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第2章 死の大地
第15話 発明家の本領発揮
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里の仲間に迎えられ十五年、アースは二十歳になっていた。この十五年でアースはエルフの里を劇的に進化させていた。全ての家屋は地面へと移動し、魔道具でキッチン、風呂、水洗トイレ、エアコンを完備させていた。
これによりエルフ達にも余裕が生まれ、その余裕は訓練の時間へと割かれた。結果、エルフ達は森で最強の種族になっていた。アイラに至っては出会った当初殺されかけていたフォレストベアを片手数秒で倒せるまでに成長し、今では戦いの場をダンジョンへと移していた。
「戻ったぞアース! 今日の食材だ!」
「おかえりアイラ。怪我は?」
「無傷に決まっているだろう? 怪我より腹が空いてな……。弁当も初日で食いつくしてしまった」
アースは首をガクンと落とした。
「おま……、あれ一週間分はあっただろ!? それを一日で!?」
「仕方ないだろう。美味すぎるのが悪い。後はずっと干し肉だけだったからな……。さあ、美味い料理を!」
成長しても相変わらず残念な姉だった。
「ただいまですっ」
「ああ、おかえりフラン。魔法は上達した?」
「はいっ! 長様に筋が良いと誉められました!」
ここ数年、妹のフランは母である長ルルシュに精霊魔法を習っていた。精霊魔法は自分の魔力ではなく、精霊から力を借り魔法を行使するエルフ特有の魔法だ。だが誰にでも出来るわけではない。精霊魔法を使うためには精霊に愛され、精霊の姿を見る事ができなければならない。優しいフランはこの素質がずば抜けて高く、その魔法の腕はルルシュに次ぐまでに成長を遂げていた。ただし、次ぐと言っても二人の間にはかなりの差がある。長も伊達にアースの両親とパーティーを組み千年以上旅をしていなかったと言うことだ。
アースはアースで粗方必要な物を作り終え、森の中にいながらにしてその生活を快適なものへと到達させていた。あらゆる家具は魔道具で、共に暮らすエルフ達もその恩恵にあやかっている。
必要な素材があればダンジョンへと潜り、最下層を単独周回する。アイラも強くなったとは言え、未だアースの域には到達してはいない。
アースがふとフランに問い掛けた。
「そう言えばさ、この森って世界のどの辺にあるかわかる?」
「……、なぜそんな事を? どこでも良いじゃないですか」
フランの機嫌が少し悪くなった。
「いや、単に好奇心で。ほら、俺って山と森しか見た事ないし」
「……それだけで良いじゃないですか。アースさんはずっとこの森で暮らすのは嫌ですか?」
「嫌ってわけじゃないけどさ、この世界がどんな感じなのか知りたくて」
「アースさんは知らなくてもいいんですっ!」
「あ、フラン!?」
フランは何故か怒りだし部屋を後にした。
「えぇぇ……、なに今の? 俺なんかしたっけ?」
アースは首を傾げるのであった。
その日の夜。
「お姉ちゃん、ちょっと……」
「ん? どうした、フラン?」
妹は姉に今日の昼、アースにキツい言葉を言ってしまった事を話した。
「アースが森の外に興味? そうか……」
「うん。アースさんはやっぱり人間だし……。私達と一緒に暮らすなんて嫌なのかな?」
「……そんな事はないだろう。嫌なら十数年もこの森で暮らしたり里を豊かにしたりはしないはずだ。それに、アースは子供たちにも人気だしな。アースの言葉は本当に好奇心からだったと私は思うぞ?」
「……それでも! 私はずっとアースさんにここにいて欲しいし、余計な情報は与えたくないの! 世界が今どうなってるかなんて……私達エルフにしたらどうでも良い事だしっ!」
「フラン……お前まさか……。アースに惚れたか?」
アイラのその言葉にフランの顔が真っ赤に染まった。
「そうか……。だがよく考えろ、フラン。アースは人間だ。長くても百年しか生きられない。私達エルフとは違うんだ」
「わかってる! でも……好きなんだもんっ!」
そこにフランの叫びを耳にした長が姿を見せた。
