうやら満足度ポイントを稼がせたいみたいだ」
「ふぇ~……。じゃあ箱庭の中が迷い人の世界に似た世界になるなの?」
レイは首を横に振った。
「いや、完全に似せる気はないよ。使う知識は建物と食、娯楽くらいにする」
「なんでなの?」
「……正直物作りに関しては無理なんだ」
「無理?」
「うん。知識としてはわかったけどこの世界にはない素材が多くてね。再現したくても出来ないんだよ」
「魔導具でも再現できないなの?」
「魔導具……なるほど、さすがドワーフだな。そこは気付かなかった。こっちの世界にはそれがあったね」
「どんな物か知らないけど、魔法で再現できるものは魔法や魔石を使えば良いなの」
レイは少し考え込みリリーに言った。
「そうだな。そろそろ頃合いかもしれない。リリー、新しくきた住民から商人を探して連れてきてくれない?」
「あの新しい地区? わかったなのっ」
しばらくしてリリーが商人を数名連れてきた。
「こ、この度は救っていただき感謝しておりますっ。私はフォールガーデンで商会を開いていた【モリス】と申します。後ろの者は我が商会のスタッフにございます」
「モリス商会か。耳にした事はある。大商会じゃないか」
「いえいえ。あの、それで私が呼ばれた理由は……」
レイはモリスに言った。
「実はこの世界には迷宮があってね」
「め、迷宮ですか!」
「うん。ただ外の迷宮と違って迷宮の中で死んでも持ち物が没収されるだけで死なないんだよ」
「それはまたなんとも不思議な迷宮ですな」
「うん。で、あなたには迷宮の前に店を構えてもらいたい」
「店を?」
「うん。迷宮から手に入る品の買い取りと販売を任せたい。やってもらえるかな」
するとモリスはレイに跪き頭を垂れた。
「も、もちろんでございます! その様な大任を新参である私に任せていただき感謝いたします!」
「頼むよ。あ、価格は適正でね。儲け重視にしたらすげ替えるから」
「もちろんですとも。当商会は儲けより信頼を重視しております。それに、この世界は安全なため護衛を雇う必要もありませんしね。コストはだいぶ抑えられましょう」
「ありがとう。では迷宮前に案内いたします」
「ははっ!」
そうしてレイはモリスらを世界樹の前に連れて行き、近くに商店を設置した。
「レイ様、あの箱はなんでしょう?」
「あれは物を入れると金に変わる箱だよ」
「な、なんと!? いや、しかしそれでは私どもの店を使う者はいないのでは……」
「そこは考え方次第でしょ。箱より高値で買い取れば客は流れる。そして買い取って欲しい物がいくつかあってね」
「なるほど。物資が必要なのですね?」
レイは驚きモリスに尋ねた。
「凄いな。今のでわかったの?」
「ええ。でなければ店を構える必要性がありませんので。私どもの役目はレイ様が必要とする物資の確保、そうでしょう?」
「うん。あとで必要になる物資をリストにして渡すよ」
「かしこまりました。必ずや御期待に沿いましょう」
この翌日、これまで封鎖していた世界樹の迷宮を一般に解放した。入り口に説明文を出し、レイは箱庭の住民に新たな稼ぎ場を与えた。
「中で死んでも死なないってなんだ?」
「死んだら持ち物没収か~。無茶しなきゃそれなりに稼げるのかね」
「誰か入ってみろよ」
「お前が行けよ。つーかソロじゃ無理だな。メンバー探すか」
「シーフ急募! あとヒーラー!」
「当方タンクできます! アタッカーいませんかっ!」
最初は戸惑っていた住民達だが、避難してきた中に冒険者がいたため、一気に流れは迷宮アタックへと傾いた。そしてそこにモリスが現れ、高額買い取りを触れ回り、さらに熱は加速していった。
「マジかよ、魔石の買取価格なんてギルドの三割増しじゃねぇか!」
「こりゃやるしかねぇっ! 迷宮アタックならこれまでもやってきたんだ。死なない迷宮なら腕も磨ける! 最高の訓練場だぜっ」
そうして解放された迷宮は多くの冒険者の稼ぎ場となり、連日賑わいを見せた。
そして解放から一週間後。
「見ろよこれ! 魔剣だぞ魔剣!」
「マジかよ!? くっそ~、あそこで死ななきゃ俺も手にしてたのにっ!」
「今日は宴だ! いつの間にか近くに酒場に宿もできたしなぁ~。こりゃもう二度と外に出られねぇわ」
「それな。いや、この中マジ最高! この調子で金級目指すわ俺」
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