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第一章 始まりの章
12 娯楽施設
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魔王シリルに許可をもらったオウルは翌日から酒場でカインと打ち合わせをしていた。
「そんなわけで最初はゲームカフェが良いと思うんだ」
「お前、よく思いついたなぁ」
オウルはまずカフェに来た客にゲームで遊べるよう考えた。ただスイーツを楽しむより話題にも上がるため客足が伸びない事もない。その上でゲームが好評なら大量生産し軌道に乗せていく提案をした。
「それでどのゲーム出すんだ?」
「全部だよ」
「全部?」
「うん。まず一通り遊んでもらうんだ。ルールブック置いてね。それとカイン、君に店長をやって欲しいんだけど」
「お、俺か!?」
酒を吹き出すカインにオウルが告げる。
「遊びに関してカインは今の所誰より詳しいしさ。料理スキルもカインとその従業員に渡す。シリル様から空き家の使用許可も出てるから俺の錬金術ですぐにでもリフォームができる」
「なんかお前昔よりできる事増えてないか?」
「ははっ。戦いよりこっちの方が好きだからかも。だから修行も今は楽しみながらやれてるかな」
オウルは幼い頃から当主となるべくあらゆる方面で努力していた。しかし上の兄二人が暴力的だったため争い事を好まなかった。本来のオウルは争いを好まず平和を愛する優しい性格なのである。
「わかったよ。マスターに聞いて許可でたらやってやるさ」
「悪いね。せっかく生活基盤ができてたのにさ」
「別に構わないさ。俺のモットーは毎日楽しくだからよ」
「お前は変わらないなぁ」
「いいや変わったさ。昔より自由だし本気で好きな事だけやれるしな。ガラハッド家にいた時より気分が良いわ」
カインもまた戦う事を好まない性格だった。成績が並でしかなかったカインがオウルと気が合う理由もここにある。
席を立ったカインはマスターと話し合い戻ってきた。
「いやぁ、魔王様の名前出したら一発オッケー出たわ」
「シリル様の名前出したのか?」
「おう。これは一大計画だからなぁ。魔大陸全土を豊かにする第一歩って言ったら逆に応援されたわ」
「ありがとう。そしたら明日の朝から空き家を探しに行こうか。人の流れが多い場所が良いな」
「それなら魔王城に続くこの大通り沿いのどこかだな。脇道は細いし夜は真っ暗だから治安がな。女の子が近寄らねぇわ」
「さすがに町で暮らしてるだけあって詳しいね。そういった情報は助かるよ」
「任せとけっての。じゃあ明日の朝この酒場の前に集合な?」
「わかった」
そして翌朝、酒場前に集合した二人は店舗の設置場所を見て回った。
「ここなんか良さ気じゃね?」
「うん、でも酒場から近くない?」
「昨日オーナーに話した時ちょっとな。酒場にも客流してカードだけやってもらう事になったんだ」
「なるほど。カフェだけだと遊びたくても入れない客も出てくるかも」
「だろ? カフェの人気が出たら酒場も儲かって良いことづくめだしよ」
「わかった。じゃあ場所はここにしよう」
カインが示した場所は酒場の斜向かいにあった元々道具屋があった場所だった。その道具屋は今郊外に移転し農機具や城から渡される畑の栄養剤を扱っている。
そして魔王シリルの許可が出ている事で新たに土地契約の必要もなかったため、オウルは場所を決めた瞬間から建物のリフォームに取り掛かった。
「カフェは見た目からだよな。錬金術で建物を新しくして……と」
「お、おぉ」
「ついでに色も変えようか。周りが黒い建物ばかりだから白で良いかな」
「ま、まじか」
「あ、ある程度ゲームとスイーツを楽しんでるように全面はガラス張りにしてしまおう」
「……」
カインはオウルの手際の良さと錬金術の腕の良さに驚いていた。
「お、お前こんな腕良かったか!?」
「栄養剤作りまくってたらレベル上がったんだよ。学院時代は錬金術(中)だったけど今は錬金術(大)だよ」
「それにしたって魔力量がよ」
「それは理由がわからないんだけどここに来てから凄い伸びてるんだよ」
「あ、俺も伸びてるわ」