「それなら問題ないわよ?」
「「長様!」」
「ふふっ、ここは家の中なんだからお母さんで良いわよ?」
ルルシュは二人を席に座らせ、お茶を注ぐ。
「か、母さん! お茶なら私が……」
「良いのよ、たまにはね?」
「は、はぁ……」
二人の前にお茶が置かれる。アイラが茶をすすり口を開いた。
「それで母さん、先ほどの話なのですが……」
「ええ、そうね。寿命の話だったわね。これは私しか知らない話だから他言無用よ?」
「……はい」
二人は心してルルシュの言葉に耳を傾ける。
「これは千年前の話よ。まだエルフが人間の町で暮らしていた頃の話。私は千年前、アースの両親と勇者の四人でパーティーを組んでいたのよ」
「……ん? んん? 千年前にアースの両親と? は? 何を言って……」
「アースは人間ではないわ」
「「……えっ!?」」
二人がルルシュの言葉に驚く。
「に、人間……じゃない?」
「そう、アースの両親は天竜と魔竜。二人の間には何人か子供がいるのね。アースはその末っ子で、正体は地竜よ」
「ち、地竜!?」
「ええ。知っての通り、竜の寿命は私達エルフより遥かに長いわ。だから寿命については気にしなくて良いの。でも……子を残せるかどうかはわからないわ。今まで誰も試した事なんてないしね」
「ア、アースさんが竜……?」
フランは呆然としていた。
「人間とエルフならハーフエルフとなるように、血が強い方が勝る。竜の血は何よりも強い。仮に子が出来たとしてもハーフドラゴンかしら? それでも構わないなら好きにしなさい。ああ、もし里を出たいなら止めないわよ? 私の旅していた時代より世界はエルフにとっては生きにくい世界になっていると思うわ。でも、アースなら必ず仲間を守ってくれる。どうするかよく考えなさいな、まだ若いんだしね。慌てて決める事なんてないわよ」
そう言い、ルルシュは席を立った。
「なるほど……。それでアースを追ってダンジョンに行っても中で会わなかったわけか。私より深い階層にいたんだな」
「アースさんが……竜……」
「フラン、竜は世界で最強の種族だ。もし逆鱗にでも触れたらその種は地上から消え失せるだろう。引き留めるにしても送り出すにしてもよく考えて行動した方が良い。さ、夕食の時間だ。下に降りよう」
フランは一人椅子に座り呆然とし続けるのであった。
これによりエルフ達にも余裕が生まれ、その余裕は訓練の時間へと割かれた。結果、エルフ達は森で最強の種族になっていた。アイラに至っては出会った当初殺されかけていたフォレストベアを片手数秒で倒せるまでに成長し、今では戦いの場をダンジョンへと移していた。
「戻ったぞアース! 今日の食材だ!」
「おかえりアイラ。怪我は?」
「無傷に決まっているだろう? 怪我より腹が空いてな……。弁当も初日で食いつくしてしまった」
アースは首をガクンと落とした。
「おま……、あれ一週間分はあっただろ!? それを一日で!?」
「仕方ないだろう。美味すぎるのが悪い。後はずっと干し肉だけだったからな……。さあ、美味い料理を!」
成長しても相変わらず残念な姉だった。
「ただいまですっ」
「ああ、おかえりフラン。魔法は上達した?」
「はいっ! 長様に筋が良いと誉められました!」
ここ数年、妹のフランは母である長ルルシュに精霊魔法を習っていた。精霊魔法は自分の魔力ではなく、精霊から力を借り魔法を行使するエルフ特有の魔法だ。だが誰にでも出来るわけではない。精霊魔法を使うためには精霊に愛され、精霊の姿を見る事ができなければならない。優しいフランはこの素質がずば抜けて高く、その魔法の腕はルルシュに次ぐまでに成長を遂げていた。ただし、次ぐと言っても二人の間にはかなりの差がある。長も伊達にアースの両親とパーティーを組み千年以上旅をしていなかったと言うことだ。
アースはアースで粗方必要な物を作り終え、森の中にいながらにしてその生活を快適なものへと到達させていた。あらゆる家具は魔道具で、共に暮らすエルフ達もその恩恵にあやかっている。
必要な素材があればダンジョンへと潜り、最下層を単独周回する。アイラも強くなったとは言え、未だアースの域には到達してはいない。
