転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢

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第3章 国づくり

第32話 現代科学の脅威

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 火竜達を連れて向かった先は獣人区画にある地下港。そこに完成した戦艦が既に浮かんでいた。

「すげぇなぁ……。本当に鉄の塊が浮いてやがる……」
「普通沈むわよね? どうなってんの?」

 アースは船が浮く原理から説明してやったが、途中から火竜がついてこれなくなったため省いた。

「ま、まぁとりあえず乗ってみてよ。そのままの姿で甲板にのってくれて大丈夫だからさ」
「お、おぉ……」

 アースは火竜達を甲板に乗せ、出港した。地下通路を走り、戦艦はいよいよ大海原へと進出する。

「おぉぉぉぉぉっ! 本当にまっすぐ走ってやがる! しかも速いっ!」
「これじゃ私の仕事なくなるわねぇ……」
「僕もだよ!? 風を気にしない船とか何これ!?」

 アースは船をいったん止め碇をおろす。 

「じゃあ次は攻撃力を見てもらおうかな」
「あん? うぉっ!?」

 甲板が開き、何かがせりあがってくる。

「な、なんだこりゃ?」

 アースが操舵室からスピーカー越しに説明を始める。

「それは魔道電子キャノン砲。わかりやすく言うと、母さんの天竜の咆哮を再現する魔道具だよ」
「「「……は? あ、あれを!?」」」 

 三体の竜は唖然としていた。

「攻撃角度は横百八十度。上九十度ね。これを主砲として、再度には父さんの魔竜の弾丸を再現した副砲を完備してます」
「親父の技まで!? なんだこの船……悪魔か!?」

 一年ミッチリしごかれた三体の竜はガクガクと震えていた。アースが主砲を発射すると、三体は口を開けて唖然としていた。

「い、威力は多少落ちるが……マジモンじゃねぇか……」
「こんなの食らったら帆船なんて即撃沈しちゃうわねぇ」
「うぅぅ……あんなの食らったら確実にダメージ食らうよ」

 どうやら竜にも通じる威力だったようでアースは安心した。
 火竜がアースに問い掛ける。

「で、こんな化けもん船造ってどうすんだよ?」
「そうだなぁ……。これは獣人に預けようかなって思ってる」
「獣人に?」
「うん。港は獣人の区画にあるからさ。獣人の皆に操舵を覚えてもらって人間の船団が現れたら撃沈してもらおうかなと。一隻二隻程度なら外壁に装備した砲台でなんとかなるけどさ、さすがに百、二百はちょっとね」

 水竜がアースに尋ねる。

「アース、獣人にこんな力を与えても大丈夫なの? もし獣人が私利私欲で船を奪い、人間に復讐を始めたらどうするの? 国を蹂躙された獣人の恨みはとても強いわよ?」
「ああ、それなら大丈夫だよ。この船には自爆装置がついてるから。私利私欲に使った瞬間にある場所を爆破してこの船は海底に沈む事になってるんだ。ま、俺はそんな事にならないって信じてるけどね」
「そう。なら良いわ。さすがにこれとは戦いたくないもの」
「ははっ、それは俺もかな。さ、そろそろ……」

 そろそろ帰港しようとしたその時、急に船体がぐらついた。

「な、なんだぁ?」
「あっ! まずいよアース! 下っ!」

 風竜が船の下にあるデカイ影を発見し、指差した。

「なにあれ?」
「……クラーケンだ! 触手に巻き付かれたら海の底に沈められるぞっ!!」
「ふ~ん」
「アース!?」

 アースに慌てた様子はなかった。むしろ巻き付いてくれるのを待っている様子だ。

「あぁっ、触手が巻き付いてきた!?」
「アース! なんとかならないの!?」

 船体に触手が巻き付き、今にも船が沈められようとした瞬間、アースは赤いボタンをポチっと押した。

「下にも攻撃する方法があるんだよねぇ。食らえ、雷神撃! なんちゃって」

 船底には魔雷石をたっぷり仕込んである。張り付くように船体に絡んでいたクラーケンは強烈な電撃にみまわれ、良い感じに焼き上がった。他にも近くにいたであろう魚たちがショックで海面に浮き上がってきた。

「バーン兄さん、網網! 魚捕まえてきて! 後アクア姉さんとヴァン兄さんはクラーケンを引き揚げて!」
「「「おうっ!」」」

 甲板には網に入った大量の魚と焼けたクラーケンの死骸。

「エグいなこの船……」
「帆船はしたらクラーケンなんて天災みたいなものなのに……」
「遠くにいた魚は気絶してるだけみたいだね! 新鮮そのものだ!」

 アースが風竜に言った。

「下に生け簀があるからそこに入れといてくれるかな? 後でその魚を使った料理をふるまうからさ」
「はいは~い」

 この戦艦にはまだまだ秘密兵器があるがそれは後々語るとする。アースは浸水式を終え、地下港へと帰港した。

「いやぁ……、こりゃ人間の船なんて目じゃねぇわ……。帆船と筏くらい差があるんじゃねぇか?」
「そうね。でもこれどうやって動いてるの?」
「簡単だよ。船底に俺が開発した魔道エンジンがあってね、核に魔力が増幅させる魔石を据えているんだよ。で、操舵室の舵から魔力を流しエンジンを始動させ、スクリューで前に進む。逆回転にすれば後ろにも進めるよ」
「アースのいた世界の技術は凄いのねぇ……」
「こんなのほんの一部だよ。空を飛ぶ乗り物すらあるからねぇ」
「恐ろしい星だわ……」

 魚を生け簀に放った風竜が上がってきた。

「ただいま~。アース、あの魚をどうするの? 早く食べたいんだけど!」
「ヴァン兄さんは食いしん坊だなぁ。ま、楽しみに待っててよ」

 無事浸水式を終えたアースは魚を生け簀ごとストレージに取り込み、三体の竜と家に帰るのであった。
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