二人の魔力量が伸びている理由は魔大陸の野菜にある。人間の大陸にある野菜は見た目こそ良いがただの野菜。対して魔大陸の野菜は見た目は食べる事に少し戸惑うが豊潤な魔力が含まれている。その魔野菜を育てるために土地の魔力を使うのため通常大量生産はできないのだが、これをオウルが解決してしまった。この解決によりオウル達だけではなく一般の魔族達も日々魔力量を伸ばしていた。
そうして瞬く間に外観を整えるといつの間にか二人の周りに人だかりができていた。その中から酒場の常連がカインに話し掛けてきた。
「お前らこれ何だ? 何か始まるのか?」
「お! グレゴールさんじゃないっすか! そうなんすよ、ここで近日中に俺が店出すんす」
「カインの店!? 酒場か?」
「いや、違うっす。昼から開店するゲームとスイーツのカフェなんすよね」
「「「「スイーツですって!?」」」」
「うぉっ!?」
話を聞いていた女の子達がグレゴールを押しのけカインに詰め寄った。
「何が食べられるの!? 甘い物? 甘い物よね!?」
「い、一応っ! って言うか圧が凄い!?」
「安いの? まさか高くないわよね!?」
「オ、オウル~!」
カインは慌ててオウルに助けを求めたため、オウルが代わりに説明した。
「値段はできる限り安くしますよ。儲け重視の店ではないので」
「スイーツはわかったけどゲームって?」
「人間の大陸にある娯楽です。仲間内で楽しんで盛り上がるんですよ」
「娯楽? 楽しめるのか?」
いつの間にか女の子ばかりではなく男まで集まっていた。
「はい。誰でも楽しめるカード、リバーシを置く予定です。それとカードは酒場でも扱うと思いますので夜にお酒でも楽しみながらゲームで盛り上がれますよ」
「いつも愚痴かボヤきしかしてなかったしなぁ。カードか、ルールは?」
「カインがルールブックを用意します。簡単なルールなのですぐに覚えられますよ」
「いつからオープンするの?」
「リフォームが終わり店員を集め次第ですね。どなたか働きたい方がいれば助かりますが」
「「「私働きたい!」」」
「おぉぉ!?」
今度はオウルが取り囲まれた。
「わ、わかりました。明日正午面接しますのでその時にきていただければ」
「「「絶対きます!」」」
こうして忙しなく外観のリフォームを終え、あとはカインに外を任せオウルは店内のリフォームを進めていったのだった。
「そんなわけで最初はゲームカフェが良いと思うんだ」
「お前、よく思いついたなぁ」
オウルはまずカフェに来た客にゲームで遊べるよう考えた。ただスイーツを楽しむより話題にも上がるため客足が伸びない事もない。その上でゲームが好評なら大量生産し軌道に乗せていく提案をした。
「それでどのゲーム出すんだ?」
「全部だよ」
「全部?」
「うん。まず一通り遊んでもらうんだ。ルールブック置いてね。それとカイン、君に店長をやって欲しいんだけど」
「お、俺か!?」
酒を吹き出すカインにオウルが告げる。
「遊びに関してカインは今の所誰より詳しいしさ。料理スキルもカインとその従業員に渡す。シリル様から空き家の使用許可も出てるから俺の錬金術ですぐにでもリフォームができる」
「なんかお前昔よりできる事増えてないか?」
「ははっ。戦いよりこっちの方が好きだからかも。だから修行も今は楽しみながらやれてるかな」
オウルは幼い頃から当主となるべくあらゆる方面で努力していた。しかし上の兄二人が暴力的だったため争い事を好まなかった。本来のオウルは争いを好まず平和を愛する優しい性格なのである。
「わかったよ。マスターに聞いて許可でたらやってやるさ」
「悪いね。せっかく生活基盤ができてたのにさ」
「別に構わないさ。俺のモットーは毎日楽しくだからよ」
「お前は変わらないなぁ」
「いいや変わったさ。昔より自由だし本気で好きな事だけやれるしな。ガラハッド家にいた時より気分が良いわ」
カインもまた戦う事を好まない性格だった。成績が並でしかなかったカインがオウルと気が合う理由もここにある。
席を立ったカインはマスターと話し合い戻ってきた。
「いやぁ、魔王様の名前出したら一発オッケー出たわ」
「シリル様の名前出したのか?」
「おう。これは一大計画だからなぁ。魔大陸全土を豊かにする第一歩って言ったら逆に応援されたわ」
「ありがとう。そしたら明日の朝から空き家を探しに行こうか。人の流れが多い場所が良いな」