アースがふとフランに問い掛けた。
「そう言えばさ、この森って世界のどの辺にあるかわかる?」
「……、なぜそんな事を? どこでも良いじゃないですか」
フランの機嫌が少し悪くなった。
「いや、単に好奇心で。ほら、俺って山と森しか見た事ないし」
「……それだけで良いじゃないですか。アースさんはずっとこの森で暮らすのは嫌ですか?」
「嫌ってわけじゃないけどさ、この世界がどんな感じなのか知りたくて」
「アースさんは知らなくてもいいんですっ!」
「あ、フラン!?」
フランは何故か怒りだし部屋を後にした。
「えぇぇ……、なに今の? 俺なんかしたっけ?」
アースは首を傾げるのであった。
その日の夜。
「お姉ちゃん、ちょっと……」
「ん? どうした、フラン?」
妹は姉に今日の昼、アースにキツい言葉を言ってしまった事を話した。
「アースが森の外に興味? そうか……」
「うん。アースさんはやっぱり人間だし……。私達と一緒に暮らすなんて嫌なのかな?」
「……そんな事はないだろう。嫌なら十数年もこの森で暮らしたり里を豊かにしたりはしないはずだ。それに、アースは子供たちにも人気だしな。アースの言葉は本当に好奇心からだったと私は思うぞ?」
「……それでも! 私はずっとアースさんにここにいて欲しいし、余計な情報は与えたくないの! 世界が今どうなってるかなんて……私達エルフにしたらどうでも良い事だしっ!」
「フラン……お前まさか……。アースに惚れたか?」
アイラのその言葉にフランの顔が真っ赤に染まった。
「そうか……。だがよく考えろ、フラン。アースは人間だ。長くても百年しか生きられない。私達エルフとは違うんだ」
「わかってる! でも……好きなんだもんっ!」
そこにフランの叫びを耳にした長が姿を見せた。
「それなら問題ないわよ?」
「「長様!」」
「ふふっ、ここは家の中なんだからお母さんで良いわよ?」
ルルシュは二人を席に座らせ、お茶を注ぐ。
「か、母さん! お茶なら私が……」
「良いのよ、たまにはね?」
「は、はぁ……」
二人の前にお茶が置かれる。アイラが茶をすすり口を開いた。
「それで母さん、先ほどの話なのですが……」
「ええ、そうね。寿命の話だったわね。これは私しか知らない話だから他言無用よ?」
「……はい」
二人は心してルルシュの言葉に耳を傾ける。
「これは千年前の話よ。まだエルフが人間の町で暮らしていた頃の話。私は千年前、アースの両親と勇者の四人でパーティーを組んでいたのよ」
「……ん? んん? 千年前にアースの両親と? は? 何を言って……」
「アースは人間ではないわ」
「「……えっ!?」」
二人がルルシュの言葉に驚く。
「に、人間……じゃない?」
「そう、アースの両親は天竜と魔竜。二人の間には何人か子供がいるのね。アースはその末っ子で、正体は地竜よ」
「ち、地竜!?」
「ええ。知っての通り、竜の寿命は私達エルフより遥かに長いわ。だから寿命については気にしなくて良いの。でも……子を残せるかどうかはわからないわ。今まで誰も試した事なんてないしね」
「ア、アースさんが竜……?」
フランは呆然としていた。
「人間とエルフならハーフエルフとなるように、血が強い方が勝る。竜の血は何よりも強い。仮に子が出来たとしてもハーフドラゴンかしら? それでも構わないなら好きにしなさい。ああ、もし里を出たいなら止めないわよ? 私の旅していた時代より世界はエルフにとっては生きにくい世界になっていると思うわ。でも、アースなら必ず仲間を守ってくれる。どうするかよく考えなさいな、まだ若いんだしね。慌てて決める事なんてないわよ」
そう言い、ルルシュは席を立った。
「なるほど……。それでアースを追ってダンジョンに行っても中で会わなかったわけか。私より深い階層にいたんだな」
「アースさんが……竜……」
「フラン、竜は世界で最強の種族だ。もし逆鱗にでも触れたらその種は地上から消え失せるだろう。引き留めるにしても送り出すにしてもよく考えて行動した方が良い。さ、夕食の時間だ。下に降りよう」
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