「それなら魔王城に続くこの大通り沿いのどこかだな。脇道は細いし夜は真っ暗だから治安がな。女の子が近寄らねぇわ」
「さすがに町で暮らしてるだけあって詳しいね。そういった情報は助かるよ」
「任せとけっての。じゃあ明日の朝この酒場の前に集合な?」
「わかった」
そして翌朝、酒場前に集合した二人は店舗の設置場所を見て回った。
「ここなんか良さ気じゃね?」
「うん、でも酒場から近くない?」
「昨日オーナーに話した時ちょっとな。酒場にも客流してカードだけやってもらう事になったんだ」
「なるほど。カフェだけだと遊びたくても入れない客も出てくるかも」
「だろ? カフェの人気が出たら酒場も儲かって良いことづくめだしよ」
「わかった。じゃあ場所はここにしよう」
カインが示した場所は酒場の斜向かいにあった元々道具屋があった場所だった。その道具屋は今郊外に移転し農機具や城から渡される畑の栄養剤を扱っている。
そして魔王シリルの許可が出ている事で新たに土地契約の必要もなかったため、オウルは場所を決めた瞬間から建物のリフォームに取り掛かった。
「カフェは見た目からだよな。錬金術で建物を新しくして……と」
「お、おぉ」
「ついでに色も変えようか。周りが黒い建物ばかりだから白で良いかな」
「ま、まじか」
「あ、ある程度ゲームとスイーツを楽しんでるように全面はガラス張りにしてしまおう」
「……」
カインはオウルの手際の良さと錬金術の腕の良さに驚いていた。
「お、お前こんな腕良かったか!?」
「栄養剤作りまくってたらレベル上がったんだよ。学院時代は錬金術(中)だったけど今は錬金術(大)だよ」
「それにしたって魔力量がよ」
「それは理由がわからないんだけどここに来てから凄い伸びてるんだよ」
「あ、俺も伸びてるわ」
二人の魔力量が伸びている理由は魔大陸の野菜にある。人間の大陸にある野菜は見た目こそ良いがただの野菜。対して魔大陸の野菜は見た目は食べる事に少し戸惑うが豊潤な魔力が含まれている。その魔野菜を育てるために土地の魔力を使うのため通常大量生産はできないのだが、これをオウルが解決してしまった。この解決によりオウル達だけではなく一般の魔族達も日々魔力量を伸ばしていた。
そうして瞬く間に外観を整えるといつの間にか二人の周りに人だかりができていた。その中から酒場の常連がカインに話し掛けてきた。
「お前らこれ何だ? 何か始まるのか?」
「お! グレゴールさんじゃないっすか! そうなんすよ、ここで近日中に俺が店出すんす」
「カインの店!? 酒場か?」
「いや、違うっす。昼から開店するゲームとスイーツのカフェなんすよね」
「「「「スイーツですって!?」」」」
「うぉっ!?」
話を聞いていた女の子達がグレゴールを押しのけカインに詰め寄った。
「何が食べられるの!? 甘い物? 甘い物よね!?」
「い、一応っ! って言うか圧が凄い!?」
「安いの? まさか高くないわよね!?」
「オ、オウル~!」
カインは慌ててオウルに助けを求めたため、オウルが代わりに説明した。
「値段はできる限り安くしますよ。儲け重視の店ではないので」
「スイーツはわかったけどゲームって?」
「人間の大陸にある娯楽です。仲間内で楽しんで盛り上がるんですよ」
「娯楽? 楽しめるのか?」
いつの間にか女の子ばかりではなく男まで集まっていた。
「はい。誰でも楽しめるカード、リバーシを置く予定です。それとカードは酒場でも扱うと思いますので夜にお酒でも楽しみながらゲームで盛り上がれますよ」
「いつも愚痴かボヤきしかしてなかったしなぁ。カードか、ルールは?」
「カインがルールブックを用意します。簡単なルールなのですぐに覚えられますよ」
「いつからオープンするの?」
「リフォームが終わり店員を集め次第ですね。どなたか働きたい方がいれば助かりますが」
「「「私働きたい!」」」
「おぉぉ!?」
今度はオウルが取り囲まれた。
「わ、わかりました。明日正午面接しますのでその時にきていただければ」
「「「絶対きます!」」」
こうして忙しなく外観のリフォームを終え、あとはカインに外を任せオウルは店内のリフォームを進めていったのだった。
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